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ショートレビュー「スモールフット・・・・・評価額1700円」
2018年10月24日 (水) | 編集 |
“掟”はなぜ作られる?

これはテーマ的に非常にエッジーで、深みのある作品だ。
雲海から突き出すように、天空高くそびえる雪と氷の山にあるイエティの村では、古から伝わる「石の掟」によって全てが決まる。
歴史認識から生活の細々とした点まで、石に刻まれた無数の掟をまるで鎧のようにして身に着ける長老は“ストーンキーパー”と呼ばれ、族長的な役割を担っている。
だが本作の主人公である若者・ミーゴが、掟では存在しないことになっている伝説のUMA、スモールフット(人間)と遭遇したことで、掟の信憑性に綻びが生じる。
掟の権威を守りたいストーンキーパーは、ミーゴを村から追放することで事態を収拾しようとするのだが、保守的な大人たちに反発を募らせるミーゴとナードな仲間たちは、スモールフットを捕まえて掟の矛盾を暴こうとし、「何も存在しない」と教えられてきた雲海の下の世界へと旅立つ。
そこでイエティを探しに来ていたユーチューバーと出会ったことから、異文化交流が始まるというわけ。
※核心部分に触れています。

しかし、そもそもなぜ嘘の掟が作られたのか?
なぜストーンキーパーは、間違いなのが分かってもなお頑なに掟を守ろうとするのか?
そこに秘められていたのは、イエティとスモールフットの間の悲しい歴史。
お互いを“怪物”と思い、恐れていた二つの種族は、やがて殺し合うようになる。
戦いに敗れたイエティは、スモールフットが生きられない極寒の高山に逃れ、嘘の掟を作って下界の記憶を封印することで細々と生き残ってきたのだ。
もしスモールフットが、イエティが生き残っていることに気づけば、悲劇は再び繰り返されるかも知れず、だから二つの種族は再び出会ってはならないのである。
思いもよらない掟の真実を知ったミーゴは、ことの重大さに葛藤を深めざるを得ない。
人(イエティ)は無知な方が幸せなのか?
それとも、真実を知った上で困難に向き合うべきなのか?

イエティの村は現実の世界のメタファーであり、ここで起こっていることは情報操作と愚民化政策に他ならない。
宗教や政党、あるいは偶像化された個人など、人々が絶対的な権威に従順であれば、為政者にとってはそれが一番都合がいい。
為政者が基本的には善意の人なのもポイントだ。
でもそれは、真実を知ってしまった者にとっては、壁のない監獄、偽りの世界に生きるのと同じこと。
キャラクターデザインをはじめ、ビジュアルは緩いが、この映画が描いている内容は政治的で極めて高度。
理不尽な掟に反発し、変化を求める若者たちと、掟を絶対のものと信じ、秩序の崩壊を恐れる大人たちの対立構図もリアルだ。

監督・脚本のキャリー・カークパトリックは、「ジャイアント・ピーチ」や「シャーロットのおくりもの」、「チキンラン」など多くの名作児童映画の脚本家として知られる人物。
本作も心に残る名台詞のオンパレードで、高いエンターテイメント性と、子供でも十分に理解出来る社会性のバランスは見事。
掟の嘘が破綻した後も、白を黒と言い続けるストーンキーパーの姿には、世界中の観客がそれぞれの社会の「誰かさん」を思い浮かべるだろう。
イエティとスモールフットが、互いに鏡像となる構造は誠に秀逸で、真実を知ったイエティたちが最後に下す勇気ある決断はとても感動的。
上映館が極端に少ないのが残念だが、これは老若男女誰にでもお勧めしたい秀作だ。

今回はイエティの村同様にクールなカクテル「スノーボール」をチョイス。
ボルス アドヴォカート30ml、ライムジュース5mlを軽くシェイクし、氷を入れたタンブラーに注ぎ、ジンジャーエール105mlを加えて満たす。
最後にスライスしたライムを添えて完成。
アドヴォカートはオランダ生まれの卵のリキュールで、乳白色の美しいカクテル。
もともとはジンジャーエールではなくレモネードが使われていたのだが、利便性のよさからか、最近ではジンジャーエールが定着している。
口当たり良く甘口で、ライムの酸味とジンジャーの仄かな辛味がアクセント。

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