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ショートレビュー「セイント・フランシス・・・・・評価学1700円」
2022年08月30日 (火) | 編集 |
夏に成長するのは、子供だけじゃない。

34歳お一人様、学歴も仕事も恋愛もすべて中途半端で、人生に迷いまくっているブリジットが主人公。
彼女は出産を控えたマヤとアニーのレズビアンのカップルに雇われ、一夏の間中間反抗期真っ最中の6歳の女の子、フランシスの世話をする“ナニー”になる。
ブリジット役のケリー・オサリバンが、売れない役者として悪戦苦闘していた20代、そして30代前半に中絶し、その資金のためにナニーとして働いた経験をもとに、オリジナル脚本を執筆。
現在の彼女の私生活のパートナーでもある、アレックス・トンプソンがメガホンを取り、見事な長編デビューを飾った。
2019年のサウス・バイ・サウスウェスト映画祭(SXSW)では、観客賞と審査員特別賞の二冠に輝き、予算が50万ドル未満の作品を対象とするインディペンデント・スピリット ジョン・カサヴェテス賞にもノミネートされた。
初夏の風を思わせる、爽やかな手触りの作品だ。

オサリバンは、グレタ・ガーウィクの「レディ・バード」を観て、「自分も書いてみよう」と思ったと言う。
なんて素敵な創作の連鎖だろうか。
本作のブリジットは、30代も半ばになるのに、自分が何者なのか、何をしたいのか分からない。
大学を1年で中退しているので、稼げる職には就けず、レストランのウェイトレスとして生計を立て、同じくウエイターで8歳下のジェイスとはダラダラしたセフレ関係。
35歳以上の出産は高齢出産と言われ傷つき、Googleで「35歳に何をする」なんて検索したりしてる。
そんなある日、知人に紹介されてフランシスのナニーになったことが、人生の転機となる。
レズビアンの両親のマヤとアニーは、まもなくマヤがフランシスの弟を出産予定。
どちらも母親だが、実際に産まないアニーは産休を取ることが出来ないので、産後しばらくはナニーが必要という訳だ。

マヤの出産と時を同じくして、ブリジット自身はジェイスとの子を中絶。
半端者の彼女は、経済的にも精神的にも、まだ親になる準備が出来ていないのである。
だがフランシスとの暮らしが疑似的な母親体験となり、同時にマヤとアニーの家庭を垣間見たことが結婚、出産、子育て、夫婦関係など、今までのブリジットが逃げてきた、人生のステップへの学びとなる。
どんな家族にも色々な問題が起こり、葛藤がある。
産後うつに陥って誰にも心を開けなくなるマヤと、そんな彼女にどう対処していいのか分からないアニー。
ギスギスして怒鳴り合う両親を見て、たった6歳のフランシスが「離婚」を心配する。
同性愛家庭のここまでリアルで赤裸々な葛藤は、映画では初めて見たかも知れない。
ブリジットを含めた三人の女性が心の内をぶつけ合う花火大会の夜のシーンは、本作の白眉だ。

中絶の影響で出血しやすくなり、文字通りに血を流して苦しんでいるブリジットは、無意識のうちに「30代の女性はこうあるべき」という社会の価値観に縛られ、自己否定に陥っているが、子供ゆえに率直なフランシスとの交流を経て、自分にもちゃんと長所があり、肯定してもよいのだと気付かされる。
こうして彼女は、一夏の間にフランシスに癒しと気付きを与えられ、マヤとアニーに学びを得て、感情に重きを置くミレニアル世代のジェイスとも、ちゃんと話をしようとし、ようやく人生の新しいステップに踏み出せるまでに成長する。
キリスト教保守派の運動によって、現在のアメリカでは中絶は国を二分するイシュー
本作でもタイトルに象徴されるように、ところどころにキリスト教的な要素が顔を出すが、その全てがきちんと抑制されたものなのも好感が持てる。
私は男性だから、生理や出産など実感としては分からない部分もあると思うが、観終わってじんわりとした余韻が尾を引き、それぞれに痛みを抱えた登場人物たちへの、大いなる共感に包まれる。
観客賞に輝いたのも納得で、多くの人に観てもらいたいと思える秀作だ。
おしゃまなフランシスちゃんが、生意気可愛いくて最高。

今回は、ブリジットの夜明けを祝して「ゴールデン・ドーン」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、カルバトス30ml、アプリコット・ブランデー30ml、オレンジ・ジュース30ml、アンゴスチュラ・ビターズ2dashを氷と共にシェイクし、冷やしたグラスに注ぐ。
グレナデン・シロップ5mlを、静かにグラスの真ん中に沈めて完成。
赤系のグレナデン・シロップが、朝焼けで黄金色の海から昇りつつある朝日というわけだ。
フルール系リキュールが豊富で、華やかな味わいの見た目オシャレな一杯。

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