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2019年04月28日 (日) | 編集 |
ありがとう、アベンジャーズ!
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の12年間、22本目の総決算。
長年映画を観てきたが、これほど「集大成」とか「大団円」という言葉がふさわしい作品には初めて出会った気がする。
ジョージ・ルーカスの個人映画から始まり、紆余曲折を経て今年、本作と同じくディズニー傘下で完結を迎えようとしている「スター・ウォーズ」サーガとも違う。
60年以上も、国をまたいで作り続けられている「ゴジラ」シリーズとも違う。
従来のシリーズ映画の概念を打ち破り、コミックの世界のクロスオーバーという考え方を全面的に取り入れ、ヒーローたちの単体映画を細胞として、全体で一つの巨大な作品となるMCUは、やはり実写映画の世界では一つの革命だった。
2008年の「アイアンマン」から始まり、2012年の「アベンジャーズ」までのフェイズ1で登場したヒーローたちは、今回で一応の見納めとなるだろう。
もちろん、MCUそのものは本作以降も続いてゆくのだけど、シリーズ22本目にして初めて、エンドクレジット後に次回作への布石となるオマケ映像が入らない本作は、「アベンジャーズ/エンドゲーム」のタイトル通りに、「完結」の二文字を強く意識させる。
MCUのテーマ的な屋台骨となった、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」からシリーズ最多の4作品を手がけた、アンソニーとジョーのルッソ兄弟は、総尺数2868分(TVシリーズを加えたらもっと膨大!)の大長編映画のクライマックスを、至高にして究極のエンターテイメント超大作として鮮やかに昇華した。
※ここから先は核心部分に触れています。観るまでは絶対読まないで!
六つのインフィニティストーンを手にしたサノス(ジョシュ・ブローリン)によって、全宇宙の50%の生命が消えた。
生き残ったアベンジャーズのヒーローたちは、消えたサノスの居場所を探し出すも、インフィニティストーンはすでに全て破壊されていて、希望は失われた。
やがて5年の歳月が流れ、世界は僅かずつ傷を癒しつつあり、アベンジャーズの面々もそれぞれの道を歩んでいる。
そんな時、今も失われた命を取り戻す方法を探し続けているスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)とナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)の前に、行方不明だったアントマンことスコット・ラング(ポール・ラッド)が現れる。
サノスがインフィニティストーンを使った時、量子世界に取り残されたアントマンは、ひょんなことから元の世界に戻ることができたのだが、ほんの数時間量子世界にいたはずが、現実世界では5年もの歳月が流れていた。
残されたピム粒子を使って、量子世界の異なる時間の流れを利用すれば、過去へ戻ってサノスがインフィニティストーンを手に入れるのを阻止できるのではないか。
スティーブは、家族と共に隠遁生活を送っているトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)に助けを求めるのだが・・・・・
前作の「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」は、サノスの映画だった。
サノス(Thanos)はギリシャ語のアタナシオス(Athanasios)の短縮形で、「不死、不滅」を意味する。
名前の通り、彼は神の目線でこの宇宙全体を展望しており、増えすぎた生物によって幾つもの惑星が立ち行かなくなるのを見て、均衡を保つには宇宙にある命の総数を半分にしなければならないという考えを抱くようになる。
葛藤しながら、自らの信念を貫き通すという意味では、このスーパーヴィランはアベンジャーズのヒーローたちと何も変わらない。
ただ、命を救うか奪うかの差だけが、両者を決定的に隔てているのだが、前作では全体を救うためには半分を犠牲にしても構わないというサノスの前に、たった一人でも見捨てないというヒーローたちが敗れ去った。
それに対して、本作は文字通りにボコボコにされたヒーローたちが、自分たちが何をすべきなのか、何ができるのかを自問自答しながら、“アベンジ”する映画だ。
この二部作は、1本目をアベンジャーズのアンチテーゼとしてのサノスの哲学を前面に出し、2本目は敗北を咀嚼した上でジンテーゼ導き出すヒーローたちの群像劇とし、鏡のような構造になっていて、現在までのMCUが「シビル・ウォー」以来、対立する二つの正義の軸となっていた、アイアンマンとキャプテン・アメリカの物語だったことが明確となる。
「インフィニティ・ウォー」の原案となった、コミック「インフィニティ・ガントレット」では、生き残っていたネビュラが一瞬の隙を突いてサノスからガントレットを奪い、時間を巻き戻すことで、ドラマが動き出す。
しかし映画が始まって早々、コミックの設定はもう使えないことが明らかになる。
目的を達したサノスは、自らインフィニティストーンを破壊してしまっていたのだ。
一体ここからどうやって・・・・と思っていたら、なるほど「アントマン&ワスプ」のラストがうまく伏線として機能する。
ここからの展開は、ぶっちゃけ科学考証とかは相当にいい加減で、細かいところは御都合主義もいいところなのだけど、まあこの辺はMCUでは最初からそうなので、今更気にする人もいないだろう。
シリーズ初の3時間越えの複雑怪奇なプロットを成立させるために、ヒーローたちをいくつかのグループに分け、同時進行させるという前作の方法は今回も踏襲。
アントマンのアイディアをアイアンマンが現実化し、サノスより先にストーンを集めるため彼らが向かうのは、マインド、タイム、スペースの各ストーンがあった2012年のチタウリ侵攻下のニューヨーク、ソーの元カノのジェーンの体内に、リアリティストーンが吸収されていた2013年のアスガルド、さらに宇宙へと飛んで、パワーストーンのある2014年の惑星モラグと、ソウルストーンが隠されている惑星ヴォーミア。
ルッソ兄弟は指パッチンの惨禍から、5年の歳月の間のキャラクターの変化をお笑いのネタとして使いながら、サノスより先にインフィニティストーンを奪う冒険を、ある種の時間SFとして、シリーズの過去作品をアーカイブ的に利用する。
2012年に向かったアイアンマンとキャプテンは、スペースストーンの奪取に失敗し、プランBによって1970年のニュージャージに。
今は娘を持つアイアンマンは、若き日の父と出会い、親になる気持ちについて語らい、キャプテンはペギー・カーターの姿に目を潤ませる。
王として民を守れなかったことで、厭世的になってしまったソーは、“リボウスキ(笑)”と揶揄されるビール腹のおっさん化しており、在りし日のアスガルドで、もうすぐ亡くなることが分かっている愛しのママの胸で泣くという「ドラえもん」的展開。
中盤のクライマックスとも言えるのが、超常の力を持たないただの人間なれど、アベンジャーズの名バイプレイヤーとしてシリーズを支えてきた、ブラック・ウィドウとホークアイが直面する究極の選択だ。
何気に表の顔はマイホームパパなホークアイの唯一最大の望みは、指パッチンで失われた家族全員を取り戻すこと。
対照的に家族を持たない孤独なスパイであり、アベンジャーズそのものが自分の居場所であり、家族だというブラック・ウィドウは、ヒーローとしての使命を果たすことに全てを賭けている。
求める者に犠牲を求めるソウルストーンをめぐる両者の激しい葛藤は、特にブラック・ウィドウ役のスカーレット・ヨハンソンにとっては、シリーズ最高の見せ場となり、切ない運命に涙が止まらない。
そして、お互いに追い詰められたアベンジャーズとサノスの、六つのストーンとガントレットを巡る最終決戦は、スピルバーグの「レディ・プレイヤー1」を思わせる大物量戦。
未来の自分の運命を知ったサノスの軍団が、量子空間を通ってアベンジャーズ基地を奇襲。
数的劣勢に立たされ、せっかく修復した宇宙も風前のともし火となったところへ、復活したアベンジャーズのヒーローたちが、ワカンダとアスガルドの戦士たちと共に次々と現れる。
その時に、キャプテンが叫ぶ掛け声が、定番の一つ「アベンジャーズ、アッセンブル(集合)‼︎」なのが胸アツだ。
この後、キャプテンが突然ある能力を発動するのは、ぶっちゃけ唐突なんだけど、特殊能力があるかどうかとかは関係なく、色々問題のあるこの世界を愛し守ろうとする者は皆、アベンジャーズなのである。
サノスの視点は元々神のものだから、どんなに奪われようとも、取り戻すことを決して諦めない彼らの姿を見て、今度は宇宙そのものをリセットしようとする。
この時点で、もはや彼は救おうとしていた命の価値を否定し、ただの破壊者=悪に堕ちてしまうのだ。
最終的には、アイアンマンとキャプテン・アメリカに花を持たせるために失敗するが、ガントレットを葬り去るために、キャプテン・マーベルを先頭に女性ヒーローたちが隊列を組んでサノス軍の包囲を突破する下りは、多様性の宇宙としてのMCUを象徴する2019年ならではの描写。
12年22本の歴史に裏打ちされた「アベンジャーズ/エンドゲーム」には、物語映画が描ける人間の感情の全てがある。
私たちは喪失の大きさに絶望し、見えてきた僅かな希望に高揚し、色々こじらせて可笑しくなってしまったヒーローたちに笑い、希望を繋げるための犠牲に涙し、最後には大いなる共感とともに、アベンジャーズを見送る。
むちゃくちゃカッコいいエンドクレジットで、本人のサイン付きでカーテンコールに立った、アベンジャーズ初期メンバー6人を演じた、ロバート・ダウニーJr.、クリス・エバンス、マーク・ラファロ、クリス・ヘムズワース、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、そして今回思わぬ大活躍を見せるペッパー役のグィネス・パルトロウも、本作で一応の卒業となるらしく、他にもシリーズを去る人たちがいるだろう。
相変わらずスクリーンの中では元気な姿を見せてくれた故スタン・リー、シリーズの司令塔ケヴィン・ファイギ、ルッソ兄弟を初めとする作り手たちにも、心からのリスペクトを込めて「ありがとう。お疲れ様でした!」と言いたい。
ただし、これはあくまでもMCU全体を一つの作品として追い続けて来た人だけに訪れる至福の時間で、一見さんには限りなく優しくない。
アーカイブとしての新たな映画の楽しみ方を提示したという点でも、画期的な作品である。
今後のMCU作品で、アイアンマンとキャプテン・アメリカに変わって軸となってゆくのが、キャプテン・マーベルなのは、歴代登場人物がほぼ全員集合している、終盤のあるカットの立ち位置を見ても明らかだろう。
しかし、このキャラクターに扱いには慎重さが求められると思う。
何しろ彼女の力はインフィニティストーン由来で、単体作の「キャプテン・マーベル」での覚醒後はあまりにも強過ぎる。
DCのスーパーマン同様に、極めて“能力の枷”を作りにくい彼女の存在は、物語を生かしもすれば殺しもする。
本作でドラマ部分にほぼ絡ませることなく、アベンジャーズの最終兵器的な扱いだったのも、使いどころが難しかったからだと思う。
サノスとの戦いを見ると、自らの力の源となったインフィニティストーンが唯一の弱点みたいだけど、あれ一つだけだとクリプトナイトより入手困難だぞ。
ところで、戦いの後ガモーラがどこへ行ったのかや、キャプテンが過去に持って行ったムジョルニアの行方など、いくつかの謎が残る。
エンドクレジット後には映像は無かったが、最後に響く金属音はたぶんムジョルニア?それとも新たなアイアンマン?次回作への何らかの布石になっているのだろうな。
キャプテン・アメリカの盾を受け継いだサム・ウィルソンが、どこまで存在感を発揮できるかも含めて、「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」から始まる新生MCUには大いに期待したい。
今回は、究極のエンターテイメンに相応しく、カクテル「XYZ(エックス・ワイ・ジィ)」をチョイス。
ホワイト・ラム40ml、コアントロー10ml、レモンジュース10mlをシェイクして、グラスに注ぐ。
アルファベットの最後の三文字を並べ、これ以上は無い究極のカクテルという意味が込められている。
酸味と甘みのバランスが良く、非常に飲みやすい。
名前からか、〆の一杯として飲まれることが多いカクテルだ。
どうでもいい点かもしれないけど、指パッチンで消えた人々が、5年前のままの姿で突然現れるのは、それはそれで大混乱を招きそう。
ピーターの高校とかはスムーズに再開したみたいだけど、パートナーを失って5年の間に再婚しちゃった人とかどうするんだろう(笑
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マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の12年間、22本目の総決算。
長年映画を観てきたが、これほど「集大成」とか「大団円」という言葉がふさわしい作品には初めて出会った気がする。
ジョージ・ルーカスの個人映画から始まり、紆余曲折を経て今年、本作と同じくディズニー傘下で完結を迎えようとしている「スター・ウォーズ」サーガとも違う。
60年以上も、国をまたいで作り続けられている「ゴジラ」シリーズとも違う。
従来のシリーズ映画の概念を打ち破り、コミックの世界のクロスオーバーという考え方を全面的に取り入れ、ヒーローたちの単体映画を細胞として、全体で一つの巨大な作品となるMCUは、やはり実写映画の世界では一つの革命だった。
2008年の「アイアンマン」から始まり、2012年の「アベンジャーズ」までのフェイズ1で登場したヒーローたちは、今回で一応の見納めとなるだろう。
もちろん、MCUそのものは本作以降も続いてゆくのだけど、シリーズ22本目にして初めて、エンドクレジット後に次回作への布石となるオマケ映像が入らない本作は、「アベンジャーズ/エンドゲーム」のタイトル通りに、「完結」の二文字を強く意識させる。
MCUのテーマ的な屋台骨となった、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」からシリーズ最多の4作品を手がけた、アンソニーとジョーのルッソ兄弟は、総尺数2868分(TVシリーズを加えたらもっと膨大!)の大長編映画のクライマックスを、至高にして究極のエンターテイメント超大作として鮮やかに昇華した。
※ここから先は核心部分に触れています。観るまでは絶対読まないで!
六つのインフィニティストーンを手にしたサノス(ジョシュ・ブローリン)によって、全宇宙の50%の生命が消えた。
生き残ったアベンジャーズのヒーローたちは、消えたサノスの居場所を探し出すも、インフィニティストーンはすでに全て破壊されていて、希望は失われた。
やがて5年の歳月が流れ、世界は僅かずつ傷を癒しつつあり、アベンジャーズの面々もそれぞれの道を歩んでいる。
そんな時、今も失われた命を取り戻す方法を探し続けているスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)とナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)の前に、行方不明だったアントマンことスコット・ラング(ポール・ラッド)が現れる。
サノスがインフィニティストーンを使った時、量子世界に取り残されたアントマンは、ひょんなことから元の世界に戻ることができたのだが、ほんの数時間量子世界にいたはずが、現実世界では5年もの歳月が流れていた。
残されたピム粒子を使って、量子世界の異なる時間の流れを利用すれば、過去へ戻ってサノスがインフィニティストーンを手に入れるのを阻止できるのではないか。
スティーブは、家族と共に隠遁生活を送っているトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)に助けを求めるのだが・・・・・
前作の「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」は、サノスの映画だった。
サノス(Thanos)はギリシャ語のアタナシオス(Athanasios)の短縮形で、「不死、不滅」を意味する。
名前の通り、彼は神の目線でこの宇宙全体を展望しており、増えすぎた生物によって幾つもの惑星が立ち行かなくなるのを見て、均衡を保つには宇宙にある命の総数を半分にしなければならないという考えを抱くようになる。
葛藤しながら、自らの信念を貫き通すという意味では、このスーパーヴィランはアベンジャーズのヒーローたちと何も変わらない。
ただ、命を救うか奪うかの差だけが、両者を決定的に隔てているのだが、前作では全体を救うためには半分を犠牲にしても構わないというサノスの前に、たった一人でも見捨てないというヒーローたちが敗れ去った。
それに対して、本作は文字通りにボコボコにされたヒーローたちが、自分たちが何をすべきなのか、何ができるのかを自問自答しながら、“アベンジ”する映画だ。
この二部作は、1本目をアベンジャーズのアンチテーゼとしてのサノスの哲学を前面に出し、2本目は敗北を咀嚼した上でジンテーゼ導き出すヒーローたちの群像劇とし、鏡のような構造になっていて、現在までのMCUが「シビル・ウォー」以来、対立する二つの正義の軸となっていた、アイアンマンとキャプテン・アメリカの物語だったことが明確となる。
「インフィニティ・ウォー」の原案となった、コミック「インフィニティ・ガントレット」では、生き残っていたネビュラが一瞬の隙を突いてサノスからガントレットを奪い、時間を巻き戻すことで、ドラマが動き出す。
しかし映画が始まって早々、コミックの設定はもう使えないことが明らかになる。
目的を達したサノスは、自らインフィニティストーンを破壊してしまっていたのだ。
一体ここからどうやって・・・・と思っていたら、なるほど「アントマン&ワスプ」のラストがうまく伏線として機能する。
ここからの展開は、ぶっちゃけ科学考証とかは相当にいい加減で、細かいところは御都合主義もいいところなのだけど、まあこの辺はMCUでは最初からそうなので、今更気にする人もいないだろう。
シリーズ初の3時間越えの複雑怪奇なプロットを成立させるために、ヒーローたちをいくつかのグループに分け、同時進行させるという前作の方法は今回も踏襲。
アントマンのアイディアをアイアンマンが現実化し、サノスより先にストーンを集めるため彼らが向かうのは、マインド、タイム、スペースの各ストーンがあった2012年のチタウリ侵攻下のニューヨーク、ソーの元カノのジェーンの体内に、リアリティストーンが吸収されていた2013年のアスガルド、さらに宇宙へと飛んで、パワーストーンのある2014年の惑星モラグと、ソウルストーンが隠されている惑星ヴォーミア。
ルッソ兄弟は指パッチンの惨禍から、5年の歳月の間のキャラクターの変化をお笑いのネタとして使いながら、サノスより先にインフィニティストーンを奪う冒険を、ある種の時間SFとして、シリーズの過去作品をアーカイブ的に利用する。
2012年に向かったアイアンマンとキャプテンは、スペースストーンの奪取に失敗し、プランBによって1970年のニュージャージに。
今は娘を持つアイアンマンは、若き日の父と出会い、親になる気持ちについて語らい、キャプテンはペギー・カーターの姿に目を潤ませる。
王として民を守れなかったことで、厭世的になってしまったソーは、“リボウスキ(笑)”と揶揄されるビール腹のおっさん化しており、在りし日のアスガルドで、もうすぐ亡くなることが分かっている愛しのママの胸で泣くという「ドラえもん」的展開。
中盤のクライマックスとも言えるのが、超常の力を持たないただの人間なれど、アベンジャーズの名バイプレイヤーとしてシリーズを支えてきた、ブラック・ウィドウとホークアイが直面する究極の選択だ。
何気に表の顔はマイホームパパなホークアイの唯一最大の望みは、指パッチンで失われた家族全員を取り戻すこと。
対照的に家族を持たない孤独なスパイであり、アベンジャーズそのものが自分の居場所であり、家族だというブラック・ウィドウは、ヒーローとしての使命を果たすことに全てを賭けている。
求める者に犠牲を求めるソウルストーンをめぐる両者の激しい葛藤は、特にブラック・ウィドウ役のスカーレット・ヨハンソンにとっては、シリーズ最高の見せ場となり、切ない運命に涙が止まらない。
そして、お互いに追い詰められたアベンジャーズとサノスの、六つのストーンとガントレットを巡る最終決戦は、スピルバーグの「レディ・プレイヤー1」を思わせる大物量戦。
未来の自分の運命を知ったサノスの軍団が、量子空間を通ってアベンジャーズ基地を奇襲。
数的劣勢に立たされ、せっかく修復した宇宙も風前のともし火となったところへ、復活したアベンジャーズのヒーローたちが、ワカンダとアスガルドの戦士たちと共に次々と現れる。
その時に、キャプテンが叫ぶ掛け声が、定番の一つ「アベンジャーズ、アッセンブル(集合)‼︎」なのが胸アツだ。
この後、キャプテンが突然ある能力を発動するのは、ぶっちゃけ唐突なんだけど、特殊能力があるかどうかとかは関係なく、色々問題のあるこの世界を愛し守ろうとする者は皆、アベンジャーズなのである。
サノスの視点は元々神のものだから、どんなに奪われようとも、取り戻すことを決して諦めない彼らの姿を見て、今度は宇宙そのものをリセットしようとする。
この時点で、もはや彼は救おうとしていた命の価値を否定し、ただの破壊者=悪に堕ちてしまうのだ。
最終的には、アイアンマンとキャプテン・アメリカに花を持たせるために失敗するが、ガントレットを葬り去るために、キャプテン・マーベルを先頭に女性ヒーローたちが隊列を組んでサノス軍の包囲を突破する下りは、多様性の宇宙としてのMCUを象徴する2019年ならではの描写。
12年22本の歴史に裏打ちされた「アベンジャーズ/エンドゲーム」には、物語映画が描ける人間の感情の全てがある。
私たちは喪失の大きさに絶望し、見えてきた僅かな希望に高揚し、色々こじらせて可笑しくなってしまったヒーローたちに笑い、希望を繋げるための犠牲に涙し、最後には大いなる共感とともに、アベンジャーズを見送る。
むちゃくちゃカッコいいエンドクレジットで、本人のサイン付きでカーテンコールに立った、アベンジャーズ初期メンバー6人を演じた、ロバート・ダウニーJr.、クリス・エバンス、マーク・ラファロ、クリス・ヘムズワース、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、そして今回思わぬ大活躍を見せるペッパー役のグィネス・パルトロウも、本作で一応の卒業となるらしく、他にもシリーズを去る人たちがいるだろう。
相変わらずスクリーンの中では元気な姿を見せてくれた故スタン・リー、シリーズの司令塔ケヴィン・ファイギ、ルッソ兄弟を初めとする作り手たちにも、心からのリスペクトを込めて「ありがとう。お疲れ様でした!」と言いたい。
ただし、これはあくまでもMCU全体を一つの作品として追い続けて来た人だけに訪れる至福の時間で、一見さんには限りなく優しくない。
アーカイブとしての新たな映画の楽しみ方を提示したという点でも、画期的な作品である。
今後のMCU作品で、アイアンマンとキャプテン・アメリカに変わって軸となってゆくのが、キャプテン・マーベルなのは、歴代登場人物がほぼ全員集合している、終盤のあるカットの立ち位置を見ても明らかだろう。
しかし、このキャラクターに扱いには慎重さが求められると思う。
何しろ彼女の力はインフィニティストーン由来で、単体作の「キャプテン・マーベル」での覚醒後はあまりにも強過ぎる。
DCのスーパーマン同様に、極めて“能力の枷”を作りにくい彼女の存在は、物語を生かしもすれば殺しもする。
本作でドラマ部分にほぼ絡ませることなく、アベンジャーズの最終兵器的な扱いだったのも、使いどころが難しかったからだと思う。
サノスとの戦いを見ると、自らの力の源となったインフィニティストーンが唯一の弱点みたいだけど、あれ一つだけだとクリプトナイトより入手困難だぞ。
ところで、戦いの後ガモーラがどこへ行ったのかや、キャプテンが過去に持って行ったムジョルニアの行方など、いくつかの謎が残る。
エンドクレジット後には映像は無かったが、最後に響く金属音はたぶんムジョルニア?それとも新たなアイアンマン?次回作への何らかの布石になっているのだろうな。
キャプテン・アメリカの盾を受け継いだサム・ウィルソンが、どこまで存在感を発揮できるかも含めて、「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」から始まる新生MCUには大いに期待したい。
今回は、究極のエンターテイメンに相応しく、カクテル「XYZ(エックス・ワイ・ジィ)」をチョイス。
ホワイト・ラム40ml、コアントロー10ml、レモンジュース10mlをシェイクして、グラスに注ぐ。
アルファベットの最後の三文字を並べ、これ以上は無い究極のカクテルという意味が込められている。
酸味と甘みのバランスが良く、非常に飲みやすい。
名前からか、〆の一杯として飲まれることが多いカクテルだ。
どうでもいい点かもしれないけど、指パッチンで消えた人々が、5年前のままの姿で突然現れるのは、それはそれで大混乱を招きそう。
ピーターの高校とかはスムーズに再開したみたいだけど、パートナーを失って5年の間に再婚しちゃった人とかどうするんだろう(笑

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この記事へのコメント
本当に「ありがとう、アベンジャーズ」という言葉が相応しい、素晴らしき完結作品でしたね。
私も女性ヒーロー勢揃いのくだりに興奮しましたよ!
アベンジャーズ1期生はこれにて卒業ですけど、次のアベンジャーズには、今回出番のなかった猫のグースちゃんもきっと参加してくれるでしょう!
私も女性ヒーロー勢揃いのくだりに興奮しましたよ!
アベンジャーズ1期生はこれにて卒業ですけど、次のアベンジャーズには、今回出番のなかった猫のグースちゃんもきっと参加してくれるでしょう!
>にゃむばななさん
いやもう色んな感情が一気に湧き上がってきて、観終わって言葉が何も出てこない感じでした。
一言で、完璧な完結編でしたね。
グースはどこかに出てくるのじゃないかと期待してたのですが、今回は出番なしでしたね。
キャラ的に、「GOTG3」あたりに出てきて欲しいですね。
いやもう色んな感情が一気に湧き上がってきて、観終わって言葉が何も出てこない感じでした。
一言で、完璧な完結編でしたね。
グースはどこかに出てくるのじゃないかと期待してたのですが、今回は出番なしでしたね。
キャラ的に、「GOTG3」あたりに出てきて欲しいですね。
Netでも若干騒ぎになってますが、Iron Man 3の男の子がTonyの葬儀に参列してました。
HawkeyeやAnt-manの娘さんたちも登場しましたし、MCUの若返りが見込まれますね。
Spidermanの最新予告編では、PeterがTonyの死を悼んでメソメソしてました。
Misterioは、Multi-Universeから来た設定に変更されてました。
MARVELには、今後も上手く商売されそうで、楽しみです。
唯一心配なのは、Disney色が強まることです。
HawkeyeやAnt-manの娘さんたちも登場しましたし、MCUの若返りが見込まれますね。
Spidermanの最新予告編では、PeterがTonyの死を悼んでメソメソしてました。
Misterioは、Multi-Universeから来た設定に変更されてました。
MARVELには、今後も上手く商売されそうで、楽しみです。
唯一心配なのは、Disney色が強まることです。
>チップマークさん
最初観た時、あの男の子見覚えあるけど誰だっけ?と思って後から確認して驚きました。
ラングの娘は一気に大人になったし、「アントマン&ワスプ」の時に2代目に名乗りをあげていたから、本当にアリかも。
「ファー・フロム・ホーム」の新予告を観る限り、新生MCUには期待を裏切られることは無さそうですね。
最初観た時、あの男の子見覚えあるけど誰だっけ?と思って後から確認して驚きました。
ラングの娘は一気に大人になったし、「アントマン&ワスプ」の時に2代目に名乗りをあげていたから、本当にアリかも。
「ファー・フロム・ホーム」の新予告を観る限り、新生MCUには期待を裏切られることは無さそうですね。
ノラネコさん☆
壮大なフィナーレでしたね~
ところどころかなりご都合主義ではあったものの、すっ飛ばすくらい3時間があっという間でした。
キャプテンマーベルならさっさとビームでやっつけられたでしょうけど、さすがにそれは無かったですねぇ。
今回コメディ担当だったソーは、あのぶよぶよのまま卒業になっちゃうのですか!?ショックー
壮大なフィナーレでしたね~
ところどころかなりご都合主義ではあったものの、すっ飛ばすくらい3時間があっという間でした。
キャプテンマーベルならさっさとビームでやっつけられたでしょうけど、さすがにそれは無かったですねぇ。
今回コメディ担当だったソーは、あのぶよぶよのまま卒業になっちゃうのですか!?ショックー
ソーは、ベンチャー企業のルーズなギークみたいで、神話の主人公をそれらしくない、だから、人的でクール、という矛盾を造型にしたような人物でしたね。
集団生活は苦手、まるで監獄というのは、彼は自由でないと倒れてしまうのでは無いでしょうか。神話時代と、現代とで、崇められる存在から、一人で生きる個になった事の違いで、それを孤独とも感じさせないのが、アベンジャーズではないですかね。言わば、世界の片隅の小さな居場所にして、その勇者達のチームが世界全体を救うという事は、理屈の上では、矛盾がありますね。
決戦は局地戦でもあって、敗ければ、地球上から選ばれたヒーローが居なくなってしまうわけで、善と悪の戦いの分水嶺を、ドラマチックに描いているのは凄いと思いました。
集団生活は苦手、まるで監獄というのは、彼は自由でないと倒れてしまうのでは無いでしょうか。神話時代と、現代とで、崇められる存在から、一人で生きる個になった事の違いで、それを孤独とも感じさせないのが、アベンジャーズではないですかね。言わば、世界の片隅の小さな居場所にして、その勇者達のチームが世界全体を救うという事は、理屈の上では、矛盾がありますね。
決戦は局地戦でもあって、敗ければ、地球上から選ばれたヒーローが居なくなってしまうわけで、善と悪の戦いの分水嶺を、ドラマチックに描いているのは凄いと思いました。
>ノルウェーまだ~むさん
ビール腹は衝撃でした。
あの発想は日本のヒーローものでは絶対出てこないw
まああのままでも可愛いけど、次出てくるとしても元のマッチョに戻ってるんじゃないでしょうかw
>隆さん
もともと多神教の神さまって矛盾の塊であんな感じでしょう。
日本のスサノオとかも相当無茶苦茶だし、ソーの属する北欧神話の神様なんて、基本戦争神話だから皆そろってエキセントリック。
今回の方向性はムッチャ面白かったです。
ビール腹は衝撃でした。
あの発想は日本のヒーローものでは絶対出てこないw
まああのままでも可愛いけど、次出てくるとしても元のマッチョに戻ってるんじゃないでしょうかw
>隆さん
もともと多神教の神さまって矛盾の塊であんな感じでしょう。
日本のスサノオとかも相当無茶苦茶だし、ソーの属する北欧神話の神様なんて、基本戦争神話だから皆そろってエキセントリック。
今回の方向性はムッチャ面白かったです。
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https://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201904260001/
TEN-R108-627 アベンジャーズ アベンジャーズ / エンドゲーム 108ピース ジグソーパズル パズル Puzzle ギフト 誕生日 プレゼント 誕生日プレゼント
2019/04/28(日) 19:41:27 | 日々“是”精進! ver.F
映画『アベンジャーズ/エンドゲーム(2D・日本語字幕版)』(公式)を公開初日の2019年4月26日に、劇場鑑賞。
採点は、★★★★☆(最高5つ星で、4つ)。100点満点なら90点にします。
【私の評価基準:映画用】
★★★★★ 傑作! これを待っていた。Blu-rayで永久保存確定。
★★★★☆ 秀作! 私が太鼓判を...
2019/04/28(日) 20:45:20 | ディレクターの目線blog@FC2
最強を超える敵“サノス”によって、アベンジャーズのメンバーを含む全宇宙の生命は、半分に消し去られてしまった。 再び集結したヒーローたちは、地球に取り残された35億人の未来のために、そして“今はここにいない”仲間たちのために、最後にして史上最大の逆襲<アベンジ>に挑む…。 スーパーヒーロー・アクション。
2019/04/29(月) 23:40:52 | 象のロケット
アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルクといったマーベルコミックが生んだヒーローたちが同一の世界観で活躍する「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の中核となるシリーズで、各ヒーロー映画の登場人物たちが豪華共演するメガヒット作「アベンジャーズ」の第4作。あらすじ:前作「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」で、宇宙最強の敵サノスに立ち向かうも、ヒーローたちを含めた全人類の...
2019/04/30(火) 22:59:31 | 映画に夢中
つまらなくはなかったが、気に入らないところがあって。
2019/05/06(月) 14:47:30 | 或る日の出来事
☆☆☆☆☆彡 (10段階評価で 10+)
4月26日(金) 109シネマズHAT神戸 シアター9にて 13:20の回を鑑賞。 2D:字幕版。
4月27日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター9にて 13:20の回を鑑賞。 2D:字幕版。
2019/05/07(火) 13:43:04 | みはいる・BのB
令和元年5月1日に、映画「アベンジャーズ/エンドゲーム」を鑑賞しました。
2019/05/09(木) 00:13:23 | FREE TIME
「アベンジャーズ/エンドゲーム」(原題:Avengers:Endgame)は、2019年公開のアメリカのスーパーヒーロー映画です。アメリカン・コミックのマーベル・コミック「アベンジャーズ」の実写映...
2019/09/26(木) 05:00:14 | 楽天売れ筋お買い物ランキング
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