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ショートレビュー「火花・・・・・評価額1600円」
2017年12月02日 (土) | 編集 |
“火花”は”花火”に成れるのか。

純文学作家・又吉直樹を誕生させた、同名芥川賞小説の映画化。
菅田将暉演じる、お笑いコンビ”スパークス”の徳永が、大阪から来たお笑いコンビ”あほんだら”の神谷と衝撃的出会いをする。
徳永は弟子入りを志願し、神谷は「自分の伝記を書くこと」を条件に受け入れる。
人当たりの良い神谷に徳永は心酔してゆき、神谷もまた徳永を可愛がり、彼の考える笑いの真髄を伝授しようとするのだが、どちらも芽が出ないまま時は残酷に過ぎてゆく。
これは若き徳永が、お笑い芸人として生きることに葛藤する10年間の物語。

冒頭の破裂しないままの打ち上げ花火と、スパークスの二人の会話が、物語の行く先を暗示する。
本作の内容は何も芸人の世界だけに限らず、まだ見ぬ何かを作ろうと、夢を追う人全てに当てはまる物語だ。
自分の頭の中以外、世界のどこにも存在しないものの魅力を知ってもらうのは難しい。
心底自分がオモロイと思ったものと、世間の反応とのギャップに苦悩する徳永の姿を見て、嘗ての自分を思い出して身につまされた人は多いだろう。
ある程度割り切って方向性を定め磨き上げると、それはそれでプロフェッショナルな技術になるのだけど、それを妥協として認めたくない自分もいる。
最初はただ神谷に憧れ、突っ走るだけだった徳永にも、やがて”時間”という若い時には気にもしなかったプレッシャーがのしかかってくるのだ。

純文学作品を、2時間の娯楽映画にするのは難しい。
個人的には廣木隆一が手掛けたTV版の方が好きだったし、明確な三幕構造を持たないこの作品の映像化には、連ドラがベストのメディアだったと思う。
それでもスクリーンに映し出される青春の情熱と喪失の物語は切なくて、後半徳永が追い込まれてゆくと急速に面白くなってゆく。
特に、クライマックスの逆転漫才は凄かった。
笑わせるはずの漫才で泣かせる。
それは10年の歳月の積み重ねがあって初めて成立する、特別な漫才。
お笑いコンビを描きながら、それまで漫才そのものは殆ど描かず、タメを作っていたのも効いている。

徳永を演じる菅田将暉も相変わらず良いが、天才ながら途中からブレまくる、神谷を演じる桐谷健太が素晴らしい。
芸人の世界には先輩が後輩に奢るという暗黙のルールがあるらしく、神谷も売れてないのに徳永に奢る。
その実、金はヒモ状態の彼女に貢がせて悪ぶれず、自らのお笑いが世間に受け入れられなくても気にしない。
この自らの状態に気づかない、いや気づかないフリをしている浮雲のようなキャラクターとのコントラストで、生真面目な徳永の心情がぐっと浮き上がる。

おそらく、この映画にどこまで感情移入できるかは、徳永あるいは神谷の様な時間を過ごしたことがあるか、それとも無いかによってだいぶ違うだろう。
神谷の言う、夢破れた者も含め、全ての存在に意味があるというのは、切実な願いであり、真理でもある。
今何かを成し遂げようともがいている人たちは、先人たちの夢の残骸の上で現実に抗い、やがて自らもその残骸となってゆくのだ。
徳永たちに10年の積み重ねは、日本のお笑いの歴史を1000ページの本だとすると、ほんの数行かもしれないが、重要なのは確かにそこに存在していて、その数行が無ければ本全体も完璧には成り得ないということなのである。

今回は、弾け切れなかったスパークスから弾ける国産スパークリングワイン、マンズワインの「甲州 酵母の泡 セック・キューブクローズ」をチョイス。
きめ細かな泡と適度な酸味、フレッシュな味わいのやや辛口。
和食との相性が良く、アペリティフとしてだけでなく食中酒としても楽しめる。
伊勢志摩サミットで供されたことでも話題になった。
CPが高いのも嬉しい。

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コメント
この記事へのコメント
確かに泣きました
ノラネコさん☆
漫才のどうこうを描くと言うより、必死に生きた青春を描いてましたね~
そんなときのあの逆転漫才です。なぜかドラえもんの「うそ製造機」でめちゃくちゃ泣いたのを思い出しながら観ていました☆
2017/12/03(日) 23:20:22 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
必死に頑張る青春の話は、こちらも見に覚えがあるだけに引き込まれました。
うそ製造機ってあのドラえもん最終回の後、戻って来る話に出て来るひみつ道具でしたっけ。
あの話も泣けましたねえ。

2017/12/13(水) 00:24:38 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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火花@一ツ橋ホール
2017/12/02(土) 22:08:43 | あーうぃ だにぇっと
原作の又吉直樹の小説を読んで、イロモノだから話題になったり芥川賞を受賞したわけじゃないんだ…と確信してから、映画化を楽しみにしていた私。 熱いけど熱血じゃない、まっしぐらだけどどこか俯瞰した冷静さを持ち合わせている…お笑いを愛し、芸人をリスペクトする、そんな又吉そのものな作品の雰囲気を、原作通りに描いた板尾監督の後輩たちへの愛を感じる作品。
2017/12/03(日) 23:18:02 | ノルウェー暮らし・イン・原宿
映画「火花」を鑑賞しました。
2017/12/17(日) 00:10:32 | FREE TIME
 本作は、お笑タレントの又吉直樹氏の芥川受賞作を、これまたお笑いタレントの板尾創路監督のもとで映画化したもの。コンビを組んでデビューしたもののさっぱり売れないお笑い芸人が、先輩芸人の漫才を見て弟子入りして後を付いていくというお話。お笑いを題材にしているからといってコメディ作品ではなく、お笑いとは何かを巡るむしろ観念的な映画というべきでしょうか。原作に書き込まれている頭でっかちな部分をもっ...
2018/01/17(水) 07:19:51 | 冥府の映画的・絵画的・音楽的