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すずめの戸締まり・・・・・評価額1750円
2022年11月15日 (火) | 編集 |
「セカイ」から「世界」へ。

「君の名は。」「天気の子」の連続メガヒットから3年。
新海誠の最新作は、災いをもたらす廃墟の扉を探す青年と、不思議な縁で結ばれた少女の日本を縦断するロードムービー。
運命の二人を襲うのは、隕石、異常降雨に続いて、今回は地震。
相変わらず映像は超絶に美しく、最初から最後まで見せ場も満載。
セカイ系オタクの血が暴走気味だった前作から、キッチリ“国民的映画監督”路線に戻してきて、見事に三打席連続のホームランをかっ飛ばした。
キャラクターデザインの田中将賀、音楽のRADWIMPSなどお馴染みの面々も再結集。
「君の名は。」の上白石萌音、「天気の子」の森七菜と、新海作品は若手女優の登竜門と化してきたが、今回主人公の岩戸鈴芽(すずめ)を演じるのは、「罪の声」で残酷な運命に翻弄される少女を好演した原菜乃華。
アイドルグループSixTONESの松村北斗が、「閉じ師」として日本各地の扉を閉める旅をしている青年、宗像草太を演じているが、二人ともびっくりするくらい達者。
映画作家としての新海誠の進化を感じさせる、鮮やかな傑作だ。
※核心部分に触れています。

17歳の岩戸すずめ(原菜乃華)は、叔母の環(深津絵里)と宮崎で暮らしている。
ある日、廃墟の扉を探しているという謎めいた青年、宗像草太(松村北斗)と出会ったすずめは、彼の後を追って山奥の廃墟を訪れる。
そこで一枚の古びた扉を見つけ、開けてみるとそれは、この世界ではないもう一つの世界へと繋がる「後戸」だった。
しかし扉の向こうは見えるだけで、入ることはできない。
すずめが扉の近くにあった不思議な形をした石を引き抜くと、石は猫の姿となって走り去った。
それは日本の地下に蠢く、「ミミズ」と呼ばれる巨大な力を封じている要石だった。
要石が抜かれたことによってミミズが動き出し、扉を閉じようとした草太は、要石が変異した猫(山根あん)によってすずめの母の形見の椅子の姿に変えられてしまう。
草太は猫を追って四国へ向かうフェリーに乗り込み、なりゆきですずめも行動を共にする。
猫がSNSで「ダイジン」と呼ばれ人気を博していることを知った二人は、写真を頼りにダイジンを探すのだが、そこにはまたしても後戸があった・・・・


めっちゃ面白い。
エンターテイメント度合いから言えば、「天気の子」を軽く超えて、「君の名は。」と双璧と言っていい。
知る人ぞ知るカルト監督だった新海誠を、国民的人気監督へと変貌させたプロデュースチーム、さすがの仕事だ。
少女と謎めいた青年の出会いから始まる物語は、アニメーション界のエメリッヒの面目躍如なスペクタクルな映像に彩られ、怒涛の勢いで展開する。
九州からフェリーで四国、明石海峡大橋を通って神戸へ、新幹線で東京、そしてさらに北へ。
カンのいい人なら、これらの土地の持つ意味も分かるだろう。
モチーフとなるのは、日本国民全員の心に刻まれた災害の記憶。
物語も終盤に差し掛かる頃、東北の海沿いの風景を見たある登場人物が「この辺て、こんなに綺麗な場所だったんだな」と口にする。
それを聞いたすずめは、黒く塗りつぶした日記帳の記憶と共に、訝しげに「綺麗?ここが?」と呟くのである。
さりげなく描かれているが、非常に重要なシーンだ。

九州で叔母と暮らしているすずめは、4歳の時に3.11の津波によって、母を失った元被災者なのだ。
今幸せではあるものの、彼女の心には2011年のあの日から、ポッカリと穴が開いたまま。
思えば、「君の名は。」の発想の原点も3.11だったが、公開時は震災からまだ5年と日も浅く、ファンタジーとして落とし込まざるを得なかった。
彗星の破片の衝突という、“想定外”の天変地異によって失ってしまったものを、時間の巻き戻しという禁じ手を使ってでも取り戻そうとする物語は、あの時の日本人の願望に近いものだったのかも知れない。
その3年後の「天気の子」は、たとえ世界が無くなったとしても、君と僕だけいれば生きていけるという話だった。
どちらもよく言えば前向き、悪く言えば浮ついた青臭い話だ。
しかし、今回はフィクションのそれでなく、そのものズバリ現実の震災がモチーフなので、核心の部分でファンタジーに逃げるわけにはいかない。

これは重要なネタバレなので、まだ観ていない方はこれ以上読み進めないで欲しいが、作中のすずめは後戸の向こう側、時間の概念の無い常世の世界で、後戸を開けて迷い込んでしまった幼い日の自分と出会う。
母を亡くしたばかりの四歳のすずめは、世界の残酷さに絶望し、カラフルだった日記帳を黒く塗りつぶし、もう帰ることのない母を探して彷徨い続けている。
成長したすずめは、悲しみのどん底にある過去の自分に、たとえ大切な人と二度と会えないとしても、この世界は生きるに値すること、人々は優しく、未来は輝きに満ちていることを伝え、母の形見の椅子を手渡すのである。
「天気の子」で描かれた、二人だけの「セカイ」から、多くの人々が関わり合う現実の「世界」へのシフト。
これが、この作品の核心だ。

後戸ができる場所も、以前は人々が住んでいたが、災害などで今はもう打ち捨てられてしまった廃墟というのも象徴的だ。
閉じ師が後戸に鍵をかけるときは、その場所でかつて暮らしていた人々の声を聞くのだが、それは同時に死者の声でもある。
「行ってきます」「行ってらっしゃい」日々の当たり前のやりとりをしたまま、永遠に会えなくなってしまった人々。
もちろん、一本の映画で全ての人の想いを掬い取れる訳もなく、映画で震災を描くことに拒絶反応を示す層も当然一定数いるだろうが、逆に救われたと感じる人も確実にいるだろう。
新海誠は喪失の記憶にきちんと向き合い、結果を出していると思う。
いくつかのシーンで、すずめの周りに二羽の蝶が舞っている描写があるが、東西の多くの文化で蝶は死者の魂を象徴する。
すずめの蝶は、亡くなった母や彼女を大切に思う人たちなのかも知れない。

前二作では共に神社が重要な役割を果たし、「君の名は。」の口噛み酒、「天気の子」の人柱と日本のアニミズム文化も深く絡むことで、フォークロアな要素も強かったが、今回フィーチャーされるのは要石だ。
物語の終盤に登場する東の要石「サダイジン」は、おそらく日本三大怨霊の一人、平将門だろう。
大手町にある将門の首塚は、動かそうとすると祟られるとの言い伝えがあり、映画化もされた荒俣宏の小説「帝都物語」では、将門の怒りが関東大震災を引き起こしている。
では「ダイジン」の方は?となると、サダイジンと違って作中にあまりヒントがないので悩ましい。
設定はされているはずなので、誰か分かった人がいたら教えてほしい。(※:Twitterで安徳天皇説を提唱してる方がいる。なるほど5歳で亡くなった安徳天皇なら仔猫の姿なのも納得だ。)
すずめが最初に見つけて、草太と共に閉じる後戸は、水が溜まった廃墟の中心に立っているが、これも「君の名は。」の宮水神社の御神体と同じく、水によって生と死の世界を分ける境界のイメージ

新たな要石となって常世に取り残された草太を、覚悟を決めたすずめが助けに行くのは、「天気の子」の男女逆転バージョンでもあり、新海誠の集大成というウリは間違ってない。
いやそれどころか、ジブリ作品をはじめ、作家の中にある全ての映画的記憶までもを巻き込んだ、お肉から海鮮まで全部入りの(いい意味での)闇鍋みたいになっている。
「星を追う子ども」の時点では、思わず苦笑してしまうくらいに、ルックも含めて宮崎駿オマージュの塊だったが、本作まで来るとジブリオマージュもディズニーオマージュも、誰が見ても新海誠というスタイルの中に、多少強引ながらうまく調和しており、作家としての成熟を感じさせる。

ところで、奇しくも同日公開となった「すずめの戸締まり」と「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」は、どちらも現実の喪失を色濃く反映した、メタ構造という共通点がある。
一人のスターの死と、多くが亡くなった大災害という違いはあるが、そこには実際に生きていた命があったことが映画からも強く伝わってくる。
また、ここ三年のコロナ禍の喪失を重ねて見る人も多いだろう。
コロナに感染して亡くなった人は、今日までに全世界で661万人。
日本では、生活習慣の違いや防疫が比較的うまくいっていることもあって、相対的に少ないものの、それでも47000人を超える人が亡くなった。
これは3.11の死者行方不明者、約18500人の倍以上の数字である。
それゆえどちらの映画も、ちゃんと完結してるのにどこかスッキリしない部分が残る。
心の奥底に石を抱えている様な感覚も共通するが、それは両作の作り手がきちんと喪失の意味に向き合ってるからだろう。
道筋は示せても、全てスッキリ爽やかに終われる訳がないのだから。

それにしても、劇場で驚いたのは客層の豊かさ、特に家族連れの多さだ。
「老若男女、これを観とけば間違い無い」っていう安心感。
そして観終わって開口一番、「面白かったー」という子供たちの声。
大ヒットを連発する、一部のアニメーション監督の強みはここだろうな。

今回は岩手を代表する地酒銘柄、陸前高田市の酔仙酒造の「酔仙 純米酒」をチョイス。
酔仙は東日本大震災の津波被害で工場を流され、壊滅的な被害を受けたが、見事に復活。
県内の大船渡市に新工場を稼働し、今もおいしいお酒を作り続けている、復興の象徴のような酒蔵だ。
こちらは豊潤な米の香りと味を堪能できる、飲み飽きないやや辛口の日本酒らしい一杯。
CPの高さも普段飲みには有難い。
ポテサラ入り焼きうどんを、つまみにして飲んでみよう。

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