FC2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係な物や当方が不適切と判断したTB・コメントも削除いたします。
■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
ショートレビュー「ゲティ家の身代金・・・・・評価額1650円」
2018年06月15日 (金) | 編集 |
母が戦う相手は、巨大な“帝国”だった。

リドリー・スコット久々の非SF作品は、作家の特質にぴったり合ってなかなかの手応え。

1973年に、アメリカの石油財閥、ゲティ家の孫である17歳のジョン・ポール・ゲティ三世がイタリアで誘拐され、1700万ドルという巨額の身代金を要求された実際の事件の映画化。
もっとも、誘拐事件の身代金としては巨額だとしても、当時世界一の大富豪と言われたゲティ家からすれば大した額ではない。
さっさと支払って、解放されるはずだった。
ところが、ジョンの祖父で当主のジャン・ポール・ゲティは支払いを拒否。
「私には孫が14人いる。もし身代金を払えば、他の孫たちも誘拐されるかもしれない」という理由だったが、実はこの男もの凄いケチなのである。
見返りのない支出である税金と身代金は、彼の価値観ではどちらも払うべきでない無駄金という訳だ。

いやー、もちろん人にもよるのだろうけど、金持ちのメンタルってメチャクチャ面倒くさい。
トランプを相手にする世界の政治家が、勝手が違って苦戦する理由もこの映画を観るとよく分かる。
徹底的な利己主義をテーゼとする彼らにとって、この世はすべて損得勘定で成り立っていて、原則的には利他を前提とする政治とは、最初から水と油なのだ。
ジョンは確かにゲティ家の孫だが、ミッシェル・ウィリアムズ演じる母親のアビゲイルは、夫のジョン・ポール・ゲティ二世と、財産分与を求めない代わりに息子の親権を持つ条件で既に離婚済み。
彼女には1700万ドルもの身代金はとても払えないが、享楽に溺れジャンキー状態の元夫は全く頼りにならず、関係の良くない元舅に助けを求めざるを得ない。
ところがゲティは孫の危機にも支払いを渋り、代わりに犯人と交渉して身代金を値切るためのネゴシエイターを送り込んでくるのだ。


浮かび上がるのは、様々な形で人間を狂わせる金の恐ろしさ
実際にジョンを誘拐し、身代金を要求する犯罪者たちのやっていることは当然悪なのだが、それでも彼らはワルを自認している分単純。
誘拐も、生活のために日銭を稼ぐことの延長線上に過ぎない。
原題の「ALL THE MONEY IN THE WORLD」の通り、この世の金すべてが欲しいゲティ爺さんの心の闇の方がより暗く、より深く感じる。
何しろこの男、孫の身代金は渋る一方で、もっと高い美術品は躊躇いもなく買い漁る。
ゲティにとってはたとえ使えなくても、使い道がなくても、ため込むこと自体が目的であり、生きがいになっていて、まさに金を支配し、金に支配された男なのだ。
誰に見せるのでもなく、膨大な美術品をコレクションしているのも、資産をカタチとして残しつつ、所有を実感する一つの方法。
金持ちは一度手に入れたものは何としても手放したくなく、だからこそ金が溜まるというが、ゲティはその典型だ。

この常軌を逸した業突く張りに、いかにして身代金を出させ、孫を救い出すのか。
誘拐犯とドケチ舅、同時に二つの敵と戦わざるを得ないアビゲイルの葛藤を軸に、物語はスリリングに展開する。

三つのプロットが絡み合い、金に翻弄される悲しき人間たちが描き出されるクライマックスは、スコット節が冴え渡り、事件の顛末を知っていても手に汗握る。
実際に起こったこととは時系列を変えてある様だが、映画的脚色として成功していると思う。
最終的にゲティは、大幅に値切った身代金を出すことに合意はするのだが、それすら所得から控除させて節税に使い、控除できない分は息子のジョン二世に借金として貸し付けるのだから、その執念は凄まじい。

文字通りの金の亡者であるジャン・ポール・ゲティを、憎たらしくも味わい深く演じるクリストファー・プラマーが素晴らしい。
セクハラ騒動でケビン・スペイシーが降板した後、わずか9日で撮り直したそうだが、にわかには信じがたいクオリティだ。
最終的に、「お天道様は見ていた」的な、庶民が溜飲を下げる展開になるのもホッとさせる。

劇中でゲティが計画している古代ローマ風の大邸宅は、現在は彼の膨大なコレクションを展示するJ・ポール・ゲティ美術館として公開されているので、こちらを観覧したことのある人には、より感慨深い作品だと思う。


今回は金に狂わされた人間たちの話なので、「ゴールドラッシュ」をチョイス。
アクアヴィット30mlとドランブイ20mlを、氷を入れたグラスに注ぎ、ステアして完成。
非常に強く、個性の違う二種類の酒で作るのだから、口に含んだ瞬間ガツンとくる。
ドランブイの甘みと香りがいいアクセント。
しかし、いつも窒息寸前の身としては、「金は空気と同じだ。いくらでもある」なんて一生に一度くらいは言ってみたいものだ。

ランキングバナー記事が気に入ったらクリックしてね



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

スコーネ アクアビット 700ml【スウェーデン】
価格:3672円(税込、送料別) (2018/6/14時点)


スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
こんばんわ
確かにトランプ大統領に苦戦する各国首脳にとっては、常識では対応できない相手である一方で、単にテーゼが違うという認識も「政治家」だからできないのかも知れませんね。

そんな身近な例もさることながら、こんな偏屈な大富豪を9日間で演じ切ったクリストファー・プラマー閣下。
恐ろしく88歳ですね~!
2018/06/16(土) 00:36:08 | URL | にゃむばなな #-[ 編集]
けち
一般人からみたら隔絶した金持ち何人か知っていますが決まってけちです。
相続税けちろうとして税務当局に否認されとんでもない追徴課税されたり金持ちのすることは理解不能(^_-)-☆
2018/06/16(土) 10:32:25 | URL | まっつぁんこ #L1vigvx6[ 編集]
こんばんは
>にゃむばななさん
いやープラマー素晴らしかったですね。
常軌を逸した金の亡者っぷりにイライラしっ放し。
もしも自分のじいさんがあんなだったら、大嫌いになってたと思います。

>まっつあんこさん
これ見てて、最初からメンタルの構造が違うんだなあ・・・と思いました。
とりあえずあんなに沢山いらないから、窒息しないくらいには欲しい。
2018/06/18(月) 22:47:19 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
金持ちのメンタル
こんにちは。
文中で金持ちのメンタルに触れていらっしゃいますが、面倒くさいことこの上ないし、またそうでなければ一代で財を築けないような気もしてさらに面倒くさい。
「お金は生きている内に使わなくちゃ損!」という私の考え方とは根本的に違うのだな、と痛感致します。
2018/06/20(水) 11:24:48 | URL | ここなつ #/qX1gsKM[ 編集]
こんにちは
>ここなつさん
ゲティ家ほどあるとかえって面倒くさいけど、彼らの1%くらいは持ってみたいものです。
もちろん、使い果たしますけど。
本当の金持ちは欲望の種類が違うのだなという気がします。
2018/06/22(金) 15:54:40 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
1973年に実際に起きた誘拐事件をもとに、リドリー・スコットが監督して製作されたサスペンス映画だ。これは恐ろしい実録物です。なんといっても誘拐した犯人の中にカンブリア州のマフィア組織ンドランゲタのボスまでいたのだから大変だ。カンブリア州はイタリアでも最南部に
2018/06/15(金) 23:22:31 | とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver
ゲティ家の身代金@神楽座
2018/06/16(土) 10:21:05 | あーうぃ だにぇっと
1973年に起こったアメリカの大富豪ジャン・ポール・ゲティの孫が誘拐された事件を、「オデッセイ」「グラディエーター」など数々の名作を送り出してきた巨匠リドリー・スコット監督のメガホンで映画化したサスペンスドラマ。ゲイル役をミシェル・ウィリアムズ、ゲイルのアドバイザーとなる元CIAの交渉人フレッチャー役でマーク・ウォールバーグが出演。ゲティ役をケビン・スペイシーが演じて撮影されたが、完成間近に...
2018/06/16(土) 11:38:58 | 映画に夢中
1973年、アメリカの石油王で世界一の大富豪ジャン・ポール・ゲティの孫息子ポールがローマで誘拐され、身代金1700万ドル(約50億円)が要求された。 ところが、ゲティは支払いを拒否。 離婚によりゲティ家を離れていたポールの母ゲイルに支払いは不可能。 ゲティの部下で元CIAのチェイスが、犯人グループとの交渉を任されるが…。 クライム・サスペンス。
2018/06/17(日) 15:12:10 | 象のロケット
本当にあったお話。石油開発で巨万の富を築き上げたゲティ家の当主ジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)は、老いて尚現役で事業を展開し、屈指の石油王となっている。そのゲティ氏の孫息子がローマで誘拐され、犯人グループは、大金を要求してきた。身代金目的の誘拐で、恐らく組織が絡んでいる。つまり、かなり組織的に仕組まれた犯行のため、カネさえ払えば孫息子は助かるはずだった。ゲティ氏の息子は親父...
2018/06/20(水) 11:27:28 | ここなつ映画レビュー