2018年12月28日 (金) | 編集 |
人生を永遠に変える、歌がある。
評判通り、素晴らしい仕上がりだ。
1937年に公開された、ウィリアム・A・ウィルソン監督、ジャネット・ゲイナー主演の「スタア誕生」の、三度目となるリメイク。
オリジナルはハリウッドの映画界の話だが、本作は音楽業界が舞台だし、レディー・ガガ演じるアリーが鼻の大きい女性という辺りも、バーブラ・ストライサンド主演のフランク・ピアソン版「スター誕生」を継承した作品という印象が強い。
しかし、ブラッドリー・クーパー演じるジャクソンのファミリーネームが、オリジナルと同じメインだったり、レディー・ガガが二度目の映画化に主演したジュディー・ガーランドの代表曲「Over the Rainbow」を口ずさんだり、過去の三作品に対するリスペクトとオマージュは欠かさない。
何しろオリジナルを含めて4度も映画化されてる訳だし、オスカーを受賞したフランス映画の「アーティスト」など、ほぼ同一の話型を使った作品も無数にある。
エンターテイメント業界の実力者の男が、才能ある若い女性を見初め、彼女をデビューさせるが、一気にスターダムを駆け上がる女性とは対照的に、男の方はアルコールに溺れて没落してゆく。
多少のディテールの違いはあれど、基本はどれも同じ話の流れ。
ある意味面白さが検証し尽くされた超王道とも言えるが、予期せぬ展開は期待できず物語の新鮮さは限りなくゼロだ。
にもかかわらず、本作を極めて魅力的な作品にしているのは、やはり二人のメインキャラクター、アリーとジャクソンの造形と文句なしに高い音楽性だろう。
実話ベースと完全創作の違いはあれど、似たジャンルで大ヒット中の「ボヘミアン・ラプソディ」が、クライマックスとなるライブ・エイドに全てを絞った作りだったのに対して、こちらは全編に歌がキラキラと散りばめられていて、聞き応えたっぷりの「ザ・音楽映画」だ。
また「ボヘミアン・ラプソディ」が、生前のフレディの声を使い、VFXを駆使して今は建て替えられてしまったウェンブリー・スタジアムでのライブを再現していたのに対し、本作では実際にコンサートが行なわれている会場に、キャストがサプライズ参加する形で撮影されたという。
つまり本作のコンサートシーンは、観客の反応を含めてドキュメンタリー手法の一発勝負で撮られた、完全にリアルな本物のライブなのだ。
歌い慣れているレディー・ガガはともかく、そんな状況下でブラッドリー・クーパーがこんな歌える人だったとは。
やっぱ役者ってすごいわ。
音楽劇としてはもちろん、人間ドラマとしても良くできている。
互いの才能に惹かれ愛し合うアリーとジャクソンの背景に、対照的な家族像があって、それが二人の現在のキャラクターと、歌詞にも強い説得力を与えているのだ。
いぶし銀のサム・エリオットが演じるジャクソンの年の離れた兄、アンソニー・ダイス・クレイの味わい深い演技が印象的なアリーの父親、ロレンツォのキャラクターも素晴らしい。
ジャクソンが耳の障害を抱え、徐々に悪化しているという新設定も、彼のアルコール依存と転落人生の理由を強化している。
アリーを含めて、それぞれのキャラクターに俳優本人の人生がさりげなく投影されていたり、音楽シーンのドキュメンタリー的アプローチは、おそらくクーパーと「アメリカン・スナイパー」で組んだクリント・イーストウッドの影響があるのではないだろうか。
実際、本作の企画は元々イーストウッドがメガホンを取る前提で進められていたという。
ハリウッド大作的にモリモリに盛るのではなく、あくまでも自然に、その人物たちが本当にいるかのようなリアリティとナチュラルさ。
だからこそ、私たちはアリーやジャクソンの魂の歌に涙し、136分の間二人の人生に寄り添える。
新米監督クーパーの演出も、ややぎこちないところもあるが大健闘じゃないだろうか。
むしろ、荒削りな部分があるからこそ、ダイヤの原石が磨き上げられてゆく話には合っていたと思う。
そしてやはりこの作品の成功は、レディー・ガガの存在があってのこと。
歌はもちろんパワフルだし、これは本当にオスカー主演女優賞ノミネートあるかも。
ラストカットの表情は、まさに新たな映画スター誕生を告げる、堂々たるものだった。
今回は、華やかなエンターテイメント業界の話ということで、映画界の名物ファミリー、コッポラ家のワイナリーから「ソフィア ブラン・ド・ブラン スパークリングワイン」をチョイス。
宝石のようなきめ細かな泡が美しく、コストパフォーマンスにも優れる、フルーティで軽やかなスパークリングワイン。
ソフィア・コッポラがスパイク・ジョーンズと結婚した時に、父フランシスが愛娘の名をつけて贈ったという一本。
残念ながら、映画のアリーとジャクソンとは違って、あっさり別れちゃったけどね。
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評判通り、素晴らしい仕上がりだ。
1937年に公開された、ウィリアム・A・ウィルソン監督、ジャネット・ゲイナー主演の「スタア誕生」の、三度目となるリメイク。
オリジナルはハリウッドの映画界の話だが、本作は音楽業界が舞台だし、レディー・ガガ演じるアリーが鼻の大きい女性という辺りも、バーブラ・ストライサンド主演のフランク・ピアソン版「スター誕生」を継承した作品という印象が強い。
しかし、ブラッドリー・クーパー演じるジャクソンのファミリーネームが、オリジナルと同じメインだったり、レディー・ガガが二度目の映画化に主演したジュディー・ガーランドの代表曲「Over the Rainbow」を口ずさんだり、過去の三作品に対するリスペクトとオマージュは欠かさない。
何しろオリジナルを含めて4度も映画化されてる訳だし、オスカーを受賞したフランス映画の「アーティスト」など、ほぼ同一の話型を使った作品も無数にある。
エンターテイメント業界の実力者の男が、才能ある若い女性を見初め、彼女をデビューさせるが、一気にスターダムを駆け上がる女性とは対照的に、男の方はアルコールに溺れて没落してゆく。
多少のディテールの違いはあれど、基本はどれも同じ話の流れ。
ある意味面白さが検証し尽くされた超王道とも言えるが、予期せぬ展開は期待できず物語の新鮮さは限りなくゼロだ。
にもかかわらず、本作を極めて魅力的な作品にしているのは、やはり二人のメインキャラクター、アリーとジャクソンの造形と文句なしに高い音楽性だろう。
実話ベースと完全創作の違いはあれど、似たジャンルで大ヒット中の「ボヘミアン・ラプソディ」が、クライマックスとなるライブ・エイドに全てを絞った作りだったのに対して、こちらは全編に歌がキラキラと散りばめられていて、聞き応えたっぷりの「ザ・音楽映画」だ。
また「ボヘミアン・ラプソディ」が、生前のフレディの声を使い、VFXを駆使して今は建て替えられてしまったウェンブリー・スタジアムでのライブを再現していたのに対し、本作では実際にコンサートが行なわれている会場に、キャストがサプライズ参加する形で撮影されたという。
つまり本作のコンサートシーンは、観客の反応を含めてドキュメンタリー手法の一発勝負で撮られた、完全にリアルな本物のライブなのだ。
歌い慣れているレディー・ガガはともかく、そんな状況下でブラッドリー・クーパーがこんな歌える人だったとは。
やっぱ役者ってすごいわ。
音楽劇としてはもちろん、人間ドラマとしても良くできている。
互いの才能に惹かれ愛し合うアリーとジャクソンの背景に、対照的な家族像があって、それが二人の現在のキャラクターと、歌詞にも強い説得力を与えているのだ。
いぶし銀のサム・エリオットが演じるジャクソンの年の離れた兄、アンソニー・ダイス・クレイの味わい深い演技が印象的なアリーの父親、ロレンツォのキャラクターも素晴らしい。
ジャクソンが耳の障害を抱え、徐々に悪化しているという新設定も、彼のアルコール依存と転落人生の理由を強化している。
アリーを含めて、それぞれのキャラクターに俳優本人の人生がさりげなく投影されていたり、音楽シーンのドキュメンタリー的アプローチは、おそらくクーパーと「アメリカン・スナイパー」で組んだクリント・イーストウッドの影響があるのではないだろうか。
実際、本作の企画は元々イーストウッドがメガホンを取る前提で進められていたという。
ハリウッド大作的にモリモリに盛るのではなく、あくまでも自然に、その人物たちが本当にいるかのようなリアリティとナチュラルさ。
だからこそ、私たちはアリーやジャクソンの魂の歌に涙し、136分の間二人の人生に寄り添える。
新米監督クーパーの演出も、ややぎこちないところもあるが大健闘じゃないだろうか。
むしろ、荒削りな部分があるからこそ、ダイヤの原石が磨き上げられてゆく話には合っていたと思う。
そしてやはりこの作品の成功は、レディー・ガガの存在があってのこと。
歌はもちろんパワフルだし、これは本当にオスカー主演女優賞ノミネートあるかも。
ラストカットの表情は、まさに新たな映画スター誕生を告げる、堂々たるものだった。
今回は、華やかなエンターテイメント業界の話ということで、映画界の名物ファミリー、コッポラ家のワイナリーから「ソフィア ブラン・ド・ブラン スパークリングワイン」をチョイス。
宝石のようなきめ細かな泡が美しく、コストパフォーマンスにも優れる、フルーティで軽やかなスパークリングワイン。
ソフィア・コッポラがスパイク・ジョーンズと結婚した時に、父フランシスが愛娘の名をつけて贈ったという一本。
残念ながら、映画のアリーとジャクソンとは違って、あっさり別れちゃったけどね。

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この記事へのコメント
ノラネコさん☆
なるほど!ライブ会場の人数がトンデモナイな~と思ったら、本当のライブ会場だったわけですね~
それにしても3度もリメイクされていたとは…
どれも観た事なくて私としてはお話もベタですけど新鮮に感じました。とにかく二人の歌圧巻でした!!
なるほど!ライブ会場の人数がトンデモナイな~と思ったら、本当のライブ会場だったわけですね~
それにしても3度もリメイクされていたとは…
どれも観た事なくて私としてはお話もベタですけど新鮮に感じました。とにかく二人の歌圧巻でした!!
>ノルウェーまだ~むさん
オリジナルはこの話型の元祖と言える名作です。
定番の話ではあるのですけど、ある意味検証され尽くした話なので、基本的な面白さは保証されている様なもの。
今回の成功はやはりガガ様のキャスティングですね。
オリジナルはこの話型の元祖と言える名作です。
定番の話ではあるのですけど、ある意味検証され尽くした話なので、基本的な面白さは保証されている様なもの。
今回の成功はやはりガガ様のキャスティングですね。
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なかなか芽が出ず歌手になることを諦めかけていた女性アリーは、ある日、世界的シンガーの男性ジャクソンと出会う。 彼女の歌にほれ込んだジャクソンに導かれるように華々しいデビューを飾り、瞬く間にスターダムを駆け上るアリー。 愛し合い固い絆で結ばれる2人だったが、全盛期を過ぎたジャクソンの栄光は陰り始めていた…。 音楽ラブストーリー。
2018/12/29(土) 01:02:27 | 象のロケット
映画 『アリー/ スター誕生(日本語字幕版)』(公式)を公開初日の本日、劇場鑑賞。
採点は、★★★★☆(最高5つ星で、4つ)。100点満点なら70点にします。
【私の評価基準:映画用】
★★★★★ 傑作! これを待っていた。Blu-rayで永久保存確定。
★★★★☆ 秀作! 私が太鼓判を押せる作品。
★★★☆☆&nbs...
2018/12/29(土) 06:56:14 | ディレクターの目線blog@FC2
詳細レビューはφ(.. )
https://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201812210001/
アリー/スター誕生 サウンドトラック [ レディー・ガガ、ブラッドリー・クーパー ]
2018/12/29(土) 07:08:28 | 日々“是”精進! ver.F
アリー/スター誕生@TOHOシネマズ六本木ヒルズ
東京国際映画祭のオープニング上映で鑑賞。
ゲストに振られ代わりにきたのはLilico。
関係者や報道陣が少なくて良かった。
主演男優や女優が来ている時でも、こんなもので十分だと思う。
2018/12/29(土) 07:22:27 | あーうぃ だにぇっと
映画『アリー スター誕生』は、この「正月映画」(というのもほとんど意味をなさなく
2018/12/29(土) 21:38:32 | 大江戸時夫の東京温度
歌の才能を見いだされた主人公がスターダムを駆け上がっていく姿を描き、1937年の「スタア誕生」を皮切りに、これまでも何度か映画化されてきた物語を、新たにブラッドリー・クーパー監督&レディー・ガガ主演で描く。もともとはクリント・イーストウッドが映画化する予定で進められていた企画で、「アメリカン・スナイパー」でイーストウッドとタッグを組んだクーパーが初監督作としてメガホンをとり、ジャクソン役でガ...
2018/12/29(土) 21:54:53 | 映画に夢中
ブラッドリー・クーパーの才能に注目! 公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/starisborn 監督: ブラッドリー・クーパー 昼はウエイトレスとして働き、夜は場末の
2019/01/06(日) 10:49:30 | 風に吹かれて
映画「アリー/スター誕生」を鑑賞しました。
2019/01/07(月) 23:17:57 | FREE TIME
▲画像は後から。
五つ星評価で【★★★★濡れ濡れ】
ブラクパさんの最初の歌、俺が女なら股間濡らすよ。
ガガさんは歌はもちだけど、ボディーのポテポテ感が可愛い。
鬱展開になる前の二人のライブシーンだけ90分の編集物とかで
見たいかもしれない。
あと兄貴(サム・エリオット)渋い。
エンドロール短い(いい事だ)。
PS 日本で巻上公一が戸川純が
この二人みたいに出会う話...
2019/01/09(水) 21:54:41 | ふじき78の死屍累々映画日記・第二章
レディー・ガガの歌はもちろん堪能できるが、彼女の演技とクーパーの歌も意外にイケた。
2019/01/30(水) 23:36:31 | 或る日の出来事
スタ誕ものに昔からそそられず、話題だったけど年末は音楽系映画は「ボヘミアン・ラプソディ」で満足しすぎたため普通にスルーしていた作品。
長患いから解放されて、おや?アカデミー賞候補作品は今まで必ず観ていたのに、これはまだ未見だったー!!
2019/02/23(土) 20:33:33 | ノルウェー暮らし・イン・原宿
今まで幾度も映画化され、そのたびに映画賞を総ナメにした、あまりにも有名な作品。既に、スーパースターなれど、映画初主戦と思えぬ、レディ・ガガの、圧倒的・存在感と美しさ、歌唱力が、ヒロインとして、実によくハマってました。同じ、圧倒的・歌唱力なれど、個人的には、1976年の、バーブラ・ストライサンド版より、コチラの方が好きです。サウンドトラックも大ヒット。インタースコープ・レコードより発売され、全...
2019/10/24(木) 14:01:41 | のほほん便り
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