fc2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係な物や当方が不適切と判断したTB・コメントも削除いたします。
■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
ショートレビュー「わたしは、ダニエル・ブレイク・・・・・評価額1700円」
2017年03月25日 (土) | 編集 |
最後まで、尊厳を捨てない。

ケン・ローチらしい、社会福祉のあり方をテーマとした硬派の社会派ドラマ。
007俳優みたいな名前の主人公は、心臓の病気で大工の仕事を医師から止められた、男やもめの爺さんだ。
彼はある日、社会福祉事務所で幼い2人の子供を抱えたシングルマザーのケイティと知り合い、交流を深めてゆく。
病気を抱えた老人と、新しい土地にやって来た母子家庭。
どちらも助けを必要としている人々なのは間違いないのに、彼らは社会保障のシステムから理不尽に疎外される。
80歳の巨匠が引退を撤回してまで作った作品だけあって、ローチの現状に対する沸々とした怒りがスクリーンのキャラクターを通して伝わってくる。

日本でも役所から手当を切られたとか、生活保護を拒否されたとかはよく聞くが、この話の状況が普通であれば、イギリスの状況はもっと酷い様だ。
病気で仕事が出来ない、あるいは幼い子どもを抱えているので手当てを受けたい、というごく当たり前で単純な話のはずなのに、ダニエルもケイティも届けを出すことすらなかなか出来ない。
受給資格があるかを判定する係は、米国系企業から派遣されていて、本人の病気とは全く関係ないマニュアル質問を繰り返す。
申請が却下されたら不服申し立てをするのだけど、なんとそれはネット経由でしかできないという。
高齢者や貧困層向けの行政サービスがネットのみ、それはつまり最初から助ける気が無いということだ。
極め付けは、ダニエルは医者から就労を禁じられているのに、求職中という”証拠”を作るために、なぜか無駄な就活をさせられるのだ。
しかも役所の指示に従わないと、どんどん累積の罰則がつけられて、受給資格が遠ざかるのだから酷い。
観ているうちに、ダニエルとケイティの感情に寄り添い、いつの間にか自分の中でも怒りのボルテージと諦めの気持ちが同時に高まってくるのを感じる。

2000年代に吹き荒れた、新自由主義のもたらしたものとは一体何か。
「本当に必要な人には福祉の手は届かない」とは、具体的にはどういうことなのか、この映画を観ればよく分かる。
支援が必要な人々の人間としての尊厳を貶めることで、受給資格を遠ざける社会福祉のあり方はやはり大きく間違っている。
極貧の中でフードバンクを訪れたケイティが、空腹に耐えかねて貰ったばかりのトマトのカンをその場で開けて食べてしまうシーンは、あまりの辛さに思わず涙が滲んだ。

本作に描かれるイギリスの役所の官僚主義、マニュアル主義があまりに酷いので、普段接している日本の役所の人たちがすごく良い人たちに見えてくるほど。
いや日本も実際には問題が少なくないのだろうけど、私の知る限りこれほど杓子定規で融通が利かないことは少ないのではないか。
逆に言えば無関心で手をこまねいていると、日本もすぐこういう状況になってしまうということだろうけど。
ダニエルは終始役所に対して怒っているのだが、実際には役所の人たちも色々辛くて、結局はシステムを作る政治の責任で、同時に政治家を選ぶ自分たちの責任ということなのだと思う。
ごく一部の不正受給などを見て、社会福祉のハードルを上げることに賛成を唱える人たちは、是非この映画を観てほしい。
しかし、どんな場合でも一番辛い立場に置かれるのは、所謂情報弱者であることは分かった。
社会の変化のスピードを考えると、自分の老後を想像して全く人ごととは思えない。
「わたしは、ダニエル・ブレイク」の名前の部分は、最後まで尊厳を保って生きたいと願う、全ての人々に置き換えられる。
巨匠入魂のヘビー級の力作であった。

今回はイギリス庶民の酒、日本でも同名パブチェーンがある「ホブゴブリン」をチョイス。
オックスフォード州ウィットニーの森の中にあるウィッチウッド・ブリュワリーは、銘柄が全てファンタジー繋がりで、ホブゴブリンの他にもブラックウィッチやゴライアスなどがある。
フルボディのダークエールは、チョコレートモルトの甘い香りが特徴で、強いクセがなく飲みやすい。

ランキングバナー記事が気に入ったらクリックしてね



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合チョコレートモルトの甘い香りががございます。]

ホブゴブリン 5.5% 330ml×4本組 【イギリス】【ビール】
価格:1598円(税込、送料別) (2017/3/25時点)


スポンサーサイト




コメント
この記事へのコメント
尊厳
こんにちは。
この作品は、ずっしりと胸に重たい作品でした。
「尊厳」って大切ですよね。
このひとつのワードに様々な思いが去来します。
ところで「ホブゴブリン」、チョコレートモルトの香りって、どんななのでしょう?興味が湧きました。
2017/04/10(月) 12:56:38 | URL | ここなつ #/qX1gsKM[ 編集]
こんばんは
>ここなつさん
本当にチョコレートっぽい香りがするんです。
味が甘い訳ではないですけどね。
国内でも地ビールのサンクトガーレンのラインナップなどに、チョコレートモルトを使ったものがありますよ。
ビールに甘い香りはちょっと・・・・という人もいますが、これはこれで美味しいです。
2017/04/13(木) 22:45:26 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
イギリス、イングランド北東部の工業都市ニューカッスル・アポン・タイン。 59歳の大工ダニエル・ブレイクは、心臓病で医者から働くことを禁止される。 ところが、雇用支援手当の継続審査では「就労可能、手当中止」と判定されてしまう。 そんな時、ダニエルは近所に住むシングルマザーのケイティと出会う。 幼い子どもを2人も抱え仕事もないケイティを、何かと手助けするダニエルだったが…。 社会派ヒューマンドラマ。
2017/03/26(日) 00:54:18 | 象のロケット
『麦の穂をゆらす風』などのパルムドールの常連ケン・ローチ監督がメガホンを取り、社会の片隅で必死に生きようとする男の奮闘に迫る人間ドラマ。病気で働けなくなった主人公が煩雑な制度に振り回されながらも、人との結び付きを通して前進しようとする姿を描く。コメディ...
2017/03/26(日) 14:10:23 | パピとママ映画のblog
 かつては「ゆりかごから墓場まで」と言われ、福祉が充実していたイギリスの悲惨な現状を、巨匠ケン・ローチが温かい視点を持ちつつも、哀しみに満ちた作品にしました。真面目なだけでは生きられない厳しい社会。日本もこのような事態に陥らないといえませんが、やっぱり…
2017/04/02(日) 07:07:16 | 映画好きパパの鑑賞日記
なんという胸を打つ、そして胸が苦しくなる作品。ただ実直に生きていくことの難しさをここまで見事に描き切るとは!監督ケン・ローチは引退を撤回してこの作品のメガホンを取ったと聞いている。ケン・ローチだから、ケン・ローチでこそ、社会派ケン・ローチ…色々表現はあるかもしれない。だがやはり素晴らしいことに変わりはないのだ。ダニエル・ブレイク。初老の男。イギリスの労働者。妻を亡くし今は独り身。何十年も大工...
2017/04/10(月) 12:57:45 | ここなつ映画レビュー
映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、これまでに観たケン・ローチ監督作品の中で
2017/04/12(水) 23:39:02 | 大江戸時夫の東京温度
イギリスを舞台に様々な事情で貧困に直面した人々の苦悩を描いた作品です。
2017/04/16(日) 10:04:45 | 水曜日のシネマ日記
 『わたしは、ダニエル・ブレイク』を新宿武蔵野館で見ました。 (1)本作(注1)が昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した作品ということで(注2)、映画館に行きました。  本作(注3)の舞台は、現代のニューカッスル。  本作の冒頭では、主人公のダニエル...
2017/04/18(火) 18:34:05 | 映画的・絵画的・音楽的