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サスペリア・・・・・評価額1700円
2019年01月26日 (土) | 編集 |
邪悪なダンスに、陶酔せよ。

風光明媚な北イタリアを舞台としたファースト・ラブストーリー、「君の名前で僕を呼んで」で脚光を浴びた、ルカ・グァダニーノ監督の最新作は、背徳感全開の挑戦的な怪作だ。
母国イタリアの大先輩、ダリオ・アルジェントの世界的ヒット作にして、70年代を代表するオカルト・ホラー映画の金字塔「サスペリア」の41年ぶりのリメイクは、色々な意味で衝撃的。
ざっくりとしたあらすじと主要なキャラクターはオリジナルを踏襲しているのだが、モチーフは同じでも全くアプローチが違い、似てるのは思わせぶりなズームの使い方くらいだ。
良い意味で70年代のイタリアン・ホラーらしく、B級テイストの分かりやすい作品だったオリジナルに対し、こちらは凝りに凝った暗喩劇で尺も1時間近く長い152分。
素材は同じでも、もはや別ジャンルの作品で、映画のテーマや物語の結末も全く異なり、アルジェント信者にとってはある意味冒涜だろう。
むしろオリジナルを観ていない人の方が、素直に楽しめそうだ。
ヒロインのスージー・バニヨンは、ダコタ・ジョンソンが演じ、カリスマ振付け師のマダム・ブランにはティルダ・スウィントン。
オリジナルでスージー役だったジェシカ・ハーパーも、重要なキャラクターとして顔を出す。
※核心部分に触れています。

1977年、ベルリン。
アメリカ人のスージー・バニヨン(ダコタ・ジョンソン)は、世界的に有名な舞踊団「マルコス・ダンス・カンパニー」の入団オーディションを受けるために、ボストンからやって来た。
折しも、有力なダンサーで、ドイツ赤軍との関係が噂されていたパトリシア(クロエ・グレース・モレッツ)が謎の失踪を遂げたばかり。
スージーのダンスは、舞踊団のリーダーでカリスマ振付け師マダム・ブラン(ティルダ・スウィントン)の目に止まり、パトリシアの代わりに舞踊団の公演で披露される演目「民族」のメインダンサーに抜擢される。
マダム・ブランの指導でメキメキと実力をつけていくスージーだったが、パトリシアに続いて、ダンサーのオルガ(エレナ・フォキナ)が、次いで寮でスージーの隣室だったサラ(ミア・ゴス)が失踪。
心理療法士のクレンペラー博士は、患者だったパトリシアの行方を捜すうちに、妄想だと思っていた彼女の言葉が真実なのではと疑いだす。
それは、舞踊団が魔女の巣窟で、団員たちが狙われているというものだった・・・・


タイトルの「サスペリア(Suspiria)」は、魔女三部作の着想の元となったイギリスの評論家トマス・ド・クインシーの著作「深き淵よりの嘆息(Suspiria de Profundis)」から取られている。
「Suspiria」には「ため息」の他に「嘆き」という意味もあり、本作のボスキャラである魔女・嘆きの母(Mater Suspiriorum)を指す。
オリジナルでは、嘆きの母の正体に関してはほとんど触れられていないのだが、後に三部作となる「インフェルノ」では暗黒の母(Mater Tenebrarum)が、「サスペリア・テルザ最後の魔女」では涙の母(Mater Lachrymarum)が登場し、古から存在してきた魔女三姉妹であることが明かされる。
三位一体の彼女たちは、世界中の邪悪な出来事に1000年の長きに渡って関わってきた、とても古くて強力な悪なのだ。

舞踊団が魔女の巣窟であること、年老いて肉体が滅びつつある自称嘆きの母のヘレナ・マルコスの新たな“器”として、若い娘を探す魔女たちの思惑など、オリジナルでは徐々に明らかになる謎は早々に明かされ、ミステリ的要素は皆無。
本作で描かれるのは、魔女の結社に象徴される古から受け継がれ、決して絶えることのない恐怖と悪の系譜
人間の社会では善と悪は表裏一体で、希望や喜びがある分、必ず絶望や悲しみもある。
悪は閉じていて、純粋でなければならなず、ダンスは恐怖を呼び覚ますための儀式。
劇中でも指摘されるように、魔女の結社はナチスやドイツ赤軍などの過激派団体と共通点が色濃い。
だからこそ、オリジナルの男女共学制バレエ学校設定では世界観が成立せず、本作では経済的にも外部から独立し、一つのベクトルに純化された女性のみの舞踊団でなければならないのだ。

あえて舞台をオリジナルと同じ1977年に設定したことにも意味があり、物語のあらゆるところに過去からの対照性の歴史が配置されている。
冷戦の時代、世界は敵と味方、善と悪に分かれており、ベルリンではマルクス主義革命を目指し、アンドレアス・バーダーやウルリケ・マインホフらが率いたドイツ赤軍(RAF)が猛威を振るう、テロルの季節が最終章に突入。
魔女の企みに気づくクレンペラー博士が、新たな悪の“証人”に選ばれるのは、彼がホロコーストの罪と後悔の記憶を持つからであり、驚くべきことにこの男性キャラクターをティルダ・スウィントンが特殊メイクで演じているのも、計算された対照性の演出の一貫と言えるだろう(ちなみにマルコス役も彼女)。
同様に、ダンサーを目指すスージー・バニヨンが、アーミッシュの元になりドイツにルーツを持つ厳格なキリスト教集団のメノナイト出身であること、彼らのライフスタイルが極めて禁欲的なこと、そして死にゆくスージーの母親とクライマックスで出現する“死”が二役なのも、同じ文脈。
世界は常に表裏一体の対照でできており、脈々と続いてきた歴史を背負って生きている人間は、誰一人として恐怖と悪から逃れることは出来ないのである。
名作ホラー映画のリメイク版で、グッと暗喩劇としての比重が増えたのは、ヴァンパイアをモチーフに、80年代のアメリカを描写した「モールス」を思い出した。

終盤の展開はオリジナルからだいぶ離れるが、スージーの母親のある台詞で物語の帰結する先は予想はついてしまう。
それでも、予測可能は暗喩劇としての本作の魅力をスポイルはしていない。
見えざる手によってベルリンへと導かれたスージーの内面の覚醒、彼女を取り込もうとするマダム・ブランとの関係の変化は丁寧に描写される。
常に人間の罪と悲しみと共にあり、偽りの悪を容赦なく粛清する、残酷で慈悲深き真の嘆きの母の誕生譚として、映画的なテリングは十分に工夫が凝らされており完成度は非常に高い。
ショックシーンでは、オリジナルでは魔女が犠牲者を殺すのになぜかナイフを使っていたが、今回は超自然的な力を解放。
舞踊団設定が生きるダンスの振り付けを利用した遠隔処刑や、生死の狭間で朽ちてゆく犠牲者たちの描写なども未見性がある。
そして「君の名前で僕を呼んで」に続いて、撮影監督を務めるサヨムプー・ムックディプロームの仕事は見事なもの。
原色の照明が印象的だったオリジナルとは対照的に、色を落としたビジュアルは寒々しいムードが漂い、その分ピナ・バウシュを意識したという「民族」のパフォーマンスと、クライマックスの暗黒舞踏ばりの“儀式”での鮮烈な赤が際立つ。
レディオヘッドのトム・ヨークによる耳に残る音楽も、伝説的なゴブリンのテーマ曲に勝るとも劣らない。

もっとも、それらの芸術的要素が素晴らしかったとしても、本作は万人向きの娯楽映画とは言い難い
ある意味でこれはホラーですら無いとも言えるし、このやたらと勿体ぶった語り口は、嫌いな人はとことん嫌いだろう。
それに、ある程度世界史を知らないと、物語を理解する糸口にすら辿り着けない可能性もある。
本作を観る前に予習すべきは、アルジェントのオリジナルではなく、20世紀のドイツ史なのかもしれない。
個人的にはオリジナルとは別の意味で大好物だったのだが、これは賛否両論別れるのが当然。
観客の中にある「サスペリア」的なるものに正面から挑戦状を叩きつける、ルカ・グァダニーノのラジカルな作家映画である。

今回は母は母でも慈愛の母、聖母マリアのシンボルカラーの青色のスパークリング「ラ・ヴァーグ・ブルー」をチョイス。
縁起物として、魔女の儀式ではなく、結婚式などのパーティでよく供されるブルゴーニュのブルースパークリング。
ソーヴィニヨン・ブランで作られ、やや辛口で口当たりも良く、柑橘系の爽やかな香りと適度な酸味を持ち、アペリティフとしても料理に合わせても美味しくいただける。
透明感のある美しいブルーは涼しげで、舌だけでなく目でも楽しめる。

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コメント
この記事へのコメント
ティルダ・スウィントンがあの役と二役だとは知らなかった。それがヒントだとしても、そんなヒント、ヒントにならんよ。
2019/02/26(火) 23:19:53 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
ヒントとしては作ってないと思います。
暗喩劇ですからね。「お前ら分かるのか?読み解いてみろ」という作者からの挑戦状の様なものでしょう。
2019/03/02(土) 23:26:32 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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1977年、アメリカ人女性スージー・バニヨンは、カリスマ振付師マダム・ブランの目に留まり、ドイツのベルリンを拠点とする世界的舞踊団<マルコス・ダンス・カンパニー>に入団する。 しかし、不可解な出来事が頻発し、ダンサーが次々と失踪してしまう。 一方、心理療法士クレンペラー博士は、ダンサーの患者パトリシアの行方を捜すうち、舞踊団の闇に近づいていく…。 ホラー。 ≪決してひとりでは見ないでください。≫
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