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エターナルズ・・・・・評価額1700円
2021年11月10日 (水) | 編集 |
彼らは英雄か、死神か。

7000年の間、人知れず人類を見守ってきた10人の不死者、“エターナルズ”を描く、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作。
エターナルズは人類の神話では神様や英雄たちになってるのだが、実は太陽系を創ったボス神の駒に過ぎず、与えられた任務以外は人類に干渉できないという縛りがある。
つまり本作は、ヒーローがヴィランをやっつけて終わりという映画じゃないし、そもそも善悪の話でもない。
自由意志を持たない中途半端なヒーローというのは、今までのMCUが描いてきたヒーロー像とは真逆の存在で、実際過去作品との繋がりもほとんどなく、相当な異色作として仕上がっている。
「ノマドランド」でオスカーに輝いたクロエ・ジャオが、監督と共同脚本を兼務し、MCU最初のアカデミー賞監督となった。
ジェンマ・チェンが主人公のポジションのエターナル、セルシを演じ、サルマ・ハエック、アンジェリーナ・ジョリー、リチャード・マッデンらが出演。
韓国系アメリカ人のマ・ドンソク兄貴が、米国名のドン・リー名義でハリウッドへの初の逆上陸を果たしている。
※以下、核心部分に触れています。

知的生物を捕食するディヴィアンツを根絶するため、天体の創造主アリシェム(デビッド・ケイ)の命によって、7000年前に地球に降り立った“エターナルズ”は、リーダーのエイジャック(サルマ・ハエック)に率いられ500年前に目的を達成。
しかし帰還の命令は来ず、10人はそれぞれ人間社会に紛れて生活している。
ロンドンに暮らすセルシ(ジェンマ・チャン)は、物質を別の物質に変換できるエターナルだが、人間の恋人デイン(キット・ハリントン)と付き合っている。
全世界規模の地震が起こった夜、絶滅させたはずのディヴィアンツが現れ、セルシと少女の姿をしたエターナル、スプライト(リア・マクヒュー)を襲う。
飛行能力を持つイカリス(リチャード・マッデン)に助けられた二人は、アメリカに住むエイジャックを尋ねるが、彼女は既にディヴィアンツに殺されていた。
エイジャックからリーダーを受け継いだセルシは、事態を把握すためにアリシェムにコンタクトするが、そこで驚くべき話を聞かされる・・・・


なるほど、コレはマーベルの皮を被った、クロエ・ジャオのバリバリの作家映画。
もちろんMCUらしさはあるんだけど、作品の香りとしてはむしろ「DUNE /デューン 砂の惑星」などの方が近い。
アリシェムによって、古代の地球に送り込まれたエターナルズは10人。
まずは治癒能力を持つリーダーのエイジャック、物質を他の物質に変換することができるセルシ、飛行能力を持ちと目からビームを放つイカリス、手と指から大小のカメハメ波を放つキンゴ、超高速で移動できるマッカリ、他人の心を操れるドルイグ、様々な武器を使う戦士セナ、怪力のギルガメッシュ、人類の進歩を影から支援する発明家のファストス、変身能力がありリアルな幻影を投射できるスプライト。
彼らの任務は人類を見守り、知的生物を捕食する異形の怪物ディヴィアンツを絶滅させること。
当初は信奉するアリシェムの計画をチームとして忠実に実行し、500年前に完遂するも、何故かアリシェムからの帰還命令は来ず、チームを解散した彼らは地球各地で暮らしている。
幾多の戦争も、宇宙の50%の生命を賭けたサノスとアベンジャーズの戦いも、アリシェムの命令に無かったので干渉しなかった。

エターナルズが、自分の意思ではなく、他者の命令によってしか動けないというのが、本作のポイントだ。
過去にMCUに登場したヒーローたちは、その能力や立場に応じて葛藤こそしたが、全員が自らの決意で行動し、自由意志を奪われた者は、例えばキャプテンに救われる前のウィンターソルジャーや、ドレイコフの奴隷だったウィドウたちの様に、ヴィランの立場に置かれていた。
ところが、誰よりも人間くさくキャラクター造形されているエターナルズの面々は、何故かアリシェムの計画なるものに従うだけなのである。
その意味が明らかになるのは、物語も中盤に差し掛かる頃。
アリシェムの本当の計画とは、太陽系を作り、そこに育てた人類の精神エネルギーによって、地球を卵として、自らの同族であるセレスティアルズを誕生させること。
全長が数百キロ、数千キロもあるセレスティアルズが、大地を割って現れるのだから、当然地球の生物は絶滅してしまう。
エターナルズは、アリシェムの計画の“バグ”である、ディヴィアンツを駆除するために作られたある種のアンドロイドで、地球にやって来る以前も、同じサイクルを無数に繰り返し、その都度記憶を消されていたのだ。

今までのMCUで描かれたことが、全ては神様の手のひらで起こっていたことで、ぶっちゃけ人類に最初から生殺与奪の権はなかったという、劇的な世界観のパラダイムシフト。
これでは確かに、他の作品と安直に絡ませる訳にはいかないわな。
エターナルズが不死なのは、初めから生きていないからで、人類の守護者だと思っていたのが、実は滅びをもたらす死神だった。
初めて自分たちが何者かを知らされた彼らは、ここからどう行動するのか葛藤しはじめる。
命令のくびきを断ち切り、自由意志に目覚め、計画を止めるために動き出す者、どこまでもアリシェムを信じ、セレスティアルズの誕生と地球滅亡を受け入れる者。
果たして人類は、救うに値する存在なのか
いく当てのない心の迷宮に入り込んだエターナルズの苦悩が、「ノマドランド」「ザ・ライダー」など閉塞の中での放浪を描いてきたクロエ・ジャオの作家性にピタリとハマる。
あるエターナルが、人類の存続に疑念を抱いたきっかけが、人類の犯した最大の愚行、広島への原爆投下だったというシーンがあるが、これには驚いた。
世界的な影響力を持つMCUが、原爆投下を不可避の事態ではなく、明確に”人類の罪”と定義したのは画期的なことだと思う。

ほとんどのエターナルが、最終的に人類を護り、セレスティアルズの誕生を阻止することを決める中、最後までアリシェムの忠実な信奉者であり、本作のヴィラン的なポジションとなるのが、最強のエターナルであるイカリスだ。
自由意志が無いうちから人間と関わり、徐々に影響を受けて自分たちの中での多様性を確立していた他のエターナルズと異なり、彼は信奉する価値観の原理主義者として描かれる。
権威に服従し、命令を重視し、変化を拒絶するイカリスは、他者の考えに依存することで脳味噌が硬直してしまい、時代に適応できない保守的な人間のメタファーだ。
彼の中では多様性は忌むべきもので、世界は決定論に基づいていて、未来を変えることなど出来ないし、出来てはいけないのだ。
アリシェムの計画とは違ってしまった未来に、彼の居場所はない。
神話のイカロスは、蝋で固めた翼で空を飛び、太陽に近づき過ぎたことで蝋が溶けて墜落死する。
本来、人類の傲慢さを諫める話の主人公として知られるキャラクターを、自由意志を否定する創造主の傲慢さを象徴するキャラクターとしたのは、ジャオ節が冴え渡るシニカルなアイディア。
また本作のエターナルズとアリシェムとの関係は、一神教の宗教が、古代のアニミズムの神々を吸収、否定してきた歴史を感じさせるのも面白い。
宗教的保守派は、多様性の宇宙にとって障害物とも取れる解釈で、これが本作が賛否両論となっている一因だろう。

そのイカリスが飛び回るアクション描写はボリュームたっぷりだが、本作の場合はエターナルズという人類の社会のミニチュアの中で起こる、内輪揉めの話なので、なかなか終わってスッキリとはいかない。
古代のメソポタミアから、オーストラリアの荒野、マヤの神殿がそびえるジャングルなど、人類史と荘厳な自然の中、ゆったりとしたテンポで展開する悩める神々の神話は、例えば「シャン・チー/テン・リングスの伝説」などの陽性のマーベル活劇とは対照的で、なるほど「コレジャナイ」と思う人がいるのもよく分かる。
耳慣れないカタカナの固有名詞が矢継ぎ早に出て来るのも、MCUというよりは「DUNE /デューン 砂の惑星」っぽく、この種の叙事詩的なSFに馴染みがないと、入りにくい作品なのは確かだろう。
いずれにしても、最初聞いた時には、一体どうなることやらと思ったクロエ・ジャオの強烈な作家性とMCUの出会いは、新しい可能性と共に、MCUの多様性の更なる広がりを感じさせるのに十分なものだ。
今回はオマケも過去作との繋がりは無かったが、エンドクレジット後のアレを見ると、MCUは「アベンジャーズ」継承の正統派ヒーロー路線と、神話・伝説をモチーフとしたこちらの路線に別れてゆくのかも知れないな。

悠久の歴史を生きてきたエターナルズには、300年以上の歴史を持つ「ザ・マッカラン 18年」をチョイス。
シェリー樽で最低18年の間熟成されたスコッチは、複雑なアフターテイストを楽しめる。
マッカランは10年や12年ものの熟成度合いでも十分に美味しいが、18年あたりから味わいが格段に深みを増す。
値段もこの辺りからグッと上がるので、簡単に買える物じゃないけど、一本持っていて自分の中でイベントがある時などに、チビチビやるのもいいものだ。

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