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オーメン:ザ・ファースト・・・・・評価額1650円
2024年04月11日 (木) | 編集 |
痣の持ち主は誰だ?

70年代を代表するオカルトホラーの傑作であり、リチャード・ドナー監督の代表作の一つ「オーメン」の前日譚。
いかにして悪魔の子、ダミアン・ソーンはこの世に生を受けたのか。
1971年のローマを舞台に、カソリック教会内部に潜む恐るべき陰謀が描かれる。
運命に導かれるようにローマにやってくる、主人公のマーガレット・ダイノをネル・タイガー・フリーが演じ、謎の少女カルリータにニコール・ソラス。
オリジナルの登場人物でもあるブレナン神父をラルフ・アイネソン、他ビル・ナイやソニア・ブラガ、チャールズ・ダンスら重厚な布陣が脇を固める。
監督と共同脚本は、これが長編デビュー作となるアルカシャ・スティーブンソン。
同じく70年代を代表するオカルトホラーを、続編としてリブートした「エクソシスト 信じる者」は無惨な大失敗に終わったが、こちらは対照的に非常によく出来た前日譚だ。
※核心部分に触れています。

1971年。
アメリカの施設で育ったマーガレット・ダイノ(ネル・タイガー・フリー)は、ローレンス枢機卿(ビル・ナイ)に招かれてローマの教会にやって来る。
教会は身寄りの無い女の子たちを養育する養護院を運営していて、ノビシャド(見習い修道女)のマーガレットは、正式な修道服を身につける着衣式に向けて、ここで教師として働くのだ。
おりしもローマでは若者たちの左翼活動が活発化し、古くからの教会の権威は失墜しようとしていたが、マーガレットの信仰は揺らがない。
マーガレットは、カルリータ・スキアーナ(ニコール・ソラス)という心が不安定な少女と出会うが、彼女は他の子供たちとは孤立し、修道女たちからは厄介者扱いされていた。
自らも幼い頃に幻影に悩まされていたマーガレットは、カルリータを気にかけるようになる。
ある夜、宿舎で同室のルス(マリア・カバジェロ)から、儀式を受ける前に俗世の楽しみを経験した方がいいとディスコに誘われ、泥酔してしまう。
そんなマーガレットの前に、教会を破門されたブレナン神父(ラルフ・ネイアソン)が現れ、カルリータの周りで邪悪なことが起こり始めるだろうと、彼女に警告するのだが・・・・


オリジナルでは、謎に満ちたダミアンの出自を確かめるために、グレゴリー・ペックが演じた主人公のロバートらが、母親の墓を暴く描写がある。
棺に埋葬されていたのは、人間ではなく山犬。
つまり、ダミアンは人から生まれた子ではない、ということが示唆されていた。
ここから、どうやって話を作るのかと思ったが、これがなかなか上手く考えられている。
舞台となるのは左翼学生たちの抗議活動が続き、教会離れと価値観のパラダイムシフトが起きている71年のローマ。
混乱の時代性を怪異の背景とする手法は、ルカ・グァダニーノ版「サスペリア」にも通じる。
実際、禁欲的な環境で育ったアメリカ人女性が、左翼活動に揺れる異国の首都にやって来て、閉鎖的な集団(あちらでは女性だけの舞踊団、こちらではカソリック教会)に身を投じた結果、怪異に遭遇し自らの宿命を知る、という大筋のプロットはよく似ているので、インスパイア元の一つなのかも知れない。

しかし伝説的なアルジェント版とは似ても似付かぬ、グァダニーノの強烈な作家映画となっていた「サスペリア」に対して、こちらはオリジナルにリスペクトを捧げ、継承する正統派オカルトホラーだ。
なにしろ、オープニングがいきなりオマージュからはじまるのである。
ブレナン神父が古い教会にやって来ると、そこでは窓を取り替える作業中で、巨大なステンドグラスの窓が吊り下げられている。
もうこの時点で嫌な予感しかしないのだが、教会の中で密会したブレナン神父とハリス神父が外に出ると、お約束通りにステンドグラスが落下してくるのだ。
オリジナルでのブレナン神父の最後を知っている人には、もう「我が意を得たり!」なオープニング。
その後、マーガレットが登場してからはややスローテンポとなり、教会を中心とした世界観をじっくりと伝えてくる。

物語が動くのは、ルスに誘われたマーガレットが泥酔事件を起こし、謎めいた少女カルリータにシンパシーを深めてゆく頃。
カルリータは普通の人と違うものを見て、それを絵に描いていて、時に攻撃的になることから、周りからは浮いた存在。
そしてマーガレットもまた、幼い頃にカルリータ同様の経験をしてきているのだ。
特にミスリードも無いので、この時点で想像はついてしまうと思うが、マーガレットとカルリータは、二人とも「666」の痣を持つ人物
人間と山犬の交配で生まれた、悪魔の子なのである。
ただし、真の反キリストは男子でなければならないようで、二人は反キリストの母となるために人為的に作られた存在なのだ。

では誰が“反聖母”としての二人を作ったのかというと、これがカソリック教会自身なのが面白い。
ここで前半から地味に印象づけていた、時代性が生きてくる。
カソリック教会は、ローマ帝国の昔からその権威によって大衆を導き、時には王よりも強大な権力を誇った。
だが時代は移り変わり、人々は次第に信仰に興味を失い、教会に通う人も減った。
挙げ句の果ては、宗教を否定する左翼の台頭である。
カソリック教会の一部セクトは、古代から伝わる秘術を使い、まず反キリストの母を作り、次に反キリストをこの世に誕生させようとする。
世界を破滅に導く悪魔の子を見た世界は、再び教会の権威に服従するだろうという、ある意味究極の自作自演
教会を“悪”と定義する物語は、なるほど世界中の教会での性的虐待のスキャンダル明るみに出て、実際にカソリックの権威が失墜した現在ならではのもの。
だが元々カソリック教会は権威主義的でミソジニー体質なので、左翼活動への危機感とリンクさせることで、世界観は違和感なく機能している。
先述の「エクソシスト 信じる者」でも、カソリック聖職者はもはや悪魔を祓える存在ではないと格下げされてしまっていたので、教会への信頼の揺らぎというのは結構深刻なのだろう。

前半にはなんとなく匂わせている程度の、マーガレットとカルリータを巡る陰謀の謎解きは、中盤以降はミステリアスに進行し飽きさせず、ショックシーンは描写としては控えめながら、オリジナルを彷彿とさせるムーディーな演出はけっこう怖い。
あちらこちらにドナー版へのさりげないオマージュを組み込み、オールドファンにも目配りしつつ、オリジナルを知らない若い観客がこれ単体で観ても面白い作り。
最終的に、自らを作った偽りの権威への、反乱の物語となっているあたりも実に今風で、アルカシャ・スティーヴンソンは、デビュー作にしてとてもいい仕事をしていると思う。
また特筆すべきは「レ・ミゼラブル」などで知られる、イヴ・スチュワートが手がけた美術で、物語のほとんどが教会建築の中で進行するという重厚性の中に、悪魔的モチーフを潜ませたデザインワークは素晴らしいクオリティだ。

しかし仕上がりの良さとは対照的に、本作は興行的にはあまり上手くいっていないらしく、この後があるかどうかは未知数だ。
終盤の展開は綺麗にオリジナルに繋がっているが、旧シリーズには出てこなかった、“ある変数”の存在が明らかになるのがポイント。
続編があるとすれば、何かと評判の悪い「2」以降を無かったことにする形だろう。
できれば、スティーヴンソンの続投で実現して欲しいのだが、果たして?

今回は、キリストの血のようなフルボディのイタリアワイン、「ドン ルイジ リセルヴァ」の2016年をチョイス。
モリーゼ州の名門、ディ・マーヨ・ノランテがモンテプルチャーノで作られるこちらは、タンニンの渋味とフルーティーな甘味が好バランス。
絹のようなスムーズな喉越しで、複雑なアロマがエレガントな後味を作り出す。
お肉料理に合わせるとピッタリだろう。

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