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悪女/AKUJO・・・・・評価額1700円
2018年02月19日 (月) | 編集 |
その女、凶暴につき。

最初は犯罪組織の、次は国家の暗殺者となる一人の女の、情念の復讐劇。
スタント畑出身という異色の経歴を持つ、チョン・ビョンギル監督による、驚くべき未見性を持ったアクション大作である。
彼が一躍注目を集めた出世作「殺人の告白」は、日本でも「22年目の告白-私が殺人犯です-」としてリメイクされ、大ヒットしたのは記憶に新しい。
驚異的な戦闘能力を持つ主人公スクヒを、パク・チャヌク監督の怪作「渇き」の、欲望のままに暴走するヴァンパイア役で鮮烈な印象を残したキム・オクビンが演じ、圧巻の存在感。
無垢なる少女を殺人マシーンに育て上げる、中国朝鮮族マフィアの男ジュンサンにシン・ハギュン、彼女に第二の人生を与える国家情報院の幹部クォンをキム・ソヒョン、そして彼女を血塗られた運命から解放しようとする男ヒョンスをソンジュンが演じる。
これはアクション映画の新たな地平を切り開く、戦闘ヒロイン物の傑作だ!
※ラストに触れています。

ソウルの暴力団事務所が何者かに襲撃され、全滅する。
捕らえられたのは謎の女、スクヒ(キム・オクビン)だった。
その恐るべき戦闘スキルに注目した国家情報院は、スクヒを死んだことにして、暗殺要員として第二の人生を与える。
10年間国家に仕えれば、自由の身になれるのだ。
そんな彼女の前にヒョンス(ソンジュン)という男が現れ、次第に二人は惹かれあう。
ところが結婚式当日に、新たな暗殺指令が下る。
スクヒがライフルのターゲットスコープの向こうに見たのは、死んだはずの夫ジュンサン(シン・ハギュン)だった。
彼こそが、孤児だったスクヒを最強の暗殺者に育て上げた、中国朝鮮族の裏社会のキーマン。
なぜ彼は生きているのか、ジュンサン出現により、スクヒの第二の人生は音を立てて崩れはじめる・・・


冒頭8分に及ぶ、神がかったアクションシークエンスに度肝を抜かれる。
ファーストパーソン・シューティングゲームを思わせる、POVのワンシーンどころかワンシークエンス・ワンショット風のビジュアルで、暴力団事務所のビルを襲撃。
最初は銃で現れる男たちを次々となぎ倒し、弾が尽きると今度は二刀流の刀で斬って斬って斬りまくる。
最後にはプロレスラーのような屈強な男たちと肉弾戦となり、ここで鏡に映ることでようやく殺戮の主が小柄な女性であることが明らかとなる、凝った仕組み。
もちろん、これは実際にはワンショット撮影ではなく、細かく割った映像をデジタルでつないでいるのだが、観客の目線を主人公と一体化することによって、一気に作品世界に誘い込み、同時に彼女の圧倒的な戦闘能力を体験させる一石二鳥。
誰もが、この美しくも恐ろしい主人公、スクヒに魅了されてしまうのである。

ストーリー的には、リュック・ベッソン監督の全盛期の代表作、「ニキータ」のバリエーションと言えるだろう。
警官を殺した不良少女が、フランス国家の暗殺要員となる物語とは、世界観の基本設定やキャラクターの役割などが酷似している。
アンヌ・パリローが演じた、タイトルロールのニキータがスクヒとなり、彼女のメンターとなるキム・ソヒョンの国家情報院の幹部は、チェッキー・カリョとジャンヌ・モローを合わせたキャラクター。
ジャン=ユーグ・アングラードの役は、ソンジュン演じるヒョンスだ。
本作で、結婚式の控え室のトイレから、ウェディングドレスのスクヒが狙撃を命じられるエピソードは、「ニキータ」のベネチアのホテルのバスルームから狙撃するシークエンスへの、明らかなオマージュになっている。

だが、基本設定は似ているものの、両作の全体像は相当に異なったものだ。
ただの不良少女が、国家によって暗殺者として育てられる「ニキータ」と違って、本作のスクヒは最初から最強の暗殺者として映画に登場する。
本作はメインプロットとなる物語の前提として、冒頭の暴力団事務所襲撃に至るスクヒの過去が重要な意味を持つ。
あくまでも現在の事象のみで話が進む「ニキータ」と異なり、こちらは過去の因縁が現在のスクヒを呪い縛り付ける、いかにも韓国的な“恨(ハン)”の物語なのである。
映画の前半は、いきなり暴力団を壊滅させたスクヒが、国家情報院の暗殺要員に育て上げられるプロセス。
後半はシャバに出た彼女が、過酷な任務をこなしつつ、新たな人生をスタートするのだが、ここに時系列を行ったり来たりしながら、彼女の過去が急速に収束してくる複雑な構造だ。

このややこしい筋立ては、成功している部分と、上手くいっていない部分がある。
国家情報院の監視役であるヒョンスと、彼の正体を知らずに惹かれてゆくスクヒの、嘘と真実がまじりあう切ない恋愛パートなどは、ウェットな情感を感じさせてなかなか良い。
自暴自棄となったスクヒが改めて生きようとする意欲の源を、彼女の育ての親であり最初の夫となった、ジュンサンとの間に生まれた娘に設定しているのも、終盤の彼女の行動に大きな意味を持ってくる。
一方で、かなりアバウトなジュンサンの行動原理と、彼の巡らせている陰謀の中身がさっぱりわからないのは問題だ。
そもそもの始まりは、ジュンサンがスクヒの父親を殺し、孤児となった幼少期の彼女を組織の暗殺者として育てたこと。
だが、事件の発端となったらしい父親の持っていた宝石が何だったのか、暴力団事務所のHDDがどう関係するのか、なぜジュンサンは自らの死を偽装したのかなど、おそらく設定はされているのだろうが、多くの描写の意味が最後までよく分からないまま終わっている。
まあHDDなどのアイテムは、いわゆるマクガフィンとして機能させようとしたとしても、子供まで作っているジュンサンのスクヒに対する感情と行動原理は、もう少し整合性を持たせてほしかった。

もっとも、これら筋立て上の明確な欠点をあげつらったところで、未見性の塊の様な本作のテリングによる、「もの凄いモノを観た」という異様な熱気と魔力に抗うのは難しい。
全然タイプは違うものの、突っ込みどころ満載の筋立てを、怒涛のビジュアルによって観客の意識ごと強引にねじ伏せてしまう力技は、「バーフバリ」二部作にも匹敵する。
本作を端的に表すなら、キム・オクビンの、キム・オクビンによる、キム・オクビンのための華麗なる殺戮ショー
実際に格闘技の有段者だという、彼女のカッコいいアクションを眺めているだけで十分胸アツ。
冒頭の8分間で観客の心を完全につかむと、「誰も経験したことの無い世界を見せてやる!」とばかりに、さらなるサービス精神を発揮して存分に期待に応えてくれる。
スクヒの“卒業試験”となる、日本のヤクザの親分暗殺後のバイクチェイスとか、一見しただけではどうやって撮っているのか分からないショットが多々。
猛スピードで疾走しながら、日本刀で斬り合いとか、本作の特徴でもあるウェアラブルカメラ風の広角画面がスピード感を増幅し、興奮のあまり脳内に変な汁が出る。
いやー、こんな凄まじいものを作られてしまって、本家ヤクザ映画の国としては一体どうしたらいいのだろう。
その後の「ニキータ」オマージュの狙撃を挟んで、最後にはバスチェイス+肉弾戦という、これまた吃驚するしかない怒涛のクライマックスが待っているのである。
逃げるジュンサンたちの乗ったバスに追いついたスクヒは、すかさず乗り移ると窓ガラスをぶち割り、手斧を片手に次々と男たちを血祭りにあげてゆく。
そして遂に、もっとも愛し、もっとも憎んだジュンサンとのボスキャラ戦に突入するのだ。

終盤の一気呵成の展開は、韓国映画らしく全く情け容赦無く、その分悲しい運命に翻弄され、復讐の鬼神と化したスクヒの悲劇性が極まる。
しかも、ラストは完全にオープニングの殺戮の対となっていて、愛する者の死による悲劇の無限ループを感じさせるのは秀逸。
続編があるのかは分からないが、情念の暗殺者スクヒの物語は観客の心に確実に刻まれ、彼女は銀幕のアイコンとして永遠の生を得たのである。
ところで、彼女は幼少期からずっと自由意志を奪われている、究極の巻込まれ型キャラクターで、最後まで「悪女」にはなっていないと思うのだが、なぜこのタイトル?
もしかして「悪女」という言葉のニュアンスが、韓国語だと少し違うのだろうか。

今回は血の様な赤、「ターンブル カベルネ・ソーヴィニヨン “エステート グロウン” ナパ ヴァレー」の2014をチョイス。
オーパス・ワンの隣にあることでも有名なナパの銘柄で、ワイン・アドヴォケイトで100点を取ったこともある。
一時価格が上昇したことから、インポーターが撤退し正規輸入が終わってしまったが、最近また飲めるようになった。
フルボディの辛口の赤で、この銘柄独特のコクと芳醇なベリー系の香り、タンニンは滑らかでとてもバランスがいい。
カリフォルニアとしては比較的高めだが、内容を考えると1万円以下ではベストチョイスといえるCPの高い一本だ。

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コメント
この記事へのコメント
なぜ悪女
ノラネコさん☆
私も何故この題名にしたのか、とんと判らなくて…
もしかしてシリーズもので、彼女がこれから悪女に目覚めていく続編とかを作る予定なのかしら?
物語のツッコミどころをぶっ飛ばす物凄いアクションでしたね!
2018/02/23(金) 00:23:40 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
自分の意思で動いてるわけじゃないし、「悪女」じゃないですよね。
続編あってもそれはそれで面白そうだけど、悪女にはならないんじゃないでしょうか。
それよりこれ以上のアクション考えるのが大変そうw
2018/02/28(水) 21:27:15 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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韓国ソウル。 幼い頃に父親を殺された少女スクヒは、育ての親である中国朝鮮族マフィアの若頭ジュンサンと結婚する。 彼を殺した敵対組織を一人で壊滅させたスクヒは逮捕されるが、娘ウネを育てるため国家情報院の暗殺者となる。 アパートで新生活を始めた彼女は、新たに運命の男性ヒョンスと出会う…。 バイオレンス・アクション。 ≪悪いのは、私か、運命か。≫
2018/02/21(水) 08:26:15 | 象のロケット
これは面白い! 予告編を見るとなんだかゲームの画面を見ているようなカメラワーク推しで、てっきりB級アクション映画と思っていた。 ところがどっこい韓国映画ならではのじっとりとした愛憎劇に、韓国映画ならではのピュアラブロマンスあり、韓国映画ならではの容赦ない血しぶきも勿論だけど、スタイリッシュな映像で目まぐるしく場面転換する手法も見事で飽きさせない。
2018/02/22(木) 23:51:03 | ノルウェー暮らし・イン・原宿
ほぼ同時期に公開された2本の韓国発アクション映画が無類に面白いので、2本まとめてレビュー。 「悪女 AKUJO」 2017年・韓国/NEXT ENTERTAINMENT WORLD、他配給:KADOK
2018/02/25(日) 15:45:10 | お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法
「渇き」のキム・オクビンが女暗殺者を熱演したスタイリッシュアクション。日本で「22年目の告白 私が殺人犯です」としてリメイクされた映画「殺人の告白」で知られるチョン・ビョンギル監督が手がけた。あらすじ:犯罪組織の殺し屋として育てられたスクヒは、いつしか育ての親ジュンサンに恋心を抱き、やがて2人は結婚するが、ジュンサンが敵対組織に殺害される。怒りにかられたスクヒは復讐を果たすが、国家組織に拘束...
2018/04/13(金) 22:33:27 | 映画に夢中