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2018年04月25日 (水) | 編集 |
恋するために、夢を見る。
嘗て、長編デビュー作の「私の20世紀」でカンヌ映画祭カメラドールを受けた、イルディコー・エニェディ監督の18年ぶりの長編劇映画は、非常に不思議な手触りのラブストーリーだ。
舞台となるのは、ハンガリーの首都ブダペスト郊外にある食肉処理工場。
主人公は、新任の品質管理官の女・マーリアと、工場の管理職をしている初老の男・エンドレ。
エンドレは、同僚たちと馴染めず、いつも一人でいるマーリアのことを気にかけている。
性別も年齢も性格も、一見対照的に見える二人は、心理カウンセリングを受けたことで、なぜか同じ夢を共有していることを知る。
夢の中で二人はオスとメスの鹿となり、住んでいるのはしんしんと雪が降りしきる幻想的な森の中。
孤独な二頭は、お互いを遠くから見つめ合い、やがて距離を縮めて行動を共にするようになる。
毎晩のように夢で逢瀬を重ねる二人は、現実世界でも急接近。
面白いのはマーリアのキャラクターで、彼女はある種の心の病と共に、ずっと生きてきた様なのだ。
サヴァン症候群を思わせる驚異的な記憶力を持ち、感情は人並みに豊かだがそれを表現することは苦手で、他人との肉体的接触を極端に恐れる潔癖症。
曖昧なものを嫌い、ロボットのように杓子定規に規定に厳格だが、より人間的にあろうと努力はしている。
一方のエンドレも、片腕に障害を持ち、色恋沙汰からの“引退”を自認して、孤独な一人暮らし。
マーリアは凍りついた肉体に心が封じ込められていて、そこから踏み出せず、エンドレは障害によって男としての自信を喪失し、新たなリスクを負うことに臆病になっている。
いわば、二人とも重度の逆恋愛体質に陥っているのである。
二人が見ているのは本当に夢なのか、それとも実在する二頭の鹿と心が繋がっているのかには言及がない。
鹿は多くの文化で神聖を持つとされる優美な生き物だが、二人が共有するロマンチックな夢の世界は、現実世界での接触に向けたリハビリの様なものかも知れない。
前半頻繁に描写される夢のシーンは、二人が現実で距離を縮めはじめ、夢の中で交尾したことが示唆されると、後半ではまったく出てこなくなる。
しかし、夢では上手くいっても、現実はまた違うというのが難しいところ。
何しろ、この世界は夢の中の森のように全てがピュアで美しくはない。
二人が勤務する食肉処理工場では、鹿の近縁種である牛が毎日殺されてゆく。
会社の中でも窃盗事件が起こり、従業員は影口を言い合っている。
この灰色の世界で、二人の恋は成立するのか。
マーリアとエンドレは、近付いたと思ったら離れ、時に痛みを感じながら、少しずつお互いの世界を変えてゆく。
人々が求める柔らかな陽の光にすら、触れられることを恐れていたマーリアは、エンドレと心も体も愛し合うために、様々なものに触るトレーニングをする。
ぬいぐるみ、動物の皮膚、マッシュポテト、知らなかった触感が彼女の心をかき乱す。
一方、エンドレもマーリアへの気持ちに気付き、彼女を失うことを恐れた時、森の中でオス鹿がただ一頭、相手を探してひた走るのが、最後の夢の描写。
本当の意味で愛し愛される喜びを知らない女性が、凍りついた肉体を溶かし、心と体とを一致させるまでの116分の静かなる叙情詩。
他に類をみない独創的な作品だが、最後にはどこかほっこり優しい気分になれる、愛すべき小品だ。
今回は森を思わせる緑のカクテル「ミドリミモザ」をチョイス。
日本を代表するメロンリキュール、サントリーのミドリを、シャンパンで割ったもの。
シャンパングラスに、冷やしたミドリ30ml、シャンパン120mlを注ぎ、仕上げに1〜2tsp程度の適量のライムシロップを加え、軽く混ぜる。
辛口のシャンパンと甘いミドリが、幸福にマリアージュする美しいカクテルだ。
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嘗て、長編デビュー作の「私の20世紀」でカンヌ映画祭カメラドールを受けた、イルディコー・エニェディ監督の18年ぶりの長編劇映画は、非常に不思議な手触りのラブストーリーだ。
舞台となるのは、ハンガリーの首都ブダペスト郊外にある食肉処理工場。
主人公は、新任の品質管理官の女・マーリアと、工場の管理職をしている初老の男・エンドレ。
エンドレは、同僚たちと馴染めず、いつも一人でいるマーリアのことを気にかけている。
性別も年齢も性格も、一見対照的に見える二人は、心理カウンセリングを受けたことで、なぜか同じ夢を共有していることを知る。
夢の中で二人はオスとメスの鹿となり、住んでいるのはしんしんと雪が降りしきる幻想的な森の中。
孤独な二頭は、お互いを遠くから見つめ合い、やがて距離を縮めて行動を共にするようになる。
毎晩のように夢で逢瀬を重ねる二人は、現実世界でも急接近。
面白いのはマーリアのキャラクターで、彼女はある種の心の病と共に、ずっと生きてきた様なのだ。
サヴァン症候群を思わせる驚異的な記憶力を持ち、感情は人並みに豊かだがそれを表現することは苦手で、他人との肉体的接触を極端に恐れる潔癖症。
曖昧なものを嫌い、ロボットのように杓子定規に規定に厳格だが、より人間的にあろうと努力はしている。
一方のエンドレも、片腕に障害を持ち、色恋沙汰からの“引退”を自認して、孤独な一人暮らし。
マーリアは凍りついた肉体に心が封じ込められていて、そこから踏み出せず、エンドレは障害によって男としての自信を喪失し、新たなリスクを負うことに臆病になっている。
いわば、二人とも重度の逆恋愛体質に陥っているのである。
二人が見ているのは本当に夢なのか、それとも実在する二頭の鹿と心が繋がっているのかには言及がない。
鹿は多くの文化で神聖を持つとされる優美な生き物だが、二人が共有するロマンチックな夢の世界は、現実世界での接触に向けたリハビリの様なものかも知れない。
前半頻繁に描写される夢のシーンは、二人が現実で距離を縮めはじめ、夢の中で交尾したことが示唆されると、後半ではまったく出てこなくなる。
しかし、夢では上手くいっても、現実はまた違うというのが難しいところ。
何しろ、この世界は夢の中の森のように全てがピュアで美しくはない。
二人が勤務する食肉処理工場では、鹿の近縁種である牛が毎日殺されてゆく。
会社の中でも窃盗事件が起こり、従業員は影口を言い合っている。
この灰色の世界で、二人の恋は成立するのか。
マーリアとエンドレは、近付いたと思ったら離れ、時に痛みを感じながら、少しずつお互いの世界を変えてゆく。
人々が求める柔らかな陽の光にすら、触れられることを恐れていたマーリアは、エンドレと心も体も愛し合うために、様々なものに触るトレーニングをする。
ぬいぐるみ、動物の皮膚、マッシュポテト、知らなかった触感が彼女の心をかき乱す。
一方、エンドレもマーリアへの気持ちに気付き、彼女を失うことを恐れた時、森の中でオス鹿がただ一頭、相手を探してひた走るのが、最後の夢の描写。
本当の意味で愛し愛される喜びを知らない女性が、凍りついた肉体を溶かし、心と体とを一致させるまでの116分の静かなる叙情詩。
他に類をみない独創的な作品だが、最後にはどこかほっこり優しい気分になれる、愛すべき小品だ。
今回は森を思わせる緑のカクテル「ミドリミモザ」をチョイス。
日本を代表するメロンリキュール、サントリーのミドリを、シャンパンで割ったもの。
シャンパングラスに、冷やしたミドリ30ml、シャンパン120mlを注ぎ、仕上げに1〜2tsp程度の適量のライムシロップを加え、軽く混ぜる。
辛口のシャンパンと甘いミドリが、幸福にマリアージュする美しいカクテルだ。

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ハンガリーの首都ブタペスト郊外にある食肉処理工場。 臨時の女性食肉検査員マーリアは、人付き合いが苦手で職場に馴染めない。 片手が不自由な男性役員エンドレは、そんな彼女を何かと気に掛けていた。 工場で盗難事件が発生したため、全従業員が精神分析医からカウンセリングを受けることになり、夢の話をきっかけに2人は急接近していく…。 ラブ・ファンタジー。
2018/04/28(土) 14:47:09 | 象のロケット
企画「私のなかの私が目覚めるとき」。
◆『心と体と』
▲お嬢ちゃん。
五つ星評価で【★★★★優しい】
男も女もそれぞれ事情はあるが観客に好かれる好人物。
でも、恋愛に発展するには、二人の人間的な組み合わせが違いすぎる。
『モリのいる場所』の山崎努と『パシフィック・リム』の芦田愛菜の恋愛みたいだ。
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2018/08/06(月) 22:37:21 | ふじき78の死屍累々映画日記・第二章
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