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東京国際映画祭2018 まとめのショートショートレビュー
2018年11月03日 (土) | 編集 |
第31回東京国際映画祭の鑑賞作品つぶやきまとめ。
相変わらずのチケットシステムの最悪さには、もはや苦言を言う気も失せた。
だがチケット販売が終わってから、Netflixにより配信オンリーになることが判明したアルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA/ローマ」をスクリーンで観られたのは良かった。
この作品に関しては、改めて劇場とネット配信の関係を考えさせられたが、大スクリーンを前提に作られているのは明らかなので、可能であれば是非劇場公開して欲しい。

輝ける日々に・・・・・評価額1600円
「サニー 永遠の仲間たち」のベトナム版リメイク。
日本版同様にプロットはオリジナルに忠実で、テーマ的にも差異は無し。
面白いのは、やはり時代と社会設定のローカライズだ。
韓国版は2011年から民主化前夜の80年代を、日本版は2018年から平成不況の90年代を描いた。
それぞれが社会の転換期だった訳だが、ベトナム版の現在は2000年、過去は1975年で、舞台は南ベトナムの都市ダラット。
2000年はビル・クリントンが米国大統領として戦後初のベトナム訪問をした米越和解の年で、1975年は言うまでもなくベトナム戦争が終結した年。
少女たちの青春の終わりが、そのまま南ベトナムという国の終わりに重なる構図だ。
韓国、日本版と同じく二つの時代の間は描かれないのだけど、国が滅びたのだからその後の彼女らが体験した変化が最も大きいのは本作だろう。
例えばキム・ソンギョンとともさかりえが演じたキャラクターの実家は、本作だと映画スタジオ経営者のブルジョワで、赤化統一後に辿った人生は相当に困難だったのは想像に難くない。
同じCJエンターテイメント製作で、日本とベトナムでリメイクされた「怪しい彼女」も時代性のローカライズが絶妙だったが、これも意味あるリメイクになってる。
やっぱり「歴史のある時点」をモチーフにした映画は、お国事情が出て面白い。
そこに永遠の友情という普遍性がある訳だからね。
監督と主演女優さんも実は幼馴染で、この映画はリアル同窓会だったそう。
雨に唄えばへのオマージュなど、遊び心も楽しい。
2000年を現在にした理由を、監督は「この頃ベトナム人はようやく将来の夢を持てるようになった」と言ってたのが印象的。
この五年前の米国との国交正常化と経済制裁解除で国が豊かになり、実際映画でも結構良い暮らししてる様に見える。
しかしそれでも、日本では「ザ・庶民のクルマ」のトヨタ・カローラが、まさかのショーファードリブンで使われてて、ステータスシンボルなのにはビックリ。
まあ18年経った今はもう変わってるんだろうけど。
こんな異文化ギャップも、外国映画の面白さ。

アジア三面鏡2018:JOURNEY・・・・・評価額1450円
アジアの三監督によるオムニバス、今回のモチーフは「旅」。
中国、ミャンマー、日本を舞台に、三つの小さな旅が描かれる。
デグナー監督による第1話「海」は夫を亡くした妻と、全く性格の違う娘との弔いの旅。
二人はぶつかり合いながらも、喪失を共有してゆく。
ジワリと余韻が広がる佳作。
松永大司監督の第2話「碧朱(へきしゅ)」は鉄道の速度向上のため、ミャンマーに派遣された長谷川博己がヤンゴンの下町を彷徨う。
効率化は本当に必要か?
しかし急激な変化は要らないという人たちも、iPhoneの翻訳を使いこなし、仏像は派手なLED照明で彩られている現実。
変化は常に起こっている。
タイトルは劇中出てくる布の色と同時に、異なるベクトルの心情の象徴だろう。
エドウィン監督の第3話「第三の変数」は、一番の珍品。
問題を抱えたインドネシア人の夫婦が、なぜか雪の東京の民泊で、宿のマネージャーからセックス指南を受ける。
なんだか色々よく分からない話なんだけど、妙なおかしさがあって見入ってしまう。
マネージャー役のニコラス・サプトラだけが、3本全部に出演しているのも謎w
3本とも、ある状態から別の状態への変化を、旅に投影しているのが興味深い。

翳りゆく父・・・・・評価額1450円
まさかの着地点。
ガブリエラ・アマラウ・アウメイダ監督のホラー偏愛が生んだ、不可思議なるスピリチュアルドラマ。
妻が亡くなり孤独に苛まれる父親は、職場の友人の死も重なり、次第に心を病んでしまう。
一方、ネグレクト気味の幼い一人娘ダルヴァは、黒魔術のまじないに夢中。
彼女は、自分なりの方法で家族を再び幸せにしようとする。
物語のベースはブラジルならではの死生観だったり、女たちに流行ってる怪しげなまじないだったりするのだが、劇中でダルヴァが深夜のホラー映画ばっかり観てる様に、ハリウッド系のホラーテイストが奇妙に融合している。
結果として、非常にラテンアメリカ的な土着な要素とジャンル映画的な外連味が融合した、なんとも形容し難い独特の手触りの怪作が出来上がった。
監督によると「死」を語るのはブラジル社会ではタブーだそうだが、描き方が基本陽性なのが面白い。
ハッピーかつブラックなラストも味がある。

テルアビブ・オン・ファイア・・・・・評価額1650円
これ面白い!
アラブ系TV局の放送する、パレスチナの女スパイとイスラエル軍の将軍が恋に落ちるメロドラマが、イスラエル・パレスチナで大ヒット中。
コネでドラマの現場に入ったダメ人間のパレスチナ人青年サラムが、ひょんなことから脚本チームに抜擢される。
しかし、当然ど素人に脚本は書けず、サラムはあろうことか検問所のイスラエル軍将校アッシにアイディアを求めて、なぜかそれが採用されてしまう。
サラムと“ゴーストライター”のアッシは、最初のうちは協力し合うのだが、やがてドラマの結末を巡って対立する。
しかもサラムもだんだんと成長し、自分で書ける様になったことで、二人の間の溝は決定的となってしまう。
これは自分自身の語るべき言葉を持っていない、ダメダメな主人公の王道的な成長物語であるのと同時に、イスラエルとパレスチナの歴史と現状のメタファー。
序盤はコメディ要素が前面に出ていて色々緩いのだが、徐々にサラムの置かれている抑圧的な現状が見えてきて、1967年の第三次中東戦争前夜を描く劇中劇と現代を描く現実パートが、最終的にはテーマ的に融合してくる凝った仕組み。
永遠に終わらない白日夢の様なメロドラマが、イコール永遠の非日常たるイスラエル・パレスチナの紛争に重なる工夫は誠に秀逸だ。
サラムとアッシが揉めたラストも含めて、落とし所が読めないので最後までスリリング。
これは正式公開を望みたい快作。

冷たい汗・・・・・評価額1600円
女子フットサルのイラン代表主将のアフルーズは、国際大会決勝へと向かう空港で、離婚を前提に別居中の夫から出国を禁止されていることを知る。
試合開始まで4日間の夫婦バトルは、監督が実際にある女性アスリートが出国を許されなかったというニュースから着想したそう。
主人公のアズフールも相当勝気で自分から敵を作る性格なんだけど、TVタレントでナルシストの夫がむっちゃワガママでクソ野郎に造形されている。
支配欲の塊で、妻の成功に嫉妬するちっちゃい男。
水と油みたいな二人が結婚したのが不思議なんだけど、人は歳と共に変わるということか。
そもそも夫が妻の出国を拒否できるという理不尽な法律があるのが問題なんだが、悪法でも法。
SNSでは同情を買うが、フットサル連盟や裁判所も含め狡猾な夫に丸め込まれ誰も決定的なことは出来ない。
女の足を引っ張るのが、主人公より地位のある女だったりするのもリアル。
ファルハディ系心理劇とはちょっと違う、かなり物理的にぶつかり合う夫婦喧嘩映画。
タイトルは文字通り日本語の「冷や汗」のこと。
妻と夫、冷や汗をかかされるのは誰なのか。
息詰まる展開に最後まで眼が離せない。
本国では女性の支持を集めて大ヒットしてるそう。

ハード・コア・・・・・評価額1650円
怪作揃いの今年の邦画にまた一本。
狩撫麻礼+いましろたかしのカルトコミック、まさかの映画化。
政治結社の下っ端で、なぜか山で埋蔵金探しをさせられている山田孝之の主人公と荒川良々が、遺棄された謎のロボットを見つける。
人間二人とロボット、ぼっち三人(?)組の奇妙な日常の物語。
しかし佐藤健演じる主人公のエリートの弟が、ロボットの存在を知ったことからドラマが大きく動き出す。
ロボットの造形を含めてかなり原作に忠実で、メインキャストは皆イメージがぴったり。
山田孝之はピュアで真っ直ぐ過ぎるが故に、「間違った世界」に馴染めない。
彼は葛藤を暴力に転化し、廃工場に隠れる様に暮らす荒川良々は、厳格な家庭のプレッシャーから心を病み声を失ってしまった。
そしてロボオと名付けられた不細工なロボットは、人間の腹黒さからは無縁のAIだ。
彼ら三人は裏表がない故に、このドロドロした社会に居場所がない。
希望が潰えたとき、この社会に生きるにはあまりにも無防備で孤独な三人に残された道は何か。
R-15の猥雑な描写の裏側に切ない詩情が流れる、いかにも山下敦弘らしいアングラな手触りでオフビートな寓話。
今回はかなり攻めている。

ROMA/ローマ・・・・・評価額1750円
1970年のメキシコを舞台に、ある裕福な医師の家に住み込みで働く、家政婦のクレオの物語。
タイトルのローマはイタリアではなく、メキシコシティの地名。
アルフォンソ・キュアロンの子供時代がモチーフになっていて、初め幸せそうな家族に徐々に暗雲が立ち込める。
それと共にクレオ自身にも大きな問題が起こり、彼女と医師家族の葛藤は平行して絡み合ってゆき、その背景にPRI一党独裁時代のメキシコ現代史の出来事が配されるという構造。
キュアロンは、子供時代の自分を愛してくれた一人の女性の心象劇を、流麗なカメラワークで活写。
渋い人間ドラマなので、「ゼログラ」や「トゥモロー・ワールド」の様なこれ見よがしなものではないが、ファーストカットからシャレード全開の映像演出に、もう全く目が離せない。
まだ流動的な様ではあるが、これが配信オンリーになってしまうのはあまりにも勿体無い。
凝りに凝った環境音など、TVのスピーカーでは半分も再現できないだろうし、スコープサイズを生かしきった動線の演出も明らかに大画面を前提としたものだ。
確かに地味な話で大スターもいないが、世界中の映画祭で賞を取るだろう(もしかしたらアカデミー外国語映画賞も)。
各国でスクリーン数絞って公開したら、それなりにお客は来るのではないか。
まあ監督本人が売ったという事実はあるが、これだけの傑作が作り手が本来想定したスクリーンで観られないのは残念過ぎる。
Netflixには、文化の担い手として英断を期待したい。
劇場公開されたら満点にします。

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