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2017年12月18日 (月) | 編集 |
ジェダイとは何者だったのか?
新生「スター・ウォーズ」三部作第二弾。
前作で共和国が破壊され、わずかに残ったレジスタンスにもファースト・オーダーの脅威が迫る。
一方、伝説のジェダイ・マスター、ルーク・スカイウォーカーを発見したレイは、自らのメンターとなりレジスタンスを救ってほしいと懇願するが、ルークはなぜか受け入れない。
いったい、ルークの過去に何があったのか?
最強リブート職人、J・J・エイブラムスが作った「フォースの覚醒」は、保守的な中に新しい風を吹き込んだ「スター・ウォーズ・アンソロジー」として完璧な一本であった。
対して、バトンを受け継いだライアン・ジョンソンは、エイブラムスが世界観に開けた風穴を極大化する。
本作は前作のメインであった三人の若者たち、レイ、カイロ・レン、フィンをそれぞれフィーチャーしながらも、物語の主役は旧三部作以来のルーク・スカイウォーカーその人であり、シリーズの根幹をなす”ジェダイ”とは”フォース”とは何なのかを明確化。
それは即ち、40年前にジョージ・ルーカスが作り上げた世界を、リスペクトを捧げながらも"神話"として葬り去ることなのである。
※核心部分及びラストに触れています。
惑星オクトーの最古のジェダイ寺院を訪れたレイ(デイジー・リドリー)は、隠遁生活を送っていたルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)と会い、危機にあるレジスタンスを助け、フォースを覚醒した自分を導いて欲しいと求めるが、ルークは頑なに拒否。
彼は、嘗て愛弟子だったベン・ソロがダークサイドに堕ち、”ダース・ヴェーダーを継ぐもの”カイロ・レン(アダム・ドライバー)となるのを止められず、新ジェダイ・オーダーの壊滅を招いたことを深く後悔し、この忘れられた惑星でただ死を待っていた。
その頃、ファースト・オーダーの攻撃によって、指揮官のレイア(キャリー・フィッシャー)が意識不明の重傷を負う。
代行を任されたホルド提督(ローラ・ダーン)の無策に焦ったポー・ダメロンは、フィン(ジョン・ボイエガ)とローズ(ケリー・マリー・トラン)と共に、ファースト・オーダーの追跡装置を無力化すべく作戦を練るが、それには彼らのコードを破れるプロフェッショナルが必要。
フィンとローズは、”マスター・コードブレイカー”を探して、惑星カントニカにあるカジノ都市カント・バイトへ潜入するのだが、ひょんなことから現地の当局によって拘束されてしまう。
レジスタンス艦隊の燃料が尽きるまであとわずか。
一方のレイも、一向に動かないルークに業を煮やして、カイロ・レンをダークサイドから救い出すために動き始める・・・・
予告や宣伝のミスリードが巧みだったので、すっかり騙された。
てっきり道に迷ったレイがダークサイドに堕ちかける、もしくはルーク自身が自責の念に耐えかねて裏切るのかと思っていたのだが、予想はことごとく外れ、いい意味で全く先の読めない驚くべき作品になっていた。
確かにこれは「衝撃のスター・ウォーズ」で、観客の立場から言えば、本作のMVPはディズニーの宣伝部だろう。
巷では見事なまでに賛否両論になっている様だが、端的に言えば本作は重大な欠点を内包した大傑作であると思う。
特に大きな欠点は二つ。
これは本作に限ったことではないが、このシリーズでは世界観のベースとなるフォースの能力に、全く”枷”が嵌められていない。
よくできたファンタジーやSFでは、その世界観独自の能力には何ができて何ができないのか枷が設定されているものだ。
例えば「ハリー・ポッター」シリーズでは、各キャラクターの使える魔法、苦手な魔法が設定されていて、それが見せ場や危機演出に生かされている。
逆にこの種の能力に枷がないと、どんな状態に陥っても何でも出来ることになってしまい、サスペンスが生まれない。
今回は特に、幽体のはずのヨーダが杖でルークをコツコツしちゃったり、雷雲を読んでジェダイ寺院を燃やしちゃったりする。
アレができるのであれば、ジェダイは死んでも現世に物理的な影響を及ぼせることになり、そもそも死の意味が無くなってしまう。
同じ文脈で、クライマックスのルークが自らの幽体を作り出すことや、ファースト・オーダーの攻撃で宇宙空間に放り出されたレイアが、突然フォースを発動して生還する描写にも、過去のフォースの描写を大きく逸脱する違和感が拭えない。
ちなみに、NASAの見解では、宇宙空間に生身の人間が放り出されても、1、2分程度であれば生存できるというから、そこは問題でない。
もう一つ、作劇上の大きな問題点が、1時間近くの尺をかけて描いたポー、フィン、ローズの行った作戦が、最終的に全く意味が無いどころか、ベニチオ・デル・トロの裏切りを招き、無傷で脱出できるはずだった輸送船の大半を撃沈されるという惨事を招いていること。
これはホルド提督が一言告げておけば良かっただけの話で、いくらなんでもホウレンソウが無さすぎるぞレジスタンス。
まあホウレンソウ不足はファースト・オーダーも同じようなもので、どうやって鉄の規律を維持しているのかも謎なのだけど。
一応、このエピソードは、弱いながらもポー・ダメロンのリーダーとしての成長をもたらす役割を負っているので、「失敗こそが大切」というヨーダの言葉にもかかるのだけど、終わってから振り返ってみて気づくのではなく、観ている間に「これやっていることに意味が無いんじゃ・・・」と観客に思わせてしまう展開はやはり問題だろう。
何より、魅力的なキャラクターたちを愚かに見せてしまう。
他にも、超科学兵器同士が宇宙空間で戦ってるのに、レジスタンスの爆撃機が装備しているのが、まさかの第二次世界大戦型の自由落下爆弾だったり、出来るのは知ってたけど今まではあえてやらなかったハイパードライブによる特攻とか、突っ込みどころと禁じ手が満載である。
しかし、ライアン・ジョンソンは、この辺りの欠点を十分認識しつつ、あえて無視しているような気がする。
まあ「LOOPER/ルーパー」で、タイム・トラベルの仕組みを問われたブルース・ウィリスに「めんどくさいから説明しない」という強引な回答をさせた人だから、ただ単に整合性にはあんまり興味がないのかもしれないが。
このシリーズが、基本なんでもありだったのは、ルーカスの創造した世界が、リアルなSFというよりも神話的なファンタジーだったからで、本作の大きな目的がその構造からの脱出だからだ。
思えば本作に至る「フォースの覚醒」と「ローグ・ワン」で、布石は既に打たれていた。
ギリシャ神話で言えば、選ばれしデミ・ゴッドであるルーク・スカイウォーカーの神話的冒険譚は、より未熟で人間的に葛藤する若者たちによる「フォースの覚醒」によって置き換えられ、無敵のヒーローの活躍の裏側に、無数の名も無き人々による犠牲があったことは、主要登場人物が銀河に”希望”を繋ぐために全員戦死する「ローグ・ワン」によって鮮烈に描かれた。
新時代の「スター・ウォーズ」は、現在では陳腐化してしまった「ヒーローズ・ジャーニー」の世界観に留まってはいられず、古びた世界を壊し、新たに構築する必要がある。
そのために、再登板するのが旧シリーズの代表者たるルーク・スカイウォーカーなのだ。
本作のルークの役割は、「ヒーローズ・ジャーニー」の主人公ではなく、悩めるキリストのメタファーであることが色濃い。
ギリシャ、ローマの神々をキリスト教が駆逐したように、ここではルーク自らが古のジェダイへの信仰を自ら否定するのである。
十二人の弟子を連れて、荒野にジェダイ寺院を立てる時点で、彼らがキリストと十二人の使徒であることを隠そうとする意図は無い。
そしてキリストが「汝のなすべきことをせよ」とユダが裏切り者であることを示した瞬間、彼の中にサタンが入ったのと同様に、ベン・ソロがダークサイドに堕ちると、誰にも告げず死を待つためにオクトーへと隠遁するのは、十字架にかけられるのと同義。
そして、幽体となって戻ってくるのは、三日の後に復活する描写と符合する。
キリストが復活したのは、神の言葉の真実を示し、信仰が死をも超越することを伝えるためだが、ルークの場合は遠い昔に自らが体現した”希望”の火を再び灯すと共に、人々の頭の中にある神話の救世主としてのジェダイを消し去るためだ。
ルークは、カイロ・レンに「私は最後のジェダイではない」という。
しかし、やはり彼は最後のジェダイなのだ。
取り返しのつかない失敗を悔い、ジェダイを否定しつつも自分がジェダイの象徴であることの葛藤から逃れられないルークに、嘗ての師ヨーダは「失敗こそ大切だ。失敗を教えて、弟子に自分を超えさせろ。それこそ全ての”マスター”の使命だ」と諭す。
本来、宇宙のあらゆるものの間に存在する、”バランス”を意味する言葉だったフォース。
その秘密に気づき、コントロールすることができた古のジェダイたちは、集団を能力を持つ特別な"血"に基づき宗教化した。
ところが、ルークが懺悔するように、ジェダイはその組織の性格ゆえ絶頂期に驕り高ぶり、狡猾なダース・シディアスによって滅ぼされ、そんなオリガーキー集団に安全保障を託していた旧共和国も脆くも崩壊。
ジェダイの失敗を救ったルーク自身も、その後のジェダイ・オーダー再編の時点で同じ轍を踏む。
私は前作の時点で、レイも結局ジェダイの誰かの娘なのだろうと考えていたが、このシリーズが「ヒーローズ・ジャーニー」の構造から完全に決別するとは思わなかった。
本作で彼女の親は、ジェダイでもなんでもない、金のために娘を捨てた放蕩者であったことが明かされる。
苗字が明かされず”誰でもない存在”だったレイ、名前どころか番号で呼ばれていたフィン、そして本作のラストシーンでフォースで箒を引き寄せる少年によってさりげなく示唆されるように、今後の「スター・ウォーズ」の世界は、権威によって選ばれし者たちによる物語ではなく、フォースを持っていないか、たまたまフォースを持っている”誰でもない人々”による物語へと舵を切ってゆくのだろう。
あくまでも宇宙のバランスを取るために、自然に生まれるのがフォースの使い手、これはむしろ「機動戦士ガンダム」のニュータイプに近い。
光があれば常に闇があり、ダークサイドの脅威と戦うのは、フォースの能力の有無にかかわらず、あくまでも普通の人。
この世界観への大転換こそ、ディズニー傘下でこれからますます広がってゆくであろう「スター・ウォーズ」の新たな宇宙へと繋げるために、新三部作に課された使命であり、最後に立ちはだかる旧世界の象徴が、ジェダイ、そしてシスの血統であるカイロ・レンとなる構図なのだろう。
だからこそ本作では、フォース無き人々の銀河大戦を描く「ローグ・ワン」と同じように、嘗てのナンバリングされた”正史”の作品では顧みられなかった、その他大勢の犠牲に対して初めて深い痛みを感じさせる。
ライアン・ジョンソンの出世作の「LOOPER/ルーパー」は、ウロボロスの輪に閉じ込められたジョセフ・ゴードン=レヴィットが、究極の決断によって蛇の腹を食い破る話だった。
本作のルークもまた、スカウォーカー一族の運命を自ら断ち切る。
マーク・ハミルは、ある意味ルーク・スカイウォーカーの呪縛によって俳優としてのキャリアを殺された。
初めてルークを演じてからちょうど40年後の本作により、彼は見事に時の輪を閉じ、フィクションとリアルの両方で、同時にウロボロスの輪から脱出してみせた。
最後の最後まで、青春の日と同じ眼差しで、水平線の向こうの二つの太陽を見つめ続ける姿は、やはり最後の希望にして最後のジェダイにふさわしい。
おそらく幽体となって次回作にも出演するのだろうが、一つの時代の終わりと新しい時代の始まりを予感させる見事な幕切れ。
今回もヨーダが現れて、ルークに「会いたかったよ」と言うシーンで懐かしすぎて思わず涙が出たが、いろいろいなくなった人が多くなってきたシリーズ、次回も葛藤するレイかカイロ・レンの元にルークが出てきたら泣いてしまうかも知れん。
ところで、ルークとは対照的に、シスのボスの運命を最も間抜けな形で体現しちゃったのが最高指導者スノーク。
見くびっていたレンの本心も読めず、スッパリ真っ二つとは最高指導者の名がすたる。
まあ確かに「奴の修行」は師匠殺しで完結したんだろうし、ボスキャラの最後があっけないのは、ガッちゃんビームでルークをいたぶるのに夢中になって、真横にいるダース・ヴェーダーの葛藤に気づかなかったダース・シディアスからの伝統でもあり、オマージュなのだろうけど。
まあこっちではトホホな結末だったが、スノークを演じたアンディ・サーキスには「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」のシーザーという素晴らしい仕事があった。
来年のオスカーの授賞式では、是非ともマーク・ハミルとアンディ・サーキスが、主演男優賞にノミネートされている光景が見たい。
そして、”In Memory of Our Princess:CARRIE FISHER.”
フォースと共に安らかにあらんことを。
今回は、銀河の彼方の物語から「ミルキー・ウェイ」をチョイス。
ジン30ml、アマレット30ml、ストロベリー・リキュール10mlとストロベリー・シロップ10mlをシェイクしてタンブラーに注ぎ、パイナップル・ジュース80mlを注いでステアする。
作者は岸久氏で、1996年のインターナショナル・カクテル・コンペティションのロング部門の優勝作。
星型のレモンピールと、月に見立てたカットアップルを飾って完成。
とても飲みやすく、目でも舌でも味わえる、甘口でロマンチックなカクテルだ。
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新生「スター・ウォーズ」三部作第二弾。
前作で共和国が破壊され、わずかに残ったレジスタンスにもファースト・オーダーの脅威が迫る。
一方、伝説のジェダイ・マスター、ルーク・スカイウォーカーを発見したレイは、自らのメンターとなりレジスタンスを救ってほしいと懇願するが、ルークはなぜか受け入れない。
いったい、ルークの過去に何があったのか?
最強リブート職人、J・J・エイブラムスが作った「フォースの覚醒」は、保守的な中に新しい風を吹き込んだ「スター・ウォーズ・アンソロジー」として完璧な一本であった。
対して、バトンを受け継いだライアン・ジョンソンは、エイブラムスが世界観に開けた風穴を極大化する。
本作は前作のメインであった三人の若者たち、レイ、カイロ・レン、フィンをそれぞれフィーチャーしながらも、物語の主役は旧三部作以来のルーク・スカイウォーカーその人であり、シリーズの根幹をなす”ジェダイ”とは”フォース”とは何なのかを明確化。
それは即ち、40年前にジョージ・ルーカスが作り上げた世界を、リスペクトを捧げながらも"神話"として葬り去ることなのである。
※核心部分及びラストに触れています。
惑星オクトーの最古のジェダイ寺院を訪れたレイ(デイジー・リドリー)は、隠遁生活を送っていたルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)と会い、危機にあるレジスタンスを助け、フォースを覚醒した自分を導いて欲しいと求めるが、ルークは頑なに拒否。
彼は、嘗て愛弟子だったベン・ソロがダークサイドに堕ち、”ダース・ヴェーダーを継ぐもの”カイロ・レン(アダム・ドライバー)となるのを止められず、新ジェダイ・オーダーの壊滅を招いたことを深く後悔し、この忘れられた惑星でただ死を待っていた。
その頃、ファースト・オーダーの攻撃によって、指揮官のレイア(キャリー・フィッシャー)が意識不明の重傷を負う。
代行を任されたホルド提督(ローラ・ダーン)の無策に焦ったポー・ダメロンは、フィン(ジョン・ボイエガ)とローズ(ケリー・マリー・トラン)と共に、ファースト・オーダーの追跡装置を無力化すべく作戦を練るが、それには彼らのコードを破れるプロフェッショナルが必要。
フィンとローズは、”マスター・コードブレイカー”を探して、惑星カントニカにあるカジノ都市カント・バイトへ潜入するのだが、ひょんなことから現地の当局によって拘束されてしまう。
レジスタンス艦隊の燃料が尽きるまであとわずか。
一方のレイも、一向に動かないルークに業を煮やして、カイロ・レンをダークサイドから救い出すために動き始める・・・・
予告や宣伝のミスリードが巧みだったので、すっかり騙された。
てっきり道に迷ったレイがダークサイドに堕ちかける、もしくはルーク自身が自責の念に耐えかねて裏切るのかと思っていたのだが、予想はことごとく外れ、いい意味で全く先の読めない驚くべき作品になっていた。
確かにこれは「衝撃のスター・ウォーズ」で、観客の立場から言えば、本作のMVPはディズニーの宣伝部だろう。
巷では見事なまでに賛否両論になっている様だが、端的に言えば本作は重大な欠点を内包した大傑作であると思う。
特に大きな欠点は二つ。
これは本作に限ったことではないが、このシリーズでは世界観のベースとなるフォースの能力に、全く”枷”が嵌められていない。
よくできたファンタジーやSFでは、その世界観独自の能力には何ができて何ができないのか枷が設定されているものだ。
例えば「ハリー・ポッター」シリーズでは、各キャラクターの使える魔法、苦手な魔法が設定されていて、それが見せ場や危機演出に生かされている。
逆にこの種の能力に枷がないと、どんな状態に陥っても何でも出来ることになってしまい、サスペンスが生まれない。
今回は特に、幽体のはずのヨーダが杖でルークをコツコツしちゃったり、雷雲を読んでジェダイ寺院を燃やしちゃったりする。
アレができるのであれば、ジェダイは死んでも現世に物理的な影響を及ぼせることになり、そもそも死の意味が無くなってしまう。
同じ文脈で、クライマックスのルークが自らの幽体を作り出すことや、ファースト・オーダーの攻撃で宇宙空間に放り出されたレイアが、突然フォースを発動して生還する描写にも、過去のフォースの描写を大きく逸脱する違和感が拭えない。
ちなみに、NASAの見解では、宇宙空間に生身の人間が放り出されても、1、2分程度であれば生存できるというから、そこは問題でない。
もう一つ、作劇上の大きな問題点が、1時間近くの尺をかけて描いたポー、フィン、ローズの行った作戦が、最終的に全く意味が無いどころか、ベニチオ・デル・トロの裏切りを招き、無傷で脱出できるはずだった輸送船の大半を撃沈されるという惨事を招いていること。
これはホルド提督が一言告げておけば良かっただけの話で、いくらなんでもホウレンソウが無さすぎるぞレジスタンス。
まあホウレンソウ不足はファースト・オーダーも同じようなもので、どうやって鉄の規律を維持しているのかも謎なのだけど。
一応、このエピソードは、弱いながらもポー・ダメロンのリーダーとしての成長をもたらす役割を負っているので、「失敗こそが大切」というヨーダの言葉にもかかるのだけど、終わってから振り返ってみて気づくのではなく、観ている間に「これやっていることに意味が無いんじゃ・・・」と観客に思わせてしまう展開はやはり問題だろう。
何より、魅力的なキャラクターたちを愚かに見せてしまう。
他にも、超科学兵器同士が宇宙空間で戦ってるのに、レジスタンスの爆撃機が装備しているのが、まさかの第二次世界大戦型の自由落下爆弾だったり、出来るのは知ってたけど今まではあえてやらなかったハイパードライブによる特攻とか、突っ込みどころと禁じ手が満載である。
しかし、ライアン・ジョンソンは、この辺りの欠点を十分認識しつつ、あえて無視しているような気がする。
まあ「LOOPER/ルーパー」で、タイム・トラベルの仕組みを問われたブルース・ウィリスに「めんどくさいから説明しない」という強引な回答をさせた人だから、ただ単に整合性にはあんまり興味がないのかもしれないが。
このシリーズが、基本なんでもありだったのは、ルーカスの創造した世界が、リアルなSFというよりも神話的なファンタジーだったからで、本作の大きな目的がその構造からの脱出だからだ。
思えば本作に至る「フォースの覚醒」と「ローグ・ワン」で、布石は既に打たれていた。
ギリシャ神話で言えば、選ばれしデミ・ゴッドであるルーク・スカイウォーカーの神話的冒険譚は、より未熟で人間的に葛藤する若者たちによる「フォースの覚醒」によって置き換えられ、無敵のヒーローの活躍の裏側に、無数の名も無き人々による犠牲があったことは、主要登場人物が銀河に”希望”を繋ぐために全員戦死する「ローグ・ワン」によって鮮烈に描かれた。
新時代の「スター・ウォーズ」は、現在では陳腐化してしまった「ヒーローズ・ジャーニー」の世界観に留まってはいられず、古びた世界を壊し、新たに構築する必要がある。
そのために、再登板するのが旧シリーズの代表者たるルーク・スカイウォーカーなのだ。
本作のルークの役割は、「ヒーローズ・ジャーニー」の主人公ではなく、悩めるキリストのメタファーであることが色濃い。
ギリシャ、ローマの神々をキリスト教が駆逐したように、ここではルーク自らが古のジェダイへの信仰を自ら否定するのである。
十二人の弟子を連れて、荒野にジェダイ寺院を立てる時点で、彼らがキリストと十二人の使徒であることを隠そうとする意図は無い。
そしてキリストが「汝のなすべきことをせよ」とユダが裏切り者であることを示した瞬間、彼の中にサタンが入ったのと同様に、ベン・ソロがダークサイドに堕ちると、誰にも告げず死を待つためにオクトーへと隠遁するのは、十字架にかけられるのと同義。
そして、幽体となって戻ってくるのは、三日の後に復活する描写と符合する。
キリストが復活したのは、神の言葉の真実を示し、信仰が死をも超越することを伝えるためだが、ルークの場合は遠い昔に自らが体現した”希望”の火を再び灯すと共に、人々の頭の中にある神話の救世主としてのジェダイを消し去るためだ。
ルークは、カイロ・レンに「私は最後のジェダイではない」という。
しかし、やはり彼は最後のジェダイなのだ。
取り返しのつかない失敗を悔い、ジェダイを否定しつつも自分がジェダイの象徴であることの葛藤から逃れられないルークに、嘗ての師ヨーダは「失敗こそ大切だ。失敗を教えて、弟子に自分を超えさせろ。それこそ全ての”マスター”の使命だ」と諭す。
本来、宇宙のあらゆるものの間に存在する、”バランス”を意味する言葉だったフォース。
その秘密に気づき、コントロールすることができた古のジェダイたちは、集団を能力を持つ特別な"血"に基づき宗教化した。
ところが、ルークが懺悔するように、ジェダイはその組織の性格ゆえ絶頂期に驕り高ぶり、狡猾なダース・シディアスによって滅ぼされ、そんなオリガーキー集団に安全保障を託していた旧共和国も脆くも崩壊。
ジェダイの失敗を救ったルーク自身も、その後のジェダイ・オーダー再編の時点で同じ轍を踏む。
私は前作の時点で、レイも結局ジェダイの誰かの娘なのだろうと考えていたが、このシリーズが「ヒーローズ・ジャーニー」の構造から完全に決別するとは思わなかった。
本作で彼女の親は、ジェダイでもなんでもない、金のために娘を捨てた放蕩者であったことが明かされる。
苗字が明かされず”誰でもない存在”だったレイ、名前どころか番号で呼ばれていたフィン、そして本作のラストシーンでフォースで箒を引き寄せる少年によってさりげなく示唆されるように、今後の「スター・ウォーズ」の世界は、権威によって選ばれし者たちによる物語ではなく、フォースを持っていないか、たまたまフォースを持っている”誰でもない人々”による物語へと舵を切ってゆくのだろう。
あくまでも宇宙のバランスを取るために、自然に生まれるのがフォースの使い手、これはむしろ「機動戦士ガンダム」のニュータイプに近い。
光があれば常に闇があり、ダークサイドの脅威と戦うのは、フォースの能力の有無にかかわらず、あくまでも普通の人。
この世界観への大転換こそ、ディズニー傘下でこれからますます広がってゆくであろう「スター・ウォーズ」の新たな宇宙へと繋げるために、新三部作に課された使命であり、最後に立ちはだかる旧世界の象徴が、ジェダイ、そしてシスの血統であるカイロ・レンとなる構図なのだろう。
だからこそ本作では、フォース無き人々の銀河大戦を描く「ローグ・ワン」と同じように、嘗てのナンバリングされた”正史”の作品では顧みられなかった、その他大勢の犠牲に対して初めて深い痛みを感じさせる。
ライアン・ジョンソンの出世作の「LOOPER/ルーパー」は、ウロボロスの輪に閉じ込められたジョセフ・ゴードン=レヴィットが、究極の決断によって蛇の腹を食い破る話だった。
本作のルークもまた、スカウォーカー一族の運命を自ら断ち切る。
マーク・ハミルは、ある意味ルーク・スカイウォーカーの呪縛によって俳優としてのキャリアを殺された。
初めてルークを演じてからちょうど40年後の本作により、彼は見事に時の輪を閉じ、フィクションとリアルの両方で、同時にウロボロスの輪から脱出してみせた。
最後の最後まで、青春の日と同じ眼差しで、水平線の向こうの二つの太陽を見つめ続ける姿は、やはり最後の希望にして最後のジェダイにふさわしい。
おそらく幽体となって次回作にも出演するのだろうが、一つの時代の終わりと新しい時代の始まりを予感させる見事な幕切れ。
今回もヨーダが現れて、ルークに「会いたかったよ」と言うシーンで懐かしすぎて思わず涙が出たが、いろいろいなくなった人が多くなってきたシリーズ、次回も葛藤するレイかカイロ・レンの元にルークが出てきたら泣いてしまうかも知れん。
ところで、ルークとは対照的に、シスのボスの運命を最も間抜けな形で体現しちゃったのが最高指導者スノーク。
見くびっていたレンの本心も読めず、スッパリ真っ二つとは最高指導者の名がすたる。
まあ確かに「奴の修行」は師匠殺しで完結したんだろうし、ボスキャラの最後があっけないのは、ガッちゃんビームでルークをいたぶるのに夢中になって、真横にいるダース・ヴェーダーの葛藤に気づかなかったダース・シディアスからの伝統でもあり、オマージュなのだろうけど。
まあこっちではトホホな結末だったが、スノークを演じたアンディ・サーキスには「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」のシーザーという素晴らしい仕事があった。
来年のオスカーの授賞式では、是非ともマーク・ハミルとアンディ・サーキスが、主演男優賞にノミネートされている光景が見たい。
そして、”In Memory of Our Princess:CARRIE FISHER.”
フォースと共に安らかにあらんことを。
今回は、銀河の彼方の物語から「ミルキー・ウェイ」をチョイス。
ジン30ml、アマレット30ml、ストロベリー・リキュール10mlとストロベリー・シロップ10mlをシェイクしてタンブラーに注ぎ、パイナップル・ジュース80mlを注いでステアする。
作者は岸久氏で、1996年のインターナショナル・カクテル・コンペティションのロング部門の優勝作。
星型のレモンピールと、月に見立てたカットアップルを飾って完成。
とても飲みやすく、目でも舌でも味わえる、甘口でロマンチックなカクテルだ。

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この記事へのコメント
あの死は演出力不足で、感動には到底至りませんでした...(涙)
映画もこの記事も(^^)/
観た人たちがつけているケチやつっこみは当然製作者はわかって作っていますよね。
エピソード9がぶち壊さないことを祈っています。
観た人たちがつけているケチやつっこみは当然製作者はわかって作っていますよね。
エピソード9がぶち壊さないことを祈っています。
>onscreenさん
やたらいっぱい死にましたからね。
どの死でしょうか。スノーク?
>まっつぁんこさん
確信犯的に世界観を変えてきてますよね。
私的にはこれからますます楽しみになりました。
まあ9はJ・Jだから大きく外すことはないと思われ。
やたらいっぱい死にましたからね。
どの死でしょうか。スノーク?
>まっつぁんこさん
確信犯的に世界観を変えてきてますよね。
私的にはこれからますます楽しみになりました。
まあ9はJ・Jだから大きく外すことはないと思われ。
2017/12/22(金) 22:19:03 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
個人的には結構楽しめました。
オビ・ワンがアナキンとルークを時間軸をずらして弟子にしたように、カイロ・レンとレイを時間軸をずらして弟子にしたルーク・スカイウォーカー。
彼の最後はあまりにも格好良すぎましたよ。
オビ・ワンがアナキンとルークを時間軸をずらして弟子にしたように、カイロ・レンとレイを時間軸をずらして弟子にしたルーク・スカイウォーカー。
彼の最後はあまりにも格好良すぎましたよ。
>にゃむばななさん
新三部作の終わりもタトゥイーンの風景にかぶせてきましたが、あれはやはりSW世界の原風景なのですよね。
目の前を見ろとヨーダに言われたのに、最後まで水平線を見つめたルーク、泣けました。
新三部作の終わりもタトゥイーンの風景にかぶせてきましたが、あれはやはりSW世界の原風景なのですよね。
目の前を見ろとヨーダに言われたのに、最後まで水平線を見つめたルーク、泣けました。
2017/12/27(水) 16:47:17 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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エピソード8となるスター・ウォーズの最新作。
監督は『ルーパー』のライアン・ジョンソン。
レジスタンスのレイア将軍を演じるキャリー・フィッシャーにとっては遺作となった作品。
前作で敵のスターキラー基地(新型デス・スター)を破壊したレジスタンスだが、まだ敵のファースト・オーダーに追われている。ワープで逃げたはずなのになぜかすぐに敵も跡を追ってきて、逃げ場はなくなってし...
2017/12/18(月) 23:27:38 | 映画批評的妄想覚え書き/日々是口実
最後のジェダイは、すでにいる…
詳細レビューはφ(.. )
https://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201712150000/
スター・ウォーズ/最後のジェダイ オリジナル・サウンドトラック [ (オリジナル・サウンドトラック) ]価格:2916円(税込、送料無料) (2017/12/11時点)
2017/12/19(火) 06:31:11 | 日々“是”精進! ver.F
映画 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2D/日本語字幕版)』(公式)を本日、劇場鑑賞。採点は、★★★★☆(最高5つ星で、4つ)。100点満点なら75点にします。
ディレクター目線のざっくりストーリー
フォースの力に目覚めた少女レイは、ダース・ベイダーの遺志を受け継ぐカイロ・レンとの死闘の末、ついに伝説のジェダイルーク・スカイウォーカ...
2017/12/19(火) 19:04:24 | ディレクターの目線blog@FC2
個人的には、期待したほどではなかった。
2017/12/19(火) 23:34:17 | 或る日の出来事
SF映画の金字塔「スター・ウォーズ」サーガの新3部作の幕開けとして2015年に公開され、世界中で空前の大ヒットとなった「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のその後を描く続編。ついにフォースを覚醒させ、伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーと出会ったレイを待ち受ける驚愕の運命と、ファースト・オーダーとレジスタンスの戦いの行方を描く。主演は引き続きデイジー・リドリー。共演陣にはアダム・ドライヴ...
2017/12/20(水) 12:22:16 | 映画に夢中
スカイウォーカー家の葛藤 公式サイト http://starwars-jp.com/lastjedi 監督・脚本: ライアン・ジョンソン 「LOOPER/ルーパー」 「BRICK ブリック」 レイア
2017/12/20(水) 23:13:37 | 風に吹かれて
レイア・オーガナ将軍の命を受け、レイとチューバッカはR2-D2を連れ、隠遁生活を送る伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの元を訪れるが、ルークは話を聞こうともしない。 一方、レジスタンス軍は敵ファースト・オーダーのカイロ・レンの攻撃によって大きなダメージを受け、既に燃料も尽きかけていた…。 SFスペースファンタジー「スター・ウォーズ」シリーズ第3部第2話エピソード8。
2017/12/21(木) 23:14:11 | 象のロケット
評価:A まずはアメリカのサイトRotten Tomatoes(腐ったトマト)で
2017/12/22(金) 20:04:53 | エンターテイメント日誌
映画『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』は、とうとうシリーズ8作目になりました。
2017/12/24(日) 00:50:31 | 大江戸時夫の東京温度
☆☆☆☆☆ (10段階評価で 10)
12月15日(金) 109シネマズHAT神戸 シアター8にて 15:40の回を鑑賞。 2D:字幕版。
12月21日(木) 109シネマズ大阪エキスポシティ シアター11にて 12:10の回を鑑賞。 IMAX:2D:字幕版。
2017/12/28(木) 13:51:15 | みはいる・BのB
「スター・ウォーズ」の新サーガ2作目の物語になる。前作「フォースの覚醒」で自分の中にフォースを感じたレイがルーク・スカイウォーカーの元で修行して、レジスタンスの存続に力を尽くす。暗黒面のファースト・オーダーはレジスタンスを追い詰めて滅亡させるつもりだ。どう
2017/12/31(日) 22:49:17 | とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver
元日はファーストデーだったので、映画「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」を鑑賞しました。
2018/01/06(土) 00:44:26 | FREE TIME
新年あけに見てきたので感想です
なんだかんだでエピソード7は一度しか見ていないのでちょっとうろ覚えな部分があったかも
間にローグワン見てたし
色々と賛否両論らしい今作でしたがある意味面白かったです
2018/01/08(月) 14:03:09 | にきログ
随分、賛否両論だったみたいですね。でも、たしかに「そ、その展開は…」だっただけに、アンチの気持ちも、分かるなぁ… と感じてしまったのでした。個人的には、それが確認できて、納得 (解説)「スター・ウォーズ」の10年ぶりの新作として大ヒットを記録した「スター・ウォーズ フォースの覚醒」に続くシリーズ作品で、伝説のジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーを探し当てた主人公レイがたどる、新たな物...
2018/11/30(金) 15:44:18 | のほほん便り
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