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ショートレビュー「ゆれる人魚・・・・・評価額1550円」
2018年02月25日 (日) | 編集 |
美しく、グロテスク。

東欧革命前夜の1980年代、退廃の都ワルシャワを舞台に、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話「人魚姫」を再解釈。
陸に上がった人魚姫は、ワイルドな美貌に美しい声とダンスでナイトクラブの歌姫となり、王子様ならぬイケメンのバンドマンと恋をする。
アグニェシュカ・スモチンスカ監督の長編デビュー作は、言わばミュージカルとファンタジーとホラーをごった煮したダークな夜会。
基本的な筋立てはアンデルセンの原作とほぼ同じだが、最大の違いは人魚姫が一人でなく、シルバーとゴールデンと名乗る、対照的な性格の姉妹だということ。
いや原作の人魚姫にも姉妹はいるのだが、本作では共に陸に上がって、二人で物語のテーゼとアンチテーゼを形作るのだ。

華奢な少女の様な上半身とは対照的な、巨大でヌメッとした魚の下半身の造形が良い。
この映画では、彼女らが人間の姿にメタモルフォーゼすると、下半身の穴が塞がってしまい、まるで人形の様になる。
バンドマンと恋をしたシルバーは、魚のままの下半身で交わることを彼に拒否され、マッドサイエンティストから、本物の人間の下半身の移植手術を受けることを決意。
その代償に、声という歌姫としての機能を失う。
ツノを引き抜いた悪魔が、人間界でロックバンドのボーカルとして活動していて、彼がシルバーに人間になることの危険性を警告するのも、ぶっ飛んだ世界観を強化する面白いアイデア。
もしも、愛が成就せず、相手の男が別の女と結婚すれば、シルバーは海の泡になって消えてしまう運命。
その場合は、結婚式の翌朝、太陽が昇るまでに彼を殺さねばならないのは原作通り。

もともと人魚たちにとって、人間の男はエサに過ぎず、ワルシャワもアメリカに行く前に立ち寄っただけのはずだった。
彼女らが陸に上がって、様々な経験をするのは、無垢なる少女が次第に大人になってゆくことのメタファー
初めて恋をして、他者との関係を学び、大人として人生を選択する。
図らずも、エサを好きになってしまったシルバーと、冷静に人間を眺めエサとして喰らうゴールデンのコントラスト。
愛を信じて海の泡となるのか、それとも愛の魔力から自分を守るのか。
姉妹が、イルカの様なノイズで会話するのも面白い。
物語の顛末そのものは原作に忠実ながら、2人の人魚姫を合わせ鏡の存在にすることで、初恋の純粋な強さと、その代償としての痛みもまた深まった。
恋とは、時に身も心も溶けるほどに甘味で、時に耐えようも無いほど残酷なものなのである。

ミュージカルシーンは非常にボリュームがあり、細部をすっ飛ばしたような展開はかなり強引。
だが、この世界観ならそれも十分ありだろう。
凝ったシャレード表現が物語を補完し、楽曲のリリックがキャラクターの心情を雄弁に伝えてくるのだ。
細部まで作り込まれた美術とコスチュームが醸し出す、ゴージャスに安っぽい退廃美は、リンチや同じポーランドの異才ズラウスキーを思わせる。
思春期の性を暗喩するグロテスクなホラー性と、裏返しの純愛の切なさは、「RAW〜少女の目覚め〜」「ビザンチウム」に通じる部分も。
「RAW」の場合は本作と同じく姉妹、「ビザンチウム」は母娘と、対照的な二人の女性の葛藤がジンテーゼを導き出す構造も同じ。
女性監督が少女をモチーフに描く長編デビュー作なのも、「RAW」とは共通する要素だ。

今回は舞台にちなんで「ローズ・オブ・ワルシャワ」をチョイス。
ウォッカ30ml、チェリーブランデー20ml、コアントロー10ml、アンゴスチュラビターズ1tspをステアしてグラスに注ぐ。
ワルシャワは第二次世界大戦で徹底的破壊されるも、戦後執念の修復で往年の姿を取り戻した美しい都市。
名前の通り、美しいローズカラーのこのカクテルは、ワルシャワの夕景をイメージしているとか。
フルーティで甘過ぎず、ビターズの苦味がいいアクセントになっている。
粋なオトナの女性に飲んでもらいたい一杯だ。

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