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モリーズ・ゲーム・・・・・評価額1650円
2018年05月02日 (水) | 編集 |
彼女は、何のために戦ったのか。

5億人の友だちを持つ世界最大のSNSの創業者、メジャーリーグにセイバーメトリックスを定着させた名GM、魅惑的なコンピュータとスマートフォンによって世界を永遠に変えた男。
実在の社会的成功者の“ビハインド・ザ・シーン”を味わい深く描いてきた名脚本家、アーロン・ソーキンの監督デビュー作は、モリー・ブルームの半生を描くスリリングな人間ドラマ。
殆どの人は「モリー・ブルームって誰?」と思うだろう。
ソーキンが描いてきた傑物たちに比べると知名度は低いが、ジェシカ・チャステインが演じるタイトルロールがすごく魅力的。
全米3位のモーグル選手、オリンピック候補のトップアスリートから、ハリウッドスターや各界の著名人が集うポーカー・ルームのカリスマ経営者へと華麗なる転身。
そして突然の逮捕と裁判。
その時、彼女は何を求め、何を守っていたのだろうか。
ソーキン先生、56歳にして初メガホンを取った渾身の作は、さすがの面白さだ。
✳︎核心部分に触れています。

ソルトレイク五輪を目指すモーグル選手、モリー・ブルーム(ジェシカ・チャステイン)のアスリート人生は、コースに突き出していた凍った松の小枝によって終わった。
ロースクールを目指していた彼女は、入学前に一年の休養をとり、カリフォルニアを訪れる。
ハリウッドのクラブで働き始めたモリーは、店の常連客のディーン・キース(ジェレミー・ストロング)にスカウトされ、彼が主宰するポーカー・ルームのアシスタントの仕事を始める。
毎週火曜日、コブラという店で開催されるゲームは、参加費一人1万ドル。
ポーカーの名手にしてハリウッドスター、プレイヤーX(マイケル・セラ)に主導されたゲームに参加するのは、映画監督、プロボクサー、大物実業家などで、巨額の掛け金が動く。
数年後、ディーンと対立し、クビを言い渡されたモリーは、密かに練っていた計画を実行に移す。
その日、モリーは顧客リストに一斉にメールを送る。
「今夜から、フォーシーズンズホテル1401号室に変更」
彼女は、ディーンの顧客を全員奪って、「モリーズ・ルーム」のオープンを告げたのだった・・・


若き女傑モリー・ブルーム、この人とにかく打たれ強く不屈
ソーキンは、彼女がアスリート生命を絶たれた事故を起点に、現在と過去を交錯させ人物像に迫ってゆく。
彼女は、オリンピックの代表選考レースでの怪我から回復すると、2002年に休養のためにロサンゼルスへと移り、ひょんなことからギャンブルの世界に足を踏み入れ、ポーカー・ルームのノウハウを学ぶと、2005年にはボスを出し抜いて自身の店をオープンするサクセスストーリー。
ところが、2014年の現在では、彼女はFBIに逮捕され、裁判を控えている。
イドリス・エルバ演じるヤメ検敏腕弁護士チャーリー・ジャフィーに弁護を依頼するも、潔癖な倫理観を持つジャフィーは、裏社会との繋がりが噂されるモリーの頼みを、そう簡単には受けてくれない。
映画は、2014年の裁判劇を物語の基軸とし、2002年から現在に至るモリーの過去との間を頻繁に行き来し、この頭脳明晰にして野心家、とてもユニークな彼女の内面にあるものを、少しずつ明らかにしてゆく。

この物語の構造は、ソーキンがアカデミー脚色賞を得た「ソーシャル・ネットワーク」と基本的には同じだ。
あの作品では、フェイスブックが大成功を遂げた後に起こされた二件の訴訟の顛末と、マーク・ザッカーバーグが、ハーバードの学生寮で“ザ・フェイススブック”を起業してから、どの様に成功して行ったのかという物語が、時系列を行きつ戻りつしながら並行して語られてゆく。
その過程で、天才ザッカーバーグの孤独な内面がクローズアップされ、彼が“本当に欲しかったもの”が明らかになってくる。

モリーは本作の冒頭時点で、ソルトレイク五輪で金メダルを取り、ロースクールを卒業して起業するという人生の青写真を描いている。
この夢はたった一本の小枝によって阻まれる訳だが、だからと言って彼女の並外れた能力が失われた訳ではない。
鍛え抜かれた肉体に優秀な頭脳を持ち、望めば何者にもなれたはずのモリーは、なぜ最初の志望とは正反対の道に進み、逮捕されたのか。
ポーカー・ルームが利益を生む仕組みはこうだ。
選び抜かれた顧客の一人1万ドルという高額の参加費に加えて、勝負に負けた参加者へ店が当面の金を貸す。
大金持ちばかりのゲームゆえに、掛け金も巨額となり、負けが続くとあっという間に数十万、数百万ドルの債権となる。
ポイントは、ポーカー・ルームを主催すること自体には、違法性が無いということ。

では、FBIがモリーを逮捕した理由は何か。
貸出し金額が大きくなると、当然中には返せない客も出てくる訳で、不良債権化する可能性が大きくなる。
そこでモリーはリスクを軽減するために、手数料を取ることにするのだが、この手数料が違法だったのだ。
しかし、FBIの真の目的は、ポーカー・ルームの僅かな手数料ではない。
現在において、真に金を生み出す資産は情報。
彼らの真の狙いは、ハリウッドスターからロシアマフィアまで、モリーの握る膨大な顧客情報なのである。
著名人の秘密を握るモリーは、この時点で宝くじの当り券を握っているようなもので、誰もがそれを欲しがっている。
このためにFBIは彼女を微罪で逮捕し、全財産を没収して追い込み、司法取引しようと画策するのだ。
しかし、彼女は決して当たり券を換金しようとしない。

モリーの弁護を受けることを躊躇するジャフィーは、ある疑問を彼女にぶつける。
それは「なぜ最初に逮捕された時に、客の債権を売らなかったのか?」ということ。
彼女は、「客たちが暴力的な取り立てにあうことを恐れた」と答える。
自分の不利益を承知で、客を守ろうとするモリーの優しさと心意気に打たれたジャフィーは、彼女の弁護を引き受けるのだが、このエピソードが象徴する様に、モリーの客に対するスタンスが彼女の内面を紐解く鍵となる。
ポーカー・ルームの客たちは、モリーにとってネギを背負ってやって来るカモなのだが、彼女は同時に親身に彼らの悩みを聞き、時には人生を決定的破滅から救う。
悪魔のように金を使わせ、母のように庇護する。
一見矛盾するモリーのメンタルの根底には、彼女を育て上げた父親との確執がある。
ケヴィン・コスナーが好演する、星一徹タイプの父親に幼い頃から愛情と反発を感じていた彼女は、金と力を持つ男たちをポーカー・ルームで支配することで、父親との関係を反転させていたのである。
この辺り「スティーブ・ジョブズ」「マネーボール」両作品の主人公と娘、「ソーシャル・ネットワーク」のザッカーバーグと元カノの関係を思わせる。

僅かな違法行為はあったものの、コツコツ作った財産を一瞬で失い、国家権力からの理不尽な圧力に翻弄されるモリーを見ていると、だんだん感情移入して応援したくなって来る。
過去の物語を通して、彼女の人となりを知り、決して順風満帆とは言えない人生の苦楽を見たからこそ、圧倒的に不利な裁判劇はスリリング。
劇中でも、ジャフィーの娘がモリーの本を読んで彼女のファンになる描写があるが、何度も打たれても、失敗しても、奪われても、決して諦めずに再起を図るモリーの姿は、ガラスの天井に挑む無数の女性たちへの力強いエールだ。
これはいかにもアーロン・ソーキンらしい、何かを成し遂げて何かを失った傑物を描く、一連の作品に連なる骨太のヒューマンドラマ。
過去の作品で描かれた男たちは、映画になった時点で既に最大の成功を掴んでいたが、モリー・ブルームの人生は、今はどん底。
彼女が、これからどうなってゆくのか、現実のドラマを追いかけたくなる。

ただし、凡百の新人監督の水準を遥かに上回り、老練さすら感じさせるものの、映画監督としてのソーキンは、デヴィッド・フィンチャーやダニー・ボイル、ベネット・ミラーといった、自作を映像化した名匠たちのレベルにはさすがに達していない。
本作では「ソーシャル・ネットワーク」の構造を踏襲していることを見ても、あえて冒険は避けて無難にまとめようとしている感は否めないのだ。
十分に面白い物語を語ってはいるが、独自の映像言語で行間の詩を紡ぐまでは出来ていないのである。
逆に言えば、ソーキンが監督業を続けて、自分のカラーを生み出した時はとんでもない傑作が生まれる予感がしているのだが。
ちなみに、本作はポーカーを知らなくても楽しめるが、劇中に幾度か白熱するゲームの描写があるので、基本的なルールや用語をざっくりと予習しておくとベターだと思う。

今回は、映画を観た人には分かる「アップルティーニ」をチョイス。
定番化したレシピはなく、一般的にはウォッカかジンとアップ系のジュース、ソーダ、リキュールなどを材料によってステア、またはシェイクしてグラスに注ぐ。
マイレシピは、ウォッカ45ml、アップルリキュール20ml、アップルジュース20ml、レモンジュース10mlを氷と共にシェイク。
90年代後半から人気を博したフルール系マティーニの一種で、「ソーシャル・ネットワーク」でも、Napster創業者のショーン・パーカーとザッカーバーグ、エドアルド・サベリンとその彼女との会合シーンに登場している。
セレブを気取って飲むカクテルみたいな位置付けだったので、今回のアップルティーニはソーキンのセルフパロディっぽい。
現実のザッカーバーグは、「映画を観る前にはアップルティーニなんて聞いたことがなかった」そうだけど。

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コメント
この記事へのコメント
はじめまして。貴レビューの考察や検証、いつも楽しませていただいています。
ジェシカ・チャスティンはまた、眠らない女を演りましたね。それが、言いたかった!
2018/05/25(金) 18:01:53 | URL | さるこ #-[ 編集]
こんばんは
>さるこさん
ありがとうございます。
ジェシカ・チャステインはこのところ、クールなデキる女の役が続いていますね。
まあ似合ってるんだけど、そろそろ違う面も見たいところ。
「IT」の続編は楽しみです。
2018/05/27(日) 21:44:23 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんにちは
こんにちは。
お酒だけでなく、ゴージャスなおつまみもあり、賭場の一室はセレブ感が溢れていました。
けれど、所詮はあぶく銭なのですよね…。どん底に落ちたモリー・ブルームですが、是非巻き返しを図って欲しい!
2018/06/01(金) 17:25:39 | URL | ここなつ #/qX1gsKM[ 編集]
現実のドラマ
どうなっているのか気になって検索したけどモリー・ブルームの現在がどうなっているのかわかりませんでした。
元気にしているのでしょうね(笑)
2018/06/04(月) 11:04:13 | URL | まっつぁんこ #L1vigvx6[ 編集]
こんばんは
>ここなつさん
見てるとだんだん応援したくなるんですよね。
やっぱり挫折を知ってる人は強い。
きっと何かを成し遂げることでしょう。

>まっつあんこさん
故郷のコロラドに移って、ソーシャルクラブを作ってる様ですよ。
男性だけじゃなくて、才能ある女性にも集まってもらいたいそうです。
やっぱり転んでもタダじゃ起きないタイプですね。
2018/06/06(水) 20:26:22 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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