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東京国際映画祭2023 まとめのショートショートレビュー
2023年11月02日 (木) | 編集 |
第36回東京国際映画祭の鑑賞作品つぶやきまとめ。

異人たち・・・・・評価額1650円
大林宣彦の映画、と言うより山田太一の小説「異人たちとの夏」の、舞台を英国に移しての再映画化。
脚本家の主人公が、生まれ育った街を訪ねると、幼い頃に亡くした両親の幽霊と出会う。
基本的には忠実な映画化だが、設定上の大きな変更は2点。
まず、こちらは夏ではなく冬。
英国にはお盆がなく、かわりに家族が集まる祝日として、クリスマスを持って来た。
もう一点は、主人公がゲイの設定で、このことで幽霊の両親とも確執を抱え、原作の桂にあたる新しく出会う恋人も男性。
これは主人公の抱いている、疎外感を強化するためだろう。
日本も英国も、身内の幽霊は怖く無い。
端的に言えば、心にしこりの様な孤独を感じていた主人公が、亡き両親とのつかの間の邂逅を通して、孤独の正体と自分自身を知って行く物語。
作中に登場するもう一人の幽霊の扱いと、物語の着地点が原作とも大林版とも相当異なっているのも、この世界は仮初めで、孤独は死者生者関わらず付き纏うと言うことか。
主人公の故郷が結構遠く(日本で言えば都心から埼玉くらい?)、行き帰りの電車のシーンが二つの世界の隔たりを効果的に表している。
丁寧に作られた心理劇で、怪談要素は殆ど無くなっているが、これはこれでオリジナリティのあるユニークな再映画化だ。

トニーとシェリーの魔法の光・・・・・評価額1600円
チェコ製の、とても愛らしい人形アニメーション。
電球のように体が光るという特異体質のトニーが、アパートに引っ越してきたシェリーと友達になり、ほとんどの大人たちには見えない、闇落ちした土地の精霊を助けようとする。
典型的な少年少女の冒険譚だが、中庭のある円筒形のアパートの中だけで展開する物語で、ワクワクするプロダクションデザインが素晴らしい。
比較的シンプルなプロットの中に、ルッキズムの問題や親離れ子離れ出来ない関係など、誰にでも覚えのあるリアリティのあるモチーフを盛り込み、大人も子供も幸せになるゴールを目指す。
まっくろくろすけの親玉みたいな、土地の精霊が可愛い。
監督のティーチインで、とても身近なところから物語の着想を得ているのが印象的だった。
「明る過ぎる髪の色」から、「体が光る」という発想がなぜ出てくる(・・?)

開拓者たち・・・・・評価額1600円
20世紀初頭のチリ。
富豪の地主に雇われ、開拓の邪魔になる先住民を殺して回る三人の男たちのロードムービーだ。
いわばチリ版「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」で、実話ベースの真面目な話だが、なぜかディテールにマカロニっぽさがある。
三人の一人は先住民とのミックスで、最終章以外は、殺す側と殺される側、両方の立場を持つ彼に視点が置かれている。
南半球の荘厳な自然と、その懐の中で描かれるとんでもなく愚かでおぞましい人間の行いのコントラスト。
男たちの旅を描く終盤までは、当時起こった事象。
数年後を描く最終章は、歴史をどの角度で残すのか?というエピソード。
120年後の現在からかなり皮肉っぽく俯瞰しているのだが、未来から見たら我々も同じでは?という問いかけにもなってる。
ある人物の表情を映し出す、ラストカットが秀逸。

ミス・シャンプー・・・・・評価額1700円
刺客に追われたヤクザの親分を、美容院の洗髪係が助けたことからはじまる、抱腹絶倒のラブコメ。
端的に言って、めちゃくちゃ楽しかった。
ちょっとおバカで愛らしいカップルの物語は、ギデンズ・コーのお笑いセンス全開。
主人公カップルが二人ともちょっとダメな人なのがポイントで、絶対応援したくなるキャラクターだ。
恋に落ちて腑抜けた二人の話に、ヤクザの抗争が上手く組み合わされ、大いに笑かしてちょっと切くお互いを想う、実にいい塩梅のラブストーリーが出来上がった。
あらゆるエピソードにキッチリとオチを付けてくるのも見事だが、適度な下ネタとバイオレンスをスパイスにした、あの手この手のギャグのバリエーションもすごい。
エンドクレジットの最後の最後まで、見逃せないし聴き逃せない。
監督はQ&Aでも質問に答えるというより、ひたすら面白いこと喋ってたw
日本公開がまだ決まってないそうだが、これは是非ともどこか買ってもらって、正式公開してほしい。
出来ればちょっとズレた正月映画としてw

ペルシアン・バージョン・・・・・評価額1750円
傑作!素晴らしい。
イラン系アメリカ人の大家族に生まれ、二つの文化の間で育った作者の自伝的な物語。
軸となるのは主人公と移民1世の母親との確執なんだが、この二人むっちゃ生き方パワフルで、実はそっくり。
お互い頑固で似てるが故に、なかなか認められない。
脚本家の主人公が、母を理解するために彼女の物語を書き始め、やがてそれは60年代のイランから半世紀に及ぶクロニクルになって行く。
そして主人公自身の身に起こるある事件を通して、母娘の大いなる共感の物語に着地するのだ。
登場人物が第四の壁を超えて語りかける、アップテンポなストーリーテリングが心地よく、いい意味でセンチメンタルな家族のドラマ。
なぜかマサラ映画風味のダンス演出も含めて、すごく楽しい映画だった。
作者と同じ様なバックグラウンドを持つと思われる外国人の観客も多く、Q&Aでも彼らが感情移入しまくってるのが感じられた。
やっぱり家族ものはほっこりして良いなあ。
これも早期の正式公開を望みたい。 
個人的、今年の東京グランプリ。

タタミ・・・・・評価額1700円
こんなにも重苦しく、息詰まるスポーツ映画を初めて観た。
イラン代表の柔道選手が、イスラエル選手との対戦を避けるために、イラン協会から棄権を命じられた実際のケースをモデルに、イラン出身のザーラ・アミールとイスラエル出身のガイ・ナッティブが、共同監督して作り上げた大変な力作だ。
権威主義政権が支配する国では、国民の人権も自由意志も、いかに軽視されるか。
生殺与奪の権を奪われ、自分が単なる国家の部品であると宣言された選手と、板挟みになるコーチ、それぞれの葛藤を試合と並行して描く。
実際のケースでは男性だった選手は女性に変えられ、スポーツの問題の限らず、ジェンダー差別の問題も内包。
終盤の選手のある行動は、マフサ・アミニさんの事件を反映したものだろう。
本作に関わったイラン人は全て亡命者だったため、ジョージアでの撮影も危険を考慮して大使館協力のもと、秘密裏に行なわれたという。
世界が二元論で語られる権威主義の世界観を表すBWの映像と、閉塞的なスタンダードサイズの画面。
亡命者たちの経験を取り込んだ、スパイ映画もどきの政権からの圧力描写など、細部に至るまでリアリティ満点だ。

ロボット・ドリームズ・・・・・評価額1650円
擬人化された動物たちが住む、80年代のニューヨークが舞台。
孤独な犬の主人公は、キットのロボットを作り親友(というかほぼ恋人)に。
ところがある事情で、二人は一年間も離れ離れになってしまう。
「ブランカニエベス」のパブロ・ベルヘルの、初アニメーション作品。
これは過ぎ去って行く「今」を、いかにして素晴らしい過去にして行くか?という映画で、実際にニューヨークに住んでいた、監督自身の記憶が反映されているそう。
アタリ・ポンのぼっちプレイを皮切りに、懐かしの80年代カルチャーが画面を埋め尽くす。
セリフは無いが、さまざまなシャレードを駆使し、巧みにキャラクターの感情を伝えてくる。
未来から自分の人生を振り返った時、幸せな時間は多い方がいい。
そのためには、今は捨てなくてはならないものもある。
可愛らしい絵柄で展開するのは、人生の喜怒哀楽を詰め込んだ一年間の思い出のカレンダー。
子供も楽しめると思うが、大人にこそグッとくる。
原作はサラ・バロンのグラフィックノベルで、読んでみたくなった。
ところで、出てくるキャラクターの名前が「ドッグ」とか「ダック」とか、基本的に種類名なのに、アライグマだけ「ラスカル」なのはやっぱオマージュ? 

西湖畔に生きる・・・・・評価額1600円
中国杭州を舞台に、茶摘みとして働く母親と、大学生の息子の物語。
まるで山水画の様な、美しい山村の風景の中で描かれる生活。
ところが、母親は仕事をクビになると、突然怪しげなマルチ商法の世界にのめり込んでしまう。
息子は必死になって母を取り戻そうとするが、組織から自己肯定感を刺激する手法で洗脳された母は聞き入れてくれない。
原題は「草木人間」。
冒頭と終盤の人と自然が調和した描写で、中盤の人間の欲望丸出しのドラマをサンドイッチした様な構造。
アプローチは相当変えてきたが、伝統的な暮らしと現代中国が抱える歪みのコントラストは「春江水暖」とも通じる。
主人公親子を演じる、ウー・レイ、ジャン・チンチンが素晴らしい。
人はなぜ、怪しさ満点のうまい話にころっと引っかかってしまうのだろうな。

エア・・・・・評価額1600円
息子アレクセイ・ゲルマンによる、第二次世界大戦中に実在した、旧ソ連の女性戦闘機パイロットたちの物語。
恐れ知らずに戦場に現れた彼女たちは、やがて戦闘や事故で次々と死んで行く。
物語の開始当初は、特定の主人公を置かない群像劇のスタイル。
しばらくすると、アナスタシア・タリジナ演じる、彼女たちの中でも特に複雑な背景を持つ、ジェーニャという女性にフォーカスし、以降は彼女が主役になる。
ジェーニャは過酷な戦場でさまざまな経験をして、多くの友人や愛するものを失う。
長い戦争を描く物語で、エピソードは狙って断片的。
この作りはNetflix版「西部戦線異状なし」にきわめて近く、いわばあの映画の女性版、空軍版。
低予算は明らかだが、空中戦の描写では視覚情報をほぼパイロットたちから見えているものに絞り、臨場感を得られる様に工夫されている。
明日が必ずあるとは限らない、戦場の無常感もよく表現出来ており、ぶっちゃけ現在進行形で侵略戦争してる国で、このような反戦に軸足を置いた映画が作れることに正直驚いた。
プーチン曰く、あれは戦争じゃなくて「特別軍事作戦」だからなんだろうけど。
いい映画だが、現実と映画の逆転が、どうしても皮肉に感じられてしまうのは仕方ないよね。
 
ロクサナ・・・・・評価額1600円
主人公はタイトルロールのロクサナではなく、車上荒らしにあって困っていた彼女を助けた、ちょっとダメな人だけど心の優しい青年フリード。
ロクサナに下心を出して、甲斐性無しなのに大きく出たら、実は彼女は訳アリで、ものすごく痛い目にあうことに。
もっともロクサナはロクサナで、もっとも酷い目にあうのだけど。
これ背景にあるのが、経済制裁の結果4人に1人は職が無いと言うイランの高い若年失業率。
だからフリードもプー生活だし、ロクサナも無理に無理を重ねて食い繋ぐしかない。
ある意味、シニカルなブラックコメディなのだが、イランでは体制批判すると、パナヒみたいに公開できなくなっちゃうし、下手すると投獄される。
そこで、あくまでも運の悪い若者たちの痛い青春と言う体裁にして、実際に苦しんでいる観客には、批判されている対象がちゃんと分かると言う寸法。
権威主義体制下では、映画作るのにもトンチがいる。
しかし相変わらずイランの刑法って、西側諸国の法体系と全く違うと言うか、全体にアバウト過ぎない?って思うのだが、これで一応社会が回るのがすごいな。
ロクサナ役のマーサ・アクバルアバディが、フリードが惚れちゃうのも納得の美人さん。

リンダはチキンがたべたい!・・・・・評価額1700円
本年度アヌシーの最高賞受賞作。
ママの勘違いで叱られたリンダは、罪滅ぼしとして亡きパパの味であるピーマン・チキンをリクエスト。
ところがストライキの影響で、町の店が全て閉まってチキンが買えない!
どうしてもチキンが食べたいリンダの執念がママを暴走させ、遂には団地の住民たちを巻き込んだ大騒動を引き起こす。
「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」が記憶に新しい、セバスチャン・ローデンバックが独創的なタッチで描き出すのは、小さな騒動が加速度的に大ごとになって行く、アナーキーなコメディだ。
ミュージカル風味もユニークで、悪ガキたちと大人気ない大人たちのドタバタ劇には大いに笑かしてもらった。
これは思い出に関する物語で、パパが亡くなった時に幼過ぎたリンダに彼の記憶はないけど、パパの作ってくれた料理の味は舌が覚えている。
彼女はピーマン・チキンを食べることで、パパが存在していたことを初めて実感する。
ギャグ満載だけど、それだけでは終わらない、リリカルで素晴らしい作品だ。

深海レストラン・・・・・評価額1650円
家庭の事情で深い孤独を抱えた少女・参宿は、乗っていた船から落ちてしまい、魚人たちが集う“深海レストラン”に迷い込み、奇妙なピエロの支配人・南河のために働くことになる。
「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」のティエン・シャオポン監督、この方熱烈な宮崎駿LOVEらしく、オマージュ満載で、それでいて未見性も凄い。
「ハウル」とか「ラピュタ」とか元ネタの面影はありつつも、中国伝統の墨絵アニメーションを、極彩色のデジタル技術で再解釈したような映像は、驚くべきクオリティで圧倒される。
でも、シナリオが破綻してる所まで、宮﨑駿に似せなくてもいいのにな・・・と途中まで思っていた。
実際中盤までは怒涛の映像津波に押し流されるが、全く緩急無く話的には何が起こっているのかよく分からない。
参宿と夏河、そんな絆深める所無かったやん!とか突っ込んでたら、終盤の大ドンデンで前半のとりとめのない展開を含めて、強引に納得させられてしまった。
ある意味で禁じ手なのだが、これをやられると何も言えない。
この辺りになると、ちょこっと「ライフ・オブ・パイ」も入ってくるが、最終的にはオマージュを超えて、独自性のある世界観に着地するんだな。
宮崎作品以上に、動き続けるゴージャスなアニメーション映像を堪能する作品だが、前半が観辛いのは確かなので、ここはもう少し落ち着ける時間が欲しかった。  

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