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ショートレビュー「エゴイスト・・・・・評価額1700円」
2023年02月20日 (月) | 編集 |
愛とエゴは紙一重。

なるほど、「エゴイスト」とはいくつもの意味を持つ深いタイトルだ。
鈴木亮平が好演するファッション雑誌の編集者・浩輔が、宮沢氷魚演じる龍太と出会う。
当初は客とパーソナルトレーナーとしての関係。
しかし、やがて二人は恋に落ちる。
エッセイストとして活躍し、2020年に死去した高山真の自伝的小説を、「トイレのピエタ」の松永大司監督が映画化した作品。
原作未読ゆえ、予告編の印象からゲイのラブストーリーだと思っていた。
確かにその要素もあるけど、物語の半分だけなんだな。

保守的な田舎で育ち、14歳の時に母を亡くした浩輔は、逃げるようにして東京に出て来た。
いわゆる業界人として、マンションのペントハウスに住める程度に成功し「服は鎧だ」が信条。
ナイーブな心を鎧で護り、親しいゲイ仲間はいるが内心はあまり明かさない。
一方の龍太は母子家庭で育ち、家計を助けるために早くから働かざるを得なかった貧しい境遇。
パーソナルトレーナーの仕事も独学で、それだけで食べていけるほどは稼げていない。
彼らは共に恋愛対象が男性で、そのことを親に言えていないという共通点があるものの、社会的な地位や性格は対照的なのである。
二人が付き合いはじめても、すぐに障害が立ちはだかる。
生きてゆくために、龍太は10代の頃から売春をしているが、浩輔と付き合うことで罪悪感に苛まれるようになる。
そのために、一度は別れようとするのだが、浩輔は彼の愛を繋ぎ止めるためにお金を使うのだ。
月20万円で、浩輔が龍太の“専属の客”となる。

ここでまず第一の疑問。
浩輔が龍太のことを愛しているのは、間違いないだろう。
しかし、月のお手当を渡して自分のそばに置くことは、はたして龍太のためなのか?
愛を「無償で与えるもの」と考えれば浩輔の行為はまさにそれだが、実際には肉体を求め合い、しっかり見返りを得ている。
お互いに愛し合っていると言っても、側から見たら愛人をお金で囲うことと何も違わない。
日本映画が逃げがちな、男同士の赤裸々なセックスを描いた意味もここにある。
心と体は不可分で、「愛してる」と「抱きたい」も同じ。

そして物語の後半になると、彼はまた立場を変えて、同じことを繰り返す。
中盤で龍太をある悲劇が襲い、早すぎる退場を迎えると、浩輔は今度は阿川佐和子演じる龍太の母に対して「無償の愛」を与え続けるのである。
浩輔が思春期の葛藤真っ只中だった頃に、母親を亡くしているのがポイント。
彼は心からの愛ゆえに、擬似家族的な行為を貫くのか、それとも、失った大切なものを感じたくてやっているのか。
日本では、LGBTQは擬似的な家族しか作れないという現実も、このシチュエーションのシニカルさを際立たせる。
おそらく浩輔の中でも、自分のしていることは完全には割り切れていないだろう。
善意と偽善にも通じるが、利他と利己は表裏一体で与える立場、受け取る立場で見え方が違う。
エゴイストは別の方向から見たら真実の愛の人で、その逆もしかり。
人間の持つ多面性を象徴するような、複雑なキャラクターを演じた鈴木亮平が素晴らしく、キャリアベストと言っていい。

今回は、ちょっとビターな愛の物語なので「ビタースイート」をチョイス。
ドライ・ベルモット25mlとスイート・ベルモット25ml、オレンジ・ビターズ1dash、アンゴスチュラ・ビターズ1dashを、氷を入れたミキシンググラスで軽くステアし、グラスに注ぐ。
最後にオレンジピールを飾って完成。
名前の通りちょっとビターで甘酸っぱい、二面性を持つ味。
ほんのりオレンジの色合いも美しい。

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