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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー・・・・・評価額1750円
2018年11月26日 (月) | 編集 |
永遠の愛は、永遠の呪い。

これは凄い。
久しぶりの本当のネタバレ禁止案件だ。
緑豊かな郊外の小さな家に、若い夫婦が仲睦まじく暮らしている。
だが、ある朝夫は事故死し、妻は病院に安置された彼の遺体に別れを告げて家に帰る。
ところが、夫は幽霊となって戻ってきて、妻を見守りはじめるのだ。
この設定だけ聞くと、嘗ての大ヒット作「ゴースト/ニューヨークの幻」みたいだが、これは物語のほんの発端に過ぎない。
わずか10万ドルという低予算で作られた、「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」の筋立ては正に未見性の塊で、たぶん誰も予測出来ない驚くべきものだ。
幽霊となる夫「C」をケイシー・アフレック、妻の「M」をルーニー・マーラーという旬な二人が演じ、監督・脚本は同じくアフレックとマーラーが主演した「セインツ -約束の果て-」や、ディズニーの実写版「ピートと秘密の友達」で知られるデヴィッド・ロウリーが務める。
詩的で味わい深い、愛と時間と魂に関する哲学的な寓話である。
※観る前には、絶対にこれ以上読まないこと!

ダラス郊外の小さな家に住む、若い夫婦のC(ケイシー・アフレック)とM(ルーニー・マーラー)は、慎ましくも幸せな日々を送っていた。
ある日の朝、Cが突然の交通事故で亡くなり、Mは病院で夫の遺体を確認するとシーツを被せて家に帰る。
ところがCはシーツを被ったままの姿で幽霊となり、そのままMのいる自宅まで戻って来るが、もはや肉体を持たない彼は、一人ぼっちで喪失の悲しみに打ちひしがれる妻を見守ことしかできない。
しかし歳月が過ぎたある時、Mは人生を前に進めるために、幸せな思い出のつまった家の売却を決意し、去って行く。
家に残されたCは、妻が隠した“ある物”を求めるのだが、それは時間を巡る遠大な旅のはじまりだった・・・・


Cという明確な主人公がいるにもかかわらず、なぜタイトルについているのが定冠詞の「The」ではなく不定冠詞の「A」なのか?
ここに本作の核心がある。
そもそも、幽霊ってなんだろう?
もちろん「死んだ人の魂がこの世に残っていること」なのは大前提だ。
おそらく幽霊のいない文化は世界のどこにも無く、幽霊大国イギリスではいわゆる幽霊屋敷の方が由緒ある家ということで、レントが高かったりするらしい。
では幽霊たちは、なぜ死んだ後もこの世にとどまり続けているのだろうか。
ホラー映画なら、例えば「呪怨」シリーズのように深い恨みを抱えて死んで悪霊化、あるいは「死霊館」シリーズのように幽霊というよりも悪魔的な存在のこともある。
だが現実の幽霊屋敷では、多くの場合幽霊はただそこに出没して、ごくたまにラップ音や物がちょっと動くなどの細やかな心霊現象を起こす程度。
特に明確な目的があるようには思えないが、この映画を観た人の多くは、「ああ、幽霊ってこういうものかもしれないな」と感じると思う。

突然の死を迎えたCは、リアルなオバQ的な白いシーツ姿の幽霊になって家に戻ってくる。
この映画の世界では、幽霊はシーツを被っているものらしく、CとMの隣家にいる幽霊も花柄のシーツを被っている。
最初のうちは妻のその後を見守り、彼女に新しい恋の予感を感じとれば、動揺して嫉妬したりもする。
しかし、どうやら幽霊は一カ所に居つくとそこから動けないようで、新生活を始めるためにMが家を売って引っ越してもCはついて行くことができない。
彼が「この世にとどまる訳」はMを見守ることから、彼女が家のリフォーム中に壁板の隙間に隠したメモを読むことに変わるのである。
彼女は引越しの多かった子供時代にも同じことをしていたらしく、昔住んでいた家の隙間に、楽しかった思い出などをつづったメモを隠したというエピソードを生前のCに語っていた。
どうしてもその中身を知りたいCは、少しずつ少しずつ、心霊現象を起こせるわずかな力を使って、メモが埋め込まれた場所の塗料を削って行く。

その間にも時間は過ぎてゆくが、目的を遂げるまで永遠の死を生きる幽霊にとって、もはや時間の概念は無意味。
だから物語の中で流れる、時間の扱いもユニークだ。
Cを失ったMが、友人に差し入れられた不味そうなパイをやけ食いするのを数分間ワンショットの長回しで見せたと思えば、一瞬で数十年が過ぎたりする。
家に住む人々も次々に入れ替わり、遂には家そのものも隠されたメモごと壊されてしまうのだ。
郊外が新たな都心となり、元の家のあった場所が未来的な高層ビルとなっても、どこにも行けないCはさまよい続け、遂には“死”を選ぶ。
しかし、すでに幽霊なのだから、当然二度死ぬことはできず、Cの魂は遥か古の西部開拓時代の同じ場所に飛ばされてしまう。
彼はその土地に家が建ち、CとMが引っ越してきて、自らが死を迎えるのを延々と待ち続けなければならない。
ただ、彼女が隠したメモを読むためだけに。
ここがこの作品の最もユニークな点で、Cの魂は時のループから外れスパイラルへとまよいこむのである。

そう、この映画における幽霊とは、何か一つのことに囚われてしまって人間としての個を失い、その場所にさまよい続ける存在全てのことであり、だからこそ「The」ではなく「A」なのである。
幽霊にはそれぞれこの世にとどまる理由があり、Cの場合はメモを読むこと、隣家の幽霊の場合は「誰か」に会いたくて待ち続けているのだが、その「誰か」が誰なのかすら忘れてしまっている。
人間だった頃の記憶は薄れ、あいまいな時間と空間が醸しだす、まるで微睡みながら夢を見ているような独特の手触りは、私たちに「幽霊でいる感覚」を体験させるためなのだ。
真っ白なシーツに、二つの目の穴だけが空いているビジュアルは、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」に登場する「カオナシ」からの発想だとか。
極限までにシンプルゆえに、私たちはそこに様々な表情を感じ取る。
夫婦の名前がCとMというアルファベットで設定され、劇中で本当の名前を呼ばれることがないのも、同じ文脈だろう。

ルーニー・マーラー演じるMは、前半で引っ越してしまい退場。
幽霊となったCは出ずっぱりなものの、ずっとシーツを被っていて一切喋らないので、ぶっちゃけ中身がケイシー・アフレックじゃなくても分からない(笑
いや、ジェスチャーも重要な演技だから、ちゃんと本人がやってるのだとは思うけど。
主演としてクレジットされている俳優が、その姿をほとんど見せないというのはある意味斬新だ。

私の知る限りだが、明確に「本作と似ている」と言える作品は同一ジャンルには思いつかない。
流れゆく遠大な時間の中の、変化しない主体を描いているという意味では、たとえば手塚治虫の「火の鳥」や、一脚のロッキングチェアがたどる歴史を描いた、フレデリック・バックの短編アニメーション「クラック!」、あるいは百数十年にわたる小さな家の歴史を描く、バージニア・リー・バートンの絵本「ちいさなおうち」などが近いかもしれない。
まるで覚めない夢の中にいる様な感覚は、ちょっとテレンス・マリック監督の「ツリー・オブ・ライフ」と、アシモフの「バイセンテニアル・マン」を映画化した、クリス・コロンバス監督の「アンドリューNDR114」を彷彿とさせる部分もある。

1.33:1の四隅が丸まった画面は、まるでスクリーンに開いたシーツの覗き穴
私たちは、Cが望みを遂げるまでの数百年間の時空を超えた旅を、幽霊という切ない存在へのシンパシーと共に見守ることとなる。
しかし、物語の展開によって、これほど新鮮に驚かされたのは本当に久しぶりだ。
本国公開は昨年の7月で、すぐに評判の良さは伝わってきたのだが、「シーツを被った幽霊が妻を見守る」以上の情報を一年もブロックして頑張った甲斐があった。
あと、デヴィッド・ロウリーの映画は、短めなのがいい
驚くべき世界観を持つ本作がわずか92分。
前々作の「セインツ」が98分で、次回作でこれまた評判の良い「The Old Man & the Gun」が93分。
ディズニーで撮った「ピートと秘密の友達」は100分を超えるが、あれはエンドクレジットが長いので、本編は90分ちょいだろう。
もちろん長い映画も、その長さが必然であれば全然問題ないのだが、たいていのことは90分もあれば描けるとも言える。
観る方としても真剣な鑑賞にはエネルギーを使うので、このくらいの上映時間が楽でいい。

今回は悠久の時の流れに思いを馳せながら、カリフォルニアはナパバレーから「ファーニエンテ シャルドネ ナパバレー」の2016をチョイス。
故・ギル・ニッケルの情熱によって蘇った、ナパを代表する高級銘柄。
フレッシュな酸味と、芳醇で複雑なフルーツのアロマが絶妙にバランス。
つけ合わせる料理を選ばない、非常に使い勝手の良いワインだ。
個人的にはオリーブ漬けとチーズを肴に、じっくりと味わいたい。

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