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累-かさね-・・・・・評価額1650円
2018年09月17日 (月) | 編集 |
内と外、ホンモノはどっちだ?

いや~コレは面白い!
演技の天才ながら顔に大きな傷を持ち、コンプレックスの塊の累(かさね)と、美貌を誇りながら役者として致命的な病気を抱え、スランプに陥ったニナ。
この二人がキスで12時間だけ顔が入れ替わる不思議な口紅を使い、“相互保管”の関係になる。
顔はニナで中身は累、二人で一人となった彼女は瞬く間にスターダムを駆け上がるのだが、当然ながら当人たちの間には亀裂が生まれてゆく。
芳根京子と土屋太鳳という旬な二人の若手女優が、お互いがお互いを演じるという絶妙な演技のコンビネーションで魅せる。
松浦だるまの同名漫画を、「ONE PIECE FILM GOLD」の黒岩勉が脚色、監督は「シムソンズ」「脳内ポイズンベリー」などを手がけた佐藤祐市。
佐藤監督としても、キャリアベストの仕上がりとなった。

今は亡き伝説的な大女優・淵透世(檀れい)を母に持つ淵累(芳根京子)は天性の演技力を持ちながらも、顔の大きな傷にコンプレックスを感じ、人目を避けて暮らしている。
そんな彼女に母が残したのが口紅一本。
この口紅は不思議な力があり、口紅をつけてキスをすると、相手と顔が12時間だけ入れ替わる。
ある時、累は透世の関係者だったという羽生田(浅野忠信)という男に出会う。
羽生田は売り出し中の女優・丹沢ニナ(土屋太鳳)のマネージメントをしているのだが、彼女はクライン・レビン症候群という一度眠りに落ちると長期間覚醒しないという難病を抱えて、ひどいスランプの状態。
ニナが回復するまでの間、身代わりとして顔を入れ替えて舞台に立つという羽生田の提案を受け入れた累は、オーディションで演出家の烏合(横山裕)を魅了し、見事に「かもめ」の役を勝ち取る。
しかし、累が烏合に恋心を抱いたことで、ニナとの関係が徐々に変化してゆく。
舞台の上演が間近に迫ったある日、ニナを突然の発作が襲い意識を失って昏睡に陥ってしまうのだが・・・


中の人・累と外の人・ニナが顔を入れ替える物語は、ジョン・ウー監督のハリウッドでの出世作「フェイス/オフ」を思わせる。
あの映画ではジョン・トラボルタ演じるFBI捜査官が、テロリストのニコラス・ケイジの顔に整形し、仕掛けられた細菌爆弾のを巡って潜入捜査をするのだが、テロリストは逆にトラボルタの顔に整形し、彼の人生を奪おうとする。
もちろん本作はあんな銃撃戦満載のアクション映画ではないが、“顔”というアイデンティティを一番分かりやすく象徴するものを奪い合うというコンセプトは共通する。
さらに「シンデレラ」的な魔法の終わる12時間のタイムリミットを設けることによって、中味バレのサスペンスが非常にうまく機能している。
口紅がなぜ顔を入れ替えるのかという説明は全くないが、作品世界における唯一の“人智を超えた不可思議なもの”という位置付けで、これはこれで良いと思う。

二人のハイブリッドは舞台の上で開花して行くのだが、彼女らの存在そのものが、虚構が現実を超えるてゆくあらゆるナラティブ芸術・創造のメタファー
作品中でニナと契約し、彼女の顔を借りた累が演じる二本の劇中劇が、本作のストーリーのモチーフでありながら、本作の展開によって新たな意味を与えられる双方向性の構造になっているのが面白い。
彼女が最初に挑むのが、チェーホフの「かもめ」だ。
この戯曲は新しい形式の演劇を生み出そうとする若き劇作家のコスチャと、彼が想いを寄せる女優志望のニーナ、コスチャと確執を抱える母親で大女優のアルカージナ、彼女の愛人の人気作家トリゴーリンらの物語。
女優を夢見てコスチャを裏切る劇中のニーナは、名前を見れば分かる通りニナのモチーフであり、最終幕で全てを失いながら忍耐を重ねて生きてゆく姿は、その後のニナ=累の向かう道を示唆する。
またカモメを撃ってニーナに捧げるコスチャの行動は生贄を求める羽生田の、ニーナとトリゴーリンはニナと烏合の、コスチャとアルカジーナの親子は累と透世の関係に繋がりを見ることができる。

本作の前半部分では累は巻き込まれ型のキャラクターで、「ニナが累の演技力を借りている」状況だったのが、彼女が演じ、喝采を浴びる快感に目覚めると、次第に「累がニナの外見を借りている」構図に変わってゆく。
そして終盤になって彼女が演じることになり、本作のクライマックスとなるのが、オスカー・ワイルドが新約聖書を元に書き下ろした戯曲「サロメ」だ。
ユダヤの王女サロメは、実の兄弟だった前王から妻ヘロディアを略奪したヘロデ王の義理の娘。
彼女は預言者ヨカナーンに一目惚れするのだが、彼は神の言葉を聞くことに夢中で全く相手をしてくれない。
失恋したサロメは、絶対にヨカナーンにキスすることを誓う。
そんな時、ヘロデから宴席で踊れば、望むものを何でも与えるといわれたサロメは、七つのヴェールの踊りを披露し、その褒美としてヨカナーンの首を所望する。
望み通りヨカナーンの生首を手にしたサロメは、彼の唇にキスをし、その様子を見たヘロデは恐れ戦いてサロメを殺させる。
この戯曲に関しては、過去1世紀以上にわたって様々な解釈がなされてきたが、ここでは望みを遂げるために愛するものの命を所望する狂気のサロメに累の欲望と覚悟が、彼女のために犠牲となるヨカナーンにニナが投影されている。
劇中劇のシーンでは、累のイメージとしてヨハナーンの首がニナの首に見えているという描写もあり、よく知られた戯曲とのシナジー効果によって、物語のテーマが分かりやすく浮かび上がるという凝った仕掛け。
引用される二つの戯曲の両方で“キス”が重要な要素となっていて、それが現実のキスとリンクしているのも象徴的だ。

累とニナという同じ顔にそれぞれ二つの人格を宿すキャラクターを、お互いに演じ分けた芳根京子と土屋太鳳の役作りの仕上がりは圧巻の説得力。
このコンセプトは役者に互角の実力がないと成立しないが、二人とも演技賞ものの素晴らしさ。
芳根京子が非常に上手い役者なのはもはや言うまでもないが、今回は彼女と対になることで土屋太鳳という才能がいかに無駄使いされているのかもよく分かった。
これだけの演技の振り幅を持っているのだから、毎年の様に似たような役柄を演じているのはやっぱり勿体ないだろう。
外連味たっぷりの佐藤祐市のテリングのスタイルも、ストーリーとピッタリとマッチ。
いい意味でマンガチックな部分も含めて、邦画離れした華やかさとデカダンスを併せ持つ、秀逸なピカレスクドラマだ。

しかし、芳根京子は頬に大きな傷をつけても、やっぱりかなりキレイなのである。
原作の累はもともと醜い容姿にさらに傷があるという設定だが、映画の累はあれならわざわざ入れ替わらなくても、舞台ならメイクでなんとかなる様な気がしてしまった。
役者さんがキレイ過ぎるのが映画版の欠点と言えば欠点かな。
本作はこれ単体で綺麗に完結しているが、基本的に女優・累の物語のビギニングとしての構造を持つ。
コンプレックスの塊だった彼女が、いつか借り物の外見ではなく、本当の自分自身に向き合うのか、是非続編を期待したい。

今回は累とニナの二人から、白と黒のカクテル「ブラック・ベルベット」をチョイス。
スタウトビールとキンキンに冷やした辛口のシャンパン、もしくはスパークリング・ワインを、1:1の割合で静かにゴブレットに注ぐと、スタウトの黒と明るいシャンパンのグラディエーションに乗った白い泡という綺麗なモノトーンのカクテルが出来上がる。
スタウトのコクとシャンパンの辛口の爽やかさを併せ持ち、その泡は名前の通りベルベットの様にきめ細かく、舌触りを楽しめる。

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2018/09/17(月) 16:50:30 | 映画に夢中
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2018/09/18(火) 01:09:15 | 象のロケット