fc2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係な物や当方が不適切と判断したTB・コメントも削除いたします。
■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
親愛なる同志たちへ/潜水艦クルスクの生存者たち・・・・・評価額1650円
2022年04月19日 (火) | 編集 |
国家は、信頼するに値するか。

「親愛なる同志たちへ」は、齢84歳となるロシアの巨匠アンドレイ・コンチャロフスキーが、1962年に当時のソ連南部ノボチェルカッスクで起こった、大規模なデモ弾圧事件を描いた実話ベースの作品。
物語の主人公は、共産党とスターリンの信奉者で、党の市政委員を努めるリューダ。
つまり、バリバリの体制側の人間だ。
ところが、彼女の18歳の娘が、デモ隊への発砲騒動の最中行方不明となる。
殺されたのか、治安当局によって連行されたのか、それとも隠れているのかも不明なまま、時間だけが過ぎてゆく。
リューダは、一個人として信じていた体制への忠誠心と、母としての娘への愛の間で引き裂かれてしまうのだ。

ノボチェルカッスクはウクライナに近く、かつてはロシア帝国とたびたび敵対し、最後は赤軍によって滅ぼされたドン・コサック軍の中心都市。
歴史的な経緯から、モスクワとの関係は初めから微妙なところに、食糧難と賃金カットが重なったことで、列車の工場でストが起こり、市民を巻き込んだデモへと発展。
そんな怒れる人々を見ても、リューダは彼らは無知な暴徒であり、全員逮捕すべきと主張する。
だが権力の暴力が自分達にも向けられ、娘が行方不明となってもなお、彼女は共産党しか信じる拠り所がないのだ。
1千万人とも言われる犠牲者を出したスターリンの独裁時代を懐かしみ、「白黒がはっきりしていた良い時代だった」と嘯く。

この人を見ていると、どうしても世界を敵と味方に分け、プーチンを信奉するロシアの保守層を連想する。
そして射殺した市民の死体を隠し、モスクワにとって、都合の悪い事態は無かったことにする、極端な隠蔽体質も完全にデジャヴだ。
自国民にすらこれだから、今は外国になったウクライナに遠慮がある訳がない。
一つの価値観(思想)にどっぷり浸かると、二元論でしか物事を見られなくなり、世界は本当に狭くなってしまうのである。

実は本作を鑑賞した直後に、もう一つロシア絡みで「潜水艦クルスクの生存者たち」という作品を観た。
こちらは2000年8月に、バレンツ海で魚雷の爆発事故を起こし、沈没したロシア海軍の原子力潜水艦クルスクで、最初の爆発を生き残った23人の運命と、事件の顛末を描く物語だ。
時代もシチュエーションも全く違うのだが、両作品には驚くほど共通点が多い。
ロシア海軍の救難潜水艇は、メンテナンスもろくに行われていないポンコツで、何度トライしても救出出来ない。
見かねた英国などが援助を申し出ても、ロシアは頑なに受け入れない。
潜水艦は軍事機密の塊だから・・・と言うより、上層部のメンツのため
挙句の果てには事故原因は分かってるのに、外国船と衝突したのでNATOのせいとか、誰が聞いても分かる子どもじみた嘘を言い張る。
乗組員には当然家族がいる訳で、水兵の妻たちは、最初こそ海軍の言い分を信じようとするものの、並べられる嘘八百にいつしか「ああ、コイツら助ける気無いな」と気付く。
海底で救助を待ち続ける、生存者たちの絶望感は言わずもがなだ。
非常に印象的に描写されるのが、大人たちの醜態を見守る乗組員の幼い息子の視線。
彼らが少しでも恥の意味を知っていれば、子供にあんな姿は見せられないだろう。

思いっきりロシアの恥部を描く話なので、製作国はフランスだし、監督も「アナザーラウンド」などで知られるデンマークのトマス・ヴィンターベア。
キャストもヨーロッパ中心の英語劇なんだが、話の内容は実におそロシアだ。
「クルスク」が本国では制作されず、「親愛なる同志たち」は制作可能だったのは、ひとえに現在のロシアは旧ソ連とは違う国だという建前があったからだろう。
しかし、おそらく後者も今では作れない映画だと思う。
62年のソ連時代を舞台とした「親愛なる同志たち」と、2000年を舞台とした「クルスク」で描かれるロシア、そして現在進行形の現実の戦争に見える今のロシアは驚くほど同一の社会だ。
恐ろしいまでの人命軽視に、極度の隠蔽体質、自分達にしか通用しない理屈をこね回し、息を吐くように嘘をつく。

実際にそれぞれの時代で起こったことの類似性を考えると、ロシアのお偉いさんの思考回路というのは、全く変わっていなかったのだろう。
というか「クルスク」を観ると、ヨーロッパの人たちも、ずっとそういう目でロシアを観察してたのが伝わってくる。
分かってたのに、どこかで今のロシアは旧ソ連とは違う国だと信じたかったのかもしれない。
ちなみにクスルクの事故は、プーチンが大統領になってすぐに起こったのだが、軍の上層部は正確な情報をなかなか伝えず、結果的に彼は何もせず数日を過ごし、非難されたという。
これも最近聞いたような話で、こんなところまで、全く進歩してないんだな。
二本の映画と現実から見えてくるのは、ある種のロシア論であり、非常に興味深い。
はたして、ユーラシア大陸の巨人は、どこへ向かって歩いているのだろう。

今回は、かつてはロシア皇帝の御用達だったウォッカの「スミノフ」をチョイス。
とは言ってもロシア革命で創業家のスミルノフ家が弾圧され、一族はフランスへと亡命。
現在のスミノフは英国企業の傘下で、日本向けのウォッカは韓国の工場で生産されている。
岸田政権は対ロシア制裁で、ウォッカの禁輸を打ち出したが、これはロシア製ではないので、当然対象外。
心おきなく飲めるが、冷凍庫でシャーベット状になるまで冷やし、適量のソーダで割るのが好き。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

暴走機関車 -HDリマスター版ー【Blu-ray】 [ ジョン・ヴォイト ]
価格:4339円(税込、送料無料) (2022/4/19時点)






スポンサーサイト