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響 -HIBIKI- ・・・・・評価額1600円
2018年09月29日 (土) | 編集 |
「怪物」だけが世界を変えられる。

ジャンルレスな作品だが、あえて言えばこれは文学アクション映画だ。
平手友梨奈演じる鮎喰響(あくいひびき)は、驚くべき小説の才能を持つ高校生。
突如として文学界に現れ、大センセーションを巻き起こした彼女は、誰に対しても自分の信じる道を決して譲らない。
常に本音だけで生きているから、この世界を牛耳るオヤジたちの「常識」や「建前」と必然的に衝突し、盛大に波紋を広げてゆく。
柳本光晴による同名漫画を「小野寺の弟・小野寺の姉」の西田征史が脚色し、監督はつい先日も「センセイ君主」で楽しませてくれた月川翔。
前作ではラブコメ、本作では文学という全く異なるモチーフを、共にリズミカルなアクション感覚で描き絶好調ぶりを見せつける。
※核心部分に触れています。

活字離れによる出版不況に陥った文学界。
新人賞を募集している文芸雑誌「木蓮」の編集部に、一編の小説が届く。
応募要項を一切無視していたため、破棄されるはずだったその小説を、編集者の花野ふみ(北川景子)が手に取ったことから事態が変わる。
「御伽の庭」と題されたその小説は、作者の天才を感じさせる傑作だったのだ。
作者の鮎喰響(平手友梨奈)が15歳の女子高校生であることを知ったふみは、彼女が文学界の未来を変える新世代のスターだと確信する。
しかし響は自分の信じる生き方に決して妥協せず、建前で生きている大人たちとぶつかりまくり。
友人の凛夏(アヤカ・ウィルソン)を侮辱した大御所作家の鬼島(北村有起哉)には回し蹴りを決め、新人賞の授賞式では、自分の小説を小馬鹿にした同時受賞者の田中康平(柳楽優弥)を殴って怪我を負わせてしまう。
一方、「御伽の庭」はセンセーションを巻き起こし、芥川賞と直木賞のダブルノミネートという歴史的な快挙を達成。
響は一躍時代の寵児として、世間の注目を浴びることになるのだが・・・・


タイトルロールの鮎喰響は、若干15歳の高校1年生にして小説の天才。
しかし妥協を知らず、やたらと喧嘩っ早いという危険人物だ。

世間のしがらみや常識にとらわれず一貫した行動原理の元に生きる響自身は、葛藤を持たず物語を通して全く変化しない狂言回し。
だから彼女自身についても、彼女が書いた傑作とされる小説「御伽の庭」の内容についても、映画の中ではほとんど描写されることは無く、破天荒な天才に振り回される周りの人々の方が慌てふためきながら変わってゆく。
基本凡人の集合体である「世間」は、時に恐怖しながらも圧倒的な力を持つ狂気の「怪物」の登場を求め続ける。
そして怪物に出会った人間たちは、好むと好まざるとに関わらず、影響を受けざるを得ない。


劇中で響を見出す北川景子演じる編集者・花井ふみは、言わば大衆・凡人の代表にして観客の視点となるキャラクターだ。
彼女同様、システムの中でなんとなく生きている我々にとって、建前が一切通用しない響の言動は痛快。

小柄な体でゲスなオヤジや傲慢なマスコミに問答無用で蹴りを入れる彼女に、戦々恐々としながらもついつい応援してしまう。
もちろん暴力に訴えるのがマズイことなのは確かだが、一応彼女が行動を起こすのは、先に喧嘩を売られたケースのみ。
それも自分自身のことよりも、自分にとって大切な人や価値観を蔑ろにされた時に激しく反応する。

この相当にエキセントリックなキャラクターを演じる平手友梨奈のことは、欅坂46のセンターを務めているタヌキ顔のアイドルという以外殆ど知らなかったが、はまり役と言っていい。
他の出演作を見ても、基本的にあまり表情が豊かな感じではないのだけど、終始仏頂面で表情が変わない響にはぴったり。
露骨に村上春樹的な大作家を父に持ち、自分も才能を持ちながらも親の七光りという評価に葛藤する祖父江凛夏を、天然一直線で悩み無き響の悩めるライバルに設定したのも良いバランス。
関係ないけど、凛夏役のアヤカ・ウィルソンは「パコと魔法の絵本」の「ゲロゲ~ロ」の娘か。
まああの映画ももう10年前なのだけど、いつの間にか大きくなっていてビックリした。

物語上で響と重点的に絡むのはふみと凛夏の二人だが、歩く台風の響にわずかに触れた人間たちは皆、その人生の軌道を強引に変えられてしまう。
人と響が邂逅する度に、彼女の名言・格言が飛び出す作品なのだが、そこには創作者のあり方、受け手のあり方に関して示唆に富む名台詞が多い。
特に小栗旬演じる万年芥川賞候補どまりの純文学作家・山本春平とのやり取りには、思わず膝を打った。
響は春平の作品を褒めるのだが、自暴自棄になった春平はいつまでたっても賞がとれない自分の小説を卑下する。
すると響は「人が面白いと思った小説に、作者の分際で何ケチつけてんのよ」言い放つのだ。
この言葉は同時に「人がつまんないと思ったことに、作者の分際で何ケチつけてんのよ」と言い換えることも可能で、あらゆる芸術は作り手だけでは成立せず、受け手がそれぞれの内面で消化することで初めて完結することを端的に表している。
近年SNS上で作り手が受け手の感想に感情的に反応し、相次いで炎上するのも、この原則的な関係性を理解していないからだ。

他にも、柳楽優弥が演じる新人作家の田中康平がぶん殴られるのも、読まないで響の小説を批判すると言うルール違反を犯したから。
これも同じ作り手・受け手の関係性の文脈で、炎上したくない人は本作を観て学んだ方がいい(笑
本作は「怪物」響が世の理不尽や常識という名の非常識を、その才覚だけでぶっ壊してゆく痛快な活劇なのだが、同時にメタ的な批評眼を持つ作品なのである。

それにしても「累-かさね-」「愛しのアイリーン」そして本作と、漫画原作の快作が続く。
どれも比較的小さな映画だが、大予算をかけた下手クソなコスプレショーよりずっと面白いよ。

今回はそのまんまサントリーの「響 ジャパニーズハーモニー」をチョイス。
近年やたらと高騰してしまっている国産ウィスキーだが、多彩な原酒から作られるジャパニーズハーモニーは比較的安価に手に入る。
ノンエイジもので熟成は浅いので、基本的には華のある軽やかさ。
とはいえ響の名を冠してるので、クオリティ的には十分に本格的な味わいを楽しめる。
私はオンザロックでチビチビやるのが一番好きだ。

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映画「響 -HIBIKI-」を鑑賞しました。
2018/09/29(土) 22:36:35 | FREE TIME
映画『響 -HIBIKI-』は(原作はまったく未読ですが)予告編を見て「お!」と
2018/09/29(土) 23:26:15 | 大江戸時夫の東京温度
活字離れが急速に進み、出版不況の文学界。 そこに現れた15歳の天才少女「鮎喰響(あくいひびき)」の才気あふれる小説は、文学の世界に革命を起こす力を持っていた。 編集者・花井ふみとの出会いを経て、一躍脚光を浴びる響。 だが、彼女の歯に衣着せぬ物言いや、常軌を逸した行動は、世間の非難を浴びることに…。 ヒューマンドラマ。
2018/09/30(日) 00:36:43 | 象のロケット
これが映画初出演となる「欅坂46」の平手友梨奈主演で、文芸の世界を舞台に15歳の天才女子高生小説家を主人公にした柳本光晴の人気漫画「響 小説家になる方法」を映画化。主人公の響役を平手、編集者の花井役を北川景子、響が所属する文芸部の部長で、響の圧倒的な才能との差に苦しむ女子高生・祖父江凛夏役を、8年ぶりの実写映画出演となる「パコと魔法の絵本」のアヤカ・ウィルソンがそれぞれ演じる。そのほかの共演...
2018/09/30(日) 18:59:43 | 映画に夢中
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