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ショートレビュー「ディストピア パンドラの少女・・・・・評価額1550円」
2017年07月08日 (土) | 編集 |
私は、なんのために生きている?

突然変異した真菌のパンデミックにより、人類の大半が”ハングリーズ"と呼ばれる生ける死体と化した世界。
感染したにも関わらず知性を失わない少女・メラニーと、彼女の脳からワクチンを作り出そうとするマッドサイエンティスト、少女が慕う教師、生き残った軍人たちのロードムービーだ。
監督はTVドラマの「SHERLOCK/シャーロック」で知られるコーム・マッカーシー、原作はマイク・ケアリーの小説「パンドラの少女(The Girl with All the Gifts)」で、作者自らが脚色を担当している。
ゾンビもののバリエーションながら、「28日後」や「わたしは生きてゆける」に通じる、イギリス映画独特のウエットな文学的なムードを持ち、ジュブナイルものの要素が強い。

映画の中で人類文明を滅亡させる真菌は、実在するタイワンアリタケの突然変異種ということになっている。
タイワンアリタケはいわゆる冬虫夏草の一種で、寄生された蟻は脳を乗っ取られゾンビ状態になり、植物の葉の葉脈にがっちりと噛みついて絶命、やがて真菌は蟻の体を依代として成長し、結実すると胞子を吹き出して、さらに感染を広げてゆく恐ろしい生物である。
本作ではこれが人間に感染する様に進化したという設定で、感染者に噛まれるか胞子を吸い込むかすると、1分と持たずに知性を失い、抗い難い食欲のみ残ったハングリーズになってしまう。

ところが、母親が感染した時に胎内にいた子供たちの脳は、感染しても真菌と共生し知性を保持できることが分かり、生き残った大人たちは彼らの脳からワクチンを開発しようとしているのだ。
ここでポイントになるのは、子供たちは一見すると普通ながら、知性以外はハングリーズと同じ特質を持ち、生きている人間に対して食欲を抑えられないということ。
もちろん、子供たちに噛まれても感染は免れない。
だから大人たちにとって、彼らは子供の姿をしたバケモノで、薬を作るために生かしている材料にすぎず、子供たちもまた自分たちが大人たちとは別種の存在で、いつかは殺される運命にあることを感じ取っている。

ちょっとカズオイシグロっぽい、ミステリアスな”学校”から始まる物語は、やがて基地の壊滅とともに、安全な地を探すロードムービーへと移行する。
初めて自分の目で外の世界を見たメラニーが、大人たちに混じってサバイバルしながら、自分が何者なのかを知り、生きる意味を見出してゆくプロセスはなかなか面白い。
彼女を一人の人間の子供として接し、擬似親子的な関係となる教師のヘレンと、あくまでも人類を存続させるために、メラニーを犠牲としてワクチンを作ろうとするコールドウェル博士(グレン・クローズが怪演!)が好対照を形作り、それまで職務として子供たちに接してきた兵士たちは、徐々にメラニーの中にある人間性を認めざるをえなくなる。

そして、感染したハングリーズが最終的にどうなるのか、ほぼ確定した世界の未来図を知った時、メラニーにとっても、大人たちにとっても残された時間は、もはやごく僅か。
数奇な運命を抱えて生まれた一人の少女の物語は、やがて旧人類と新人類の間の、星を継ぐものを巡る、壮大な選択の物語に発展するのである。
全ての災いが出尽くした後に残るのは、たった一つの”希望”という展開は、なるほどこれは終末の世界のパンドラの神話だ。
しかし、”全てを与えられた者(The Girl with All the Gifts)”=パンドラが開けた箱に最後に残ったギリシャ語の”エルピス”は、希望だという説と、実はゼウスが仕込んだ偽りの希望だという説がある。
希望だとしても、果たしてそれは誰にとっての希望なのか。
ハッピーエンドでありバッドエンド、独特の後味を残す、ディストピアSFの佳作である。

今回はストレートにカクテルの「ゾンビ」をチョイス。
ホワイトラム30ml、ゴールドラム30ml、ダークラム30ml、アプリコットブランデー15ml、オレンジジュース 20ml、パイナップルジュース 20ml、レモンジュース 10ml、グレナデンシロップ 10mlをシェイクして、このカクテルが名前の元になった氷を入れたゾンビグラスに注ぐ。
「ティファニーで朝食を」にも登場する、ハリウッド生まれの有名なカクテルだが、考案者が酔いを深めるために複数のラムを使ったという危険なカクテル。
上記は現在の一般的なレシピだが、オリジナルは更に量が多く、5種類ものラムを混ぜていたというから恐ろしい。
口当たりはフルーティーでフレッシュ、飲みやすいのだが、ロングカクテルな上に、その名の通り非常にアルコールが強く、酒に弱い人だとすぐに酩酊してゾンビ化するので注意。

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