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ショートレビュー「勝手にふるえてろ・・・・・評価額1700円」
2017年12月27日 (水) | 編集 |
オタク系絶滅危惧種の恋。

人間の想像力、もとい妄想力は凄い。
幼い頃、イマジナリーフレンドがいた人は多いだろう。
自分にしか見えない空想の友だちは、やがて世界が家の外に広がり、現実の友だちが増えるにつれて消えてゆく。
しかし、思春期を迎え日々の生活が社会的になると、新しいタイプの妄想が湧き上がってくる。
それが、“理想の自分”だ。
コンプレックスに苛まれる現実の自分とは異なり、あるべき自分、ありたい自分を作り出し、心の中のパラレルワールドに住まわせる。
この妄想のドッペルゲンガーは、うまく付き合えば自分を高めてゆける燃料にもなり得るが、しばし現実を食い尽くしそうになるので厄介だ。
※核心部分に触れています。

綿矢りさの原作は未読。
主人公の江藤良香は、都内の会社で経理の仕事をしている。
彼女は自分のことを語るのが大好きで、行きつけのカフェのウエイトレスから釣り人のオッさんに至るまで、出会う人行き交う人に自分語りする一見社交的なキャラクターだ。
彼女には中二で出会ってからずっと好きな初恋の人、一宮がいるのだが、ある日突然ウザ系同僚の霧島にコクられてしまう。
本命の一宮が“イチ”で、成り行きで友だち付き合いすることになった霧島が“ニ”の序列。
日常でニの比重が重くなってくると、良香は焦り始める。
「これで良いのか」と。
同窓会を画策した彼女は10年ぶりに理想の王子、イチと再会を果たすのだが、映画はここからガラリと様相を変えてくる。

冒頭から描かれてきたことの大半は、リアルな良香ではなく、妄想の良香の世界
彼女はカフェのウエイトレスとも、釣り人のオッさんとも話したことが無く、会社で隣の席の来留美の他は親しい友だちもいない。
そして10年間恋し続け、自分は彼の思い出に刻み込まれていると思っていたイチには、名前すら覚えられていなかったという痛恨の真実。
それまでの世界観をグルリと反転させ、主人公の人物像を浮き立たせるとともに、作品世界をイタタな心象として成立させる秀逸なロジック。
この辺りは実に映画的な表現で、原作ではどの様に表現されているのか気になる。
しかし妄想こじらせ系のメンタルを、ここまでリアルに描いちゃうとか。
良香に負けず妄想力の強い私としては、まるで若い頃の自分を観てる様で非常にツライ映画である( ;´Д`)

妄想でなくリアルな恋が始まる時、良香は否が応でも現実と向き合わねばならない。
脳内の虚構を通して見てた世界とは違って、現実は切なくて、悲しくて。
恋には破れ、友情にも裏切られ、そんな現実の自分が惨めで、化石のアンモナイトみたいに絶滅させたくなって、それでも永遠に妄想の世界には住めない。
脚色も担当する大九明子監督のテリングはテンポ良く、突然のミュージカル調など外連味を効かせつつ、意外にも単独初主演だという松岡茉優を見事に生かし切る。
ボロボロになった良香の、ラストショットの“リアル”には心を撃ち抜かれた。

本作は、主人公を自分の中に感じられるかどうかで、かなり評価が変わってくるだろう。
妄想癖のあるオタク脳の人ほど、共感するのは間違いない。
私が妄想の自分を作り出したのも、多分中二くらいの時。
さすがにこの歳になると妄想に自分を支配されてはいないけど、現実に打ちのめされるとヤツはしっかり顔を出す。
自分が絶滅する時までに、せめてもうちょっと一致出来れば良いのだけど。

今回は、現実に疲れた時に思わず手が出てしまう伝統のカップ酒、「ワンカップ大関」をチョイス。
安酒だけに、ぶっちゃけ大して美味しくはない。
しかし心が弱っている時に飲むと、妙に肝臓にしみるのである。
悪酔いしやすいので、量はほどほどにしよう。

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コメント
この記事へのコメント
妄想
妄想癖ある方でもないと思う(それが妄想?w)けど共感できました。
2018/01/10(水) 13:37:55 | URL | まっつぁんこ #L1vigvx6[ 編集]
こんばんは
>まっつぁんこさん
妄想癖があると、共感を超えてほぼ自分と松岡茉優を同一視できちゃいますw
それがまさしく不気味な妄想ではあるのですが。
2018/01/11(木) 22:32:44 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
この歳になりまして、やっとこさ妄想の自分にうまく現実の自分を引っ張り上げてもらえるようになりました。(ボケ始めたともう言うか!?)

わたしのことはともかく、映画があまりにも面白かったので慌てて原作読んだのですが、色々驚きました。
まず、脚色があまりにも見事です。基本線はほぼ踏襲しながらも全く別物と言ってもいいです。

わたしが一番驚いたのは、ヨシカちゃんが「アトピー持ちの上に、テレビでいじられてる女芸人にそっくり」という描写。原作ではルックスがとっても不自由なんですよ。
映画では松岡茉優ちゃんが演じてて、せっかくお顔立ちはきれいなのに引っ込み思案過ぎる女の子、って感じでしたが、ひょっとしてそれすら彼女の妄想ってことではなかったのか?!と、一瞬焦りました。まさかそこまで凝ったつくりではないでしょうが.........
2018/02/10(土) 19:57:49 | URL | tanukibayashi #-[ 編集]
こんばんは
>tanukibayashiさん
ヨシカの容姿も含めて、映ってるものが現実じゃないんじゃないかと言うのは私も感じました。
と言うか、そう思えるように演出しているかと。
現実と妄想がほどよく溶けあってシームレス。
それがこの映画の面白さを作り出しているように思います。
2018/02/15(木) 21:59:00 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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