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ショートレビュー「運命は踊る・・・・・評価額1650円」
2018年10月10日 (水) | 編集 |
見えざる力のマリオネット。

テルアビブに暮らす建築家のミハエルとダフナ夫婦が、軍の役人から息子ヨナタンの戦死報告を受け取るところから始まる物語。
監督・脚本は、自らの体験をもとに一台の戦車の中から見た“戦争”を描いた異色作「レバノン」で、ベネチア国際映画祭金獅子賞に輝いた、イスラエルの異才サミュエル・マオズ。
前作も非常にユニークな作品だったが、今回もモチーフの切り口がとても面白く、ベネチアで二作品連続受賞となる銀獅子賞を獲得している。
息子の戦死の話は、やがて軍が同姓同名の兵士と間違えたと分かるものの、誤報に振り回されたミハエルは激昂し、「今すぐ息子を連れ戻せ!」と連絡役の軍人を怒鳴りつけるのだ。
※核心部分に触れています。


一方その頃、息子のヨナタンは戦う相手がいない無人の“戦場”で、シュールな日常を過ごしている。
湿地に沈みつつあるコンテナの兵舎に暮らし、荒野の一本道に作られた検問所で日がな一日中見張りを続け、暇を持て余せば小銃を相手に情熱的にダンスを踊る。
通りかかるのは、野良ラクダと僅かな数の車のみ。
ヨナタンらの部隊は、車が通りかかる度に停止を求め、「未来世紀ブラジル」あたりに出てきそうな年代物の照合機で乗っている人々のI.D.をチェックする。
彼ら自身も、自分たちが何と戦っているのか、何のために駐留しているのか分からない、まるで白日夢を見ている様な象徴的な虚無の戦場だ。
しかし、ある事件によって夢うつつな世界の静寂が破られ、ヨナタンが不可抗力とはいえ大きな罪を犯すと、彼の運命も世界の理によって変わってゆく。

英題の「Foxtrot」は、ダンスのステップの名前。

前へ、前へ、右へ、後ろへ、後ろへ、左へ。

四角形を形作るステップは、どこまで踊っても必ず元に戻ってくる。

分かりやすい三幕構成に分かれた映画には、Foxtrotのステップの様に見えざる手に導かれたいくつもの運命のループが組み込まれていて、それが家族の歴史と絡み合い、三幕それぞれの“今”を形作る構造。
監督は古典的なギリシャ悲劇が作りたかったそうだが、自らは与り知らない運命に翻弄され、どこかに行こうとして結局どこにも行けない人間たちの織りなすドラマは、たしかに悲劇的でなおかつ滑稽だ。

第一幕の舞台となるミハエルとダフナの家は、成功した建築家の自宅らしく、極めて機能的で無機質。
すべてに均等と完璧さを感じさせる舞台だが、そこへ齎された息子の戦死の報は、両親が作り上げた揺るぎなき日常に予期せぬ衝撃を与える。
そして、亀裂が入った世界を修復すべく、ミハエルが第二幕で非日常の世界にいたヨナタンを強引に呼び戻したことによって、図らずも世界は再び崩壊してしまう。
ミハエルは、息子の死は間違いだったという事実を認めるだけでは飽き足らず、本来運命を正す役割の連絡係の軍人の頭越しに、無理やり息子を帰還させようとする。
ダフナはミハエルを止めようとするが、同時に息子と同姓同名の誰かの死を喜びと考えたことに気づいていない。
二人の犯した小さな罪は、結果的に息子を二度殺して事態を振り出しに戻すことになるのだが、虚構を紡ぐコミックアーティストでもあるヨナタンによって、映画は第三幕で歴史に秘められた家族の運命の円環をエモーショナルに描き出すのである。

新約聖書の「ヨハネの黙示録」には、主の言葉として「私はアルファであり、オメガである」と綴られている。
始めを知り、今を知り、終わりを知る。
本作ではギリシャ悲劇の導入のプロロゴスが終章のエクソダスとのループを作り出すが、時の輪を超越し、全てを知るのは全知全能の神のみ。
これは一つの家族の悲劇を通して、理由のある偶然が作り出す人間の運命の不条理と、その偶然を演出する見えざる手への畏怖の念を感じさせる優れた寓話である。

今回は、イスラエルを代表する銘柄の一つ、ゴラン・ハイツ・ワイナリーの「ヤルデン シャルドネ」の2016をチョイス。
フルボディのドライな白で、洋梨やレモンの果実香が広がる。
コストパフォーマンスも高く、普段使いには丁度いいが、まだ若いのでもう2、3年くらい寝かせると深みが出てくるだろう。

関係ないけど、イスラエル軍のレーションてあんな不味そうな缶詰だけなの?
 
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イスラエルの建築家ミハエルの家を訪れた軍の役人が、息子ヨナタンの戦死を告げ、妻ダフナはショックのあまり気を失ってしまう。 ところがその後、戦死の報せは間違いであることが判明した。 それまで冷静だったミハエルは怒り狂い、息子を直ちに帰還させるよう要求する。 その頃ヨナタンは、戦場の検問所で通行車を取り調べていた…。 社会派ドラマ。
2018/10/11(木) 00:53:47 | 象のロケット