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美しい星・・・・・評価額1650円
2017年05月31日 (水) | 編集 |
あなたは、本当は何星人?

ある日突然、内なる宇宙人に目覚めた家族を描く、ユニークなSF寓話劇。

火星人、水星人、金星人、そして一人だけ地球人のままの四人家族。
彼らはなぜ突然、自分は宇宙人だという意識を持ったのか。
半世紀以上前に発表された三島由紀夫の同名小説を、「桐島、部活やめるってよ」の異才・吉田大八監督が映画化。
リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛、中島朋子が、宇宙人家族を演じる。
昭和の異色SFは、平成の現在に何を語りかけてくるのだろうか。
※核心部分に触れています。

予報が当たらないことで有名な気象予報士の大杉重一郎(リリー・フランキー)は、妻の伊余子(中島朋子)、フリーターをしている息子の一雄(亀梨和也)、大学生の暁子(橋本愛)の四人家族。
多少の心配ごとはあるものの、概ね平穏な人生を送っている。
そんなある日、UFOと遭遇した重一郎の中に、「自分は火星人。この世界を救うために地球にやってきた」という意識が目覚める。
同じ頃、一雄は彗星人、暁子は金星人として次々に覚醒。
使命に駆られた三人は、世界を救うべく、それぞれの手段で奔走。
一方、自分だけ目覚めない伊余子は、マルチ商法にハマってゆくのだが・・・


三島由紀夫の原作が出版されたのは、1962年10月。
同じ月には、米ソが開戦寸前まで対立を深めたキューバ危機が起こっていて、核戦争が“今そこにある危機”だった、冷戦真っ只中の時代の作品だ。
暴力の連鎖による自滅へと突っ走る人類を救うべく、主人公一家が宇宙人に覚醒。
ところが、人類は不完全だから核戦争によって滅びるべきと考える、白鳥座方面の惑星の三人の宇宙人も存在し、人類を生かすべきか殺すべきか、重一郎との討論に突入するのである。

原作の出版から55年が経った現在でも、人類は相変わらず殺し合っているし、核の危機も去ったわけでは決してないが、少なくとも人類を絶滅に追いやるレベルの全面核戦争の可能性からは、一歩後退したのは間違いないだろう。
時代の変化に合わせて、原作の基本骨格は維持しながらも、変更点は少なくない。
大杉一家が宇宙人に目覚め、人類を救おうとするのは同じだが、それぞれの目的はより明確に差別化されて象徴性は高められている。
火星人の重一郎は、小説では金持ちの無職だったが、映画ではTVの気象予報士。
地球と同じハビタブルゾーンに属しながら、乾燥した赤い大地が広がる火星人故に、環境問題に覚醒。
愛と美の女神ヴィーナスの名を持つ、金星人に目覚める暁子は、ミスコンに出場することで、人類に蔓延する間違った美の概念を正そうとする。
フリーターの一雄は自転車のメッセンジャーをしているが、水星の英語名のマーキュリーはローマ神話の神々のメッセンジャーで、雄弁家を意味する。
両性偶有のマーキュリーは、液体でありながら金属でもある水銀に象徴され、対立する二つの要素が同時に合同を成し遂げる、政治によって未来を模索するのである。
まずは核戦争の阻止という、二元論的なシンプルさがあった冷戦期の危機に対して、現在の人類が抱えている問題はより複雑だということか。

三人はそれぞれに、自分の変化に戸惑いながら、人類を救うために地球人の出来ない役割を果たそうとするのだが、原作では木星人だった妻の伊余子だけは、なぜか地球人のまま。
彼女は好き勝手に生きる家族に翻弄されながら、「美しい水」という偽のミネラルウォーターを売るマルチ商法にのめり込み、それが生きがいになってゆく。
ここで伊余子は、人間同士で騙し合い、自然に優しい、体に優しいと言いながらも中味は虚構、しかし足掻きながらも繋がろうとする、矛盾した地球人の象徴としての役割を担うのである。
伊余子の役割の変化にともなって、家族ものとしての要素が大きくなったことも、脚色のポイントだろう。
冒頭の会食シーンから既に、一見平穏なこの家族が、内側では壊れかけているのが伝わってくる。
重一郎は後輩の女性予報士と不倫中で、就職せずにフリーター生活を続ける一雄のことも苦々しく思っている。
暁子は内向的な性格で大学で孤立、伊余子は家族の乖離を感じながらも成すすべが無い。

大杉家そのものが、大きな問題を抱えた人類社会のメタファーなのだ。

原作のキリスト教的な要素は、基本的にそのまま生かされている。
破滅へと突き進む人類を憂う重一郎は、原作では自らが人類全体の罪を背負って苦しまねばならないと考えていて、末期ガンとなって帰還を告げる宇宙からの声を聞く。
また暁子は金沢に住む同じ金星人を名乗る竹宮を訪ね、彼と共にUFOに遭遇した後に妊娠が分かり、自分が処女懐妊したと考える。
重一郎が現在の人類の罪を背負って昇天し、聖母となった暁子から次なる救世主=宇宙人が生まれてくるというキリストのループが意味するところは、人類救済のプロセスはまだまだ先が長いということ。
しかし、それほど気が長くない白鳥座方面の宇宙人は、元々三人だったのが、佐々木蔵之介演じる怪しげな議員秘書・黒木に集約される。
人類の未来に関する原作の討論は、テレビ局での重一郎と黒木の激しい論戦に置き換えられ、黒木が人類を終わらせる"ボタン”(原作のモチーフである核のボタンをイメージしたものだろう)を示すのだが、ここはキリスト教の一部が主張する人間の罪と終末を巡る決定論的と非決定論の対立を思わせる。
この論戦のシーンや、金沢の海岸で暁子と竹宮がUFOと交感するシーンの独特のグルーヴ感は、「桐島、部活やめるってよ」の"火曜日の屋上"と同様で、静かに沸き立つ熱量は吉田監督らしい。

地球が美しいのは、美しいと感じる人間がいるからだが、人間はその美しい自然に自分たちを含めない。

では我々自身は美しいのか?美しい地球に人類は必要なのか?というマクロ的壮大なテーマを掲げつつ、崩壊寸前の家族の再生という、ミクロな物語に収束させるのは面白い。
彼らが本当に宇宙人だったのか、それとも宇宙人だと思い込んでいる人たちだったのかは、ぶっちゃけどうでもいい。
問題は、宇宙人の視点を持つことが出来るかなのだ。
人類絶滅を願う黒木を同僚設定にしたことで、一雄の中で政治の持つ意味が曖昧になってしまったし、それぞれの宇宙人としてのテーマが、家族の中の自分に落とし込まれる終盤の展開もやや熟れてない気もするが、人間じゃない視点で人間を眺めたら、自分たちの姿がよく見えたというコンセプトは上手く表現されていると思う。
四人家族のキャスティングが絶妙で、怪優
リリー・フランキーのハイテンションな火星人っぷりには思わず引きこまれるし、亀梨和也はキャリアベストの好演。
中嶋朋子はいかにも身近にいそうなリアルな地球人で、橋本愛は一見して金星人っぽい。
映画を観た後、私は何星人だろうと考えたが、惑星ですらなくなった冥王星人な気がする(笑

今回は、鹿児島の神酒造が円谷プロとコラボして作った、その名も「宇宙焼酎 ゼットン」をチョイス。
ネタのネーミングではなく、実際にスペースシャトルで宇宙までいった麹と酵母が使われている。飲んだからと言って、宇宙人に目覚める訳ではなく、普通にまろやかで美味しい芋焼酎だ。
姉妹品として「ジャミラ」や「レッドキング」などもあり、ラベルもインパクト大なのでコレクションしても楽しいかもしれない。

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コメント
この記事へのコメント
金閣寺
三島由紀夫の作品は金閣寺くらいしか読んでおりません。
ほかにも読んだと思うけど忘れた。
現代日本人は金閣寺すら読んだことがない人が大半でしょう。
現代人の理解の範囲を越え、なんじゃこりゃと観終わる人が多いことと推察します(笑)
2017/06/01(木) 07:13:29 | URL | まっつぁんこ #L1vigvx6[ 編集]
こんばんは
>まっつぁんこさん
三島のSFがあるってことは知ってましたが、この映画化が決まった後に読みました。
討論の内容とかはある程度変わってるのですけど、むしろテーマが明確だった分、原作の方が分かりやすいのかなと思いました。
やってることは変わらないのですけど、お題は映画の方が難しいかも。
2017/06/03(土) 23:12:47 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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美しい星@よみうりホール
2017/06/01(木) 07:08:37 | あーうぃ だにぇっと
三島由紀夫が1962年に発表した核時代の人類滅亡の不安を捉えた小説を、『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八監督が大胆に翻案して映画化。突如自分たちは地球人ではなく宇宙人だと信じ込んだ平凡な一家が、美しい星・地球を救おうと大暴走するさまが展開する。世界救...
2017/06/01(木) 17:36:44 | パピとママ映画のblog
ある日、気象予報士・大杉重一郎は、自分が火星人だったことに気付く。 フリーターの長男・一雄は水星人、大学生の長女・暁子は金星人、妻・伊余子だけは地球人だったが、4人はそれぞれ宇宙人として覚醒し、「滅亡の危機に瀕した美しい星・地球」を、自らの手で救おうと奮闘する。 そんな彼らに、怪しげな政治家秘書・黒木が接触してきた…。 ファンタジック・コメディ。 ≪地球人の皆さん、今すぐ行動を起こしてください!≫
2017/06/03(土) 21:52:53 | 象のロケット
注・内容、台詞、ラストに触れています。『美しい星』原作 : 三島由紀夫監督 : 吉田大八出演 : リリー・フランキー亀梨和也、橋本愛中嶋朋子、佐々木蔵之介、他物語・予報が当たらないと話題の気象予報士・
2017/06/04(日) 17:36:06 | 映画雑記・COLOR of CINEMA
このポスターに写っているリリーさんのポーズ。劇中何回もでてくるんですが、これやってるときのリリーさんがあたしゃ~どう見ても欽ちゃんにしか見えなかった。おもいっきしかぶ ...
2017/06/06(火) 16:15:38 | ペバーミントの魔術師
途中まで所々笑えて面白かったなぁ。
2017/06/07(水) 23:34:34 | だらだら無気力ブログ!
 『美しい星』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。 (1)三島由紀夫のSF小説の映画化と聞いて、映画館に出かけました。  本作(注1)の冒頭では、レストランにおいて大杉家の食事会が行われています(注2)。  父親の重一郎(リリー・フランキー)と母親の伊余子(中嶋朋子...
2017/06/09(金) 18:37:27 | 映画的・絵画的・音楽的
 三島由紀夫の原作を鬼才・吉田大八監督が現代に翻案した何とも強烈な作品です。ストーリーは矛盾が多いのですが、美術、音楽も含めて独特の雰囲気に引き込まれました。特に橋本愛の美しさはまさに異次元のものです。  作品情報 2016年日本映画 監督:吉田大八 出演…
2017/06/14(水) 07:22:44 | 映画好きパパの鑑賞日記