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鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎・・・・・評価額1750円
2023年11月28日 (火) | 編集 |
鬼太郎-1.0

水木しげるが創造した妖怪少年、ゲゲゲの鬼太郎が生まれるまでを描いたザ・ビギニング。
2018年から放送されたTVシリーズ第6期と同じ世界線で、原作の「墓場の鬼太郎」に繋がる前日譚だ。
舞台となるのは昭和31年(1956年)。
ある村に住む財閥一族の継承問題に巻き込まれた、というよりも自分から飛び込んだモーレツサラリーマンの水木と、行方不明の妻を探すゲゲ郎こと、体があった頃の鬼太郎のオヤジの物語が描かれる。
監督の古賀豪、脚本の吉野弘幸はTVシリーズにも参加していて、トンマナも統一されているが、レイティングの「PG12」が示すように、完全に大人向けのホラードラマ
人間の欲望の悍ましさを描くために、かなりインモラルな物語となっているので、年少者の鑑賞には注意が必要だ。
奇しくもほぼ同時期に公開となった、もう一つの昭和の巨大IP「ゴジラ -1.0」とは何かと共通点が多いのが面白い。
※核心部分に触れています。

昭和31年。
日本の政財界に大きな影響力を持つ龍賀一族の当主、龍賀時貞(白鳥哲)死去する。
帝国血液銀行に勤める水木(木内秀信)は、利害関係の深い龍賀製薬社長の龍賀克典(山路和弘)が新当主となるのを見届けようと、龍賀一族が暮らす哭倉村へ向かう。
村で水木は、克典の妻で時貞の長女乙米(沢海陽子)、二人の娘で東京に憧れる沙代(種﨑敦美)、時貞の次女の息子の時弥(小林由美子)たちと出会う。
一族が集う屋敷で、時貞の遺言が読み上げられるが、当主に指名されたのは水木の目論む克典ではなく、長男の時麿(飛田展男)だった。
その頃、哭倉村に怪しい風体の男が現れ、行方不明の妻を探していると言う。
水木は成り行きで、ゲゲ郎(関俊彦)と呼ぶようになった男の監視を命じられるのだが、時を同じくして龍賀一族の者が次々と何者かに殺される事件が起こる。
ゲゲ郎が禁足地とされている湖の孤島に向かったことを知った水木は、彼の後を追うのだが、そこは妖怪が跋扈する異界だった・・・・


戦後復興途上の日本、因習と欲望が渦巻く田舎の名家、そこに起こる人智を超えた怪異。
これはいわば「ゲゲゲの鬼太郎」+「犬神家の一族」+「ゴジラ -1.0」だ。
あまり知られていないが、鬼太郎とゴジラは同い年。
第一作の「ゴジラ」が封切られたのは、1954年の11月3日。
鬼太郎は「妖奇伝」に収録された「墓場の鬼太郎」が最初と思っている人が多いが、実は1954年に紙芝居のキャラクターとして初登場している。
両者に共通するのは、戦争の影である。
ケロイドの皮膚を持ち、放射能の炎を吐く初代ゴジラは日本人の心に忘れえぬ傷を残した原爆のメタファーだし、鬼太郎では戦争をモチーフとしたエピソード「妖花」(TV第6期では「妖花の記憶」のタイトル)がよく知られている。
水木しげるが、自らの体験をもとにした戦争漫画を数多く残しているのは言わずもがなだ。
共に来年が70周年という節目の年に、戦後世代によってリブートされたゴジラと鬼太郎が、戦争へと突っ走った日本への批評的視点という共通項を持って作られたのも縁を感じる。

神木隆之介が演じた「ゴジラ -1.0」の主人公は、特攻隊くずれである。
彼は特攻から逃げ、さらに不時着した大戸島でゴジラを撃てなかったことで、仲間を見殺しにしてしまい、深い贖罪の念に苛まれている。
一方、水木しげるは兵士としてニューブリテン島に送られるが、彼のいた分遣隊は敵の奇襲攻撃を受けて全滅。
水木しげるは数十人いた分遣隊たった一人の生き残りで、その後マラリアにかかって療養中に爆撃にあい、左手を切断する。
彼の無事を知った上官の第一声は「なぜ生きて戻った」だったと言う。
本作の主人公である“水木“も、二度の玉砕突撃を生き残ったという設定で、水木しげる本人の分身であることは間違いない。
二本の映画の主人公は、その背負っているものが重なるのである。
水木しげるが内地への復員時に乗ったのが、「ゴジラ -1.0」のわだつみ作戦の旗艦となる駆逐艦雪風なのも不思議な偶然だ。

かように、その成り立ちを含めて共通項の多い両作だが、明確な違いもある。
「ゴジラ -1.0」の舞台は、戦後間もない昭和22年。
復興はおろか、海外に展開していた日本軍や民間人の帰還も途上で、全てが混沌としていた時代に、戦争がゴジラの姿となって追いかけて来る。
そしてゴジラが銀座から永田町へ向けて放った、核爆弾に匹敵する威力を持つ放射熱線によって、戦争に責任のある勢力を根こそぎ葬ってしまうのである。
戦後すぐの時点で既存の権力構造が全てなくなり、生き残った民間人だけで新たな日本を再建するという別の世界線を作り出しているのが「ゴジラ -1.0」なのだ。
一方、「鬼太郎誕生」の舞台は昭和31年。
昭和27年のサンフランシスコ講和条約で日本は独立を回復し、この年の経済白書で政府は「もはや戦後ではない」と宣言した。
高度成長期へ向けたイケイケの時代の始まりであり、サラリーマンの水木も成り上がる気満々。
ゴジラが物語の力で理想化された“if”の戦後日本を作り上げたとすると、こちらは戦争を起こした澱んだ力が、復興の華やかさの地下に蠢いている世界観である。

その力の正体が、戦争を支えた龍賀一族に象徴される人間の欲望だ。
龍賀一族は、戦前から龍賀製薬を通して“M“と呼ばれる特殊な血液製剤を軍に供給していて、これは人間の肉体や精神を大幅に強化するある種の麻薬。
水木の勤める帝国血液銀行もMの製法を知りたがっていて、彼を哭倉村へと送り込む。
しかし、そこで水木が見たのは、欲望の果てに堕ちた人間たちの、あまりにも悍ましい秘密なのである。
鬼太郎の世界には、人間とは別に幽霊族という種族が存在している。
幽霊族は人類よりもずっと以前に地球を支配した先住民だが、穏やかな気質だったために後から出現した人類に追いやられて地下に暮らすようになり、たまに地上に出て彷徨う姿から、幽霊族と呼ばれるようになった。
鬼太郎や目玉のオヤジは、徐々に数を減らしていった幽霊族の最後の生き残りなのである。

幽霊族の肉体は強靭で、さまざまな超能力を持つ。
そこに着目した龍賀一族は幽霊族を捕まえ、その血からMを精製して売り捌いているのだ。
血を抜かれても、幽霊族はすぐには死なず、やがてその魂は深い怨念を抱いた妖怪・狂骨となるが、どんどん巨大化する狂骨を封印しているのが湖の孤島。
ゲゲ郎は、行方不明の妻が龍賀一族に囚われていると睨み、探しにやって来たのである。
龍賀一族はMの販売で巨利を得るだけでは飽き足らず、ここで書くことも憚られる悍ましい行為に手を染め、その結果として人ですらなくなりつつある。
水木とゲゲ郎の前に立ちはだかる最大の怪異が、人間の欲望が作り出したものだというのは非常に象徴的だ。

物語の軸となるのは、村の生活に嫌気がさし、東京へ逃げたいと願う龍賀一族の令嬢・沙代と、彼女を利用しようとする水木の物語で、そこに妻を探す鬼太郎親父の物語が絡み、おどろおどろしい村の妖怪伝説の真実、龍賀一族の謎へと収束する構造。
水木の物語には、「総員玉砕せよ!」をはじめとした戦争漫画の記憶が内包されていて、このツートラックは別の話でやりたいくらいに濃いのだけど、鬼太郎ビギニングに繋げるためには組み合わせるしかない。
そのために、キャラクターの感情の動きが、かなり急ぎ足になっている部分もあり、そこはちょっと勿体無い。
龍賀一族の中で、かろうじて感情移入キャラクターだった年若い沙代と時弥が消し去られると、人間の欲望を一身に集約させた様なボスキャラが、もはや怪獣化した狂骨を操り襲いかかる。
本作は怪異との対決をスペクタクルなアクションとして成立させながら、「ゴジラ -1.0」とはまた別の視点で、戦争に突っ走り戦後もその芽を残す日本の総括を試みる。
欲望という名の怪物に取り憑かれた人間は、自らを滅ぼすまで肥大して行くが、虐げられた幽霊族にとって滅びの中の希望となるのは愛の結晶としての鬼太郎誕生なのだ。
しかし、半分欲望に染まっていた水木にとっては、それは同時に呪いでもあるという非常にシニカルかつよく考えられたソリューションだ。
戦争と深く結びついた桜のイメージを、クライマックスで象徴的に使って来たのもお見事だった。
本作はあくまでも前日譚なので、鬼太郎自身は物語の括弧としてプロローグとエピローグに登場するに止まる。
TVシリーズは観ていなくても問題ないが、出来れば「墓場の鬼太郎」は読んでおいた方が味わい深く楽しめるだろう。

今回は鬼太郎コラボ酒、稲田本店の「純米酒 ゲゲゲの鬼太郎」をチョイス。
水木しげるが育った鳥取県境港市は、現在では鬼太郎たちの銅像が並ぶ水木しげるロードでも知られている。
稲田本店は同じ弓ヶ浜半島の米子市で、330年の歴史を持つ老舗酒蔵だ。
これは看板銘柄である稲田姫のバリエーションで、クセのない爽やかな香りと、五百万石らしいスッキリとした味わいのザ・日本酒。
これからの季節は海の幸と共に、ぬる燗でいただきたい。

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