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ジュラシック・ワールド/新たなる支配者・・・・・評価額1600円
2022年07月31日 (日) | 編集 |
シン恐竜時代にようこそ。

J・A・バヨナがメガホンを取った前作「ジュラシック・ワールド/炎の王国」から、再びリブート版一作目を撮った、コリン・トレボロウにバトンタッチした第三弾。
ジュラシック・ワールドの崩壊後、恐竜たちは世界に生息域を広げている。
過去と現在の生態系が入り混じった混沌の時代を舞台に、人類の未来と恐竜の関係を模索する物語であり、1993年から続くシリーズの一応の完結編となる。
クリス・プラットとブライス・ダラス・ハワードが演じる、元恐竜トレーナーのオーウェンとクレアのカップル、キーパーソンとなるメイジー役のイザベラ・サーモンは続投。
旧「ジュラシック・パーク」三部作から、サム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラムのトリオも復活する。
恐竜も役者も揃った、シリーズの大団円だ。

かつてジュラシック・ワールドがあった、イスラ・ヌブラル島の噴火から4年後。
恐竜たちは全世界に分布を広げ、人類や現生生物との競合関係に。
そんな時、白亜紀の遺伝子を持つ巨大バッタの群れが出現し、世界は食糧危機の瀬戸際に立たされる。
エリー・サトラー博士(ローラ・ダーン)は、巨大バッタが遺伝子ビジネスの掌握を狙うバイオシン社によって人為的に作られたのではと疑い、アラン・グラント博士(サム・ニール)と共に、ヨーロッパの山中にあるバイオシンの恐竜保護区へと向かう。
一方、オーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、クローン少女のメイジー(イザベラ・サーモン)を匿って、山奥に引きこもり生活。
オーウェンが調教していたヴェロキラプトルのブルーは、単為生殖によって子供のベータを産み、近くで暮らしている。
だがある時、バイオシンの雇った傭兵によって、メイジーとベータが攫われてしまう。
わずかな手がかりを追ったオーウェンとクレアは、マルタ島の恐竜の闇市場へとやって来るのだが・・・


「ジュラシック・ワールド」三部作は、基本的に「ジュラシック・パーク」三部作の焼き直し。
1993年から始まった「パーク」三部作が、カリフォルニア州アナハイムにある最初のディズニーランドだとすれば、2015年からのリブート版「ワールド」三部作は、フロリダ州オーランドにある複数のテーマパークを統合したディズニーワールドのような物。
基本コンセプトは踏襲し、拡大改良したバージョンだ。
実際、どちらも一作目では恐竜テーマパークの破綻と崩壊を描き、二作目では閉鎖されたテーマパークから捕獲された恐竜が、アメリカ本土に上陸し暴れまわる。
リブート版の「ワールド」の方が設定が複雑化し、展開が少し派手になっているのも共通だ。
しかし三本目となる本作は、「ジュラシック・パークⅢ」からは結構離れている。
まあ「パークⅢ」自体が一作目の焼き直しだったので、同じことをしたら焼き直しの焼き直しになってしまうのだが、今回はリブート版だけでなく、30年間にわたる「ジュラシック」シリーズ、六部作全体の完結編になっているのが大きな理由だろう。
コリン・トレボロウは、クビになった「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」で叶わなかった、大型フランチャイズの幕を閉じるという大役をこちらで果たした訳だ。

クリス・プラットとブライス・ダラス・ハワードが演じる、オーウェンとクレアの保護下にあるクローン少女メイジーや、高い知能を持つヴェロキラプトルのブルーといった前作からの続き要素に加え、今回は30年前からの因縁も絡む。
前作で本土に上陸した恐竜たちは、四年間で全世界に広がっているらしく、人間や現生生物の生息域にも重なってきている。
未来が混沌とした世界で、ヨーロッパにある恐竜の保護研究を行う特区を管理しているのが、第一作の「ジュラシック・パーク」で、鉄壁の管理体制を誇るパーク破綻のきっかけを作ったバイオシン社なのである。
パークを運営するインジェン社の、ライバル企業だったバイオシン社の産業スパイが、パークのエンジニアだったデニス・ネドリーを買収し、シェービングクリームの缶に偽装して恐竜の胚を持ち出そうとするも失敗。
ネドリーはディロフォサウルスに襲われて死亡し、パークのセキュリティシステムも破綻してしまったのだ。
全ての元凶となった事件を引き起こしたバイオシンの産業スパイこそ、本作では同社のCEOに上り詰めているルイス・ドッジソン。
ちなみに、30年ぶりの登場となった白髪のドッジソンはなぜかティム・クックぽく、バイオシンの社屋は露骨にアップルの本社とそっくりなのだが、トレボロウはアップルに恨みでもあるのだろうか。

再登場するのは、悪役だけではない。
前作でカムバックしたジェフ・ゴールドブラムのマルコム博士に続いて、今回はサム・ニールとローラ・ダーンが演じたグラント博士とサトラー博士が復活。
二つの三部作が、30年の歳月を経て融合するのだ。
豪華な布陣ではあるが、この面子全員を立てながら、物語を破綻なく構成するのは至難の業。
そこで本作は、シリーズの生みの親であるスティーブン・スピルバーグの代表作の一つ「インディ・ジョーンズ」オマージュを持ってきた。
地球の未来を変えうる奪われたお宝(バイオシンに誘拐された完璧なクローンであるメイジーと、単為生殖で自らのコピーを生み出せるブルーの子供であるベータ)を追って、行き当たりばったり上等の、世界を股にかける大冒険活劇としたのだ。
恐竜の生息域が拡散してしまった以上、もはやテーマパーク括りは意味がなく、「ワールド」は文字通り「世界」の意味となった訳だ。
もともと映画版のグラント博士のキャラクター造形は、スピルバーグによるセルフパロディ気味だと指摘されていたが、それを逆手に取った形で、パロディのパロディみたいな描写もある。
物語はメイジーとベータの奪還を狙うオーウェンとクレア、バオイシンの違法行為を探ろうとするグラント博士とサトラー博士のツートラックで進行し、終盤に二つの流れが合流する展開。
オーウェンとクレアをポンコツ輸送機で運ぶ、密輸パイロットのケイラのキャラクター造形は、たぶんハン・ソロのイメージを借りて来ている。
まあ本作だけ観ても問題は無いだろうが、一応前作の「炎の王国」と出来れば第一作の「ジュラシック・パーク」を復習しておいたが方が楽しめるだろう。

しかしこのシリーズ、テーマ的にはカオス理論学者のマルコム博士が言ってることが全てで、「人類は滅びに向かっている」しかし「生物は必ず道を見つける」と30年間ずーっと同じ。
その意味では、ぶっちゃけ一作目以外は全部出涸らしの様なものだ。
二作出ているマイケル・クライトンの原作も、一作目は素晴らしかったが、二本目は同一の作者とは信じ難いくらいにつまらなくて、結果的に映画版の第二作「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」は、大幅にオリジナル要素が強くなっていた。
なので、「ワールド」の一本目を第一作をベースにリブートしたのは正解だったのだが、残念ながらトレボロウの腕はスピルバーグ級ではなかった。
特に空間の説明が下手くそで、広大なテーマパークのどこに誰がいるのか位置関係がさっぱり分からず、面白さをかなりスポイルしていたのは否めない。
この辺りの欠点は本作でも相変わらずだが、本作では物語の構造が変わったおかげで、さほど気にならなく放っているのは幸い。

インディ・ジョーンズ的な連続活劇としても、見せ場のバリエーションも豊富で飽きさせないが、登場する恐竜のバラエティもシリーズ中最も豊富。
一作目からの因縁話を強化する懐かしのディロフォサウルスや、初登場のディメトロドンや羽毛恐竜のピロラプトル、T-レックスを超える史上最大の肉食恐竜ギガノトサウルスなどお腹いっぱい。
中でもナマケモノのような巨大な爪を持つテリジノサウルスのルックスは異様な存在感があり、クライマックスの巨大恐竜対決はほとんど怪獣映画だ。
だが、本作の恐竜描写で一番印象的なのは、人間の生活圏に巨大な竜脚類が現れたシーンだろう。
雪の中に佇む恐竜というビジュアルは、非日常性と不思議な美しさがあった。
あんな寒冷地で生息できるの?という疑問はあるが、遺伝子操作された恐竜ということで。
シリーズを通して、いらんことし続けていたマッドサイエンティストのウー博士が、突然反省してたり、作を跨いで考えると結構唐突な部分もあるが、これは尺的にやむを得ないだろう。
マルコム博士の言葉を受けて導き出される結論も、かなり楽観的というか強引というか、実際にこんな事態になったら、遺伝子操作された新恐竜に、現生生物は負けて絶滅しちゃうよねと思ってしまった。
まあ壮大すぎる設定に対して、作劇・演出共に欠点は沢山あるものの、オリジナルキャストの復活を含めて、全六部作を総決算する夏休みのお祭り映画として、十分に楽しい作品ではあったけど。

琥珀に閉じ込められた、恐竜時代の昆虫というモチーフから始まったシリーズの完結編には、「アンバー・ドリーム(琥珀色の夢)」というカクテルをチョイス。
ドライ・ジン20ml、スウィート・ベルモット20ml、シャルトリューズ・ヴェール・グリーン20ml、オレンジ・ビター1dashを、ミキシンググラスでステアしグラスに注ぐ。
マラスキーのチェリー一個を沈めて、香り付けにレモンピールを絞って完成。
名前の通り美しい琥珀色で、同じ材料を混ざらないようにプースカフェスタイルで作ると「ビジュー(宝石)」という別のカクテルになる。
香草系のリキュールを使っているので、味わいは結構クセがあるのだが、美しい琥珀色を目で味わっていると、白亜紀の風が吹いてくる・・・様な気もする。

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グレイマン・・・・・評価★★★★+0.6
2022年07月27日 (水) | 編集 |
アウトローの仁義。

「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」 「アベンジャーズ/エンドゲーム」で映画史を塗り替えた、アンソニー&ジョーのルッソ兄弟最新作。
表沙汰にできないグレーな仕事をさせるために、犯罪者を集めて作られたCIAの特殊ユニット、シエラ・プロジェクトに所属するエージェント”シエラ・シックス”を主人公とした、新たなスパイ・アクションだ。
原作はマーク・グリーニーのベストセラー・シリーズの第一作「暗殺者グレイマン」で、映画版も続編作る気マンマン。
これ単体では完結していない部分も多いのだが、ノンストップアクションの力技で押し通す。
主人公のシックスをライアン・ゴズリンが演じ、彼とバディを組むCIAのエリートエージェントに、「007/ノータイム・トゥ・ダイ」で最強ボンドガールを演じたアナ・デ・アルマス。
キャプテン・アメリカとは正反対のドSの殺し屋を、クリス・エヴァンスが嬉々として演じている。
「ワイルド・スピード」シリーズで知られる、スティーヴン・F・ウィンドンが撮影監督を努めており、本作でも度肝を抜くカーアクションが大きな見所。
Netflix史上最高額となる、2億ドルの製作費が投じられた超大作だ。

殺人の罪で服役中のコート・ジェントリー(ライアン・ゴズリング)は、CIAのドナルド・フィッツロイ(ビリー・ボブ・ソーントン)から、減刑と引き換えに新設されるシエラ・プロジェクトのメンバーにリクルートされる。
それから18年後の現在、ジェントリーは凄腕のエージェント”シエラ・シックス”として、CIA本部のダニ・ミランダ(アナ・デ・アルマス)と協力し、バンコクでの暗殺任務に臨む。
しかし、対峙したターゲットから、自分はシエラ・フォーで、腐り切ったCIA上層部の秘密を握っていると告げられる。
フォーは息絶える直前に、USBメモリが入ったペンダントをシックスに託す。
上層部に疑念を持ったシックスはCIAとの連絡を断ち、既に引退していたフィッツロイに助けを求める。
だが、シックスの動きを察知したCIA本部長のデニー・カーマイケル(レゲ=ジャン・ペイジ)は、目的にためには手段を選ばない殺し屋、ロイド・ハンセン(クリス・エヴァンス)を呼び寄せる。
ハンセンは、フィッツロイの姪のクレア(ジュリア・バターズ)を誘拐し、取引を持ちかけるのだが・・・・


ぶっちゃけ物語の基本設定には、既視感しかない。
主人公がスパイ組織の中の一匹狼というのは、ジェームズ・ボンド以来の定番中の定番だし、犯罪者が汚れ仕事にリクルートされるのも「ニキータ」はじめ昔からあるパターン。
敏腕スパイが組織の上層部のヤバい秘密を握ってしまったがゆえ、身内から追われるようになるのも、近年では「ボーン」シリーズなどでお馴染みの設定だ。
ただし、本作は続編を前提とした作りになっていて、本作で主人公が握っている秘密はマクガフィン扱いで全貌は見えないままだ。
グリーニーの原作は未読だが、古今東西のスパイものの要素をかき集めて、一つの鍋にぶち込んだようなごった煮料理になっている。
かようにありきたりな断片によって構成されながら、本作が一本筋の通った大作になっているのは、かかっている金と物量の他に、作者の持つ“ハードボイルドの美学”が全編を貫いているからである。

ルッソ兄弟がプロデュースを担当し、弟のジョーが脚本を書いた「タイラー・レイク -命の奪還-」と本作は、いくつかの共通点がある。
まず主人公は、心に傷を抱えたアウトローである。
基本お一人様が好きだが、信頼を寄せる仲間には素直に頼るので、チームプレイもあり。
仁義に厚い性格で、恩人には恩を返すし、自分が危ない状況でも基本仲間は見捨てない。
自分の中で、超えてはいけないレッドラインがある。
どんな状況でも、子供は全力で守る。
要は非情の世界に生きていても、弱きを助け強きを挫く任侠の人なのだが、面白いのは敵の中にも主人公の鏡像のような相手がいることだ。
「タイラー・レイク」の場合はランディープ・フーダーが演じたサジュ、本作ではダヌーシュが演じたアヴィク・サン。
どちらもインド系で、格闘技の達人なのも共通だ。
強くて悪玉でありながら儀を果すという、アジア的美徳を感じさせるキャラクターを置くことで、ラスボスの卑劣漢がより際立つというワケ。

MCUでメチャクチャ濃いキャラクターを作っていたせいか、ルッソ兄弟は主人公に限らずキャラクターを立てるのが上手い。
アベンジャーズのリーダーにして、アメリカの正義を体現してきたキャプテン・アメリカことクリス・エヴァンスが、もう一片も同情の余地の無い精神破綻した殺し屋のボスを演じている他、「007/ノータイム・トゥ・ダイ」では、出演時間10分で一番美味しいところをさらって行ったアナ・デ・アルマスが、主人公の魅力的なバディ、ダニ・ミランダを好演。
シックスのメンターとなる、フィッツロイを演じるビリー・ボブ・ソーントンの燻銀のキャラクターに、彼の姪でキャプテン・ヴィランの人質となるジュリア・バターズの美少女っぷりも眼福。
バターズは、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でジョディ・フォスターっぽい天才子役を演じていた子だが、顔が完成されすぎていてパッと見年齢が分からない。
本作の撮影当時12歳と知ってビックリした。

魅力的なキャラクターに対して、前記したように物語はやや弱いのだが、怒涛のアクションのバリエーションとボリュームで有無を言わさず突っ走る。
この映画の物語を端的に言えば、秘密が詰まったペンダントをマクガフィンにして、満身創痍のアウトローが囚われの姫を救出する話になっていて、この構図は懐かしの「ルパン三世 カリオストロの城」を思わせる。
実質的には比較的小さな物語なのだが、ヴィランが狂い過ぎているために、都市だって破壊しちゃうのだ(笑
バンコクでの暗殺シークエンスから始まって、墜落する輸送機からの脱出劇、ウィーンの市街地を舞台とした車とトラムを組み合わせた大チェイス、そしてクライマックスの城攻めとアクションの見せ場はてんこ盛りで、その全てのクオリティが高い。
この辺りのノウハウは、「ワイルド・スピード」シリーズで、数々の複雑怪奇なアクションシークエンスをカメラに収めてきた、スティーヴン・F・ウィンドンの力が大きいのだろう。
ドローンを使ったダイナミックなカメラワークを、編集のリズムと連携させ、スピーディーに展開させるあたりも、なかなか未見性があった。
しかしカリ城のルパンは姫を解放してカッコよく去っていったけど、これはまだまだ安心できない状況なので、いっそ戦闘術を仕込んで、次は父娘鷹か?
CIAに戻ったダニはどう動く?
すでに続編の制作は決定しているようなので、新フランチャイズの本格始動を楽しみに待ちたい。
しかし、製作費2億ドルの超大作が配信で見られちゃうんだから、時代だな。

本作はバンコクから冒険が始まるので、タイを代表するビール、ブーンロード・ブルワリーの「シンハー」をチョイス。
1933年に、ドイツとの技術提携で生まれたジャーマンスタイル。
しかし暑い国のビールの例に漏れず、割と薄味で喉越しスッキリ系に進化した。
もっと冷えろとばかりに、ビアグラスに氷を入れて注ぐのが現地流。
ミッションが終わったら、グイッと飲みたい。

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ショートレビュー「リコリス・ピザ・・・・・評価額1650円」
2022年07月23日 (土) | 編集 |
あの頃、君を追いかけた。

1973年、ロサンゼルスに住む15歳の俳優の少年ゲイリーと、25歳のアラナの歳の差恋模様。
「リコリス・ピザ」というタイトルだが、別にピザは出てこない。
これは60年代から80年代にかけて、南カリフォルニアに実在したレコードチェーン店の名前らしい。
製作・監督・脚本・撮影を兼務するポール・トーマス・アンダーソンは、長編前作の「ファントム・スレッド」から一転して、肩の力が抜けた軽やかなフットワーク。
全体の印象として、彼のフィルモグラフィ中では、シャキッとした「インヒアレント・ヴァイス」と言う感じだ。
もっとも、歳の差の恋の話で、男性がほぼ一方的に一目惚れすることから始まる物語という点では、「ファントム・スレッド」の裏返しとも言える。

学校の写真撮影で、生徒とカメラマンのアシスタントとして出会った二人。
主人公のゲイリーを演じるのは、新人のクーパー・ホフマン。
この面影どこかで・・・と思ったら、PTAの映画の常連だった故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子だった。
撮影当時17歳ということだが、早くも父親譲りの貫禄がある。
彼の恋の相手のアラナ役は、姉妹バンドの「ハイム」のメンバーとして知られるアラナ・ハイムで、姉妹両親と共に家族で映画初出演。
共に演技ズレしていないこの二人が、自然体で実に初々しいのだ。

15歳と25歳、普通この年齢で10歳の差は決定的なんだが、ゲイリーは只者ではない。
子供の頃から芸能界で活動し、すでに家族を養っている。
それだけでなく異常な行動力を持ち、ちょっとでも流行りそうなものを見つけると、仲間たちを集めてガチのビジネスにしてしまうのだ。
70年代当時にはやったウォーターベッドの販売店を始めたからと思えば、オイルショックで石油製品のベッドが入ってこなくなると、ロサンゼルスで禁止されていたピンボールゲームが解禁される話を聞きつけて、ゲームセンターを開業。
いわゆる起業家気質で、見た目はちょっと恰幅の良い少年だが、中身は半分おっさんだ。
アラナのキャラクターが未成熟なこともあって、意外と対等の恋の駆け引きが見られるんだな。

もっとも現実の恋と同様に、物語は行き当たりばったり。
アラナも現状を打破しようと、ゲイリーに触発されて女優に挑戦したり、市長選挙のボランティアに志願したりするが、大きな事件は起こらない。
だが、それがいいのだ。
50年前にあったかもしれない、小さな恋のはじまりの物語を、ちょっと覗き見してるような感覚。
市長選挙やオイルショックなどの世相がバックグラウンドとなり、破天荒なキャラクターで知られる映画プロデューサーのジョン・ピーターズや、ウイリアム・ホールデンっぽい俳優、ゲイであることを隠して出馬する市長候補のジョエル・ワックスら、実在の人物が物語を彩る。
彼らを演じるブラッドリー・クーパーやショーン・ペンといった大物スターも、悪ノリギリギリで楽しそうだ。
ストーリーテリングのテンポも良く、134分の上映時間は心地よく過ぎてゆく。
たぶんPTAの作品の中で、一番観やすいのではないか。
ちょいキュンな、可愛らしい小品。

今回は、リコリス繋がりでフランスのリキュール「パスティス51」をチョイス。
リコリスはスペインカンゾウというハーブの一種で、これを抽出してお菓子にするとリコリスキャンディー、飲み物の味付けにするとルートビアになる。
元々ヨーロッパではニガヨモギを主成分とするアブサンが人気だったのだが、中毒症状を引き起こすとして20世紀初頭に使用が禁止される。
その後、2000年代になって使用量を限定して復活するも、アブサンが飲めなかった時代に生み出されたのがリコリスなどを使ったパスティスだ。
香草系のリキュール独特の強烈な風味。
ウィスキーを思わせるアンバー色だが、水で割ると白濁する。
好みは分かれるだろうが、ウゾなど香りの強い酒が好きな人にはオススメだ。

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呪詛・・・・・評価★★★★+0.6
2022年07月16日 (土) | 編集 |
火佛修一心薩嘸吽。

これマジでアカンやつや。
台湾で大ヒットした、モキュメンタリーホラー。
冒頭、YouTubeで「あなたは祈りを信じていますか?」と語りかける女性が映し出される。
彼女の名はリー・ルオナン。
6年前に、山奥に住むある氏族に伝わる伝統宗教のタブーを侵し、幼い娘のドォドォともども呪われてしまったと言う。
事件に関わった者は、皆不条理な死を遂げ、生き残っているのは彼女と娘だけ。
彼女は視聴者に奇妙な符号を見せ、その宗教に伝わる「火佛修一心薩嘸吽(ホーホッシオンイー シーセンウーマ)」という呪文を唱え、娘の命を救うために協力して欲しいと求める。
「返校 言葉が消えた日」「哭悲/The Sadness」と、秀作が続き盛り上がりを見せる台湾ホラーの真打ち登場。
ケヴィン・コー監督が作り上げたのは、台湾南部の高雄市で起こった実際の事件にインスパイアされたという、それはそれは恐ろしい作品である。
日本ではNetflix直行となったが、作品の特性上も劇場よりも配信が相応しい。
どうせなら、夜中に一人で観ることを強くお勧めする。
※完全ネタバレ。観る前には読まないで。

リー・ルオナン(ツァイ・ガンユエン)は、養護施設に預けられていた娘のドォドォ(ホアン・シンティン)を自宅へと迎える。
出産後長く精神病院にかかっていて、ようやく子供と暮らすことが認められたのだ。
だが、ドォドォが家に来てすぐに、怪異が起こり始める。
電気が勝手に消える。ドォドォが宙に浮く“悪者”の姿を見る。
ルオナンの持ち物から、不気味な芋虫が大量に見つかる。
そして、ドォドォの体にも異変が。
それらは全て、6年前にオカルト系のYouTubeチャンネルを配信していた、ルオナンと婚約者のアードン(ショーン・リン)とその弟アーユエン(ウェン・チンユー)の体験から始まっていた。
アードンの祖父の住む村は、大黒仏母という神を信仰していて、アードンとアーユエンは禁じられた地下道に立ち入ってしまう。
二人は謎の死を遂げ、当時ルオナンと関わった者たちも次々と死んでいた。
ドォドォの里親だったチーミン(カオ・インシュアン)の協力を得たルオナンは、娘を救うために大黒仏母の正体を探り始めるのだが・・・・


現在のホラー映画に、90年代以降強い影響を与えた系譜は二つある。
一つは、1999年に大ヒットした「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」に代表される、モキュメンタリー。
モキュメンタリー自体は昔からある手法だが、この作品はメリーランドの森に伝わる「魔女伝説」をでっち上げ、映画は伝説を取材しに来て、行方不明となった学生たちが残した物という触れ込みで公開された。
わずか6万ドルで製作された小品が、口コミが口コミを呼び全世界で2億4千万ドルを超える興行収入を稼ぎ出したことで、類似作品が雨後の筍のように作られた。
そしてもう一つの系譜が、「リング」「呪怨」の両シリーズに代表されるJホラーである。
両シリーズ共にハリウッドでリメイクされたことからも分かるように、怪異の正体を明確にしないまま、真綿で首を絞められるように展開するJホラーの恐怖表現は、世界的には非常に新鮮に受け止められ、その影響は現在まで色濃く残る。
モキュメンタリーもJホラーも粗製濫造の結果、勢いを失って行ったが、この二つのDNAを最狂の形で融合させたのが本作である。

一応、実話が元になっているという触れ込みだが、高雄で起こった事件では6人の家族にそれぞれ古代の神々が取り憑き、お互いに傷つけ合ったり、糞尿をかけ合ったり、しまいには死者まで出てしまったという。
相当に奇妙な事件ではあるが、本作の内容とは似ても似つかないので、あくまでもインスパイアという程度で、実質オリジナルと言っていい。

主人公のルオナンは元々YouTuberで、待ちに待った娘との生活をビデオ日記にするという設定ではあるが、「そのシチュエーションでなぜカメラ回す?」ってジャンル的欠点は相変わらず。
だが、メッチャ面白いのでそこは目を瞑ろう。
映画の冒頭で流れるYouTube動画は、すでにドォドォの体に異変が現れ、虐待を疑われたルオナンが娘と共に逃亡中の段階。
彼女は6年前の過ちで受けた呪いによって、家族が自動車事故で全員死んだこと、その時のカメラを警察に持って行ったところ、警察官たちが次々と自殺してしまったことなどを語る。
そして、「祈りとは意志であり、意志の力で結果は変えられる」と、前記した呪文を娘のために一緒に唱えてほしいと訴えるところでビデオは終わる。
ここから映画は時間を遡り、数週間前のドォドォとの同居の開始と怪異の出現へ。
当局は、自分が呪いにかかっていると思い込んでいるルオナンには養育能力が無いと判断し、娘は養護施設で育っているのだが、ようやく一時的に同居する許可が出て、彼女はドォドォに“本当の名前”を教えるのだ(ドォドォは愛称)。
さらに進むと、全ての始まりとなる6年前の取材旅行の映像が紹介され、以降映画は複数の時系列を並行に語ってゆき、少しずつ核心に迫ってゆく。

状況の悪化と共に、小出しで呪いの謎が解かれてゆくミステリータッチは、まさに「リング」などのJホラーの醍醐味。
ルオナンたちは、アードンの祖父を訪ねた時に、大黒仏母の儀式を受けていて、仏母に自分の名前を捧げていたことが分かる。
その時、妊娠中だったルオナンは、期せずしてお腹の中にいる娘の名前まで、捧げてしまっていたのである。
その後、YouTubeのネタ欲しさに、大黒仏母の像が安置される絶対タブーとされる地下道に踏み行ったことで、地獄の蓋が開いてしまう。
娘がドォドォとして生きていた間は何も起こらず、彼女が自分の本当の名前を知った瞬間から、怪異が起こり始めるのはこのためだ。
この名前による支配は、ル=グウィンの「ゲド戦記」や「千と千尋の神隠し」にも通じる要素で面白い。
その後も道教の道士を頼るも返り討ちにされたり、チーミンが中国奥地まで大黒仏母の謎を探りに行ったりと物語は進行するが、事態は好転しない。

そしてついに、本作の本当の凶悪さが明らかにされる瞬間がやって来る。
この作品の何がヤバいって、モキュメンタリーの特性を生かして、画面のこっち側を思いっきり巻き込んで来るのだ。
再び、禁断の地下道に入った彼女は、視聴者に向けて「火佛修一心薩嘸吽(ホーホッシオンイー シーセンウーマ)」の呪文を一緒に唱えて欲しいと言う。
そして唱え終わった後に、「ごめんなさい、嘘をついた」と語り始めるのである。
大黒仏母の正体は、「仏」とは名ばかりの太古の邪神で、「火佛修一心薩嘸吽(ホーホッシオンイー シーセンウーマ)」は祈りの言葉ではない。
意味は「自らの名前を捧げて共に呪いを受ける」で、あまりにも強い仏母の呪いの力を薄めるため、唱えた人々に分け与えるための呪文だったのだ。
呪いの中心は仏母の顔で、それを凝視すればより強く呪われる。
そしてルオナンの傍には、顔を布で覆われた大黒仏母像が立っている。
彼女は、最初から全て知っていて、ドォドォが受けた大黒仏母の呪いを視聴者(つまり映画を観た全員)に分けることで、娘を救おうとしていたのである。
こんなの観たことない。
フィクションと知っていても、「なんてことしてくれたんだ・・・」と思わず呟いてしまったではないか。
事前に「ものすごく怖い」という評判を聞いて、太陽が輝く日曜日の昼間に観たのだが、夜中に一人で観てたら、マジで眠れなくなっちゃうだろ。
モキュメンタリー技法では、オンデマンド時代ならではの新しい切り口で、アジアのオカルトホラーとしても「哭声/コクソン」以来の秀作と言っていい。
はい、ではもう一度「火佛修一心薩嘸吽(ホーホッシオンイー シーセンウーマ)」と唱えましょう。

今回は、台湾から「金門高粱酒」をチョイス。
名前の通り、中国大陸と目と鼻の先、かつては中台両軍の激しい砲撃戦の舞台ともなった金門島で醸造されている。
58度もあるので、飲んだ瞬間喉がカーッと熱くなる。
こんな強い酒でもストレートで飲むのが一般的というから、酒豪が多い土地なのも頷ける。
お酒は、世界各地の文化で神への捧げ物だが、さすがの大黒仏母も、これで浄化できちゃうかもしれない。

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返校 言葉が消えた日 [ ツォン・ジンファ[曾敬□] ]
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ショートレビュー「モガディシュ 脱出までの14日間・・・・・評価額1700円」
2022年07月09日 (土) | 編集 |
守るべきは国の面子か?それとも命か?

1990年、ソマリア内戦の混乱で通信手段を断たれ、戦場の真っ只中で共闘した韓国と北朝鮮大使館員の物語を「ベルリンファイル」のリュ・スンワン監督が映画化した実録物。
当時両国は国連加盟を競っていて、50もの国を抱える広大なアフリカ大陸で支持を広げるために、どんどん大使館を開設していった。
ソマリアでも権謀術数を巡らせお互いを出し抜き、現地政府の支持を盤石にしようと画策する敵国同士だ。
だが現実の戦争を前に、彼らは国の面子のために死ぬか、命のために協力し合うかの二者択一を迫られるのである。

不勉強でこの話は知らなかったが、ソマリア内戦は30年以上経った今でも続いている。
本作で描かれたように、バーレ政権は倒されたが、今度は反政府勢力の内紛が起こり、アイディード将軍が実権を握る。
国連の調停を不服としたアイディード将軍は、なんと国連に宣戦布告し、アイディード派幹部を捕らえるために、モガディシュに派遣されたアメリカ軍も大きな被害を出して撤退する。
このモガディシュの戦闘を描いたのが、リドリー・スコット監督の名作「ブラックホーク・ダウン」だ。
その後、無政府状態になったソマリアは海賊の温床となり、日本を含む多国籍の艦隊が周辺海域を警備しているのはよく知られている。

内戦そのものは、1988年から続いていたのだが、モガディシュはバーレ政権が抑えていたため、この時までさほど混乱はしていなかった。
序盤は国連票を巡って両国が陰謀ゲームを戦わせているが、徐々に制御不能の暴力が大使館を取り囲み、気付いた時には身動き出来なくなっている絶望感。
反政府勢力は、バーレ政権を援助していた諸外国も敵視していたため、特に政権に取り入ろうとしていた韓国、北朝鮮の大使館は、彼らから“民衆の敵”として認識されてしまうのだ。
慌てて策を練ろうとするも、後の祭り。
これと同じことが去年のアフガニスタンや、今年のウクライナでも繰り返されたのだろう。
今までイキってきた政権側の人間にとっては立場逆転、何もしなければ殺されるだけなので、どちらも必死だ。

同じ国の国民同士が残酷に殺し合う事態に、“停戦中”の両国大使が衝撃を受ける描写は、さすがに真に迫っていた。
面子を捨てて合流してからも、長年の敵対関係があるので、何をするにしても裏があるのではないかとお互いに疑心暗鬼を募らせる。
キム・ユンソクとホ・ジュノが演じる大使は基本的に北も南も好人物だが、ナンバー2の参事官がどちらも治安機関出身者に設定されていて、対立構造の急先鋒。
彼らの関係の変化が、一つのドラマ的な見どころになっている。

そしてリュ・スンワンの本領発揮が、ラスト30分の“地獄のデスロード”だ。
総勢20人の大使館員と家族を乗せた4台の車が、銃弾飛び交う街を脱出までの中継地、重警備を誇るイタリア大使館まで突っ走る。
暴力が支配する街で、大使館員たちが“本”を繋ぎ合わせて、車を防弾仕様にするのが面白い。
まあ実際に重機関銃で撃たれたら簡単に貫通してしまいそうだが、人類の知性の結晶である本が、戦争という暴力に対抗する力となるのは象徴的だ。
怒涛のクライマックスは、おそらく盛ってある部分もあるのだろう。
しかし閉じこもって逃げ回るだけという、地味になりかねない展開を、一大エンタメとして成立させてしまう突破力が凄い。
分断国家ならではのハッピーとビターが半分ずつのラストまで、全く目が離せない。
30年前の歴史秘話だが、十分に現在の世界に響く物語で、観応えは十分だ。

今回は、韓国名物の悪酔い酒「爆弾酒(ソメク)」をチョイス。
世界に数ある蒸留酒のビール割りの韓国版。
韓国ドラマなどでよく見かけるスタイルが、チャミスルなどを入れたショットグラスを、ビールが注がれたジョッキの中に落とす。
まあ普通に焼酎を入れたジョッキに、ビールを注いで割っても同じこと。
バーボンなどと違って、韓国焼酎は淡白なので、味としてはほぼ酔いの早いビール。
飲み過ぎると本当に悪酔いするので注意。

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ショートレビュー「バズ・ライトイヤー・・・・・評価額1650円」
2022年07月06日 (水) | 編集 |
To infinity and beyond……

劇場公開は「2分の1の魔法」以来2年ぶりとなるピクサー映画。
この映画の成り立ちは、ちょっと独特だ。
世界初の長編CGアニメーション映画「トイ・ストーリー」の人気キャラクター、スペースレンジャーのバズ・ライトイヤーは、ある映画キャラのアクションフィギュアという設定だった。
今回はおもちゃのバズのルーツとなった架空の映画を、実際に作っちゃったという訳。
なので中身は「トイ・ストーリー」とは全く無関係の、ガチのSF映画だ。

主人公のバズは、深宇宙を探検する巨大な宇宙船のパイロット。
ある時、自分の判断ミスで宇宙船を不時着させ、貴重な燃料が破損。
1200人の乗員と共に、危険な生物がウヨウヨしている惑星に取り残される。
責任を感じたバズは、光速に至ることの出来る新しい燃料をこの惑星の資源で開発し、皆を地球に帰還させようとする。
この開発テストのために、バズは何度も何度も光速の壁に挑む。
すると、光速に近づけば近づくほど、物体の時間の進みが遅くなるウラシマ効果によって、パイロットのバズは若いまま、地上で彼を待っている人たちは年老いていく。

米国のSF作家、ケン・リュウの短編「母の記憶に」では、地球で暮らす娘のもとに、7年に一回母が訪ねてくる。
不治の病に冒され余命2年を宣告された母は、光速に近い速度で飛行する宇宙船に乗ることで娘の人生に寄り添おうとするのだ。
母の姿はずっと変わらないが、やがて娘は母の年齢を追い越して年老いてゆく。
本作では地上と宇宙の視点を逆転し、一人時の流れから切り離されたバスの視点で物語は進んで行く。
一緒に地球からやってきた1200人の乗組員は、いつの間にか全員他界し、基地の住人たちはこの惑星で生まれ育った世代になっている。
彼と同じ時間を生きるのは、猫型友達ロボットのソックス(演じるのは「アーロと少年」のピーター・ソーン監督。芸達者!)だけ。
それでも、バズはテストをやめようとはしないのだ。

そして遂に、光速を突破する新燃料が完成した時、物語は大きく動き出す。
未知の侵略者によって基地が攻撃され、バズはかつての相方の孫と共に、孤立無縁の戦いを強いられる。
責任に囚われて、自分だけの時間に引きこもったバズは、やっと皆と同じ時間で人生に向き合うい、責任の本当の意味を考えることになるのである。
時間SFとしての理屈の部分は、ちょっと「?」と思わないでもないが、キャラクターの人間的成長物語としては、ピクサー映画の例に漏れず、相変わらず良く出来ている。
侵略者の設定は、ちょっと懐かしのディズニーSF映画「ブラックホール」を思わせ、ロボットのデザインなどは、悪役ロボットのマクシミリアンを意識した形跡がある。
そう考えるとソックスも、あの映画のフレンドリーなロボット、ヴィンセントの変形か。
他にも様々なSF映画のオマージュが散りばめられていて、SF映画好きほど小ネタで楽しめるだろう。

しかしこの映画、十分に面白いのだが、興行的には各国で予想外の苦戦となっているらしい。
「トイ・ストーリー4」が100億の大台を超えている日本でも、公開初週の週末三日間の興行成績は1/4程度。
直接のシリーズではないと言っても、キャラクターの知名度を考えるとちょっと寂しい。
これはやはり、コロナ禍でピクサー作品ばかりを配信スルーしまくった結果、観客が「ピクサーは配信で観ればいいや」と考え、ブランド価値を自ら毀損してしまった結果ではないか。
今からでもいいから、配信スルーとなってしまった作品群を映画館で公開して欲しいものだ
ところでバズ役のクリス・エヴァンスは悪くなかったが、元々映画のキャラって設定なんだからティム・アレンのままでも良かったのでは。
内容的にだいぶシリアスだからイメージを変えたかったのかな。

今回は、ディズニーブルーの星空を思わせる美しい青いカクテル「ブルーラグーン」をチョイス。
ウォッカ30ml、ブルー・キュラソー10ml、レモン・ジュース20mlをシェイクして、氷を入れたシャンパングラスに注ぐ。
スライスしたレモン、オレンジ、チェリーを飾って完成。
辛口のウォッカ、ブルーキュラソーのほのかな甘味、レモンの酸味がバランスよく混じり合い、夏らしいスッキリした味わいを演出する。

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エルヴィス・・・・・評価額1700円
2022年07月03日 (日) | 編集 |
誰が、キング・オブ・ロックンロールを殺したのか?

2013年に公開された「華麗なるギャツビー」以来となるバズ・ラーマンの最新作は、史上最も売れたソロアーティスト、エルヴィス・プレスリーの伝記映画だ。
とは言っても、音楽史を描くストレートな物語ではない。
若き日のエルヴィスを見出し、彼の終生のマネージャーとなった男、トム・パーカー“大佐”をストーリーテラーとして、二人の関係を軸として展開する。
端的に言えば、狡猾な鵜飼に捕まってしまった鵜が、自由を求めて抗う物語である。
怪しげなプロモーターは、いかにして稀代の天才を支配し、搾取したのか。
悪役は珍しいトム・ハンクスが、嬉々としてパーカー大佐を怪演し、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でマンソン・ファミリーの一人、テックスを演じたオースチン・バトラーが、タイトルロールに大抜擢された。
9年ぶりの長編も、ラーマン節は健在。
冒頭から、めくるめく映像と音楽が津波のごとく押し寄せ、観応え聴き応え十分な159分だ。

1950年代、プロモーターのトム・パーカー大佐(トム・ハンクス)は、あるイベントで一人の若い歌手と出会う。
彼の名はエルヴィス・プレスリー(オースチン・バトラー)。
父親のヴァーノン(リチャード・ロクスバーグ)が服役し実家が困窮したことで、黒人地区で幼少期を過ごした。
その頃の体験から、彼の音楽は白人のカントリーと、黒人音楽のR&B、ゴスペルを併せ持った特徴を持っていた。
独特のダンスとエネルギッシュな歌に熱狂する女性たちを見た大佐は、マネージメント契約を結ぶと、全米を回ってエルヴィスを売り出す。
新しい音楽“ロックンロール”は瞬く間に絶大な人気を博すが、南部の州では白人のエルヴィスが黒人音楽のスタイルで歌うことが問題視される。
故郷メンフィスのラスウッド・パークスタジアムのステージに立ったエルヴィスだったが、会場は警察によって監視され、大佐もエルヴィスの逮捕を恐れていつものパフォーマンスを行わないように指示するのだが・・・・・


私的バズ・ラーマンのベスト
これはドルビーシネマで観るべき案件だったかな。
エルヴィス・プレスリーが亡くなったのは、私が小学生の頃だったので、リアルタイムでは彼の活躍した時代は知らない。
もちろん膨大な楽曲は聴いているし、映画も代表的な物は観た。
だがジョン・レノンと不仲だったとか、ベトナム戦争に賛成していたとか、晩年はずーっとラスベガスのホテルでディナーショーやってたとか、どちらかと言えば保守的な古い歌手というイメージだった。
昔メンフィスに行った時、やっぱこの町の名所と言えばということで、旧エルヴィス邸のグレイスランドも訪ねてみたけど、家そのものは典型的な南部の成金という感じだったのを覚えてる。
だがこの映画は、本当のエルヴィスがどんな人物で、なぜ保守的なイメージになってしまったのか、その人生の裏側を描く。

映画の視点は、基本的に剛腕マネージャーのパーカー大佐に置かれている。
エルヴィスの死から20年後の90年代のラスベガス、死の床にある大佐が、走馬灯の様にエルヴィスとの激動の人生を振り返る構造。
カントリー歌手の興行を取り仕切っていた50年代のある日、新人歌手のエルヴィスのステージを見て、即金の匂いを嗅ぎつけ契約。
公民権運動以前の当時の南部は、白人と黒人は厳格に分たれ、同じ街に住んでいても生活圏も異なり文化も違う。
しかし、エルヴィスは父の服役で実家が困窮し、家賃の安い黒人地区で育ったのである。
壁の穴から覗き見たダンスクラブで演奏されているR&Bの官能、そして教会で聞いたゴスペルによる陶酔体験。
これらのブラックカルチャーが、エルヴィスの独特の音楽性を形作り、誰も聴いたことの無い新しい音楽、ロックンロールの誕生に繋がる。

映画の前半は、新時代のスターとして台頭するエルヴィスが、黒人音楽がバックグラウンドにあるが故に、人種分離を叫ぶ白人保守派の標的にされる。
80年代頃の日本でも「ロックは不良の音楽」的な言説は残っていて、一部の保守的な人からは目の敵にされていたが、その根源がロックンロールの文化的ルーツと人種問題だったとは、なるほど物事は深読みしないと分からないものだ。
つまりあの頃ロックを吊し上げていた大人たちは、間接的にレイシストの主張を代弁していたことになる。
ブラックカルチャーを白人が取り込むことは、今ではネットの正義の戦士たちによって、文化の盗用と糾弾されそうだが、当時は逆の立場から排斥の対象になっていたのは興味深い。
幼少期に黒人地区で育った話や、大人になってからの黒人音楽界との関係も、断片的には知っていたが、こうして一本に繋がると非常に新鮮。
キング牧師やロバート・ケネディ暗殺に大きなショックを受けていたのも、正直なところエルヴィスのイメージからは意外で、いくつかの彼の楽曲の意味が自分の中で変わった。

後半は、いよいよ大佐による支配と搾取の構図が明確になり、エルヴィスの自由を求める葛藤が高まってゆく。
これは有名な話だが、パーカー大佐は実はアメリカ人ではなく、本名はアンドレアス・コルネリス・ファン・カウクというオランダからの密入国者。
それゆえに、彼は国籍もパスポートも持っていない。
エルヴィスが他のアーティストたちのように、世界ツアーを行わなかったのも、自称パーカー大佐が一度海外へ出ると、再入国できなくなるからだと言われている。
世界への夢を奪ったどころか、ギャンブル狂でカジノに莫大な借金があった大佐は、可能な限り自分のそばにエルヴィスを縛り付けておくために、ラスベガスのホテルと長期契約を結ばせてしまうのだ。
そう、30歳後半からのエルヴィスが音楽シーンのメインストリームから外れ、カジノのディナーショー歌手へと変貌してしまったのは、大佐の意向だったのである。
しかもホテルの名前が“インターナショナル”というのだから、もはやブラックジョーク。

人たらしのキャラクターを、トム・ハンクスが実に邪悪に演じていて素晴らしいのだが、エルヴィスもただ言いなりになっていたわけではない。
大佐はビジネスマンであって、音楽センスは全く無いのをいいことに、クリスマスのファミリーTV番組の企画を、勝手にロックショーへと魔改造
本作の見どころは、再現された数々のコンサートシーンだが、ロバート・ケネディへの追悼の意味を込めた、この番組のパフォーマンスは圧巻で、オリジナルを観たくなった。
またカジノでのディナーショーでも、新しいアイディアをどんどん盛り込んで、ゴージャスな一大エンタメに仕上げてしまうなど、やはりこの人はとてつもない才人だったのだなと思わせる。
しかし、結局どこまで行っても、エルヴィスは狡猾な大佐の“鵜”であることからは脱せないのである。
大佐は一族ごとがんじがらめにしていて、エルヴィスは家族を人質に取られ、彼に従わざるを得ない。
何度も独立できそうになっても、あの手この手の大佐の策略によって、すぐに搾取の構造に戻ってしまう展開に胸が痛くなる。

「ボヘミアン・ラプソディー」の大ヒットで、20世紀の偉大なミュージシャンの伝記映画が相次いで作られる様になったが、「あの栄光の裏では」的な作りになるのは本作を含めて共通。
しかし本作は、バズ・ラーマンならではのド派手な映像表現と、緻密に再現された圧巻のステージパフォーマンスと言ったテリングの未見性だけでなく、スーパースターとマネージャーの奇妙な依存関係を軸とした、不条理な人間ドラマとしても目新しく引き込まれる。
どんなジャンルでも、新しいものを生み出した人間は叩かれる。
エルヴィスは最初は社会の偏見と闘い、やがて世間に認められると、パーカー大佐という自らに巣食う怪物との闘いによって疲弊してゆく。
全ての経歴がでっち上げの大佐という虚構の男に、ラーマンの前作「華麗なるギャツビー」の主人公が重なる。
あちらは虚構の男ギャツビーが、現実の愛を切なく求める話だったが、こちらの虚構は肥大化する欲望によって愛に満ちた優しい男、エルヴィスを食い尽くしてしまう。
実にアメリカ的な寓話で、観終わってもずっと余韻が尾を引く。

今回は、ラスベガスのある「ネバダ」の名を持つカクテルを。
ホワイト・ラム40ml、ライム・ジュース10ml、グレープフルーツ・ジュース10ml、砂糖1tsp、アンゴスチュラ・ビターズ1dashをシェイクして、グラスに注ぐ。
ネバダは砂漠地帯のために乾燥が激しく、この環境で喉を潤すために考案された一杯。
柑橘のフレッシュな酸味とラムの相性がよく、飲みやすいカクテルだ。

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神は見返りを求める・・・・・評価額1700円
2022年07月02日 (土) | 編集 |
YouTuberラプソディー。

岸井ゆきの演じるポンコツYouTuberに、恩を仇で返された神のように優しい男、ムロツヨシがキレる。
昨年は「BLUE ブルー」「空白」と二本の秀作が公開され、演者を生かし切った脂の乗った演出で観客を魅了した吉田恵輔監督。
これは彼の作品の中でも、ダントツにストレートで分かりやすい風刺劇だ。
吉田作品の特徴でもあるダサイ、カッコ悪い人間たち
良きパートナーの関係から、激しく潰し合うまでになってしまう、この物語の二人の中心人物は、誰の中にもある人間のダメな部分を抽出したようなキャラクターだ。
人間だからこそ見返りを求めてしまう、田母神尚樹を演じるムロツヨシと、彼を裏切る女、河合優里を演じた岸井ゆきの、そして二人の間で有ること無いこと触れ回り、トリックスターの役割を果たす梅川葉を絵じた若葉竜也が素晴らしい。

とある合コンで出会った、 田母神尚樹(ムロツヨシ)と、コールセンターで働く河合優里(岸井ゆきの)。
彼女はダサイ動画ばかり配信するので再生回数が全く伸びない、底辺YouTuberでもあった。
イベント会社に勤める田母神は、優里を不憫に思い、自分のスキルを生かして彼女の動画制作を手伝うようになる。
優里も見返りを求めない田母神を頼りにし、人気は大して出ないものの、2人は良きパートナーとして力を合わせて頑張ってゆく。
しかしある時、人気YouTuberの番組に招かれたことがきっかけになり、優里がブレイク。
売れっ子のデザイナーやクリエイターがチームに入り、田母神の出番は無くなってゆく。
追い討ちをかけるように、田母神の人生を揺るがす出来事が起こり、彼はリッチになっていた優里に助けを求めるのだが、態度を豹変させた彼女は田母神を拒絶する。
恩を仇で返されたことにショックを受けた田母神は、暴露系YouTuberの“ゴッディー”を名乗り、優里いかに酷い女なのか、彼女を非難する番組配信をはじめるのだが・・・・


吉田恵輔の代表作の一つ「ヒメアノ〜ル」では、森田剛が怪演する森田正一というシリアルキラーが登場する。
ただし彼は生まれながらの悪人ではなく、元々は平凡で気弱な少年。
だが学生時代に凄惨なイジメを受け、耐えられなくなってイジメの主犯を殺してしまった。
この事件が彼の中に、もう一人の自分を目覚めさせてしまうのだ。
制御を失ったモンスターは、本能の赴くままに無関係の人々を殺しまくる。
映画は快楽殺人犯に決して共感は示さないが、負の連鎖によってモンスターになってしまった平凡な少年の、痛みと悲しみに寄り添い、強い憐れみを感じさせるのだ。
森田正一は極端な例だが、どんな人間にも、良い部分と悪いダメダメな部分がある。
例えば「馬車馬さんとビッグマウス」の、シナリオライターを目指す二人の主人公。
青春の全てを費やしても、ただの一回もコンテストに通らない女と、一本も書いてないのに、自分は天才だと豪語する男。
例えば「BLUE ブルー」の、同じ事務に所属する三人のボクサー。
誰よりも練習熱心だが試合では勝てない男と、才能豊かで強いけど体に爆弾を抱えた男、そしてなんちゃってボクサーのつもりが本気になってしまった男。
吉田恵輔の映画は、人間たちの中にある、どうしようもなくダサくてカッコ悪い部分、普通の生活では隠していたい部分をストレートに描く。
しかしそれゆえに、私たちは彼の映画の登場人物の中に自分を見て、深い共感を覚えるのである。

本作でダメダメな内面を曝け出すことになるのは、イベント会社に勤める中年サラリーマンの田母神と、底辺YouTuberの優里。
ムロツヨシ演じる田母神キャラクターが“一見いい人そうだけど、実は黒いものを抱えている”のではなく、掛け値無しの“本当にいい人”なのがポイント。
ごく普通のサラリーマンで、若い優里の夢に理解を示し、献身的に支える。
結構な時間と労力を割いているのに、お金を取るわけでもなく、むしろ彼女の起こした不祥事を解決するために、密かにお金を出したりしている。
その善意が向けられているのは優里だけではなく、別のある人物にも戻るあてのない金を貸してているのだから本物だ。
しかし誰にでも親切に、善意を与えることが、必ずしもその人のためになるとは限らない
田母神の行為は、結果的にある人物を破滅させ、優里を大いに勘違いさせる。

優しい田母神のことを神と慕いながら、優里は自分がブレイクすると恩を仇で返すのだ。
元々、彼女には何か特に表現したいことがあるわけではない。
YouTubeという、誰もが手っ取り早く発信者になれるプラットフォームと出会ったことで、とりあえずやってみたと言うレベル。
表現者としての矜持は微塵も無く、目立ちたい、有名になりたい、売れたい、という欲望だけが先走っている。
そこに田母神が入ったことで、なんとか見られるレベルにはなるのだが、欲望で動く優里は有名YouTuberの番組に呼ばれ、プチブレイクしたことで暴走。
彼女にぶら下がる者たちが現れると、表現の目的が無い番組はどんどん過激化する。
すると、彼女を常識の範囲に押し止めようとする田母神が邪魔になるのだ。

人間は一人では生きられない生き物だから、今見返りを求めなかったとしても「いつか困った時は助けてね」が前提。
それが果たされない時、善意は容易に悪意に変わる。
二人のバトルの周辺には、田母神の同僚で周りに悪い噂だけをふれまわるトリックスターの梅川や、二人を付け狙う懲罰系YouTuberの少年など、さまざまなキャラクターが蠢いているのだが、どの人物も「今までの人生のどこかで出会ったことがあるよね?」と思えるリアリティ。
人間あるあるの因果応報負の連鎖に、なんだか登場人物たちが皆んな可哀そうに思えてくる。
ライトセーバーみたいに、自撮り棒で戦うところは滑稽で笑ってしまった。
まあ優里がやっているのは、完全な善意の搾取だし、途中からとんでもない性悪に見えてくるが、そう仕向けたのは田母神だし、彼女には彼女の言い分がある。
だからこそどっちが悪いではなく、等しく罰を受けるのだが、二人とも感情移入キャラクターゆえに、観ていて「何でこんなことになったんだろうなあ」と哀しくなるのだ。
もし田母神が、最初から謝礼を受け取っていたら。
もし優里が、田母神が助けを求めた時、多少でも感謝の気持ちを表していたら。
もし梅川が、いらんことを吹聴していなければ。
もしスマホとSNSが、存在していなければ。
ある意味、誰でも発信者になり得る時代が生んだ哀しきバトルで、21世紀ならではの寓話的な狂騒劇
そしてやっぱり、世間はおじさんに厳しいことを実感。

今回は、二つの個性が混じり合ったら、危険なことになっちゃう話なので、「ボイラー・メイカー」をチョイス。
適量のビールを入れたグラスの中に、ショットグラスに注いだバーボンを落として完成。
米国のボイラー工場の労働者が、手っ取り早く酔っ払うために、ビールにバーボンを入れたのが発祥とされるが、韓国の「爆弾酒」をはじめ、類似のカクテルは世界中に存在する。
二日酔いは必至、取り合わせ注意な酒である。

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