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ショートレビュー「ビリーブ 未来への大逆転・・・・・評価額1600円」
2019年04月12日 (金) | 編集 |
全ての人に平等を。

アメリカ合衆国最高裁判所の名物判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグを描く人間ドラマ。
先日公開された「レゴ ムービー2」には、レゴ人形となったルースがちらりと登場する。
字幕だとただの「最高裁判事」になっちゃてたけど、法曹界の大物がファミリームービーに実名で出てくるのは、日本ではちょっと考えられないだろう。
これだけで、米国社会での彼女の知名度と重みが分かるというもの。
昨年には、アカデミー賞にもノミネートされた「RBG 最強の85歳」というドキュメンタリー映画もヒットし、日本でもまもなく公開となる。

9人が定員の合衆国最高裁の判事は、大統領によって任命され、議会の承認を経て着任するのだが、任期は無く、本人が亡くなるか引退するまで職にとどまり続ける。
アメリカは三権分立が厳格に機能していて、法律や政策も裁判で覆されることが多々あるゆえに、大統領は自分の任期中に一人でも多く、自分と考えの近い判事を任命しようとするのだ。
以前は中間派の判事もいたのだが、現在の9人の判事はブッシュ親子とトランプによって任命された保守派が5人で、クリントン、オバマに任命されたリベラル派が4人。
ルースはクリントン時代の93年に任命され、現在最高裁判事で最高齢の86歳。
もしも彼女が退任すると、トランプは後任の判事に当然保守派の人物を選ぶので、最高裁のバランスは完全に保守に傾いてしまう。
彼女は文字通りリベラル派最後の砦なのである。

もっとも、この映画は現在のルースではなく、まだ裁判所に立ったこともなかった若き日を描く物語だ。
彼女の不変の信念とパワフルな行動力は、いかにして形作られたのか。
ハーバード大学とコロンビア大学のロースクールで、極めて優秀な成績を収めたルースだが、女性差別の法律が無数にあり、働く女性への偏見も激しかった1960年代、弁護士事務所への就職はかなわない。
やむなくラトガース大学のロースクールで教鞭をとっていた彼女が、法廷弁護士の道を歩みだした最初の裁判、1970年の「チャールズ・モリッツ対内国歳入長官」がモチーフとなっている。
それは、独身男性が親の介護のために介護士を雇い、その費用の控除が認められなかったと政府を訴えた裁判。
法律で、控除を受けられるのは女性だけと定められているからだ。
国の勝訴は確実として、誰も弁護をやりたがらない地味なケースだが、ルースはここに性差別の壁の突破口を見出す。

単純に女性差別撤廃を打ち出せば、男性社会である法曹界に跳ね返される。
しかし「家族の介護は女性の仕事」ということを前提としている法律が、逆に男性差別になっていることを訴えれば勝機がある。
男女のどちらかを優遇するのではなく、平等を勝ち取ることが結果として差別をなくすことに繋がるという訳だ。
久しぶりに劇場用映画を手がけるミミ・レダー監督は、ダークな背広を纏った男たちの群れの中に、一人鮮やかなブルーの服のルースが登場する冒頭から、非常に丁寧に彼女と家族の物語を紡いでゆく。
映画の前半は、男性優位の閉塞した時代に、弁護士、妻、母、そして一人の女性として懸命に生きるルースの人生をじっくりと描き、後半が国を相手にしたちょっと頼りないビギナー弁護士の裁判劇。
フェリシティ・ジョーンズが、温和な中に意志の強さを感じさせるルースを好演。
彼女の経験のなさを突いてくる、被告の国側の攻撃にしどろもどろになりながらも、ついに自分の言葉で語り出す彼女を、観客もいつしか傍聴人の一人として応援。
実話だから結果は分かっていても、スリリングだ。

ルース本人も凄い人なのだが、彼女の家族もまた只者ではない。
特にアーミー・ハマー演じる夫のマーティンは、自分も敏腕弁護士で、料理が苦手なルースに代わって家事をこなし、仕事では妻の背中を押し、子供の面倒もバッチリってどんなスーパーマン。
完璧過ぎて、結婚したくなったわ(笑
ちなみに、本作の脚本家のダニエル・スティープルマンは、ルースの甥。
「グリーンブック」を書いたのは、主人公の息子だったし、やはり近くで見ている家族だから描ける人物像というのはあるのだと思う。
しかし今、ルース・ベイダー・ギンズバーグに改めて注目が集まるのも、時計を過去に巻き戻す男、トランプの時代だからなのだろう。
頑張れ、負けるな、最強の86歳!

今回は「アイアン・レディ」をチョイス。
ウィスキー36ml、ドライ・ベルモット12ml、ポート・ワイン12ml、オレンジ・ビターズ1dashをステアして、グラスに注ぐ。
美しいローズカラーと仄かに香るオレンジ。
オシャレだが、アルコール度が高くてかなり強い。
本来は「鉄の女」と呼ばれた英首相マーガレット・サッチャーに由来するそうだが、この称号は思想は逆でも鉄のように強い信念を持つルースにも相応しい。

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コメント
この記事へのコメント
頑張って欲しい~
ノラネコさん☆
最高裁判事のバランスがそういうことだったとは知りませんでした。これはなんとしても100歳まで頑張って欲しいっ

完璧すぎる夫アーミーハマーと、結婚したくなりますよね~
2019/04/13(土) 15:45:50 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
とりあえず「ビリーブ」ってのは本当に取って付けたようなタイトルで凄いなと思った。
2019/04/14(日) 09:36:45 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
誰も判事の名前を知らない日本の最高裁と違って、アメリカ最高裁の持つ重みは桁違いですからねえ。
ルースには大統領が変わるまでは頑張ってもらわないと。

>ふじきさん
内容的に間違ってはいないですけどね。
やっぱ原題をうまく訳して、なおかつ訴求力を持たせるのは難しい。
2019/04/18(木) 23:05:18 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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