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あの日のオルガン・・・・・評価額1750円
2019年02月27日 (水) | 編集 |
彼女たちの、知られざる戦争。

太平洋戦争も末期に差し掛かった昭和19年。
すでに日本の南部は空襲に晒され、危機感を募らせた20代を中心とした若い保母たちが、53人もの幼い子供たちを連れて東京から埼玉県の農村に避難し、「疎開保育園」を開設したという実話ベースの物語。
小学生以上の、いわゆる「学童疎開」を描いた作品は過去に何本もある。
しかし、保育園が丸ごと疎開したという話は初耳。
おそらく、劇映画で描かれたのは初めてではないだろうか。
保母のリーダー板倉楓に、キャリアベストの好演を見せる戸田恵梨香、本作の語り部ともなる新米保母の野々宮光枝を大原櫻子が演じる。
監督・脚本は、山田洋次のもとで長年にわたり助監督・共同脚本家として活動し、「ひまわりと子犬の七日間」で監督デビューした平松恵美子。
監督二作目にして、記憶に残る傑作をモノにした。

昭和19年11月。
戦局は次第に悪化し、東京でも米軍機に対する警戒警報が頻繁に鳴る様になっていた。
東京が戦場となるかもしれない。
品川の戸越保育所では、保母のリーダー板倉楓(戸田恵梨香)が園児の安全を確保するために、集団疎開を模索していた。
あまりにも幼い子供と別れたがらない親を説得しつつ、何十人もの子供たちが安心して暮らせる疎開先を探す。
ようやく受け入れ先として見つかったのは、埼玉の荒れ寺。
急ぎ片付けて疎開生活をスタートしたものの、53人もの園児たちを抱えた疎開保育園は圧倒的に人手不足。
新米の野々宮光枝(大原櫻子)や神田好子(佐久間由衣)ら若い保母たちは、子供たちのおねしょから不足する食料まで、毎日の様に噴出する問題に直面しながらも、互いに励ましあいながらなんとか日常を保ってゆくのだが・・・


どんなに戦争が激しくなっても、なんとかして日常を繋ぎとめようと抗う、銃後の女性たちの目線で描かれる物語。
軍都・呉に嫁いだ一人の少女を通して戦争の時代を見つめた、傑作アニメーション映画「この世界の片隅で」にも通じるスタンスだ。
ドラマの軸となるのは、戸田恵梨香演じる頼りになるリーダーの楓と、大原櫻子の失敗ばかりの新米保母の光枝の二人。
前半は語り部でもある光枝の視点で物語は進み、後半戦火の高まりと共に寡黙なリーダーの苦悩が前に出てくる構造だ。
作劇に奇をてらった部分は全くなく、じっくりとキャラクターを描きこんでゆくスタイルは、松竹大船の伝統を感じさせる鉄板の安定感。
台詞にプラスして感情を保管する様に細かくジェスチャーを入れる演技などは、自然さという意味ではちょっと古く感じなくもないが、分かりやすさに繋がっていることは間違いない。

アメリカによる日本本土空襲は、1942年4月18日のジミー・ドーリットル中佐率いる16機のB-25爆撃機によるものが最初。
だがこの時の作戦は本来陸上機のB-25を無理やり空母から発艦させ、日本各地を爆撃した後は、そのまま日本列島を突っ切って大陸に脱出し、中華民国支配地で機を捨ててパラシュート降下するというもの。
真珠湾以来連戦連勝の日本軍の鼻をへし折り、米国民の戦意高揚を呼び込むための捨て身の戦法で、継続できる様なものではなかった。
劇中で「空襲もずっと前にあったきりだし」という台詞があるが、これはドーリットル空襲のことなのである。
しかし1944年の6月に九州が初空襲にあったのを皮切りに、アメリカは着々と首都攻撃の準備を進め、遂に1944年11月29日に東京への無差別爆撃が始まる。
戸越保育所が疎開するのは、この直後のことだ。

疎開してからしばらくは、疎開保育園を成り立たせるための奮闘の毎日。
フィーチャーされるのは、大原櫻子演じる保母たちの中でも一番年少の光枝で、子供が子供の面倒を見ているという感じで、失敗ばかり。
何しろここでは、一日の終わりに子供たちを家に帰すことができないので、保母たちは24時間子供たちの世話に追われ、息つく暇もない。
もっとも、色々大変ではあるものの、戦争の影はまだ遠い。
天真爛漫な性格の光枝は、毎日の様に問題が発生する疎開保育園のムードメーカーとして、なくてはならない存在となってゆく。
保母としての経験もスキルも大してない彼女が、唯一得意なのが本作のタイトルともなっているオルガンを弾くこと。
オルガンは、生きていくことがやっとの時代に、疎開保育園の人々が「文化的な生活」を保つための最後の武器でもある。
だが、保母たちが必死に守る小さなサンクチュアリも、時代と社会から自由ではないのだ。

封建的で不寛容な風潮は、疎開保育園が地元のコミュニティに溶け込むことを許さない。
男性優位の軍国の社会では、どんなに理不尽な扱いを受けても、子供たちを抱えた圧倒的弱者である保母たちは、黙って男たちの横暴に従うしかないのである。
この辺りの抑圧的意識は「LGBTは生産性がない」と言い放った政治家の炎上騒動を見ると、残念ながら現在日本にも色濃く残っていると思わざるを得ない。
そして、遠くにあるものだった戦争は、静かに忍び寄ってくる。
東京の空襲は日を追うごとに激しくなり、遂に1945年3月10日の東京大空襲を迎える。
子供を預けた親たちや東京に戻っていた保母の死、関係者の予期せぬ出征など、田舎には来ないと思っていた戦争によって、疎開保育園は様々な形で影響を受けてゆく。
喪失は突然降りかかり、誰もがもう無邪気ではいられない。
親友の好子を亡くし悲しみに打ちひしがれる光枝が、両親が亡くなったことを子供に伝えるシーンは本作の白眉。
終盤になると、保母たちの頼りになるリーダーの楓にも変化が起こる。
全てを抱え込んでいた彼女は、疎開先にまで空襲の火の手が迫った時、遂に心が折れてしまうのだ。
先に東京大空襲を経験している彼女が語る「どこまで逃げても、戦争が追いかけてくる」恐ろしさが、実感を持って描かれている。

過酷な時代にあって、光枝の演奏する優しく懐かしいオルガンの音色と子供たちの元気な歌声に、平和への願いが切実に伝わってきて、思いっきり涙腺が決壊。
子供が子供であることを許されない様な時代には、決して後戻りしてはいけないのだ。
強気な仮面の下に揺れ動く心を隠した、“怒りの乙女”こと板倉楓を繊細に演じた戸田恵梨香が素晴らしく、間違いなく代表作になるだろう。
彼女を支える若き保母たちを演じた女優陣も大健闘だ。
食糧難の時代なのに、大原櫻子がプニプニしていて、終盤むしろ肉付きがよくなるのはちょっと気になった(可愛いんだけど)が、今年観た日本映画ではダントツの仕上がり
ちびっこばっかり集めて、撮影も相当大変だったろうが、劇映画とはいえ保母たちの仕事っぷりは本当に凄い。
戦争という特殊な状況下の話ではあるが、基本やることは現在でも同じだろう。
保育士を目指す人は絶対観た方がいいし、子供を預ける側もこれを観たら頭が上がらなくなる。
教育性も高いので、生きた歴史の教材として小中学校などでも上映して欲しいし、疎開保育園の記憶と共に後世に受け継いでゆきたい秀作だ。

本作で疎開保育園があったのは、北東部にあった平野村(現・蓮田市)。
今回は平野村から少し北にある南陽醸造の「藍の郷 純米酒」をチョイス。
同蔵の「花陽浴」は全国的な人気で今ではなかなか手に入らなくなってしまったが、こちらはリーズナブルなこともあり比較的買いやすい。
酒米は彩のかがやき100パーセントを60パーセント精米。
流石に花陽浴ほどの深みはないが、それでもフルーティーな香り、米の甘み、あっさりしたのどごし、適度なコクすべてが調和する味わいは一流。
CPに対する満足度は非常に高い。

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