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マトリックス レザレクションズ・・・・・評価額1550円
2021年12月18日 (土) | 編集 |
ラナ・ウォシャウスキーの「シン・マトリックス」

1999年から2003年にかけて、三部作が公開された「マトリックス」シリーズ、18年ぶりの第四作。
シリーズの生みの親である、ザ・ウォシャウスキーズ、今回は姉のラナ単独の作品だが、非常にユニークなことをやっている。
これは確かに、リメイクでも単純な続編でもない。
過去の三部作をアーカイブとしてストーリーに内包し、虚実が入り混じったある種のメタ構造とした上で、その上に新たな物語を構築しているのだ。
20年近く前に一度完結したシリーズを、全て観ていることが前提の作りで、良くも悪くも現在のハリウッド大作としては相当に異色。
バジェットは正式には発表されていないが、おそらく1億ドルから1億5000万ドル程度と、決して安くない額が見積もられていて、よくぞ企画が通ったものだ。
オリジナルシリーズから、キアヌ・リーブスとキャリー=アン・モスは続投しているが、モーフィアス役はローレンス・フィッシュバーンからヤーヤ・アブドゥル=マーティン2世に代替わり。
もっとも、正確には違うモーフィアスなんだけど。
※核心部分に触れています。

トーマス・A・アンダーソン(キアヌ・リーブス)は、サンフランシスコのゲーム会社、デウス・マキナ社に所属する世界的ゲームクリエイターで、かつて「マトリックス」三部作を大ヒットさせた経歴を持つ。
しかし、ゲームに没頭するうちに現実とゲームの世界が区別できなくなり、今ではセラピストから処方される青いピルに頼って精神状態を保っている。
ある日、CEOのスミス(ジョナサン・グロフ)から、親会社のワーナー・ブラザースの圧力で、「マトリックス4」を作らざるを得なくなったことを知らされる。
企画会議が続く中、カフェに出かけたトーマスは、そこでティファニー(キャリー=アン・モス)という女性を見かける。
彼女は、トーマスがマトリックの中で創造したトリニティーに似ていた。
職場に戻ると何者かからの爆破予告が届き、避難する人々でオフィスが混乱する中、トーマスのスマホに「トイレに向かえ」とメッセージが届く。
そこにいたのはモーフィアス(ヤーヤ・アブドゥル=マーティン2世)と名乗る男で、トーマスに「現実に旅立て」と赤いピルを差し出すのだった・・・・


ちょっと他に似たアプローチの映画は思いつかないが、あえて近い作品を考えると、やはり「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」だろう。
共に最初の作品が作られたのは90年代で、過去作品全てをアーカイブ化して取り込んでいるのも、聖書からの引用がやたらと多いのも共通。
そして何よりも、どちらの作品も作者の心象が色濃く反映されている。
第一作の「マトリックス」が公開された当時、ザ・ウォシャウスキーズはラリーとアンディのウォシャウスキー兄弟だった。
その後、二人とも性別適合手術を受けて、ラナとリリーのウォシャウスキー姉妹となるのだが、以前に妹のリリーはNetflixの番組で「マトリックスは、トランスジェンダーであることに関する、隠された寓話だ」と語っている。
肉体と心の性別が一致しなかった二人にとって、人間の心が抜け出せない仮想現実に閉じ込められていると言う設定は、自分たちの心と体の象徴だったのだろう。
同時にネオというキャラクターを登場させることで、マトリックスから現実を変革するストーリーは、カミングアウト出来ない性的マイノリティにとっての、希望を描いたものだった。

自らの傷付きやすい心をフィクションに投影したのも「エヴァンゲリオン」的であるが、結果的に庵野秀明とラナ・ウォシャウスキーが、2021年の最新作に込めた想いはだいぶ違ったものになった様に思える。
庵野秀明が、中断期間はあるとしても、25年間に渡ってずっと「エヴァ」を作り続けていたのに対し、「マトリックス レザレクションズ」は18年ぶりの新作である。
その間、ザ・ウォシャウスキーズは、監督として3本の長編映画を発表しているが、残念ながら大ヒットと言える作品は一つもなく、評価もアカデミー賞四部門で受賞した「マトリックス」一作目には及ばなない。
何を作っても「マトリックス」の人と言われ、彼女たちは自らが作り出した「マトリックス」と言う牢獄に、再び繋がれてしまったのだ。
忠実なファンに囲まれた「シン・エヴァンゲリオン」は、庵野秀明が自分自身の心に決着をつければいい話だったが、ラナ・ウォシャウスキーはそうではない。
彼女は、「マトリックス」にもう一度足を踏み入れ、物語を解体的に完結させなければならなかったのである。

ただ、過去作全てを内包する特殊な構造ゆえに、旧作を観てないとその魅力は半減する。
楽しめるかどうか以前に、たぶん何が何やら意味不明だろう。
旧三部作は「リローデッド」「レボリューションズ」と回を重ねる毎にプロットが混乱してゆき、広げすぎた風呂敷を畳めなくなってしまった。
最後には古代ギリシャ演劇の時代から用いられる、デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)を唐突に出現させ、いろいろな要素を曖昧にしたまま、強引に幕を閉じてしまった。
そこで新たに創造された「マトリックス レザレクションズ」では、シリーズの整合性をとるために、現実パートは旧三部作を継承しつつ、新たに作り直されたマトリックスから、物語を仕切り直さねばならなかった。
だから本来一作目でやった、主人公にとってこれが現実か虚構かと言う部分も、設定を捻ってあるぶん、さらにややこしくなってやり直し。
トーマスが、自分がネオであることを認めた後も、トリニティー救出という本作の本筋に入るまでが、やたらと長いのも気になる。
描写としては必要なんだけど、完全に旧作からのファン向けの作品になっているのは、吉と出るか凶と出るか。

アメリカ映画には、数年に一度くらいの割合で、それまでの常識を覆すようなアクション映画が出現するが、第一作の「マトリックス」はまさに未見性の塊だった。
本作ではメタ的なネタにされている、バレットタイムをはじめとしたアクションのアイディアは、それまで誰も見たことのないもので、新鮮な驚きに満ちていた。
本作では、さすがにあの時の様な衝撃は感じないが、見せ場のボリュームとしてはまずまず。
終盤のボットたちとの戦いは、「マトリックス」というよりも、「新感染半島 ファイナル・ステージ」などのゾンビ映画系のテイストだが、一作目をセルフオマージュしたクライマックスは、ネオもトリニティーも歳とってる分だけちょっと痛々しくて、泣けてしまった。
本作の印象を端的に言えば、とてもユニークなアプローチで攻めた作品だが、その結果として非常に歪な映画となっていて、ラナ・ウォシャウスキーが苦悩しながら作り上げた作家映画としては観応えがあるが、反面エンターテイメントしては突き抜けない。
旧三部作のファンには確実に一見の価値があるものの、全く一見さん向けではない。
確実に言えるのは、収集がつかなくなって無理やり終わらせた「レボリューションズ」に比べると、「救世主」とは結局誰のことだったのかを含めて、「ようやく完結した」という感覚はずっと強いということだ。
まあサブタイトルが、「レザレクションズ」と複数形の時点で想像はつくだろうが。

ちなみに本作を観ていて感じたのは、ザ・ウォシャウスキーズは本当は「マトリックス」をゲームで作りたかったのでは?ということだ。
リリーの言うように「マトリックス」がトランスジェンダーの葛藤を反映した世界だとすれば、プレイヤーが男でもアバターの性別が自由になるゲームの方が相応しいだろう。
実際企画段階では、そういうキャラクターもいたそうだし。
実は第一作が作られた頃はちょうどDVDの普及期で、DVD再生に対応したSONYのPlayStation2と「マトリックス」のDVDの発売時期が重なったことで、「マトリックス」がキラーコンテンツとなってPlayStation2がバカ売れした。
おそらくゲーム機のキラーコンテンツがゲームじゃなくて映画だったのは、後にも先にもこの時だけで、自分たちの映画が図らずもSONYを大儲けさせてることに、ラナは思うところがあったのかも知れない。

「マトリックス」と言えば、緑の文字の雨、そして相変わらずの日本かぶれなので、「照葉樹林」という日本生まれの緑のカクテルをチョイス。
グリーンティーリキュール45ml、ウーロン茶適量を氷を入れたタンブラーに注ぎ、軽くステアする。
お茶の文化圏でもある日本から東南アジアにかけて広がる照葉樹林。
グリーンティーリキュールの甘味を、お茶の風味が引き立て、アペリティフにちょうどいい。

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