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ダンガル きっと、つよくなる・・・・・評価額1700円
2018年04月14日 (土) | 編集 |
すべての壁を、超えてゆけ。

インド版星一徹みたいな実在の熱血レスリングおやじ、マハヴィル・シン・フォーガットと彼の教えを受けた二人の娘、ギータとバビータの半生を描く物語。
保守的なインド社会にあって、秘められた娘の才能を見抜き、人々の嘲笑も意に介さずに、ひたすら二人の才能を開花させるために突き進む。
「きっと、うまくいく」「PK ピーケー」などのスーパースター、アーミル・カーンが、プロデューサーも兼務してマハヴィルを演じ、さすがの存在感。
監督、脚本を務めたのはニテーシュ・ティワーリー。
ドンと力強く背中を押される様な、スポ根ものの王道プロットに、ジェンダーイコーリティーのイッシューを組み込み、パワフルで深みのある娯楽快作となった。
※核心部分に触れています。

レスリングをこよなく愛する男、マハヴィル(アーミル・カーン)。
彼は国際大会の金メダルを夢見ながら、経済的な理由で選手生活に終止符を打つ。
せめて自分の息子に夢を託そうと思うが、生まれてきた子供は四人連続で女の子ばかり。
すっかり諦めていた頃、長女のギータ(ザイラー・ワシーム/ファーティマー・サナー)と次女のバビータ(スハーニー・バトナーガル/サニヤー・マルホートラ)が、喧嘩で男の子をボコボコにやっつける。
二人に、生まれついてのレスラーとしての才能を見出したマハヴィルは、早速英才教育を開始。
最初は嫌がっていた二人も、次第に父の想いを受け入れて、レスリングの実力はうなぎのぼり。
地方のアマチュア大会で男相手に連勝を重ね、ついにギータがナショナル・チーム入りすることになる。
マハヴィルにとって長年の夢である、“国際大会の金メダル”はもう不可能ではない。
一方でそれは、長年手塩にかけて育てたギータが、自分の手を離れることを意味していた・・・


タイトルになっている「Dangal」とはなんぞや?
インド映画ならではの、やたらとリズミカルなエンディングテーマ曲が頭に残り、「ダンガル♪ダンガル♪」と思わず口ずさみたくなるが、調べてみるとヒンズー語で「土の上で行う伝統的なレスリング」のことらしい。
映画の前半で、マハヴィルが畑を切り開いて作る土俵の様な練習場、レスリングマットのない街中の広場で行われるアマチュアの大会、あれが本来のダンガルなのだな。
アーミル・カーン演じる頑固一徹のマハヴィルは、どんどんと我らが星一徹に見えてくる。
そういえば、インドでは野球をクリケットに置き換えた「巨人の星」リメイク版、「スーラジ ザ・ライジングスター」が放送されたりしているから、日本のスポ根ものとの親和性は高いのかもしれない。

熱血のマハヴィルに、図らずもレスリングの才能を発見されてしまったギータとバビータ。
男の子の様な短パンをはかされ、練習の邪魔になると長い髪を切られ、問答無用の過酷なトレーニングを課される姉妹は、当然反発する。
インドは保守的な社会で、特に田舎には様々な不文律がある。
女性が肌を見せるのは破廉恥だと思われるし、男と組み合ってレスリングするなど、当然もってのほか。
街の人たちは、レスリング狂人のおやじが、かわいそうな娘たちを使って叶うはずのない夢を追いかけていると笑いものにするが、マハヴィルは決して止まらない。
レスラーにはタンパク質が必要だが、インドの多くの家庭は厳格なベジタリアンで、そもそも肉は高い。
マハヴィルは妻の反対を押し切って鶏を調理すると、娘たちにたっぷり与える。
親が果たせなかった夢を子に押し付ける、というのはよくある話で、娘たちも最初はそう考えていて、なんとか父親を思いとどまらせようとする。
しかし、14歳にして結婚させられる友達に、「インドの女は子を産む道具。あなたたちは違う」と諭されて、ふと振り返る。
姉妹は、レスリングをすることで、この国の女性を縛る、多くの理不尽な因習から解放されていることに気づくのだ。
「女だからしてはいけない、女だから出来っこない」マハヴィルはそんなことを一言も言わない。
男尊女卑が強く残る社会にあって、少々偏屈でも父の愛が特別だということを知ってから、インド初の国際大会金メダルという夢が三人の間で共通化。

映画は、前半が少女編、後半が大人編の構成で、前半はマハヴィルとギータ、バビータの三人を比較的均等に描いてゆくのだが、中盤以降は長女のギータが明確な主人公となってゆく。
着々と実力をつけ、ついに全国チャンピオンとなったギータは、インド代表として国立スポーツ・アカデミーの寮に住み込み、ナショナル・チームのコーチから教えを受けることになる。
レスリング一色で厳格だった実家の生活から解放され、都会で練習の合間にオシャレや娯楽を楽しむことが出来る様になった一方、コーチからは「父親の教えはすべて忘れろ」と指導される。
いつかはやってくる親離れ子離れの葛藤が、試合に勝ちたいというギータのもう一つの葛藤と絡み、実に上手い具合にクライマックスへと収束する。
日本版予告では、まるでロンドン五輪がクライマックスになるかの様な表現をしてるが、本作に五輪はほぼ無関係。
確かにギータは、ロンドン五輪にインド初の女子レスリング代表として参加しているのだけど、本作のクライマックスはその2年前、2010年にデリーで開催されたコモンウェルス・ゲームズだ。
日本ではほとんど馴染みがないが、コモンウェルス・ゲームズは嘗ての大英帝国植民地諸国からなる英連邦加盟国のスポーツ大会。
域内人口は23億人に及び、52カ国が参加して、オリンピックと同じく4年に一度開催される一大イベントだ。
日本やロシアといった女子レスリングの最強豪国は出ていないので、比較的金メダルに手が届きやすい・・・といっても、後発国のインドにとっては、国際大会のメダル自体が遠い。

マハヴィルから長年受けてきたコーチングと、ナショナル・チームで受けた新しいコーチングとの方向性の違いに戸惑い、国際試合で勝てなくなったギータは、コモンウェルス・ゲームズを前に、父の教えに回帰することを決断する。
個人スポーツは、選手の実力だけじゃなくコーチとの相性も大切なんだな。
一度はナショナル・チームのコーチに感化されるギータと、姉の後を追って代表入りするも、あくまでも父の教えを大切にするバビータとのコントラストも効果的なアクセントになっている。
大会に挑むギータに、マハヴィルは国際大会の金メダルに拘る理由を明かす。
「銀メダルならお前はいつか忘れられる。しかし金メダルなら、お前はこれからの子供たちの目標になって、たくさんの女の子たちを勝利に導くことになるんだ」と。
この父の言葉を胸に、すべてをかけたコモンウェルス・ゲームズを含めて、レスリング・シークエンスはボリュームたっぷりだ。
役者がきちんと体を作っていて、ビジュアル的にも演出的にも十分なリアリティがあり、まるで本物の試合を見ているような緊張感。
多分フィクションなんだろうけど、マハヴィルとナショナル・チームのコーチとの間のひと悶着もギータの成長を後押しし、父娘それぞれがたどり着いた到達点に感極まり、思わず涙。

ギータ役を少女と大人でリレーしたザイラー・ワシームとファーティマー・サナー、バビータを演じたスハーニー・バトナーガルとサニヤー・マルホートラの四人は、8ヶ月かけてレスリングのトレーニングを積んだそうで、見事な説得力で素晴らしい。
だが彼女ら以上に、マハヴィル役のアーミル・カーンのカメレオンっぷりが凄いのである。
今回は一歩引いて、主役ではなく娘たちを引き立てる役なのだけど、冒頭の筋肉ムキムキ青年から後年のでっぷり太ったメタボおやじまで見事な演じ分け。
なんでも70キロだった体重を97キロまで増やし、中年パートを撮影した後に、筋肉をつけながら再び70キロまで落とし、あの冒頭シーンを撮ったのだとか。
あまりの変わりっぷりに、特殊メイクかと思ったくらい。
まあ40代で無理なく大学生役やってた人だから、驚くことではないかもしれないが。
役柄的には主役ではないと言っても、終始映画を支配するのはやはり圧倒的なオーラを持つこの人なのだ。

実話ベースを脚色した正攻法の物語に、インド映画特有の外連味を適度に抑制した演出、そして物語に説得力を与える俳優たち。
自分の果たせなかった夢を子供に叶えて欲しいという、パーソナルな親の我欲は、いつしかインド社会の全ての娘たちの夢となり、ギータとバビータもまた幾多の葛藤と苦難の先に、自らの生きる道をつかみ取る。
140分の長尺もあっという間、まさに娯楽映画の金メダル、誰が見ても楽しめる普遍的な作品だが、特に世界中の女の子たちに観てほしい!

ところでこれ、日本レスリング協会が後援してるんだが、女子レスリングの話だし、ナショナル・チームのコーチと、選手指導を続ける元のコーチ(父親)との確執が大きな要素で、練習センターの出禁や嫌がらせのエピソードがあったりするので、どうしても現実のパワハラ騒動を思い出しちゃう。
辞任した前強化本部長も本作の試写を観て、選手たちに訓示を垂れたというから、シニカルなブラックジョーク以外の何ものでもない。
まあ後援を決めた時には、「敵は女を下に見る全ての人たち」ってマハヴィルの台詞がブーメランになって戻って来るとは、1ミリも思ってなかったのだろうけど、別の意味でタイムリーになっちゃったな。
相撲協会の時代錯誤というか、思考停止な不見識もひどいし、日本もまだまだ問題だらけだ。

今回はインドのビール、マハヴィルをイメージして、その名も「ゴッドファーザー ラガー」をチョイス。
名前はものすごく強そうだが、スタンダードな下面発酵のピルスナー。
熟成期間が通常のラガーの倍以上あり、わりと香りが強くしっかりしたコクがあるのが特徴。
暑い国のビールらしく、基本的には清涼で飲みやすいので、日本人好みだと思う。

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コメント
この記事へのコメント
泣けました
ノラネコさん☆
爽やかに泣けました!!
そしてアーミル・カーンのライザップも見事でしたね!!
物凄く別人なの?CGなの?と悩みながら観たのですが(笑)
ブーメランは真っ直ぐ戻ってきて額に突き刺さっちゃいましたねww
2018/04/20(金) 18:25:11 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
あの人ほんとにカメレオンですよね。
ダイエット理論の本でも出せるんじゃないでしょうかw
この映画を件のコーチは何を思ってみたのでしょうね。
思わぬブラックジョークでした。
2018/04/21(土) 23:28:20 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
> 「敵は女を下に見る全ての人たち」ってマハヴィルの台詞

いきなり、言いだしたなとは思いいました。
2018/05/04(金) 21:10:05 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
あのお父さんは最初自分の夢を叶えることしか考えてないんだけど、娘たちとレスリング活動するうちに、いろんなものが見えてきたんでしょう。
2018/05/11(金) 21:38:05 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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インドのレスリング元国内チャンピオンの男マハヴィルは、生活のため早くに引退せざるを得なかった。 国際大会で母国に初の金メダルをもたらす夢をまだ見ぬ息子に託すが、残念ながら生まれたのは女の子ばかり。 …しかし、長女ギータと次女バビータに格闘DNAを感じたマハヴィルは、2人にレスリングのスパルタ教育を施すことに…。 実話から生まれたヒューマンドラマ。
2018/04/14(土) 09:21:05 | 象のロケット
ダンガル きっと、強くなる@ユーロライブ
2018/04/14(土) 16:57:08 | あーうぃ だにぇっと
いや~泣けた泣けた。 基本的に王道のスポ根ものなので、その涙は高校野球を見るように実に爽やかで熱く美しい。 しかし基本王道のスポ根なのに、背景にある社会的な不平等や今まさに話題のアスリートのコーチのパワハラ問題などを、インド映画のノリで面白く見せる点で実に斬新。
2018/04/20(金) 18:20:51 | ノルウェー暮らし・イン・原宿
▲日本公開作、全部傑作のアーミル・カーン。 五つ星評価で【★★★★分かりやすく面白く、良い感情移入がある】 インドではTVアニメ『巨人の星』が流行ってるらしい。 天才アーミル・カーン、今回は父ちゃん役(星一徹)で、アマレスの国内チャンピオンだったが引退。息子に世襲させたいと思ってたのに、生まれてくる子供はことごとく娘。ある日、ケンカで男子をボコボコにした長女・次女の格闘セン...
2018/05/04(金) 22:23:40 | ふじき78の死屍累々映画日記・第二章
実話をもとに2人の娘をレスリングの世界で成功させるべく奮闘する父親を描き、本国インドのほか世界各国で大ヒットを記録した人間ドラマ。主演は「きっと、うまくいく」のアーミル・カーン。本作の監督ニテーシュ・ティワーリーから、父と娘の実話を聴いて主演と制作を買って出た。あらすじ:レスリングを愛する男。生活のため選手の道を諦めた彼は、いつか自分の息子を金メダリストにすることを夢見ながら道場で若手の指導...
2018/06/15(金) 19:15:03 | 映画に夢中