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ショートレビュー「若おかみは小学生!・・・・・評価額1700円」
2018年09月28日 (金) | 編集 |
出会いがココロを強くする。

2007年のOVA「茄子 スーツケースの渡り鳥」以来、高坂希太郎11年ぶりの監督作品、しかも脚本は「リズと青い鳥」の吉田玲子。

これだけで期待しない訳にいかないのだけど、出来上がった作品は予想を超える素晴らしさだ!
原作はTVアニメ化もされた令丈ヒロ子の児童小説。

不慮の交通事故で両親を亡くした小学校6年生のおっこが、小さな温泉旅館「春の屋」を経営する祖母のもとに引き取られ、なりゆきで旅館の若おかみとなる。
そして、彼女にだけ見える幽霊や訳ありの客たちとの交流を通して、力強く成長してゆく物語だ。
本年度のアヌシー国際アニメーション映画祭でもコンペティション部門に選出されていて、絵柄は子ども向けだが、ドラマは大人を唸らせ泣かせるのに十分な完成度。


制作を手掛けたのは、TVアニメ版と同じくDLEとマッドハウス。
美しいアニメーションで描かれるキャラクターは、とても魅力的に造形されていて、天真爛漫なおっこのクルクル変わる表情が可愛い。
舞台となる花の湯温泉の温泉街は有馬温泉がモデルだそうだが、なるほど山間の地形はよく似ているが、日本の美しい情景が詰まったある種の理想郷として描かれている。
ここでは生きた人間も幽霊も妖怪の類も共存しており、おっこが見るまるで生きているかのような両親の幻影も含めて、生と死が入り混じるリリカルな世界観は魅惑的だ。
春の屋は有馬でなく、京都の旅館がモデルになっているらしいが、「あんな旅館が本当にあるのなら、泊まってみたい」と思わせた時点で勝ち。
たぶん、値段もお高い設定だろうけど。

原作小説は一部しか読んだことがないのだが、吉田玲子は全20巻という膨大な文章から取捨選択し、突然の事故で人生が劇的に変わったおっこが、封印した心の傷に向き合い、両親の死という悲しい事実を受け入れられるまでのプロセスを軸に、1年間の物語として綺麗に再構成。

大き過ぎる喪失からの少女の再生と成長を結びつけた物語は奇をてらった部分は無いが、その分おっこの心を機微を丁寧に紡いでゆく。
一度死にかけたおっこにだけに見える幽霊のウリ坊と美陽、訳ありのお客さんを呼び寄せる妖怪の鈴鬼のチーム(?)が慣れない環境に飛び込んだ彼女のお助け役。
同時にこの世に想いを残した幽霊の二人も、おっことの絆によって浄化されてゆく。


宿にやってくるお客さんも、最初がおっこと同様に母を亡くした美少年あかね、次がおっこの年上の友だち兼アドバイザー役になる占い師のグローリー水領と、彼女の心の傷に対応した存在。
徐々に再生への難易度が上がって来る様に出来ていて、グローリーとドライブに出かけた先での事故の記憶のフラッシュバックを経て、クライマックスとなる“ある家族”とのドラマチックなエピソードには思わず涙腺が決壊。
人々の優しさとおっこの決意に、おじさん胸が熱くなったよ。
本来体を癒す温泉で、彼女は人との温かな絆を通じて心を癒されている。
おっこのライバル的存在の、ピンフリちゃんとの関係も良かった。
方やこじんまりとした旅館の若おかみ、方や温泉街を代表する巨大リゾートの後継者と、表面的な部分は何かと対照的だが、一番大切にしている価値観は同じで、なによりも二人とも花の湯温泉を愛している。


素晴らしい作品だが、唯一気になったのが余りにも毒が無いと言うか、おっこを含めて子どもたちが皆、温泉街の後継者として自分の運命を素直に受け入れていること。

まあこれはたぶん原作由来なのだろう。
おっこでなくてもいいが、誰か一人くらい「君の名は。」の三葉みたいに、「こんな田舎嫌!」とか「来世は東京のイケメン男子にしてくださーい!」って葛藤を抱えた子がいても良かったと思う。

今回は有馬温泉のある兵庫の地酒で1849年創業の老舗、西山酒造場の「小鼓 純米吟醸」をチョイス。
吟醸香は軽やかで、クセがなく非常に優しい味わい。
それでいてキレのある辛口で、どんな料理にも合う懐の広さがある。
温泉旅館で、季節の地のものと一緒に飲んだら最高だろう。

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コメント
この記事へのコメント
秀作ですね
こんにちは。
ポスターや宣伝から見て、小学生以下の子供向けアニメだと思ってしまう人が多いでしょうが、これはむしろ大人にこそ見て欲しい秀作ですね。
ブログに上げる人もあまりいないかな、と思ってましたが、さすがノラネコさんですね。
クライマッスのあの家族とのエピソードには、私も号泣してしまいました。ハンカチ必携です。
片渕須直監督に続いて、ジブリの遺伝子が確実に受け継がれている事を実感しましたね。
多くの映画ファンに見て欲しいと思います。
2018/09/29(土) 12:37:30 | URL | Kei #BxQFZbuQ[ 編集]
こんばんは
>keiさん
まあタイトルからして子供向けっぽいですもんね。
お客さんも入ってなかったけど、これほどの秀作が短期で終わっちゃうのは残念です。
高坂監督はやはり非常に優れた演出家だなあと。
次の監督作品は11年後にならないことを祈ります。
クライマックスの仕掛けには思わず息を呑みました。
吉田玲子の脚色もまた見事でした。
2018/09/29(土) 21:40:27 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんばんわ
プリキュアを見る世代の作品でしょと思っていたのが大間違い。いやはや、これぞ大人が見るべき作品でしたね。
特に「ある家族」との出会いは、本当にヘビー。
これを子供に見せるのか?と思いつつも、実際子供世代はおっこと同じくそんなヘビーなものでもクリアしていくのでしょうね。
そんなことを思いつつ、最後はやっぱりこのタイトル、何とかならなかったの?でした…。
2018/10/27(土) 00:02:52 | URL | にゃむばなな #-[ 編集]
こんばんは
>にゃむばななさん
基本子ども向けでしょ?ってビジュアルで、当初は敬遠してた人も多かったのでしょうね。
SNS口コミヒットになって良かった。
最初から生と死の物語だし、結構ヘビーなんですが、子どもたちにとってはおっこの気持ちになることで、大きな学びをもたらしてくれる作品でしょうね。
2018/10/30(火) 17:27:30 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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2018年・日本 アニメーション制作:DLE、マッドハウス配給:ギャガ 監督:高坂希太郎 原作:令丈ヒロ子、亜沙美(絵)脚本:吉田玲子 作画監督:廣田俊輔 累計発行部数300万部を誇る、令丈ヒロ子+亜
2018/09/29(土) 12:21:51 | お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法
小学6年生の少女おっこは交通事故で両親を亡くしたため、花の湯温泉郷の旅館を経営する祖母・峰子に引き取られた。 旅館に住み着いているユーレイのウリ坊や、美陽、子鬼の鈴鬼、ライバル旅館の跡取り娘・真月らと知り合ったおっこは、ひょんなことから春の屋の若おかみ修業を始めることに…。 アニメーション。
2018/09/29(土) 12:23:46 | 象のロケット
令丈ヒロ子の同名の児童文学シリーズを劇場アニメ化した作品だ。なんか評判になっているので見に行ってきた。朝1回しか上映がないけどなかなかの良作であった。もっと涙で出ると思ったけど、意外なことにそれほどではなかった。わてがさめているのか、他のお客さんが情緒豊か
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