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バッド・ジーニアス 危険な天才たち・・・・・評価額1650円
2018年10月14日 (日) | 編集 |
天才少女の危険なビジネス。

実際に起こった組織的なカンニング事件をモチーフとして、タイで作られた異色のクライム・サスペンス。
裕福とは言えない父子家庭で育った頭脳明晰な少女・リンが、父親が無理をして入学させた名門校で、“カンニング・ビジネス”に手を染めてゆく。
最初は友達を救うための、誰もが身に覚えのあるちょっとしたカンニング。
しかし、リンの頭の良さが校内に知れ渡ると、金と引き換えにその恩恵に与ろうとする輩が大量発生。
彼女は、自らの頭脳と協力者のネットワークを駆使すると、驚くほどの大金を手に出来ることを知ってしまう。
もはや止まらなくなったカンニング・ビジネスは、校内どころか国境をも超え、大規模な犯罪に発展してゆく。
監督はナタウット・プーンピリヤ、ファッション・モデル出身のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンが天才少女・リンを演じる。
※核心部分に触れています。

成績優秀な少女・リン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)は、教師をしている父親と二人暮らし。
奨学金を得た彼女は名門校に入学し、人はいいが成績はイマイチのグレース(イッサヤー・ホースワン)と友達になる。
ある時、グレースの数学の点数が規定に足りず、演劇部の活動が禁じられることを知ったリンは、テストでカンニングをさせて彼女を救う。
ところが、グレースがリンのことをボーイフレンドのパット(ティーラドン・スパパンピンヨー)に話したことから、事態は急展開。
金持ちの御曹司であるパットは、大金と引き換えに彼と彼の友人たちにカンニングをさせることを持ち掛けてくる。
リンは、試験会場にいる多数の依頼人に同時に答えを伝えるために、ピアノの手の動きからハンドシグナルを考案するのだが、そこには予想外の落とし穴があった・・・・


“カンニング”をモチーフとした映画といえば、クロード・ジディ監督の「ザ・カンニング[IQ=0]」というかなりおバカなフランスのコメディ映画があって、日本でもヒットして続編も作られた。
ぶっちゃけ、本作はあれのタイ版みたいのかと思ってたのだが、ユーモアはあるもののだいぶシリアスな映画だ。
切っ掛けは、友人のグレースのためにやった、消しゴムにマークシートの答えを書いてカバーで隠して後ろの席に渡すという、古典的で他愛ないカンニング
消しゴム作戦は私の通っていた中学校でも流行って、試験中は消しゴムカバーが禁止されたのを思い出した。

ともあれ、どんな悪事も一回やってしまうと歯止めが利かなくなるもので、グレースがボーイフレンドで悪知恵の働く金持ちのボンボン、パットに話したことで”カンニング・ビジネス”が始動する。
一対一ではなく、多くの“顧客”に同時に答えを伝えるために、リンが編み出すのがピアノを演奏する手の動きをパターン化して、マークシートの番号に当てはめるハンドシグナル
これならば、手の動きをリレーすることで、遠く離れた席にも伝えられ、彼女の顧客は順調に増えて実入りも増大してゆく。
だが敵もさるもの引っ掻くもの。
二種類の問題をランダムに配るという学校側の対策に焦り、ミスを犯したリンのカンニングは、別の奨学生であるバンクの告発によって発覚。
彼女は娘を信じていた父からも、学校からも叱責され、奨学金もはく奪、シンガポールへの留学の夢も潰える。
失敗を改心に繋げれば良いものの、ギャンブルの損はギャンブルで取り戻すとばかりに、リンはパットのさらなる誘いにのってしまう。

映画ではSTICという架空の国際学力テストがクライマックスとなるが、外国人が米国の大学に留学しようとすると、大学進学適正テストのSAT か ACT、大学院の場合はGREの点数の提出が義務付けられていいる。
本作の直接の元ネタになっているのは、2014年に中国と韓国でSATテストの大規模な不正が発覚した事件だが、アジアではこの種の不正が繰り返されていて、過去に起こったいくつもの事件を組み合わせて構成している感じだ。
時差のあるオーストラリアのシドニーで試験を受けて、タイで試験が始まる前に答えを伝えるという“時間差カンニング”は、2007年に摘発された事件が元ネタだろう。
この時は、タイで試験を受けて答えが韓国に伝えられ、実に900人もの韓国人学生が成績取り消しの処分を受けている。
このスケールの大きな作戦を成立させるため、リンが自らのカンニングを告発したバンクを仲間に引きれようとし、止むに止まれぬ理由からバンクも誘いを受けたことで、格差社会を背景とした「倫理」という明確なテーマが浮かび上がる仕組みだ。

物語の軸となる四人のキャラクターが良い。
とことん真面目で清貧を絵に描いたような父に育てられたリン、親が印刷工場を経営していて容姿にも恵まれたものの勉強は苦手なグレース、金持ちの御曹司でリンにカンニング・ビジネスを持ちかけるパット、そしてリンと同じ様に方親のもとに育った苦学生のバンク。
リンとバンク、グレースとパットの家庭環境の差は、経済発展著しいタイの格差社会の縮図であり、それぞれ父子家庭と母子家庭で育った秀才のリンとバンクの対比は、倫理観の対照を形作る。
リンとグレースの普通の友だち関係から始まった繋がりは、カンニング・ビジネスが始まってからは、利害関係のセンシティブなバランスで保たれる運命共同体のプチ犯罪組織となってゆく。

リンは自分のカンニングビジネスを、学校が金持ちの親から授業料以外に寄付(ワイロ)で儲けているのと同じだと言う。
親から金を受け取った学校は、その子供たちに便宜を図る。
ならば自分がカンニングをさせて、勉強が苦手な生徒に高得点を与えても同じではないかと言うのだ。
素直に肯定は出来ないが、主人公の行動に一定の理屈は通る、ピカレスク・ロマンの構造を持つ。

クライマックスの国境を超えた壮大なカンニング作戦は、いわば点数を獲物とした学生版「オーシャンズ」シリーズであり、典型的なケイパームービー。
シドニーに飛んだ現場担当のリンとバンク、タイでバックアップするグレースとパット、それぞれがその能力や特技を生かして、厳格なテスト管理の裏をかき、リスキーな作戦を遂行するプロセスは極めてスリリング。
プーンピリヤ監督は、臨場感を最大限に高める凝ったカメラワークと、細かくリズミカルなカッティングによって、観客をまるで自分がテスト会場にいてリンと行動を共にしているがごとく錯覚させる。
冒頭から映画の進行に四人が取り調べを受けるシーンを取り混ぜ、失敗を予見させる伏線を生かしたのも上手く、非常によく考えられたプロットだ。
そして、予想外のトラブルがリンとバンクの運命を交錯させる波乱によって、物語は単純な善悪の二元論に陥らない、絶妙な着地点を見いだすのである。
観る前はてっきりライトなコメディだと思っていたので、ビターでハードな展開は予想外だったが、これは単なるケイパームービーの枠を超えた、優れた社会派エンターテイメントだ。

今回はタイを代表する国民的ビール、ブーンロード・ブルワリーの「シンハー」をチョイス。
1933年にドイツとの技術提携により、ジャーマンビールをベンチマークして生まれた。
東南アジアのビールの例に漏れず、すっきり爽やか系のキレのある味わいで、スパイシーなタイ料理にとてもよく合う。
ビールはその土地で飲むのが一番美味しく感じる物だが、日本も熱帯の気候に近づいているので、案外丁度よく感じられる。

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コメント
この記事へのコメント
こんばんわ
格差社会と倫理観。
まさにこの映画の、いやリンの行動原理になる2本の柱ですよね。
若い頃に自分が頭のいい人間だと自覚すると、どうしてもそれを難しいことに使いたいんですけど、なぜか悪い道を選ぶのは時代も国境も関係ないんだなと思いました。

ただ実際に一番難しいのはカンニングよりも、他人に教えることなんですけどね。これだけは大人になっても本当に難しいですわ。
2018/11/02(金) 22:58:54 | URL | にゃむばなな #-[ 編集]
こんばんは
>にゃむばななさん
カンニングという誰もが経験のある「犯罪」を突き詰めて、ケイパームービーの作りにしたのがいいですね。
テーマ的には非常に普遍性があるので、これは各国でリメイクされまくるのではないかと思っています。
格差の大きい社会ほど説得力を持ちそう。
2018/11/04(日) 22:12:15 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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