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モーリタニアン 黒塗りの記録・・・・・評価額1750円
2021年11月13日 (土) | 編集 |
その時、グァンタナモで何が起っていたのか。

9.11の首謀者の一人とされ、何の司法手続きも無いまま、長期間キューバのグァンタナモ基地に作られたキャンプに抑留されたモーリタニア人、モハメドゥ・オールド・サラヒの実話。
彼は2001年11月、9.11の二ヶ月後にモーリタニアの自宅から警察に連行され、そのまま消息不明に。
3年以上が過ぎた2005年になって、ようやくグァンタナモにいることが判明し、彼を釈放させようとする弁護士と、何が何でも死刑にしようとする政府の闘いが始まる。
モハメドゥ本人による手記を映画化したのは、「ラスト・キング・オブ・スコットランド」などで知られるケヴィン・マクドナルド監督。
渦中の人であるモハメドゥをタハール・ラヒムが演じ、彼を挟んでジョディ・フォスター演じる弁護士のナンシー・ホランダーと、ベネディクト・カンバーバッチの海兵隊検事のスチュアート・カウチ中佐が火花を散らす。

ニューメキシコ州アルバカーキーの人権派弁護士、ナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)の元に、2005年の2月にある案件が持ち込まれる。
9.11の同時多発テロへの関与を疑われた、モハメドゥ・オールド・サラヒ(タハール・ラヒム)という男が、司法手続きが行われないまま、3年以上グァンタナモに抑留されているという。
助手のテリー・ダンカン(シャイリーン・ウッドリー)を伴い、グァンタナモでモハメドゥと会ったナンシーは、彼の弁護を引き受ける。
ナンシーは政府に供述調書の開示を要求するも、送られてきた書類は大半が黒塗り。
業を煮やした彼女は、拘束されてから起こったことを、手記にする様にモハメドゥに要請するのだが彼は全てを書くことを頑なに拒む。
同じ頃、海兵隊検事のスチュアート・カウチ中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)は、上司からモハメドゥの起訴を依頼される。
友人を9.11で亡くしていたカウチ中佐は、モハメドゥを死刑にすべく準備を進めるが、収容所で行われた尋問のすべてを記したMFRという核心的名な書類を入手できないでいた。
実はグァンタナモには、ナンシーもカウチ中佐も知らない、底無しの闇が隠されていた・・・・


モハメドゥ・オールド・サラヒは、1970年にアフリカ西岸のモーリタニアに生まれた。
優秀な若者で、奨学金を受け取りドイツの大学に留学し、電気工学の学位を取得している。
彼に疑いがかかったのは、留学後の1991年にアフガニスタンに渡り、アルカイダから戦闘訓練を受けたことがあること。
ドイツに住んでいた時に、9.11のもう一人の関係者と接触していること、さらにヴィン・ラディンから電話を受けたことがあること。
これらの状況証拠から、米当局はモハメドゥを、9.11に関わったテロリストたちを集めた中核メンバー、”リクルーター”だと認定し、3年に渡り尋問を繰り返していたのだ。

彼の弁護を担当するのが、ジョディ・フォスターが白髪の戦闘モードで演じる人権派弁護士のナンシー・ホランダーと、シャイリーン・ウッドリーが演じる助手のテリー・ダンカン。
モハメドゥに言わせれば、彼がアフガニスタンで訓練を受けた頃は、アルカイダはソ連と戦うためにアメリカが支援していた組織で、いわば味方同士。
ドイツで接触した人物も、同郷人だから頼まれて一晩泊めただけで、単に面識があるだけ。
ヴィン・ラディンからの電話も、かけてきたのは彼の親戚で、本人とは話してない。
要するに米当局は点と点を無理やり結び付けて、ありもしない“小説”を描いているというのだ。
だが弁護しようにも、政府は殆ど黒塗りで内容が分からない供述調書を渡してくるだけなので、ナンシーはモハメドゥが米当局に拘束されてからの顛末を、本人に手記として書かせる。
映画はこの手記に基づく2001年から2005年までの過去と、ナンシーが奔走する現在を平行に描いてゆくのだが、グァンタナモでの3年間で他人を信じられなくなったモハメドゥは、なかなか核心部分を書こうとしない。

面白いのは情報にアクセス出来ないのは弁護側だけではなく、起訴を担当する海兵隊検事のカウチ中佐も同様なこと。
グァンタナモの尋問記録は、それ自体が機密。
しかもCIAや軍をはじめ、色々な機関が入れ替わり立ち替わり尋問してるので、調書はぐちゃぐちゃで整合性が取れておらず、このままでは起訴出来ない。
中佐は調書になる前の全てを記録したMFR(Memorandum for the Record)という書類を手に入れようとするが、機密の壁に阻まれてなかなか辿り着けない。
検察、弁護側双方が、まるで真実を把握できないまま、裁判に向けての準備だけが進んでいという異常な状況だ。
二人がそれぞれのやり方で闇を払い、何重もの機密の壁の奥に隠されたグァンタナモの核心に、徐々に近付いてゆくプロセスは非常にスリリングで面白い。

そしてある時点で、ナンシーはモハメドゥが意を決して書いた手記によって、カウチ中佐はようやく閲覧を許されたMFRによって、グァンタナモで本当に何が起こっていたのか、“真実”を知ってしまう。
ブッシュ政権のラムズフェルド国防長官は、グァンタナモに集められた数千人の囚人たちに対し、”特殊尋問”という名の拷問を許した。
モハメドゥは一度自供しているのだが、その証言は凍える様な部屋に放置する、爆音を流し続け睡眠を奪う、水責めで呼吸できなくする、母親を他の囚人に強姦させると脅す、その他口にするのもおぞましい数々の拷問を受けて、肉体と精神をとことん追い込まれた状況で出てきたものだったのだ。
グァンタナモ基地は、1903年以来アメリカが租借しているキューバの地。
米国外にあるがゆえに、このキャンプはアメリカの司法が及ばない。
こんなところに、収容キャンプを作ったのは、看守や尋問官を法の支配から遠ざけることで、彼らの人権感覚を麻痺させ、非人道的な行為をさせるためではないのか、とナンシーは問う。

これでナンシーのすべきことは明確になったが、逆にジレンマに陥ったのが、カウチ中佐だ。
グァンタナモに法の支配が及ばないとしても、実際に裁判が行われるのはアメリカである。
客観的な証拠が無く、拷問で無理矢理導き出した自供に、証拠能力など認められないのは法律家として当然理解している。
しかし、政府や軍の上層部、いやアメリカ社会全体が、9.11を引き起こした“犯人”が死刑台に上がるのを待ち望んでいる。
9.11で亡くした友人の遺族に対し、仇討ちを宣言した責任もある。
カウチ中佐は、公判を維持できないのを承知でモハメドゥを起訴するか、それとも全国民に裏切り者と蔑まれる覚悟で起訴しないか、究極の選択を迫られるのである。
社会が集団ヒステリー状態の中、司法はどうあるべきなのか。
この映画に登場する、静かな情熱を燃やす法律家たちの振る舞いは、法治国家に住む全ての人間にとって示唆に富む。
司法がギリギリで踏み止まった一方で、怒れる民心に迎合し、政治的に利用したブッシュ政権はもちろん、その後も違法状態を正さなかったオバマ政権も同様の責任がある。
アメリカの大統領は、なぜ弁護士出身者が多いのか、なぜ三権分立と法の支配が民主社会を維持する上で非常に重要なのか、この映画を観ると理解できる。

ここに描かれていることは、対テロ戦争下のアメリカという、一見特殊な状況で起こった事件のように思えるが、例えば日本の入管施設にも、司法手続きが行われないまま、非人道的な状況で長期間収容されている人たちがいる。
個人が心身の自由を奪われるのだから、普通の刑事事件なら当然裁判所の令状が必要になるが、なぜか入管の収容では不要とされているのだ。
仮放免の申請を許可する、許可しないの裁量権も入管にあり、未来の見えない状況は、収容者に多大な肉体的、精神的なストレスを与える。
今年3月に、名古屋入管でスリランカ人女性が死亡した事件は記憶に新しく、過去にも自殺者や、ハンストの末の餓死者も出ている。
本作にも長期の抑留に耐えかねて自殺する、マルセイユという男のエピソードが出てくるが、入管の収容者にしてみれば、同じ心境だろう。
現在の日本の入管制度は、明らかな法の欠陥がある。
入管の問題には個人的にもちょっと関わったことがあり、彼らがいかに不誠実な組織か思い知らされた。
モハメドゥやマルセイユに起こったことは、単なる対岸の火事ではないこと。
この日本にも、早急に正すべき制度があることは、しっかりと認識しておきたい。

今回はグァンタナモに皮肉を込めて、「キューバ・リブレ」をチョイス。
タンブラーにライム1/2を絞り、クラッシュドアイスを入れ、ラム45mlを注ぎ入れた後でコーラで満たし、ライムを一切れ飾って完成。
このカクテルが生まれたのは、19世紀末のキューバ独立戦争の時。
独立派支援のためにキューバに駐留していたアメリカの将校が、コカ・コーラとキューバのラムをミックスし、独立派の愛言葉だった「ビバ・キューバ・リブレ(キューバの自由万歳)」から名付けたという。
戦争の結果、キューバはスペインの支配を脱して独立を果たすが、今度はアメリカの影響がどんどん強まり、グァンタナモ租借に繋がって行くのだから、歴史は本当にシニカルだ。

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