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ブレット・トレイン・・・・・評価額1600円
2022年09月03日 (土) | 編集 |
誰も「運命」からは降りられない。

日本で予期せぬ事件に巻き込まれた、世界一運の悪い殺し屋ことコードネーム”レディバグ(てんとう虫)”の災難を描く、ブラッディーなアクション・コメディ。
彼は東京から京都へ向かう弾丸列車(ブレット・トレイン)から、あるブリーフケースを盗み出す任務のために乗車する。
しかしなぜか列車には、彼と因縁のある殺し屋の集団が乗り合わせているのだ。
伊坂幸太郎の「マリアビートル」を、「フィアー・ストリート Part 2: 1978」のザック・オルケヴィッチが脚色。
監督は、「デッドプール2」のデヴィッド・リーチ。
主人公のてんとう虫をブラッド・ピットが演じ、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、真田広之らが豪華なアンサンブルキャストを構成する。

何かと運の悪い殺し屋、てんとう虫(ブラッド・ピット)に与えられた任務は、東京発のブレット・トレインに乗り込み、ブリーフケースひとつを盗むこと。
それは、ごく簡単な任務のはずだった。
しかしそのケースは、日本の裏組織を支配するホワイト・デスの息子を、誘拐組織から奪還した殺し屋コンビ、レモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)とみかん(アーロン・テイラー=ジョンソン)が回収した身代金だった。
てんとう虫は持ち主を知らずに盗み出すが、殺し屋コンビは大慌てで車内を探しはじめる。
途中駅から乗車してきたウルフ(ベニート・A・マルティネス・オカシオ)という見知らぬ殺し屋に襲われたのを皮切りに、てんとう虫はなぜか次々に殺し屋たちに狙われる。
日本人の殺し屋キムラ(アンドリュー・小路)、毒を操る殺し屋ホーネット(ザジー・ビーツ)、そして正体不明の謎の女プリンス(ジョーイ・キング)。
誰もが降りる機会を失ったまま、列車はホワイト・デスが待つ、京都へ向かって突っ走る・・・


富士山が、名古屋と米原の間にある世界線(笑
新幹線ならぬ、ブレット・トレイン「ゆかり号」に、なぜか世界中から集まった殺し屋たちが乗り合わせる。
伊坂幸太郎の原作は未読だが、なるほどこれはデヴィッド・リーチが生みの親の一人である「ジョン・ウィック」的世界観を、細長い列車という密室に閉じ込めた構造。
お互い因縁のある濃い~キャラの殺し屋たちが一ヶ所に集まってるんだから、そりゃ事件が起こらない訳がない。

日本が舞台だが、コロナ禍で制作された本作、実際の撮影は全てアメリカで行われ、日本ユニットが撮影した実景を合成して作られている。
車内で殺し屋たちが暴れ回るって設定からして、「新幹線」の商標使用許諾は取れなかったのだろうが、あくまでもこれは別の世界線のブレット・トレイン。
デザインも微妙に違い、東京ー京都の間に何駅にも止まる、「こだま」に近い設定だ。
ポップで変な日本は、この作品の場合確信犯だが、エキゾチシズム優先で過去に散々描かれてきたフジヤマ、ゲイシャ、ニンジャ的な描写とは一線を画する。
最近でも「G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ」なんかはモロ旧路線だったが、本作の世界観はいわば日本アニメに出てるちょっとダークな虚構の日本を翻案し、実写化した様なイメージといえば分かりやすいだろうか。
「攻殻機動隊」の未来都市を思わせるネオンやLEDによる強烈な色彩は、デヴィッド・リーチがプロデュースした「ケイト」で描かれた東京とも共通するイメージなので、おそらくリーチの中で描きたい日本は、現実ではなくアニメの中の日本なのだろう。
作品のベクトルは思いっきり違うが、ジョーダン・ピールも「NOPE ノープ」の中で嬉々としてアニメオマージュをやっていたし、ゆるキャラなんかも含めて、日本製サブカルチャーのアメリカへのディープな浸透とリスペクトを感じる。

ブレット・トレインには、何人もの殺し屋が異なる思惑で乗り合わせている。
てんとう虫は、ブリーフケースを盗むイージーな仕事のため。
レモンとみかんは、ホワイト・デスの息子と身代金を京都に送還するため。
ウルフは、最愛の妻の仇をを殺すため。
ホーネットは、密かにブリーフケースを狙うため。
キムラは、プリンスに人質に取られた息子を救うため。
そして抜群の演技力で彼らを翻弄し殺し合いへと導く、トリックスターのプリンスは、秘められた野望のため。
特筆すべきは、それぞれのキャラクターの背景をきちっと描きこんでいること。
その人物が何者で、どういうバックグラウンドを持ち、なぜ列車に乗り込んだのか。
彼らの過去がいちいち面白く、物語に深度を与えているのである。
中でも「機関車トーマス」大好きなレモンは、何かにつけてトーマスのキャラクターを引用するのだが、これがまた上手いこと伏線として機能している。
唯一、物語上のキムラの位置付けがやや中途半端に感じたのだが、後から調べたら原作小説の主人公はてんとう虫ではなく、このキムラの方だった。
原作は未読なので、ハッキリとは言えないが、てんとう虫を主役にしたことで、キムラのポジションが曖昧になってしまったのかも知れない。

では彼らを乗せたブレット・トレインは何の象徴なのか。
これはもう「運命」だろう。
人生は一期一会を繰り返し、それぞれが複雑に絡み合っている。
全員の運命がこの一点に集まり、「降りられない」旅となり、終着点で待ち構えるのは避けられない死=ホワイト・デスだ。
陰謀と勘違いと疑心暗鬼が、作用と反作用のピタゴラスイッチの様になってキャラクターを動かし、騙し合いと殺し合いの結果、ある者は運命に負けて死に、ある者は運命に打ち勝って、新しい道を歩み出す。
血の量は多めではあるものの、タッチが陽性なんでそっちの耐性がなくても大丈夫だろう。
公共の列車の中というアクション映画には不向きな舞台を、逆転の発想で面白いシチュエーションにしてるのもいい。
関係の無い乗客のいる前では大っぴらには動けず、死体を生きてる様に見せかけたり、日本の列車は静かだというステロタイプを逆手にとって、「Quiet Car」なる車両をでっち上げ、てんとう虫とレモンがおばさんに怒られながら、静かに激しく笑顔でバトルするシーンなどはかなり可笑しい。
てんとう虫が平和に任務を終えたいので、拳銃を使わないという設定も、アクションのギミックを生み出すのに繋がっている。
キャラクターが多く相関図が複雑で、時系列があっちこっち飛ぶ構成ゆえ、ストーリーテリングはスムーズとは言い難いが、なかなかに未見性のある、ユニークな活劇に仕上がっているのではないか。
本作を観ようと思っている人は、「ザ・ロストシティ」と「デッドプール2」を観ておくと、キャラ絡みの小ネタでさらに笑えるだろう。

今回は、その名も「ジャパニーズ」というカクテルをチョイス。
コニャック60ml、ライム・ジュース15ml、オルジェー・シロップ15ml、アンゴスチュラ・アロマティック・ビターズ1dashを氷と共にシェイクし、グラスに注ぐ。
最後にレモンまたはライムのピールを飾って完成。
バーテンダーの神様、ジェリー・トーマスが1862年に著書の"How to Mix Drinks or The Bon-Vivant's Companion”でレシピを発表。
日本ではあまり知られていないが、160年の歴史をもつ伝統的なカクテルだ。
ベースのコニャックの甘味に、酸味と苦味が複雑に絡み合い、香りもいい。
1860年にアメリカを訪れ、大きな反響を呼んだ万延元年遣米使節団のサムライたちにインスパイアされたと言われている。

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