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ニッポン国 vs 泉南石綿村・・・・・評価額1700円
2018年03月24日 (土) | 編集 |
国家 vs 個人。

大変な手間と時間の掛かった大労作である。
かつて石綿(アスベスト)産業が集中していたことから、石綿村と呼ばれた大阪泉南地域。
石綿工場の労働者や周辺住民など、石綿によって健康被害を受けた人々が、有害性を知りながら放置したとして国を訴え、2006年から2014年まで8年半に渡って続いた泉南アスベスト国家賠償請求訴訟を描くノンフィクション。
「ゆきゆきて、神軍」で知られる鬼才・原一男監督の、「全身小説家」以来24年ぶりとなる劇場用長編ドキュメンタリー映画だ。
途中にインターミッションが入る映画は久々。
しかし、さすが原一男。
実に215分の大長編が、全く長く感じないのだからすごい。

私が住んでいるのは東京の下町。
昭和の頃の古い工場やマンションなどが、建て替えのために解体されるのをよく目にするが、必ずと言っていいほど書かれているのが工事中のアスベスト飛散対策について。
環境省のホームページには、こう書かれている。
「大気汚染防止法」に基づき、特定建築材料が使用されている建築物等の解体、改造、補修作業を行う際には、事前に都道府県等に届出を行い、石綿飛散防止対策(作業基準の遵守)が義務づけられます。」
石綿を大量に吸い込むと、20〜30年に及ぶ潜伏期間の後、肺がんや中皮腫などの疾患を誘発、呼吸器が機能しなくなり、最後まで苦しみながら死を迎える。
石綿の危険性はずっと昔から把握されていたのにも関わらず、2006年まで製造が許されていたのは、安くて便利この上ないものだったから。
断熱材、防音材、車のブレーキや各種パッキンなどなど、石綿は日本の高度成長期を支える物質で、政府はそのために石綿村の人々が地獄の晩年を迎える運命に目を瞑った。
日本という大を富ませるために、石綿村の人々という小を犠牲にすることが許されるのか。

前半は、割と淡々とした正攻法の裁判記録。
長期間石綿工場で働いていた人、病を患い良心の呵責を抱える石綿工場の元経営者、工場の隣で畑をやっていた父を亡くした遺族、あるいは母親の働く工場に寝かされていて、幼くして大量の石綿を吸った人。
第一陣の原告団約60人は、皆それぞれの理由で静かな時限爆弾を抱え込んでしまった人々だ。
しかも彼らが自らの病の原因が石綿だと知ったのは、2008年に大阪のクボタ工場の従業員と周辺住民に健康被害が多発しているとして、アスベスト疾患がクローズアップされたいわゆる「クボタショック」によって。
自分がアスベスト疾患だと知った時には、すでに多くの人が末期症状だったのだ。
原告らにとって、何年も続く裁判は長く、過酷この上ない。
作中のインタビューで、自らの体験を語っていた人々が、バタバタと力尽き、次第に葬儀のシーンが多くなってゆく。
多くの葬儀で、カメラが故人の死に顔を捉えているのが驚きだ。
原監督はどれほどの時間をかけて、これほどの信頼を得たのだろうか。

映画は、ただ裁判を追いかけるだけでなく、石綿村の歴史にも迫る。
高度成長期、人手不足の泉南地域には、働き手がどんどん外からやってきた。
彼らの多くは集団就職で憧れの都会を目指した田舎の若者や、在日コリアンの出自。
戦前に朝鮮半島からやって来て、苦労の末に自ら石綿工場を作った人もいれば、戦後に済州島四・三事件の虐殺から逃れてきた人も。
日本の石綿産業は、その本当の危険性を知らない、相対的な弱者によって成り立っていたのである。
そして在日コリアンの祖先の地でもある韓国でも、やはり石綿の被害は広がっていて、石綿鉱山は日本統治下で開発されたという皮肉。
政府の責任を問う訴訟は、日本だけでなく石綿産業のあった世界中の国で起されており、先行する日本の裁判の結果が外国にも影響を与えかねないという。
世界の被害者のためにも、日本で負けるわけにはいかないのだ。

ドキュメンタリー作家には、大きく分けて二つのタイプがいると思う。
一つ目は、あまり「私」を出さずにモチーフを徹底的に生々しく捉え、最終的な解釈は観客自身の内なる声に委ねるタイプ。
もう一つが、やらせギリギリまで思いっきり作家の主観を盛り込んでくるタイプ。
前者の典型が例えばワン・ビンだとすれば、原一男は間違いなく後者だろう。
インターミッション後の後半になると、ふつふつとした怒りにだいぶドライブかかって、映画も熱を帯びてくる。
原告団のリーダーに、柚岡一禎さんというすごい怒りんぼなおじさんがいるのだが、彼の暴走気味の行動なんて、見てると結構監督が煽ってるんじゃないか(笑
原告団・弁護団の中にも色々なキャラクターがいて、一人ひとりが見せてくれるドラマにも見応えがある。
柚岡さんの様に、最高裁で勝訴しても、救済の条件が厳し過ぎて、抜け落ちる人がいると最後まで問題提起する人もいれば、夫を亡くした佐藤美代子さんの様に、肩の荷を下ろす人もいる。
高裁での第二審敗訴後の涙の訴えが印象的だった彼女は、求め続けた塩崎厚生労働大臣の直接謝罪後には、すっきりとした笑顔を見せるのだ。
それが本当に真摯なものかは別として、彼女にとってはあの塩崎大臣の謝罪が、国という巨大で漠然とした存在が、顔の見える個人に落とし込まれた瞬間だったのだろう。
納得してない人も当然いるだろうが、やはりこの国における謝罪のパワーって大きいのだ。

ところでこの訴訟、最高裁判決が出たのは2014年の安倍政権下だが、第一陣の一審判決は2010年の民主党時代だ。
「コンクリートから人へ」を標榜した政権が、こんな理不尽な裁判をなぜ控訴したのか。
映画の弁護団の発言を聞く限りでは、政権内でも判断が割れ、控訴しない派の長妻厚労相を鳩山首相に対応を一任された仙谷特命相が押し切ったということだろうか。
石綿被害を認めれば、膨大な数の潜在的な訴訟リスクを抱えることを恐れたのかもしれないが、それは後から話し合えば良いこと。
何よりも危険を知りながら、国が放置したのは明らかな事実なのだから。
弁護団の「民主党ダメだな・・・」の一言が心に残る。
民主党政権の失敗は沢山あるが、こういう一つひとつの対応が「自民と同じじゃん」として、民心が離れていったのも政権喪失の大きな要因だろう。
この映画でも、原告団・弁護団と政府の間でサンドイッチにされる官僚たちの戸惑いが見えたが、一体国って何だろう?政治や司法って誰のためにあるんだろう?と考えさせてくれる、実にタイムリーな秀作。
215分の長さにビビっている人は、とても面白いので是非観に行って欲しい。
インターミッション付きなら、トイレの心配もないのだよ。

今回は昭和の香り漂う庶民の酒、ホッピーを使った定番「ホッピー割り」をチョイス。
戦後の1948年に発売されたホッピーは、元々ビールの代用として東京を中心に広まったものだが、関西では普及しなかった。
東京に来た関西人が見ると、「ビールに氷入れたみたいな変な飲み物」に見えるらしい(笑
ホッピービバレッジは、ビアジョッキと甲種焼酎、ホッピーをキンキンに冷やし、ジョッキに焼酎1に対してホッピーを5の割合で注ぎいれる“三冷”を推奨している。
低糖質でプリン体がゼロと健康面で注目され、近年では徐々に関西でも販路が広がっているそうなので、いつか難波のおばちゃんたちとホッピー割りで飲み明かしたい。

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コメント
この記事へのコメント
最近、司法も人事が政府に握られているとかで、かなり信用がなくなってきている。判決が今だったら、大臣や首相が謝りに生きたくない、この賠償金予算を捻出したくないという理由で敗訴とかにされてしまうんではないか。いや、直接、自分達に関係のない裁判にまでは手を出さないと思うけど。
2018/08/19(日) 10:45:29 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
日本の司法は三権分立が不十分だし、もともとあんまり信用ないですけどね。
基本国が訴えられてるケースでは、最高裁とか中枢に近いところのほうが厳しいことが多いし。
2018/08/23(木) 21:33:13 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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