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ショートレビュー「いつまた、君と 何日君再来(ホーリージュンザイライ)・・・・・評価額1500円」
2017年06月26日 (月) | 編集 |
どん底に落ちても、愛だけは残った。

ウエハース付きのアイスクリームから始まる物語。
第二次世界大戦後、文字通り裸一貫から出直すことになる、とある中国からの引き上げ家族の波乱万丈の戦後史
戦争は終わっても、庶民はただ生きるだけでも大変なのだ。
原作は、本作の企画者でもある、俳優の向井理の祖母・芦村朋子さんの手記。
描かれるのは、昭和15年、夫になる芦村吾郎のプロポーズから中国・南京への赴任、そして敗戦・引き上げ後の昭和21年からおおよそ10年間の出来事だ。
映画は、大学生時代の向井理が、お婆ちゃんの手記の執筆を手伝いながら過去が語られる構成で、本人が祖父にあたる吾郎役を演じている。
どの家族にも、どの人にも、その血の中には何世代にも渡って脈々と綴られた物語があるはず。
「人に歴史あり」という言葉を具現化した様な作品で、企画性自体が非常に面白い。

この作品がユニークなのは、映画やドラマではあまり描かれてこなかった、外地からの引き上げ者の戦後にスポットを当てていること。
敗戦前の日本は、オセアニアから中国大陸の奥地まで広がる広大な帝国で、各地に散らばった陸海軍部隊は350万人、在留民間人は300万人に及んだ。
民間人の帰還に関しては、財産の持ち出しが制限され、正規に持ち出せた現金は僅か千円だったという。
昭和20年の貨幣価値はおおよそ現在の400分の一と言われているが、5年で物価が100倍になったという戦後のハイパーインフレ下では一ヶ月の生活がやっとだろう。
戦争で疲弊しきった人口7000万人の国に、600万人以上の持たざる人々が戻ってくるのだから、これは大変なことだ。
「シン・ゴジラ」の劇中で、首都圏380万人を避難指定するにあたって、里見総理代理が「避難とは、住民に生活を根こそぎ捨てさせることだ。簡単に言わないでほしいなあ」とボヤく台詞があるが、あの状態がこの国の現実だった時代がある。

冒頭のアイスクリームの偶然から、「この世界の片隅に」を連想したが、北条家の様な内地の家族は、戦争が終わればそれなりに希望が見えるが、外地からの引き上げ家族にとって、戦後は全てを失った絶望から始まるという意味でも対照的。
この二本はセットで観ると、印象がより深まる。
しかも芦村の家族は、同情したくなるくらい、とことん運が無いのだ。
愛媛の実家には居場所が無く、出稼ぎに出てトラックを買い、運送屋を始めようとするもトラックがポンコツ過ぎて廃業、タイルの卸売店に就職してやっと安定したと思ったら倒産。
生活が上手くいきそうになると、なぜか突然ダメになるの繰り返し。
この悪循環の根が、先祖からの業にまで広がるのは、いかにも血脈主義の日本的な考えで面白い。

手記の構成ゆえにドラマ的な軸が弱く抑揚に欠け、「こういうことがありました」は描かれるが、それが具体的にどんな影響を及ぼしたかは具体性に乏しい。
現代パートの大学生の向井理が、キャラクターとして殆ど機能していないなど、作劇上の欠点は多い。
だが、市井の人々のリアルな戦後家族史として、これはなかなか興味深い作品だ。
何度もなんども打ち倒される吾郎と、それでも自ら選んだ人生を貫く朋子夫婦の姿には、普遍的な共感性があり、この映画を観た人は誰でも、自分の家族のルーツを知りたくなるだろう。
子供達が巣立ったら、世界を旅するという夫婦の夢を、ある方法で実現しているのも素敵だった。
あのポンコツトラックが一緒なのもいい(笑
先日亡くなった野際陽子のスクリーン最後の姿を目に焼き付け、高畑充希の歌うテーマ曲「何日君再来(いつの日君帰る)」に思わず落涙。
昭和の時代に想いを馳せる114分だ。

今回は中国に所縁のある映画なので、中国の酒宴に欠かせない白酒の中でも、一級品として知られる「貴州茅台酒(キシュウマオタイ酒)」をチョイス。
300年以上の歴史を持ち、日中国交回復の式典でも振舞われた、中国を代表する蒸留酒。
数ある白酒のなかでも相当にお高いが、独特の香りと濃厚なコクはその価値を十分感じさせる。
白酒を買うと小酒杯という小さなグラスが付いてくることが多いが、このグラスで一気にグイッと飲むのが一般的。
中国人と飲むと、とにかく次々と杯を勧めてくる。
マオタイは悪酔いしにくいのが特徴ではあるものの、当然ながら40度以上の酒を飲み続けてはたまらない。
勧められれば断らないのが礼儀ではあるのだけど、よくよく聞くと中国人は飲む振りして他の器に移したりしてるらしい。
なるほど、どんなに飲んでも平気な顔してるわけだ。

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