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長ぐつをはいたネコと9つの命・・・・・評価額1700円
2023年03月25日 (土) | 編集 |
冒険魂を取り戻せ!

ゼロ年代に大ヒットした「シュレック」シリーズから、人気キャラクターの「長ぐつをはいたネコ」ことプスを主人公としたスピンオフ、11年ぶりの長編第二作。
無鉄砲な冒険快楽主義者のプスが、ネコの9つの命のうち既に8つを失ったことに気付く。
ビビって一度は引退するものの、もう一度命を全部取り戻すべく、全ての願いを叶えると言う、伝説の“願い星”の争奪戦に身を投じる。
プスと元カノのキティは、引き続きアントニオ・バンデラスとサルマ・ハエックが演じ、二人とチームとなるワンコにはハービー・ギレン。
他にもオリビア・コールマンやフローレンス・ピュー、レイ・ウィンストンら豪華な布陣が脇を固める。
監督は、長年ドリームワークスアニメーションで、ストーリーアーティストとして活躍したジョエル・クロフォードが務める。
前作を軽々と超える快作であり、ハリウッドには珍しいネコ愛全開のネコ派映画である。
イヌも可愛いけど。

幾多の冒険を生き抜いてきたプス(アントニオ・バンデラス)は、巨大なモンスターと戦った時に8度目の死を経験する。
目が覚めると、彼は医者から残された命が一つしかないことを告げられる。
プスは賞金稼ぎのオオカミ(ヴァグネル・モウラ)と戦い、敗北したことで死を恐れるようになり、マントとブーツを脱ぎ捨てて、医者に紹介されたママ・ルナの家でペットになることに。
平凡で退屈な日々を送っていたある日、ママ・ルナの家をゴルティ(フローレンス・ピュー)と三匹の熊の一味が襲撃し、プスはネコのふりをしているセラピードッグ志望のワンコ(ハーベイ・ギーエン)と逃げ出す。
どんな願いも叶えるという、“願い星”への宝の地図の存在を知ったプスは、元カノのキティ(サルマ・ハエック)とワンコと即席のチームを組み、悪漢“ビッグ”ジャック・ホーナー(ジョン・ムレイニー)から地図を奪う。
願い星で9つの命を取り戻そうとするプスと、彼らを追うゴルティ一味、ジャック・ホーナーの間で三つ巴の争奪戦が始まった・・・・


モチーフになっているネコの9つの命というのは、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の作中にも引用されているほどで、その謂れは一説には古代エジプトまで遡るという。
時に無謀な挑戦してクリアしちゃうからだとか、気まぐれにあちこちに出没するからだとか、理由はたくさんあるのだろうが、この故事をそのまんまの意味にとらえたアイディアが秀逸。
命を無くすことを軽く考え、冒険の旅を楽しんでいたプスは、命が残り一つしか残ってないことを知り、自分よりも強いオオカミと出会ったことで、途端に“死”がリアルなものとなって怖気付く
引退して平和で退屈な余生を送ることを決めるも、願い星の地図を“ビッグ”ジャック・ホーナーから奪うため、プスを使おうとするゴルティたちの襲撃を受けて結局流浪の旅に逆戻り。

ここからは願い星への地図を巡って、プスとキティとワンコの「長ぐつをはいたネコ」チーム、ゴルティと熊ファミリーの「三匹の熊」チーム、“ビッグ”ジャック・ホーナーの「ちびっこジャック・ホーナー」チームの三つ巴の争奪戦。
なるほど、前作からして西部劇オマージュ&パロディが満載だったが、本作は物語のベースとなっているのが、セルジオ・レオーネの「続・夕陽のガンマン」なんだな。
もちろん役割は大きく変わっているのだけど、三つの物語のチームがそれぞれ“the Good, the Bad and the Ugly”にあたるという訳。
願い星への宝の地図争奪戦を軸に、キャラクターが本来属する物語の持つテーマが、改めてクローズアップされる構図。

主人公のプスは渋ーい声のバンデラスを起用しているくらいだから、多分ネコとしては中年なのだろうが、中身は完全に厨二病。
虚栄心と承認欲求の塊の様なキャラクターで、カッコいい自分のことが大好き
家庭を持つと何かが変わってしまうのではと恐れ、過去にキティとの結婚式もすっぽかした。
そんなプスが人生に突然現れた“本当の死”に怯え、無茶な行動をできなくなったことで、過剰な自己愛から脱し、チームプレイを通して他人を愛し愛されることで生まれる、“信頼”という新しい価値観に目覚めてゆく。
大人だってきっかけと努力があれば変われるという、ミドルエイジの成長物語として非常に良く出来ている。

他の物語チームも、それぞれに葛藤を抱えている。
オリジナルの童話「三匹の熊」では、熊の家族の留守宅に入り込んだ少女ゴルティが、スープの熱さや椅子の硬さで「ちょうどいい」を見つけてゆくが、熊たちが帰宅したことに驚いて逃げて行ってしまう。
本作ではゴルティは孤児で、そのまま熊の家族の養女になっている設定だが、彼女自身は熊と人間が家族であることに違和感を感じている。
では、「ちょうどいい家族とは?」というのがゴルティの持つテーマ。

一方、サディスティックな悪漢“ビッグ”ジャック・ホーナーは、マザーグースの「ちびっこジャック・ホーナー」のパロディキャラクター。
「ちびっこジャック・ホーナーが 隅っこのところで クリスマスのパイを食べる 親指をパイに突き立てて 中からプラムを引っ張り出して 僕はなんていい子だって叫んだ」というごく短い詩は様々な解釈がされてきたが、一説には教会が国王への賄賂をパイに入れて送り、その中の一つから賄賂をネコババした男を描いた詩とも言われる。
本作のホーナーも強欲すぎる男として描かれ、目的のためには自分以外のあらゆるもの犠牲にするという、キッズムービーのヴィランとは思えないくらいのワル。
この救いようのないキャラクターには、どんな因果応報が訪れるのか?も本作のポイントだ。

ビジュアル的に面白いのが、見る者によって地図のルートが変わるというアイデア。
願い星を求めていない純真なワンコが見ると、誰でも行けるような簡単な道になるが、欲望をギラギラさせた他のキャラクターが見ると、その欲望を反映した難路となってしまう。
これで一本しかないルートが無限に増やせることになり、見せ場のバラエティを豊富にしている。
アクションの描写になると、キャラクターのモーションのコマ数を落とし、手描きアニメ調の質感になるのは同じドリームワークスの「バッドガイズ」でも見られたが、おそらくどちらも「スパイダーマン:スパイダーバース」の影響だろう。
昔のカートゥーン風味もあり、ドタバタ系のアクションにはフィットした手法だと思う。
また、キャラ立ちしまくった新キャラクターが続々登場する本作の中でも、執拗にプスを追い詰めるオオカミのキャラクターは一段抜けている。
願い星の争奪戦とは関係なく、プスの最後に残った9つ目の命を奪おうとするオオカミは、彼にとってはまさに迫り来る“死”そのものであり、克服しなければならない存在。
三つのチームが願い星に辿り着き、キャラクターぞれぞれの葛藤に決着をつけつつ、シリーズ屈指の最恐ヴィランと復活したプスとの対決は、大いに盛り上がるザ・クライマックスだ。
先日のアカデミー賞では、本作は「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」に敗れたが、こちらが受賞していても全くおかしくないくらい出来が良い。
さらなる続編を期待したくなるし、ラストシーンを見るとその可能性はありそう。
上映回数すぐ減りそうだから、なる早で吹替え版も観てみよう。

今回は前作でもチョイスした、「カルーアミルク」を。
カルーア40mlと牛乳80mlを、氷を入れたタンブラーに注いでステアし、最後にミントの葉を添える。
カルーアとミルクの分量はあくまでも好み。
甘くビターなコーヒーリキュールと牛乳のコンビネーションは、マイルドでとても飲みやすい。
因みにプスがミルク好きという設定は、西部劇のキャラクターが、酒場でミルクを注文してバカにされるという定番描写のパロディだが、1939年に作られたジョージ・マーシャル監督の「砂塵」で、ジェームズ・スチュワートが演じたトム・ディストリーJr.が元祖。
無法の西部で拳銃を持たず、酒場ではミルクを頼むトムは、周りからは軟弱者と思われているが、実は凄腕のガンマンなのだ。

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