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ショートレビュー「見栄を張る・・・・・評価額1600円」
2018年04月10日 (火) | 編集 |
プライドよりも、大切なこと。

藤村明世監督の長編デビュー作は、愛すべき小品である。
主人公は、28歳にして自信喪失気味の売れない女優・絵梨子。
高校生の頃から女優を夢見て、上京して10年頑張ってはいるものの、仕事にはなかなか恵まれず、代表作と言えば何年も前のビールのCMくらい。
芸人志望の年下の彼氏・翔は、稼ぎゼロのヒモ状態だが、惰性でなんとなく付き合っている。
自分でも何とかしなければ・・・と思っているアラサーの彼女に、ある日突然の知らせが入る。
何かにつけて自分を心配していた姉の由紀子が、交通事故に遭い亡くなったのだ。
葬儀のために故郷へと帰った絵梨子は、姉が葬式で泣く弔問客を演じる、いわゆる「泣き屋」だったことを知る。
女手一つで育てられた姉の一人息子・和馬の行く末を案じた絵梨子は、しばらく故郷に留まろうと、由紀子の後任に立候補するも、泣き屋という仕事の意味を理解出来ず、散々な結果に。

自信のない人ほど、不必要な見栄を張る。
泣き屋を雇い、葬式を賑やかして見栄を張ること、「私は東京の女優よ」と見栄を張ること、どちらも本質を外れて誤魔化す行為だ。
だが、この映画に描かれる泣き屋は、とにかく泣いてその場を繕えば良いと言うことではない。
人と人との接点が希薄化している現在、泣き屋でなくとも誰かの葬儀に出席したとして、必ずしもその人のことを深く知っている訳ではないだろう。
涙を流すことなら、演技をかじっていれば誰でも出来るが、涙ひとつとっても本当はそこに意味があるのだ。
どんな想いで流す涙か、それが重要なのである。
この映画の泣き屋は、いわば弔いの演出家で導き手であり、弔問客が亡き人へ感情移入する動線。
ゆえに、きちんと気持ちを作って、なり切らなければ説得力がない。
これは正に、本質的な役者の仕事である。
自信を失い、他人の視線を意識した表層的な演技しか出来なくなっていた絵梨子は、泣き屋の仕事を考えることを通して、大きなヒントを掴む。
同時にそれは、陥っていた自己閉塞を打破し、足踏み状態の人生を前に進めることになる。

“撮影師”長田勇市が、舞台となる和歌山の情景を実に映画的にフレーミングし、久保陽香が絵梨子の内面を繊細に演じる。
和馬のキャラクター造形があまりにもいい子すぎたり、心情の掘り下げがやや演技頼りになっていたり、藤村明世の演出は成長の余地を残すが、心に残るデビュー作だ。
劇中で、絵梨子の成長に決定的な役割を果たすのが、小栁圭子演じるおばあちゃんの依頼なのだが、あのお葬式はとても印象深い。
絵梨子の泣きを通して、姉の由紀子がどんな泣き屋だったのかも伝わってくる、いいシーンだった。
なんとなく、自分の葬式でもこんな泣き屋なら雇ってもいいかなと思わせるのだから、映画の勝利と言っても良いと思う。

ところで、斎藤工監督の「Blank13」にも泣き屋が出て来たが、この職業は今の日本にも実際にあるんだろうか。
孤独に死ぬ人が増えてるし、この映画が描く弔いの形、弔いの意味はとても現在性があると思う。
イギリスの映画で、身寄りのない人の葬儀を行う民生係を描いた「おみおくりの作法」という佳作があるのだけど、死者に寄り添う主人公の心情は、この映画の泣き屋の心得と少し被るものがあるかも知れない。
ちなみに、監督の話だと本作は女性には好評な一方で、若い男の子たちの感想が辛辣らしい。
まあ劇中の翔みたいに男は精神年齢低いから、この映画のシチュエーションはある程度歳を重ねないと実感に乏しいのかも知れないな。
若い頃よりも“死”を身近に感じる中年のおっさんとしては、こじらせちゃってる絵梨子にも、泣き屋を依頼するおばあちゃんにも、思いっきり感情移入したよ。

今回は舞台となる和歌山の地酒、「黒牛 純米吟醸」をチョイス。
私の親は和歌山の出身なので、昔は帰省するとよくこの酒を買って来ていた。
しっかりしたコクがあり、フルーティでまろやか。
和歌山の日本酒は比較的甘いのが特徴で、黒牛の純米も日本酒度以上に甘みを感じ、名前の通りにお肉料理とよく合う。

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