2022年09月07日 (水) | 編集 |
結婚とは・・・・。
不思議な手触りが印象的だった「心と体と」のイルディコー・エニェディの最新作は、1920年代のヨーロッパを舞台に、ハイス・ナバーとレア・セドゥが演じるある夫婦を描く物語。
年上の男と若い女性の、変則的なラブストーリーであると言う点は前作と共通。
169分もある大長編だが、例によって一筋縄ではいかない話で、ミステリアスな夫婦関係を巡る駆け引きは先を読ませず、なかなかに観応えがある。
物語の発端は、地中海のマルタに一隻の貨物船が入港したこと。
ベテラン船長のヤコブは、長年の不摂生から胃を痛め、船のコックから「結婚は健康に良い」と聞かされる。
すると彼は、カフェで友人と会っている時に、「次に入ってきた女と結婚する」と宣言。
レア・セドゥ演じるリジーに求婚し、そのまま結婚してしまうのだ。
お互いを全く知らぬうちに、突然始まる結婚生活。
しかもヤコブは一度航海に出ると、数ヶ月は戻らない。
最初のうちは亭主元気で留守がいい状態で上手くいってったが、ヤコブが船乗りを引退して陸に上がると問題発生。
交友関係が派手で、夜な夜な友人たちと会食する彼女が、デダンと名乗る若い遊び人の男と関係があるのじゃないかと気が気じゃない。
リジーもヤコブを愛してるんだか、愛してないんだか、浮気してるんだかしてないんだか、ずっと小悪魔的で思わせぶりな態度に終始する。
もともとお一人様生活でなんの問題も無かったのに、結婚なんて柄にもないことをしたヤコブは、だんだんと精神的に追い込まれてゆく。
彼の目線で描かれるリジーは正体不明の謎生物で、なんとか関係を維持しようと抗えば抗うほどダメージを負う。
海の上では危機管理バッチリのベテラン船長も、結婚生活の舵取りはビギナーそのもの。
しかも結婚のきっかけとなったコックに、彼の結婚生活のことを聞いてみると、イスラム教徒のコックには三人の妻がいて、彼の留守中は母親によって三人とも家に閉じ込められているという。
つまりコックにとっての妻とは、都合のいい時だけ使えさせる便利な家政婦のような存在。
ヤコブは、文化も生活も違いすぎて、全然参考にならない男の助言を受けて、衝動的に結婚したことを今更ながら知ることになる。
ギクシャクする夫婦仲を深めようと、物語の序盤と終盤、ヤコブは二度自分の航海にリジーを同行させようと試みるのだが、結局二度とも彼女は現れない。
一度だけ、移り住んだハンブルグの川で、ヤコブの操縦する借り物の小舟にリジーが乗るシーンがあるが、この船に乗る乗らないの描写は象徴的だ。
リジーは最初からヤコブと同じ船には乗っておらず、二人の接点は小舟の小旅行程度なのである。
どう見ても合わないのに、なぜそこまでして一緒に?と他人から見たら思ってしまうが、中年期までずっとお一人様で生きてきた海の男にとって、結婚は未知の領域。
一度経験してみたらすっかり魅了されるが、彼女の心はなかなか自分のものにならない。
初めて経験する困難に翻弄され、どう継続したらしいのかも、どう終わらせたらいいのかも分からないのだ。
完全に男性目線の物語で、古典小説を読んでいるような感覚になるが、物型の着地点は男性が自分の未熟さを認め、深い後悔の念を抱く話でむしろ現代的。
もしかしたらリジーとの間に授かっていたかも知れない、空想の息子に語りかける形で描かれる、ビターすぎる寓話劇だ。
今回は苦味を楽しむカクテル「カンパリオレンジ」をチョイス。
カンパリは、イタリアのバーテンダー、ガスパーレ・カンパーリが開発したリキュールで、独特の苦味が特徴だ。
氷を入れたタンブラーにカンパリ50mlを注ぎ、オレンジジュースを適量加えてステアする。
最後にスライスしたオレンジを一片飾って完成。
甘味と酸味、苦味が絶妙なトリニティを形作る、代表的なビター系ロングカクテル。
苦味が苦手な人は、カンパリを減らしてオレンジジュースを増やすと良いだろう。
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不思議な手触りが印象的だった「心と体と」のイルディコー・エニェディの最新作は、1920年代のヨーロッパを舞台に、ハイス・ナバーとレア・セドゥが演じるある夫婦を描く物語。
年上の男と若い女性の、変則的なラブストーリーであると言う点は前作と共通。
169分もある大長編だが、例によって一筋縄ではいかない話で、ミステリアスな夫婦関係を巡る駆け引きは先を読ませず、なかなかに観応えがある。
物語の発端は、地中海のマルタに一隻の貨物船が入港したこと。
ベテラン船長のヤコブは、長年の不摂生から胃を痛め、船のコックから「結婚は健康に良い」と聞かされる。
すると彼は、カフェで友人と会っている時に、「次に入ってきた女と結婚する」と宣言。
レア・セドゥ演じるリジーに求婚し、そのまま結婚してしまうのだ。
お互いを全く知らぬうちに、突然始まる結婚生活。
しかもヤコブは一度航海に出ると、数ヶ月は戻らない。
最初のうちは亭主元気で留守がいい状態で上手くいってったが、ヤコブが船乗りを引退して陸に上がると問題発生。
交友関係が派手で、夜な夜な友人たちと会食する彼女が、デダンと名乗る若い遊び人の男と関係があるのじゃないかと気が気じゃない。
リジーもヤコブを愛してるんだか、愛してないんだか、浮気してるんだかしてないんだか、ずっと小悪魔的で思わせぶりな態度に終始する。
もともとお一人様生活でなんの問題も無かったのに、結婚なんて柄にもないことをしたヤコブは、だんだんと精神的に追い込まれてゆく。
彼の目線で描かれるリジーは正体不明の謎生物で、なんとか関係を維持しようと抗えば抗うほどダメージを負う。
海の上では危機管理バッチリのベテラン船長も、結婚生活の舵取りはビギナーそのもの。
しかも結婚のきっかけとなったコックに、彼の結婚生活のことを聞いてみると、イスラム教徒のコックには三人の妻がいて、彼の留守中は母親によって三人とも家に閉じ込められているという。
つまりコックにとっての妻とは、都合のいい時だけ使えさせる便利な家政婦のような存在。
ヤコブは、文化も生活も違いすぎて、全然参考にならない男の助言を受けて、衝動的に結婚したことを今更ながら知ることになる。
ギクシャクする夫婦仲を深めようと、物語の序盤と終盤、ヤコブは二度自分の航海にリジーを同行させようと試みるのだが、結局二度とも彼女は現れない。
一度だけ、移り住んだハンブルグの川で、ヤコブの操縦する借り物の小舟にリジーが乗るシーンがあるが、この船に乗る乗らないの描写は象徴的だ。
リジーは最初からヤコブと同じ船には乗っておらず、二人の接点は小舟の小旅行程度なのである。
どう見ても合わないのに、なぜそこまでして一緒に?と他人から見たら思ってしまうが、中年期までずっとお一人様で生きてきた海の男にとって、結婚は未知の領域。
一度経験してみたらすっかり魅了されるが、彼女の心はなかなか自分のものにならない。
初めて経験する困難に翻弄され、どう継続したらしいのかも、どう終わらせたらいいのかも分からないのだ。
完全に男性目線の物語で、古典小説を読んでいるような感覚になるが、物型の着地点は男性が自分の未熟さを認め、深い後悔の念を抱く話でむしろ現代的。
もしかしたらリジーとの間に授かっていたかも知れない、空想の息子に語りかける形で描かれる、ビターすぎる寓話劇だ。
今回は苦味を楽しむカクテル「カンパリオレンジ」をチョイス。
カンパリは、イタリアのバーテンダー、ガスパーレ・カンパーリが開発したリキュールで、独特の苦味が特徴だ。
氷を入れたタンブラーにカンパリ50mlを注ぎ、オレンジジュースを適量加えてステアする。
最後にスライスしたオレンジを一片飾って完成。
甘味と酸味、苦味が絶妙なトリニティを形作る、代表的なビター系ロングカクテル。
苦味が苦手な人は、カンパリを減らしてオレンジジュースを増やすと良いだろう。

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