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ショートレビュー「人間の境界・・・・・評価額1700円」
2024年05月18日 (土) | 編集 |
彼らは、人間ではなく銃弾。

2021年、ベラルーシのルカシェンコ政権が西側社会の混乱を狙い、中東やアフリカから大量の難民を集めてポーランド、リトアニア、ラトビア国境に送り込んだ。
背後で糸を引いたのは、ルカシェンコの後ろ盾でもあるロシアのプーチン政権とも言われるが、ヨーロッパへの最も安全なルートと宣伝されていたにも関わらず、西側の国境は固く閉ざされ、難民たちは夜は氷点下に気温が下がる極寒の森に彷徨うことになる。
監督・脚本は「ヨーロッパ・ヨーロッパ ~僕を愛したふたつの国~」「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」などで知られるポーランドの巨匠、アグニエシュカ・ホランド。
これは人間をそのまま兵器とした、銃声なき現代の戦場を描く問題作だ。

冒頭、広大な緑の森が映し出され、そこに英題の「Green Border」のタイトルが出る。
すると映像は徐々に色を失いモノクロとなり、かわりにタイトル文字が緑に染まってゆく。
以降、物語はモノクロの映像で展開するのだが、ドキュメンタリーを思わせるリアルなタッチで展開する映画は、何時、何処で、誰が、といった時事性が希薄に表現されている。
難民たちが彷徨っているのは、ポーランドとベラルーシの国境かもしれないし、別のどこかでもあり得る話なのである。

映画は「ヨーロッパ」「国境警備隊」「活動家」「ユリア」の四章構成で、それぞれシリア難民の一家と彼らと行動を共にするアフガン難民の女性、国境警備隊の若い隊員、人権活動家のグループ、そしてある出来事から活動家となる心理学者のユリアが軸となる。
難民たちはポーランドに入れば、国境警備隊からベラルーシに押し戻され、今度はベラルーシの警備隊にポーランド側に追い立てられる。
当然、これは難民の地位に関する条約に明確に違反する行為なのだが、ポーランド当局は国境から3キロ圏内を立ち入り禁止区域として活動家やジャーナリストを締め出し、事実上のグアンタナモのような法の保護が及ばない無法地帯とした。
社会から隠された国境で、難民たちの人権はポーランド、ベラルーシ双方から無視され、弱い者からどんどん死んでゆく。

難民たちを密かに排斥する当局側にも、理屈はある。
ルカシェンコ政権が難民を兵器として使って、ハイブリッド戦を仕掛けているのは明らかな状況。
国境の難民を無条件に受け入れれば、膨大な資金がかかり、社会はやがて混乱し、疲弊してしまうだろう。
特に国境付近の住民にとっては、突然着の身着のまま外国人の集団が自分たちの生活圏に侵入してくるわけで、トラブルが起こらない訳がない。
これこそルカシェンコの思う壺で、放たれた銃弾(難民)は、跳ね返さねばならないというのが、大義となる。
実際に越境した難民を拘束し、送還任務にあたるのは国境警備隊。
若い隊員が、自分たちのやっていることに疑問を募らせ、板挟みの苦しみを味わう描写もあり、描き方のバランスにも腐心している。

アグニエシュカ・ホランドホランドは、チェコスロバキアに留学中の若き日に“プラハの春”に遭遇し、活動家として投獄された経験もある。
だからなのか、基本彼女は活動家たちにシンパシーを感じていて、その中でも後半にフィーチャーされるユリアに自らの視点を置いているのは明らかだ。
本作に描かれる個別のエピソードはフィクションだが、脚本は綿密な取材を元に作られたという。
第一義的な悪が、人間を兵器に仕立てた上げたルカシェンコ政権なのは間違い無いが、映画はそれぞれの立場で翻弄される人間たちを通して、他に方法は無かったのか?と問いかける。
ここでは難民たちの入国を頑なに拒否するポーランド政府は、エピローグで描かれる翌年のウクライナ戦争で、数百万もの避難民を受け入れるのだ。
無論、隣国の戦争と遠く離れた国からの難民は同義ではなく、難民が発生した理由も異なる。
でも同じ人間として、明らかなダブルスタンダードがあるのも事実。
まあ当然ながら、非難されたポーランド政府は本作に激しく反発し、公的支援を受けている映画館に対して、本作の上映前に政府の主張を描いたビデオクリップの上映を義務付けたという(実際にはほとんど無視されたそうだが)。
傷付いた他者に対して、もう少し優しくなれないものかと語りかける75歳の老巨匠に、国家は沈黙したままだ。

今回はポーランド生まれのプレミアムウォッカ、「ベルヴェデール ウオッカ」をチョイス。
かつてのポーランド南部を支配したハプスブルグ帝国の、ベルヴェデール宮殿にちなんで命名され、ダンゴウスキー・ゴールド・ライ麦と、井戸から組み上げられた超軟水から蒸留される。
「007」のスペクター・マティーニの、オフィシャルレシピでも知られ、まろやかな口当たりが特徴。
色々な飲み方が出来るが、私的には冷凍庫でキンキンに冷やして、ちょっとシャーベット状にして飲むのがお気に入り。

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猿の惑星/キングダム・・・・・評価額1650円
2024年05月15日 (水) | 編集 |
星を継ぐものたちの神話、再び。

2017年に完結した、リブート版「猿の惑星」の新たなる続編。
最初に高度な知能を持ったチンパンジー、シーザーを主人公とした三部作は、前作の「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」で、猿たちを安全な約束の地へと導いたシーザーが、力尽きるところで終わった。
本作の物語は、それから長い歳月が流れ、何十世代も経過した未来を舞台とする。
シーザーの名を語る偽りの王、プロキシマス・シーザーに、部族の民を拉致された若きノアが、人間の女性メイと共に冒険の旅に出る。
監督は「メイズ・ランナー」シリーズのウェス・ボールにバトンタッチし、脚本は「宇宙戦争」のジョシュ・フリードマンが手がける。
前作までは稀代のパフォーマンスアクター、アンディー・サーキスがシーザーを演じたが、本作でノアを演じるのは「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」などに出演していた若手のオーウェン・ティーグ。
宿敵となるプロキシマスにベテランのケヴィン・デュラント、キーパーソンとなる知性を保った人間の女性メイを、フレイヤ・アーランが演じる。
※核心部分に触れています。

一族を約束の地へと導いたシーザーの死から300年後、猿たちは各地で素朴な文明を誕生させ繁栄していた。
数少ない人類の生き残りは、猿インフルエンザの後遺症で、知性を失って動物のように暮らしている。
鷲を育てて狩をするイーグル族の若者ノア(オーウェン・ティーグ)は、ある夜村を他の部族に襲撃され、父を殺され村の仲間を皆連れ去られてしまう。
仲間を探す旅の途中で、オラウータンの賢者ラカ(ピーター・メイコン)と出会ったラカは、シーザーの伝説を初めて知り、村を襲撃したのはプロキシマス・シーザー(ケヴィン・デュラント)を名乗る王の兵士で、彼はシーザーの名を利用する悪党だと聞かされる。
類人猿の世界を支配しようと目論むプロキシマスは、人類の残した武器を求めて、固く閉じられたシェルターの扉を開けるため、各地から奴隷として猿たちを拉致していた。
ノアは、プロキシマスの野望を阻止し仲間を救うために、同じシェルターから人類を救うあるものを取り出すために来た、知性を持った人間の女性、メイ(フレイヤ・アーラン)と共闘することを決めるのだが・・・・・


シーザー三部作と2000年後の未来を描く旧シリーズに至るまでの、中間的な時代設定。
このシリーズは、ずっと聖書のエピソードがモチーフとなっていたが、無垢なる存在ではなくなった猿たちの原罪を背負って死ぬことで、彼らの世界のキリストとなったシーザーが、300年後の世界では信仰の対象となっている。
一方で、プロキシマスのように、シーザーの名の持つ権威を利用して、猿たちを支配することに利用する者も出てくる。
”ノア”という主人公の名前が示唆する通り、これは猿の文明が数100年の歴史を持ち、シーザーがかつて掲げた猿の掟が形骸化した時代を舞台に、若者が生き方の理想を模索する物語だ。

人類の残した高層ビルの廃墟や巨大な船舶の残骸といった遺産が、樹木に覆われて新たな地形を形作り、そこを縦横無尽に飛び回る猿たちという世界観が圧巻。
デジタル技術はさらにブラッシュアップされ、もはや完全に表情豊かなチンパンジーが演技しているようにしか見えない。
この世界には馬や鷲、シマウマはいるが、犬や猫などの姿は見えないので、シーザー三部作のベースとなった旧シリーズの第四作「猿の惑星・征服」で描かれたように、猿インフルエンザから派生した疫病で死滅したのかも知れない。
またシーザーの時代の猿たちは、言葉を話してはいたものの、同族同士のコミュニケーションは手話的な非音声言語が主流だったのに対して、ノアたちの世代ではこの比率は逆転している。

基本的にシーザー三部作は、猿と人類の関係性を軸に展開する物語だった。
人間の科学者ウィル・ロッドマンによって、アルツハイマー治療薬ALZ112を投与されたシーザーは、急速に知能を向上させ、人間をも凌ぐまでになる。
そして人類文明の欺瞞に対して、猿の軍団による反乱を決行。
二つの種族はしばらくの間拮抗するが、やがて人類はより強力なALZ-113が変異した、猿インフルエンザのパンデミックによって衰退。
さらには猿インフルエンザの副作用は、人類から徐々に知性を奪い、シーザー率いる猿たちとの星を継ぐものを巡る争いに敗れる。
そして300年後の世界には、動物のように暮らす人類のグループがいるものの、もはや猿たちを脅かす存在ではないように見える。

だから本作のメインプロットは、シーザーの伝説は知らないものの、猿本来の素朴な文明に生きるノアと、悪い意味で人類の歴史にのめり込み、支配欲に取り憑かれたプロキシマスの、猿同士が体現するテーゼとアンチテーゼが核となる。
しかしこの時代にも、猿インフルエンザの影響を逃れ、知性を保った人間が少数生き残っていることも明らかになり、プロキシシマスは人間の学者のトレヴェイサンを囲って歴史の授業をさせている。
プロキシマスの狙いは、地下シェルターに残されている武器や情報などの人類の遺産。
なんとか固く閉ざされたシェルターを開けて、人類復活の可能性を断ち切り、自らの王国を磐石にしようと野心をたぎらせている。
本作は言わば、人類の遺産が残っていたことから生まれた、猿と人間かぶれの猿による戦いの物語である。
神話の解釈を捻じ曲げて、現在の権力のために利用するというのは、いかに現実にもありそう、というかあること。
当初は人によって作られた猿の文明が、創造主たる人類の轍を踏むのか、それともシーザー示した別の種としての可能性を追求するのかという文明観の対立であり、そこに人類復活の密命を帯びた、メイの存在が変数として絡む構造だ。
若者向けのライトなディストピアSFで売り出したウェス・ボール監督は、神話的重厚さを持つシーザー三部作を受け継ぎ、見事な結果を出している。

本作ではシーザー三部作から継続している要素も多いのだが、物語的には独立しているので、ここから観はじめても全然問題無し。
むしろプロキシマスの軍が人間狩りをやっていたり、生き残った人類が地下に隠れて生活していたりと旧シリーズを思わせる部分もちらほら。
特にシーザーの伝説を受け継ぐラカが、知能の低い人間だと思っているメイに、“ノヴァ”と言う名を付けようとし、彼女が突然言葉を喋りだす下りは、旧シリーズの第1作で、チャールトン・ヘストンが演じたテイラーが、猿たちの前で言葉を発して唖然とさせる描写を彷彿とさせる。
また、この描写は前作で明らかになったノヴァという名の起源を受けたもので、シーザー三部作と2000年後の旧シリーズを一本に繋げる役割を果たす。
なんとなく見覚えのある海岸のシーンでは、もしかして“アレ”が出て来ちゃうんじゃないかと、ちょっとドキドキしていた(笑
ところで地下基地の人たちは地上では防護服を着ていたが、つまり未だに免疫のない人類も残っているということだろうか。
地上で暮らせているメイやトレヴェイサンが、ある種のミューテーションということならば、もしかして原作版「風の谷のナウシカ」的なことをしようとしている?など次回作への興味は尽きない。
本作のような猿同士の話でも面白いのだが、やはり人間と猿という明確な対立軸があった方が、感情移入しやすいのも事実。
単体で綺麗に完結しているが、再び接点を持った二つの“星を継ぐもの”の物語はまだまだ続きそう。
“宇宙”がキーになりそうな、次回作がすごく楽しみだ。

人類文明の痕跡が、緑の森となっている本作には「照葉樹林」という、日本生まれの緑のカクテルをチョイス。
グリーンティーリキュール45ml、ウーロン茶適量を氷を入れたタンブラーに注ぎ、軽くステアする。
グリーンの色合いが美しく優しい味わいで、ウーロン茶の風味が相乗効果となってグリーンティーリキュールを引き立てる。
食前酒としても食後のデザートとしても楽しめる。

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青春18x2君へと続く道・・・・・評価額1750円
2024年05月12日 (日) | 編集 |
思い出のその先へ。

18年前の夏の日。
台湾に住む18歳の少年が、4歳年上の日本人女性に恋をする。
やがて長い歳月が流れ、36歳となった主人公は、告げられなかった彼女への想いを胸に、真冬の日本へと旅立つ。
原作になっているのは、ジミー・ライの紀行エッセイ「青春18×2:日本慢車流浪記」で、この本に日本ともゆかりの深い俳優のチャン・チェンが惚れ込み、自らエグゼクティブ・プロデューサーとなって劇映画を企画。
監督と共同脚本を務めたのは、「余命10年」で、ラブストーリーとの意外な相性の良さを見せた藤井道人。
主人公のジミーをシュー・グァンハン、ヒロインのアミを、藤井作品は「宇宙でいちばんあかるい屋根」以来となる清原果耶が演じる。
ジミーが旅の一期一会を繰り返す人々には、ジョセフ・チャン、道枝駿佑、黒木華、重松豊、黒木瞳といった主役級キャストが揃う豪華な布陣だ。
※核心部分に触れています。

2006年の台南。
大学進学を控えた高校三年生のジミー(シュー・グァンハン)は、夏休みのある日、日本人バックパッカーのアミ(清原果耶)と出会う。
二人は日本人の島田(北村豊晴)が経営するカラオケ店で、バイト仲間として交流を深め、やがてジミーはアミに恋心を抱く様になる。
だがある日、アミは帰国すると突然ジミーに告げる。
帰国前に二人は北部の十分で開かれるランタンフェスティバルに出かけ、ジミーが夢を叶えたら再会する約束をする。
やがて、18年の歳月が過ぎた冬の日、自ら作り上げたゲーム会社のCEOを解任されたジミーは、最後の仕事として日本へ出張することになる。
ずっと再会を果たせていないアミが生まれた街を訪ねることを決めたジミーは、東京から鎌倉、松本、長岡へ。
18年前の思い出を回想しながら、少しずつ彼女の故郷である福島の只見へと近づいてゆくのだが・・・・・


いやー、これはイイ!
久しぶりに、ロードムービーらしいロードムービーを観た。
大きな挫折を味わい、人生の岐路に立つ台湾の実業家のジミーが、18年前の高三の時に台南のカラオケ店のバイトとして一夏を共に過ごした初恋の人、日本人のアミの故郷を訪ねる旅に出る。

まずは高校生の頃大ファンだった「SLAM DUNK」の聖地、湘南へ。
そこからなぜか反対方向の長野の松本、そして新潟の長岡と大回りしながら旅を続けてゆくのだが、一期一会を繰り返す現在のジミーの道程と、18年前の出来事が絶妙にオーバーラップし、彼の人生の旅路を描き出してゆく。
松本では、看板に書かれた中国語に惹かれて入った居酒屋で、日本に移住した同郷の料理人のジョセフ・チャンと語らう。
長野から新潟に向かう飯山線では、かつてのアミようなバックパッカーの道枝駿佑と出会い、南国の台湾では味わえない「トンネルを抜けたら雪国だった」を実感させてもらう。
この時、ジミーは「まるで「Love Letter」の世界だ」と呟くのだが、これはアミと観に行った思い出の映画。
岩井俊二は台湾でも人気が高いそうだが、同じ初恋の切なさを描く本作は、ある意味藤井道人から大先輩に対するアンサームービーの様だ。
実際、本作はある意味「Love Letter」と、その精神的続編と言える「ラストレター」を一本でやったような作品と言えるかも知れない。
そして最後の経由地の長岡では、暇を持て余すネットカフェの店員の黒木華に、台湾でアミと行ったランタンフェスティバルの日本版に連れて行ってもらう。

しかし、旅を通してアミとの思い出に浸っているうちに、だんだんと不穏な感覚が強くなる。
ジミーはゲーム開発者として成功し、一度は夢を叶えたはず。
なのになぜ、二人は今まで再会していなかったのか。
これはもう途中で読めてしまうと思うが、18年後の現在にアミはもういないのだ。
若くして、長くは生きられない重篤な病を患ってしまったアミは、その命を燃やすように旅に出てジミーと出会ったのである。
当時のアミの思わせぶりな言動は、全て年下のジミーを傷つけないためで、この辺りは藤井道人自身の「余命10年」を内包する構造
出会いから数年後、アミが亡くなったことを知らされたジミーは、彼女の死に向き合う勇気が持てないまま、仕事に没頭。
挫折を味わうまで、ずっと遠回りしていたのだ。
ようやく辿り着いた福島の只見で、アミの母親の黒木瞳と初対面を果たしたジミーは、彼女からアミが生きた証として、あるものを託されるのである。

ミスチルの音楽や「SLAM DUNK」や「Love Letter」と言った、日台共通の世代のキーワードが、物語のエピソードとリンクして観客のノスタルジーをくすぐる。
藤井道人は1986年生まれの37歳だから、ジミーとは全くの同世代。
物語の中で愛されているものは、作者自身が好きだったものなのかも知れない。
同世代感が強い反面、文化的には近いながら、外国人の目で見る少しだけ視点の違う日本の情景も新鮮だ。
日本人同士でも、例えば都会で暮らしている人間が、雪国に行けば多少の驚きはある。
でも雪の降らない南国の人が、日本でも有数の豪雪地帯に降り立てば全く違う感慨があるはずで、ジミーのフレッシュな反応は「ああ日本てこんな風にも見えるんだ」と思わせてくれる。
シュー・グァンハンと清原果耶が素晴らしいのはもちろんだが、一期一会の登場人物がやたらと豪華なのもいい。
一点豪華的なキャスティングは、それぞれのキャラクターを生かしたもので、物語の要所要所で重しとなって、作品に品格を与えている。

それにしても「青春18x2」とは、素晴らしいタイトルだと思う。
これは、本作ともタイアップしているJRグループの「青春18きっぷ」をもじったものだろう。
実際はきっぷを買うのに年齢制限は無いそうだが、18歳の時にしか見られない風景もあれば、歳月を重ねて18x2=36歳だからこそ見える風景もある。
人生の岐路で迷った時、人は羅針盤が欲しくなる。
そんな時、思い出が行くべき道に導いてくれることもあるかも知れない。
ここで描かれているのは、人生の旅路を未来へと進むための糧となる豊かな過去。
切なくてピュアの初恋の記憶は、極めて普遍的。
世界のどこに持って行っても、誰もが共感出来るであろう物語で、藤井道人の新たな傑作だ。

今回は、時の流れによって熟成される台湾のウィスキー、「カバラン ディスティラリー セレクト No.1」をチョイス。
近年、少しずつ知名度が高まってきた台湾ウィスキーだが、カバランは台湾北部の宜蘭県蒸留所で2006年から蒸留を開始したブランド。
同社のシングルモルトの中では、比較的お求めやすい価格のディスティラリーセレクトNo.1は、バニラとトロピカルフルーツを思わせるアロマと、滑らかな口当たり。
味のバランスはよく、とても飲みやすい。
適度に軽いので、夏にはハイボールにしても美味しいと思う。

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ショートレビュー「悪は存在しない・・・・・評価額1700円」
2024年05月08日 (水) | 編集 |
この驚くべきシンプルさよ。

舞台となるのは、長野県の水挽町という架空の町。
この自然豊かで山深い土地に、便利屋の巧と小学生の娘の花が静かに暮らしている。
大美賀均演じる巧は、薪を割り、沢で水を汲み、自然と共生しながら日々を送り、花は学校と家との間に広がる広大な森を歩いて帰る。
ところが、近くの森にグランピング場の開発計画が持ち上がる。
芸能事務所がコロナ禍の補助金欲しさに、コンサル企業を雇って立ち上げたものだが、当然全くの異業種。
説明会で明らかになった計画の杜撰さに、住民は戸惑いを募らせる。
この設定からは、田舎の地元住人と都会からの移住者の対立を描いたロドリゴ・ソロゴイェン監督の「理想郷」の様な物語を予想してしまうが、そっちの方向には行かないのだ。

もちろん、ここには都会と田舎とか、企業と個人、自然と共生する者と利益を追求する者などの分かりやすい対照性が透けて見えるが、結局そこにいるのは人間。
濱口竜介は、イージーな対立関係は描かない。
説明会で、住民たちの容赦ないツッコミに、しどろもどろになった芸能事務所の担当者たちは、自分たちの計画がいかにいい加減なものだったのかを反省し、改善しようとする。
すでに補助金を申請していることから、着工する期日は守らねばならず、板挟みになった二人は葛藤を募らせる。
芸能事務所の社長、いい加減な計画を作ったコンサル会社はネガティブな描かれ方をしているが、彼らとてコロナ禍で売り上げが落ち込む中、なんとか自分の食い扶持を確保しようとしているに過ぎない。
人間同士の関係は、白黒二元論で語るのは不可能で、全てグレー
立場を変えて眺めれば、明確な悪は存在しえないし、逆説的には明確な善も存在しないということになる。

普通の娯楽映画では、テーゼとアンチテーゼが打つかり合い、新しい価値観ジンテーゼが導き出されるが本作はそうでは無い。
そう言った意味ではかなり異色の作品だが、実はこの映画、企画が成立した経緯自体がちょっと変わっている。
アカデミー国際映画賞に輝いた「ドライブ・マイ・カー」で、音楽を担当した石橋英子が、ライブパフォーマンス用の映像制作を濱口に依頼。
しかし彼はその様な仕事をした経験が無かったので、石橋と話し合いを続けた結果、物語的な映像を欲していることが分かり、一本の長編映画として本作を仕上げた。
本来のライブパフォーマンス用の映像は、本作から再編集されて、東京フィルメックスで石橋のライブと共に上演された、73分の「GIFT」という作品になった。

劇映画の本作では、106分の上映時間の大半が、長めの会話か自然描写で占められているが、冒頭の4分間の森の木々を下から見上げた映像から始まって、誰の視点なのか困惑させるようなショットが多数。
不穏さを感じさせる石橋英子のスコアと合わせて、印象的に使われているこれらのショットに、観客が何を見るかが本作のキモだと思う。
水挽町は戦後の農地改革の時代に開拓された土地という設定で、巧自身が開拓三世だと語る様に、割と新しい時代に移ってきた住人が多く、いわば誰もがよそ者。
昔からの住人と言えるのは、森に住む物言わぬ動物だけだ。
だが町では鹿猟が行われ、グランピング場は鹿の通り道を横切る計画。
「もののけ姫」を例に出すまでもなく、日本において鹿は古来から神の使いとされ、自然の視点では地元の住民も芸能事務所の人間も変わりはない。
ラストの不可解とも見える展開に関してたも、作者の中ではちゃんと筋を通してあるのだろう。
グレーだった人間同士の関係から、ある理由で静かな存在だった自然が突然牙を剥き、バランスを担うものを自負していた巧をも翻弄し、自然と人間という不可避な対立関係に急展開。
途中をすっ飛ばすかのような、ダイナミックなシフトチェンジには参った。
さらに細かい部分も色々解釈したくなるものの、ここはあまり“正解”を求めるのも本末転倒な気がする。

キーパーソンの巧を演じる、大美賀均がいい。
演出部・制作部の人で本職の俳優ではないそうだが、「ドライブ・マイ・カー」の西島秀俊と同様、棒読み気味の台詞回しがかえってリアリティを強め、朴訥なキャラクターは説得力抜群だ。
本作に限ったことではないが、濱口竜介の映画ではしばしば本職の役者以外の人が起用されるが、まるで生まれた時からこのコミュニティで暮らしている人に見えるのは、まさに濱口マジックだ。
生と死が混じり合う幻想的な森の世界で見えてくる、人と自然の寓話である。

今回は撮影が行われた八ヶ岳の地ビール、八ヶ岳ブルワリーの「ファーストダウン」をチョイス。
人生最高の一杯目を目指して開発されたというこちらは、地元ブランド米の「梨北米」とカナダ産麦芽から作られるラガービール。
特徴は非常にまろやかな喉越しで、フワッとしたホップのアロマが鼻に抜ける。
軽めなので、確かに一杯目にはピッタリかもしれない。

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マリウポリの20日間・・・・・評価額1800円
2024年05月05日 (日) | 編集 |
戦争は、静寂と共に始まる。

全てが凄まじい。
今、是が非でも観るべき映画があるとすると、これ以外には無いだろう。
本年度アカデミー賞、長編ドキュメンタリー部門受賞作品。
2022年2月24日、ロシアの侵略によるウクライナ戦争が勃発する。
この時、アゾフ海に面したウクライナ南東部の要衝、マリウポリに入ったミスティスラフ・チェルノフ記者らAP通信の取材チームが撮影し、命懸けで持ち出した20日間の記録だ。
1985年生まれのチェルノフは、地元のハリコフ通信のカメラマンとしてキャリアをスタート。
やがてAP通信のジャーナリストに転じ、マイダン革命、ドンパス紛争、マレーシア航空機17便撃墜事件といったウクライナ国内の出来事、シリア内戦やベラルーシの不正大統領選挙など世界中の事件を報道してきた。

ウクライナに対するロシアの侵略は、2014年には始まっていた。
マイダン革命で親露派のヤヌコヴッチ政権が倒れると、東部のドンパス地方で親露分離勢力とのドンパス戦争が始まり、南部ではロシア軍がクリミア半島を掌握し、一方的に併合する。
以降ずっと紛争状態にはあったが、それでも戦いの舞台は国土の一部に限られていた。
黒海以西のヨーロッパでは、90年代の旧ユーゴスラビア紛争以来、国家対国家の全面戦争は起きていない。
国境沿いに軍を配置するなどのロシアの行動は、おそらくウクライナ国民から見ても、ゼレンスキー政権に対する牽制であって、全面戦争に打って出るとは思ってもみなかっただろう。

突然の戦争にパニックになる市民に、記者は民間人は攻撃されないので家に帰るように諭すが、自らの言葉をすぐに後悔することになる。
ロシアの攻撃は、軍だけでなく無差別に市民を襲う。
住宅街だろうが、繁華街だろうがお構いなしで着弾する。
明確に国際人道法に違反した行為だが、そもそも独裁体制のロシアは法治国家ではないゆえ、尊法意識が希薄なのか「法?何それ」と全くどこ吹く風。
2022年の3月にウクライナ軍が奪還したプチャの街で、1400人を超える市民が、ロシア軍によって処刑されていたことが明るみに出て、世界に衝撃を与えた“プチャの虐殺”の戦争犯罪は記憶に新しい。

ロシア国境に近いマリウポリは、前進するロシア軍に包囲され、毎日のように状況が悪化しているのは目に見えて分かる。
開戦当初は、戦争が始まったと伝えられるだけで、何も起こらない。
だからこそ、記者は市民に家に帰るように言ったのだが、すぐにロシア軍の空爆が始まり、住宅地が次々に破壊される。
やがて街の外から大砲の砲撃の音が聞こえ始め、やがて「タタタ」という機関銃の乾いた音が混じる様になり、遠くにあると思っていた戦場が、急速に近づいてくる。
AP通信以外の外国通信社の特派員たちは、手遅れになる前に脱出。
取材チームは、人道回廊の設置に一縷の望みをかけてマリウポリに残るが、電波状態も日に日に悪化し、市内の一部でしか携帯の電波が届かなくなる。
記者は途切れ途切れの電波を拾って、撮影した映像を少しずつ送る。
戦火のマリウポリのからの迫真の映像は、世界中のニュース番組で流れ、実際私も見たことのあるシーンが多数あった。
しかし状況は悪化し続け、ついに「Z」のマークが描かれたロシア軍の戦車が目の前に姿を現し、砲塔をこちらに向けてくる。

取材チームが特にフィーチャーするのが、市内の病院だ。 
病院は国際人道法で、戦時下でも特別な保護を受けるとされる施設
にもかかわらず、ロシア軍は、病院を、それも産婦人科病棟を狙う非人道的な攻撃を行う。
封鎖された街で、薬品も機材も足りない中、医師たちの命を賭した救命活動が続くが、幼い子供達が次々と死んでゆく。
絶望に打ちひしがれる医師たちと、泣き崩れる親たちの姿は見ているだけで辛い。
そして記者が必死の思いで送信した映像を、フェイクニュースだと触れ回るロシア政府の戦争犯罪者たちの厚顔無恥。
もしも取材チームが撮影した映像をロシア軍に奪われた場合、確実にプロパガンダに利用されるので、なんとしても持ち出さねばならない。
取材する方も、される方も、そして観る方もストレス指数MAX、ここにあるのは戦場の“リアリテイ”ではなく“リアル”そのものだ。
アカデミー賞の授賞式で、本作の監督でもあるチェルノフ記者は「こんな映画は二度と作りたくない」と絞り出すようにスピーチしたが、紛れもなく本音だろう。

2022年5月20日に、アゾフスタリ製鉄所に立てこもっていたウクライナ軍部隊が降伏したことで、マリウポリの戦いは一旦は終結する。
映画の中で、シェルターに避難した市民たちは「ロシア人には絶対になりたくない」と訴えていたが、後日見たニュースでは陥落後の街の子供達は、ロシア人教師によって洗脳教育されていた。
ウクライナ戦争は依然として現在進行形で継続中であり、街とそこに住んでいる人たちが将来的にどうなるのかは分からない。
ロシア軍による占領が続くにせよ、解放されるにせよ、その過程でさらなる血が流されるのは間違いないだろう。

そして、当時のマリウポリと似たような状況にあるのが、今現在イスラエル軍に包囲されているパレスチナのラファ
圧倒的な戦力を持つイスラエル軍の戦術は、驚くほどマリウポリでのロシア軍とそっくりだ。
マリウポリで起こった悲劇の多くは、ラファでも起こっているだろう。
戦争が起こった経緯は全く異なり、一方のハマスも断罪を免れないものの、イスラエル軍もまた明らかな戦争犯罪を犯している。
誠に人類は罪深い存在だが、それでも獣に堕ちないために過去の教訓から得られた最低限のルールが、国際人道法だったはず。
それすら守れない者が、国を率いているという事実は、それがどこであれ不幸そのものだ。
目の前で死を見すぎたチェルノフ記者が、二度と会えるかどうか分からない、家で父親の帰りを待つ二人の幼い娘に想いを馳せる心情にシンパシーを感じ、殺された市民の遺体を集団墓地に埋葬する仕事に従事する男性の、「戦争を始めた奴はくたばれ」の言葉に深く同感する。

今回は、亡くなっていった魂に祈りを捧げ、カクテルの「レクイエム」をチョイス。
ウオッカ45ml、トリプルセック45ml、マリブ・ココナッツ・ラム 45mlを順にグラスに注ぎレモンライム・ソーダで満たす。
ドライなウオッカとトリプルセックの甘酸っぱさ、ココナッツ・ラムの甘い香りと、それぞれにベクトルの違う酒がお互いを引き立て合う。
人はなぜ、この様にハーモニーを奏でられないのだろうか。

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ショートレビュー「辰巳・・・・・評価額1700円」
2024年05月02日 (木) | 編集 |
最後まで突っ走れ!

びっくりするくらい面白い。
「ケンとカズ」で鮮烈な長編デビューを飾った小路紘史監督、8年ぶりの新作。
本来20年には公開される予定だったのが、コロナ禍などの要因が重なり、自主制作体制で足掛け5年をかけて完成した労作だ。
イカれた外道兄弟に、姉を殺された不良少女の葵が、復讐を決意。
「ONODA 一万夜を越えて」で若き日の小野田寛郎陸軍少尉を演じた遠藤雄弥が、無理やり彼女の手伝いをさせられるアウトローの辰巳を演じる。
そう、本作のプロットは、西部劇の典型的な復讐話型を現代日本に移し替えたもの。
いわば裏社会を舞台とした、ジャパニーズウェスタンだ。

西部劇話型の現代版は、アメリカ映画には結構ある。
10年代以降だと、スコット・クーパー監督がクリスチャン・ベイル主演で撮った「ファーナス/決別の朝」などが記憶に新しい。
これも無法者によって弟を理不尽に惨殺され、復讐を誓う兄の物語だった。
しかし日本を舞台にしたものだと、そもそも銃が一般的では無いので、懐かしの日活ウェスタンや三池崇史監督の「スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ」のような、荒唐無稽なコスプレショータイプが大半。
一方で、「網走番外地・荒野の対決」の様な、ヤクザ映画の世界に西部劇話型を持ち込んだ作品もあり、本作はどちらかと言えばこの系譜だろう。

冒頭10分の展開が見事で、いわゆる脚本の“ファースト10”のお手本。
藤原季節演じる辰巳の弟が、ドラッグのオーバードーズで死亡し、彼を止められなかったことが辰巳の心に棘として刺さり、贖罪の意識が彼の行動原理となる。
そして、劇画の様な異様な迫力をもつオープニングタイトルに続いて、外道な沢村兄弟による外道な殺人が描かれる。
沢村兄弟の一人、竜二を演じる倉本朋幸が強烈。
本来は演出家で、これが映画初出演らしいのだが、アクの強い風貌はどことなく田中邦衛を思わせて、一度見たら忘れられないインパクトだ。
辰巳や竜二は裏社会に生きてはいるが、どうもヤクザの正式な構成員ではない様で、裏社会のヒエラルキーの最底辺で蠢いているチンピラたちだ。
舐められたら終わりの世界なので、誰もが暴力をちらつかせて相手を威嚇し、上位に立とうとする。
上部組織はドラッグの売買を生業としているようで、チンピラたちが組織の手足となって捌き、辰巳の仕事は殺しで出た死体の処理という汚れ仕事。
辰巳は、弟を殺した組織のために働くという矛盾を、最初から抱えている。

登場人物全員、悪そうな顔をしている。
アウトローではあるが、やっていい悪事とダメな悪事に一定の線を敷いているらしい辰巳が、唯一の感情移入キャラクター。
逆に森田想が強烈な面構えで演じる復讐少女の葵なんて、悪態つきまくりのトラブルメーカーで、絶対友達になりたく無い。
見境なしに無茶なことをして、周りまで引き摺り込むタイプだ。
一応、殺された姉の元彼という因縁はあるものの、本来関係ない辰巳がなぜ葵のことを助けるのか、その動機が心に突き刺さったままの棘、弟の事件のトラウマだろう。
キャラクターはだいぶ違うが、キービジュアルにもなっている掴み合いのシーンなど、弟と葵が重なる描写がいくつかある。
ドツボに向かって真っ逆さまなのは分かっていても、辰巳を突き動かしているのは、弟を救えなかったことに対する贖罪の念であり、彼は無意識に破滅形の人生を送る葵に弟を見ている。

裏社会コミュニティの、極めて狭い人間関係の中で展開する負のスパイラル。
誰も警察に頼ろうとか日和ったことはせず、一度始めてしまったら最後まで駆け抜けるしかない。
物語の行き着く先は、最初から想像がつく。
面白いのは、辰巳の愛車のコロナEXIVが強い存在感を放ち、辰巳と葵を結びつける触媒の様な役割を果たすこと。
葵はメカニックの設定で、彼の車の不調の原因を見抜き、ささっと治してしまう。
オチも含めて、裏社会版の「ドライブ・マイ・カー」的な味わいがあるのがユニークだ。

今回は罪人たちのドラマなので、今回は「有罪確定」を意味する「ギルティ・ヴァーディクト」をチョイス。
半分まで氷を入れたハイボールグラスに、バカルディもしくはロンリコ151ラムを30ml、オレンジジュースを210ml注ぎ、ステアする。
151ラムは、アルコール度数75.5°のとんでもない酒だが、たっぷりのオレンジジュースがさっぱりした柑橘香と共にいい感じに中和してくれ、ちょうどストロング系と同じくらいのアルコール度数9°くらい。
なので、意外と飲みやすい。

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