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プーと大人になった僕・・・・・評価額1750円
2018年08月27日 (月) | 編集 |
子ども時代が、訪ねてくる。

クリストファー・ロビンが、100エーカーの森から去って数十年後。
英国伝統の寄宿学校・ボーディング・スクールで学び、戦争や結婚、子育てを経験し、ブラック企業勤めのくたびれたおっさんとなったクリストファーが、なぜか故郷から遠く離れたロンドンの公園で、幼い頃の親友・くまのプーさんと再開する。
英国の児童文学作家A・A・ミルンが、息子のクリストファー・ロビン・ミルンのために、彼が持っていた動物のぬいぐるみが活躍する「くまのプーさん」を発表したのは1926年のこと。
やがてディズニーによってアニメーション化され、同社のキャラクター・ラインナップに組み込まれたことで、その知名度は広がり続けて今に至る。
近年、「美女と野獣」「シンデレラ」など、成功したアニメーション映画の実写化を進めているディズニーだが、本作は原作や過去のアニメーション作品で育った、かつて子供だった大人たちに向けた続編となっているのが大きな特徴。
もちろん、大きいお友だちたちが子連れで観に来ることは前提で、ある種のリブートになっているのも賢い。
大人になったクリストファー・ロビンをユアン・マクレガーが好演し、ノスタルジックな世界をマーク・フォスター監督が味わい深く描く。
大人から子供まで、誰もが泣いて笑って夢中になれる傑作である。
※核心部分に触れています。

イギリスの片田舎、100エーカーの森でぬいぐるみのプー(ジム・カミングス)たちと暮らしていたクリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー)は、ロンドンのボーディング・スクールに入学することになる。
別れ際「君たちのことを絶対忘れない」と言ったクリストファーだが、忙しい学校生活の中で記憶は次第に薄れ、戦争や結婚と言った人生の大事件を経験し、やがて中年に足を踏み入れる年齢となっていった。
クリストファーは娘のマデリン(ブロンテ・カーマイケル)を自分と同じボーディング・スクールに入れようとしているが、妻のイヴリン(ヘイリー・アトウェル)は反対している。
ある日、業績不振にあえぐ会社から、リストラ担当に任命されたクリスファーは、任務を遂行するために週末に予定していた家族旅行にも行けなくなってしまう。
どうすれば会社を救いつつリストラを避けられるのか、一人ロンドンに残り公園のベンチで頭を抱えるクリストファーに、自分を呼ぶ懐かしい声が届く。
振り返ると、そこには昔のままの姿のプーがいた・・・・


予告編がかなりのデジャヴだったが、物語の導入は藤子・F・不二雄の伝説的な「劇画オバQ」と完全に一致。
「劇画オバQ」は、オバケのQ太郎が15年ぶりに人間界にやって来て、今は結婚しサラリーマンとなった正ちゃんと再会。
ゴジラが音頭をとって、よっちゃんやキザオらかつての仲間たちとの同窓会が開かれる。
その席で、事業を立ち上げては失敗ばかりしているが、ただ一人熱く夢を語るハカセの言葉に皆心打たれ、酒の勢いもあって事業に参加することを宣言。
ところが「俺たちは永遠の子どもだ!」と童心を蘇らせたはずの正ちゃんたちは、翌朝にはあっさり普段の生活に戻ってしまい、ここにもはや自分の居場所はないことを悟ったオバQは、誰にも告げずに寂しくオバケの世界へと帰ってゆく。
藤子・F先生がこの作品を発表したのは、劇画ブーム真っ只の1973年で、それまでの牧歌的な少年漫画が否定され、社会性や批評性、アウトロー的な価値観が取り入れられた劇画が少年誌を席巻していた時代。
時代の変化に悩んだ作者による、シニカルで自虐的なセルフパロディだった。

しかし、純粋に大人向け、子どもの頃に読んだ私的にはトラウマ以外の何物でもなかった「劇画オバQ」に対して、本作は大人も子どもも楽しめるディズニー映画
導入のアイディア以外、物語のベクトルは全く違うのでご心配なく。
原作の「くまのプーさん」の続編「プー横丁にたった家」のラストで、クリストファー・ロビンの子ども時代は終わりに近づいていることが示唆されていた。
本作では、彼が100エーカーの森を去った後も、プーさんら森の仲間たちは変わらぬ生活を続け、クリストファーの帰りを待ち続けている。
厳格なボーディング・スクールへと送られ、忙しい毎日を送るクリストファーの中で、プーさんたちとの楽しい記憶は徐々に顧みられなくなり、やがて愛する女性と出会って結婚、第二次世界大戦では兵士として死地を駆けずり回り、復員すると家族を守る父親として奮闘し、今ではロンドンの旅行用カバンの会社でそれなりの地位のサラリーマンに。
人々のライフスタイルの変化による経営難から、ブラック化しつつある会社の中間管理職として、子ども時代とは正反対のストレスフルな毎日を送っているのである。
プーさんとの別れから始まり、ここまでのクリストファーの半生を、オープニング・タイトルバックに、本の各章として端的に表現するテリングが絶妙。

これは現実社会のしがらみで、ガチガチの仕事人間になってしまったクリストファーの、心の再生と人生の再発見の物語。
言わば「劇画オバQ」の設定で、「メリー・ポピンズ」のテーマをやった作品だ。
クリストファーは、無能な上司から支出の20パーセントをカットするという無理難題を押し付けられ、週末を家族と過ごすことすら諦めねばならなくなる。
改善策が見つからなければ、ずっと一緒に働いてきた仲間を自分が選んで解雇するしかない。
仕事を頑張るのは家族のためと考えつつも、同時に量的にも精神的にもキツ過ぎる仕事が家族との関係を毀損していることも分かっている。
人生のプライオリティに迷ったかつての親友を救うため、100エーカーの森の魔法はプーさんをロンドンへと導くのである。
クリストファーと再会したプーさんは、昔と変わらぬ天真爛漫さと、原作由来のまるで禅問答の様な名台詞の数々で仕事人間の硬直した心を少しずつ溶かしてゆく。
プーさん「What day is it?(今日はいつだっけ?)」
クリストファー 「It's today.(今日だよ)」
プーさん 「My favorite day.(僕の大好きな日だ)」
(プーさんにとってはいつだって大好きな日!)
 
今までの作品にも、プーさんのトレードマークとして登場していた赤い風船が、いわば童心の象徴として使われているのも印象的。

クリストファーは、プーさんとの思わぬ再会と旅を通して、「大人の常識」という意識の下に押し殺してきた童心と対話し、人生をベターなものにするための気付きを得てゆくのだが、同時にこの作品はクリストファーとマデリン父娘の継承の物語でもある。
ボーディング・スクールで育ったクリストファーは、娘を同じ学校に入れようとしていて、それが家族の確執になっているのがポイント。
大人の作った枠組みの中で、早く大人になることを即すのがボーディング・スクール、それに対してマデリンと母親のイヴリンは、自分のペースで大人になる自由な道を選ぼうとしているのである。
プーさんとクリストファーの再会、そしてマデリンとプーさんとの出会いによって、彼女は100エーカーの森の継承者となり、かつてのクリストファーが諦めなければならなかった、“ifの子ども時代”を過ごす権利を得る。
主に前半はクリストファー、後半はマデリン、この二人の視点を巧みに交錯させることで、大人も子どもも物語の人物に自然に感情移入できるのが上手い。
物語の舞台はロンドンから100エーカーの森があるサセックスへ、そしてマデリンがクリストファーに大切な書類を届けるため再びロンドンへ。
大人なら頑張り過ぎてしまっているクリストファーを自分の鏡像として、子どもなら大人の辛さを学びつつ、マデリンとプーさんたちのパパを救うための大冒険にワクワク。

100エーカーの森と、生きているぬいぐるみたちのビジュアルも素晴らしい。
この森は、ミルン一家が夏を過ごしたサセックスのアッシュダウン・フォレストがモデルになっており、森自体は今もそのまま実在しているのだが、映画のロケーションが行われたのはロンドン郊外のウィンザー・グレート・パーク。
ディズニーの「イントゥ・ザ・ウッズ」や最近では「アナイアレイション -絶滅領域-」のロケが行われた場所だ。
もちろん様々な効果がつけられてはいるが、こんな森で子ども時代を過ごしたかったと思わせる美しさと説得力。
プーさんやピグレットたちの、クラッシックなぬいぐるみ造形も世界観にマッチし、とても可愛らしい。
子ども時代との予期せぬ再会は、知らぬうちに仕事人間になっていたクリストファーに、人生で本当に大切なことは何かを思い出させる。
働くということがどうあるべきなのかという点で、日本人には特に琴線に触れる映画だと思うし、これは今の仕事に疑問を持っている人ほど観るべき作品。
全ての世代が笑って泣いて、人によっては自分の生き方を考えることに繋がり、最後には気持ちの良い余韻に浸れる。
プーさん好きにはもちろん、オリジナルを知らない人でも十分楽しめる傑作娯楽映画だ。

今回は、日本にも同名パブチェーンがある「ホブゴブリン」をチョイス。
チョコレートモルトの甘い香りが特徴のダークエールは、フルボディだが強いクセがなく飲みやすい。
オックスフォード州ウィットニーの森の中にあるウィッチウッド・ブリュワリーは、銘柄が全てファンタジー繋がりで、ホブゴブリンの他にもブラックウィッチやゴライアスなどがある。
ホブゴブリンとは森に住むいたずら好きの妖精の類だが、もしかしたら魂を宿したプーさんたちもその一種なのかも知れない。

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コメント
この記事へのコメント
こんにちは
こんにちは。
とてもいい作品でした。
100エーカーの森もイメージ通りに撮れていたし、ユアン・マクレガーがまた大人になったクリストファー・ロビンのイメージにぴったりでしたね。
素敵な子供時代を過ごしたことが大人になって生きてくる。自分の娘マデリンに対してもそれが大切だと気づいたことは良かったと思います。
2018/10/02(火) 12:54:00 | URL | ここなつ #/qX1gsKM[ 編集]
>ここなつさん
自分の子ども時代の思い出と久しぶりに再会したかのような、感慨深い映画でした。
たまには私たち大人も、100エーカーの森でリフレッシュしないと!
2018/10/03(水) 21:15:55 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
泣きました
ノラネコさん☆
テーマは想像の範囲を超えていなかったのに、やたら最初から泣けて仕方ありませんでした。
この映画の成功のカギはぬいぐるみのリアルさにあると思いました☆
それは生き物のように動く点にあるのではなく、ぬいぐるみを自分の手で動かしているかのようなリアルさなんです♪
2018/10/28(日) 00:07:08 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
ヌイグルミ造形が絶妙でしたね。
いかにも子どもの頃持っていたものって言うリアリティがあって。
クリストファー・ロビンのキャラクターも、大人だからこそ感情移入しちゃいました。
脱社畜の物語としても痛快でした。
2018/10/30(火) 17:28:14 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
カバンのアイデアが思い付かなかったクリストファー・ロビン

「そ、そうだ100エーカーの森を売ろう」

かくしてディズニーは熊のプーを手に入れた。

みたいな事を思い付くぐい大人です。
2018/11/07(水) 12:07:31 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
100エーカーの森はロビン家の土地じゃなさそうだけどw
まあ権利手に入れた経緯は近そう。
2018/11/13(火) 21:19:33 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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イギリス・ロンドン。 大人になったクリストファー・ロビンは会社で管理職となり、妻イヴリンや娘マデリンと休日を過ごす時間もないほど多忙な毎日を送っていた。 仕事にも家族との関係にも悩むロビンが公園のベンチで頭を抱えていると、自分を呼ぶ聞き覚えのある声がする。 振り向くとそこには、かつての親友くまのプーがいた…。 ヒューマンドラマ。 ≪それは風船より大切?≫
2018/08/27(月) 21:58:40 | 象のロケット
詳細レビューはφ(.. ) https://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201809150000/ プーと大人になった僕 〜オリジナル・サウンドトラック [ (オリジナル・サウンドトラック) ]
2018/09/15(土) 15:11:05 | 日々“是”精進! ver.F
A・A・ミルンによる名作児童文学をもとにしたディズニーの人気キャラクター「くまのプーさん」を、初めて実写映画化。大人になったクリストファー・ロビンが、プーと奇跡的な再会を果たしたことをきっかけに、忘れてしまっていた大切なものを思い出していく姿を描くファンタジードラマ。「スター・ウォーズ」シリーズのオビ=ワン・ケノービ役などで知られるユアン・マクレガーが大人になったクリストファー・ロビンを演じ...
2018/09/15(土) 21:36:03 | 映画に夢中
映画『プーと大人になった僕』の原題は、“Christopher Robin”。あ
2018/09/17(月) 23:47:23 | 大江戸時夫の東京温度
ちょっと休もうよ働き方改革 公式サイト https://www.disney.co.jp/movie/pooh-boku.html 監督: マーク・フォースター  「マシンガン・プリーチャー」 「00
2018/09/19(水) 16:30:50 | 風に吹かれて
☆☆☆☆☆ (10段階評価で 10) 9月14日(金) 109シネマズHAT神戸 シアター9にて 13:10の回を鑑賞。 2D:日本語吹替え版。
2018/09/20(木) 14:41:24 | みはいる・BのB
くまのプーさんが実写化されて本当にうれしい。この出会いの前のクリストファーは上司の言うままに動くロボットみたいだけど、子供の頃のぬいぐるみたちが大切なことを思い出させてくれた。おすすめです。
2018/09/25(火) 22:14:38 | とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver
1年の内1回ないし2回は、これが私のベスト!というわけではないのだけれど、ああ本当に良い作品だったなあ、と思える作品に出会う。本作も正にそんな作品で、本当にとても良い作品だった。もうタイトルからして内容は推測されるのだけれど…つまり、大人になって日々の暮らしを重ねるクリストファー・ロビンが、くまのプーと再会することによって忘れてしまった大切なものを思い出す話。もう絶対にそれ以外の話ではない。...
2018/10/02(火) 12:54:53 | ここなつ映画レビュー
誠実で真面目なのだけど、面白くはない。
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