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「ヘレディタリー 継承」と「イット・カムズ・アット・ナイト」”家”と”家族”にまつわる恐怖譚
2018年11月29日 (木) | 編集 |
ヘレディタリー 継承・・・・・評価額1650円
イット・カムズ・アット・ナイト・・・・・評価額1650円


「ヘレディタリー 継承」と「イット・カムズ・アット・ナイト」は、共に若い映画作家によるセンス・オブ・ワンダーに溢れた恐怖譚だが、それ以外にも特徴的な共通点がある。
それは、全くシチュエーションは違えど、”家”と”家族”にまつわる物語ということだ。
※ネタバレは避けてますが、なるべく観てから読んでください。

「ヘレディタリー(Hereditary)」とは、「遺伝的な」とか「親譲りの」などを意味する。
一家の祖母の死から始まる物語は、真綿で絞め殺される様な、精神的にジワジワくるオカルト・ホラーだ。
亡くなった祖母は、トニ・コレット演じる娘のアニーと長年に渡り折り合いが悪かった。
母の死にもあまり悲しむことが出来ない彼女は、葬儀の後に遺品の中から一通のメモを見つける。
そこには「私を憎まないで」という謎めいたメッセージが書かれていたのだが、以降これでもかというくらい、アニーの家族には不幸が降りかかるのだ。
まずは死んだ鳥の頭をハサミで切り取って持って帰るなど、奇行を繰り返していた長女のチャーリーが、長男のピーターが起こした交通事故により死亡。
娘の死に精神的に追い詰められたアニーは、降霊術によって死んだ家族と交信しているという女性に感化され、次第にスピリチュアルな世界へ救いを求める様になるのだが、不穏な影と目に見えない恐怖が屋敷を覆ってゆくのには気づかない。

アニーの職業がミニチュアハウス作家で、自分が経験したことを、娘の事故などの不幸も含めてミニチュアとして作っているのが面白い。
自分の人生を母にコントロールされてきたと感じているアニーは、現実を虚構に転化し自分の手で作り上げることで抵抗しているのだが、次第に虚実は溶け合って境界を失ってゆく。
何が本当で、何が嘘なのか。
アリ・アリスター監督は、全編にリード、ミスリード取り混ぜた伏線を緻密に配していて、不幸のスパイラルに落ちた一家の人々だけでなく、観客の予想を大いに惑わすのだ。
冒頭、ミニチュアの部屋にカメラが寄って行くと、そこがそのまま現実の屋敷の部屋となるトリックショットが、本作の構造を端的に表していると言えるだろう。
やがて明らかになる、家族と家族の歴史の中に仕掛けられた大いなる罠と、驚くべき結末。
一体、亡くなった祖母は何者だったのか。
ある意味で、タイトルそのものが一番ネタバレに近いかもしれない。

一方の「イット・カムズ・アット・ナイト」は、致死性の奇病が蔓延した、終末の世界を描く。
ジョエル・エドガートン演じる厳格な父親ポールと妻のサラ、17歳の息子トラヴィスが、山奥の大きな家に隠れる様に暮らしている。
情報は途絶え、世界がどうなったのかも分からないまま、三人だけの孤独な世界を生きているのだ。
ところがある日、水を求めた若者ウィルが家に侵入。
ポールらは彼が病気に感染していないことを確認すると、食料と引き換えに、やむなく彼の妻キムと幼い息子のアンドリューを含めた三人家族を、家に迎え入れることになる。
永遠とも思えた孤独は解消し、最初のうち二つの家族は上手くいく。
だがほんの小さな齟齬が積み重なり、彼らの間には目に見えない亀裂が出来てゆき、やがて思わぬところから病原菌の脅威が迫った時、本当の恐怖が姿を現わす。

開いているけど閉じている、森の緑に閉ざされた牢獄とも言える、独特の空間で展開する実質的な密室劇。
迷路の様な家の構造と、事件を呼び込む赤いドアの心理的な象徴性も効いている。
ドラマを引っ張るのはエドガートンの父親だが、実質的主人公をナイーブな17歳の息子に設定したのが上手い。
彼の抱える思春期の葛藤と、心の底にある不安が見せる悪夢が、物語を恐るべき結末へと導いてゆく。
人間を、本当に破滅させるのは何か。
病原菌という恐怖の象徴によって、目覚めてしまったもの。
トレイ・エドワード・シュルツ監督は、終始静かな緊張感が続く、優れた心理スリラーを作り上げた。

同じく”恐怖”を描くといっても、二本の作品はまるでタイプが違う。
詳細はネタバレなので自粛するが、例えば「ヘレディタリー 継承」の場合、とことん惑わせるという作品コンセプトから言っても、一番近いのは韓国製オカルト・ホラーの傑作「哭声/コクソン」かも知れない。
ただ怖いだけでなく、クライマックスになるととぼけたブラックジョークも顔を出す。
客観的に見ると、ものすごく悲惨な状況なのだけど、実はある人物の主観として考えると結局ハッピーエンド?というあたりも惑わされている。
個人的にはこの辺り、藤子・F・不二雄の短編「流血鬼」の不思議な読後感を思い出した。

逆に「イット・カムズ・アット・ナイト」は、超自然的な「ヘレディタリー 継承」よりも、リアリティ重視のスリラー色が強い。
確実に死をもたらす病原菌は決して絵空事とは言えないし、登場人物の感情の推移も十分に納得できる。
大切なものを守ろうとして、実は知らぬ間に破壊してしまうのは人間の悲しい性であり、物語にも「ヘレディタリー 継承」のような捻りはない。
突きつけられる残酷極まりない結末も、自業自得ゆえにストレートに受け止めなければならないものだ。

しかしアメリカから、”家”と”家族”をモチーフとした、優れた恐怖譚が連続して出てくる背景は興味深い。
どちらの作品にも共通するのは、主人公は「家族の本当の姿を知らない」ということである。
トランプ政権の誕生以来、アメリカ社会の分断は深まっているが、それは一般の家庭内も例外ではない。
「隠れトランプ」という言葉に象徴されるように、どちらかといえばリベラルだと思っていた自分の夫や親が、実はトランプに投票したことを知って、ショックを受けたりするケースは私の知っている人たちの中でも起こっている。
もちろん家族の政治信条が違うのは普通のことだが、あそこまで極端な人物ゆえに「まさか」と思ってしまうのだろう。
うがった見方かもしれないが、映画が時代を映す鏡だとすれば、これらの作品は世界を敵と味方に分け、恐怖を煽り立てるトランンプの時代に対して、「もう誰も信じられない」と絶望する人々の心の反映とも思える。
家族の間で大きなわだかまりを抱えているという点では、大ヒットした「クワイエット・プレイス」も、同じ社会的文脈から出てきた作品かもしれない。
まああの映画は、どちらかと言えばポジティブな「知らない」だったが。

今回は、どちらも悪夢が重要な役割を果たすので「ナイトメア・オブ・レッド」を。
ドライ・ジン30ml、カンパリ30ml、パイナップル・ジュース30ml、オレンジ・ビターズ2dashを氷で満たしたグラスに注ぎ、ステアする。
カンパリとビターズの苦みが、ドライ・ジンの清涼感とパイナップルのほのかな甘味によって引き立てられる。
辛口でスッキリした大人なアペリティフ、で実はあんまり悪夢的ではない。

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コメント
この記事へのコメント
21世紀最高のホラー映画?
せっかく途中までは面白かったのに。
こんなのが「ホラーの最高傑作」と持ち上げられて継承されていくことの方がよっぽどホラーです(^^)/
2018/11/30(金) 07:57:04 | URL | まっつぁんこ #L1vigvx6[ 編集]
こんばんは
>まっつぁんこさん
私はこの価値観が逆転するラスト好きですよ。
ストレートなホラーではなく、ひねったブラックジョークですもん。
2018/12/04(火) 21:56:12 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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