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アメリカン・アニマルズ・・・・・評価額1650円
2019年05月19日 (日) | 編集 |
“特別な人間”に、なれるはずだった。

2004年に、ケンタッキー州レキシントンにあるトランシルヴァニア大学の図書館で起こった、高額希少本強奪事件を描いた実話クライムムービー。
逮捕された四人の犯人たちは、全員が地元の大学生だった。
中産階級の家庭に育ち、物質的には満ち足りた生活を送っていたはずの彼らは、一体なぜ無謀な犯罪計画を実行したのか。
英国出身のドキュメンタリスト、バート・レイトン監督は、ドキュメンタリーとドラマの手法を融合させたユニークなストーリーテリングを駆使し、彼らのメンタルに迫ってゆく。
強奪計画が失敗したことは初めから分かっているので、これは四人の若者が何を求め、どのように失敗し、長い歳月が過ぎた今、結局何を得たのかを描く作品だ。

ケンタッキー州レキシントン、2003年秋。
大学生になったばかりのスペンサー・ラインハード(バリー・コーガン)は、退屈な日常を脱し、特別な人間になりたいと切望している。
ある日、大学の図書館に時価1200万ドルもする希少本「アメリカの鳥類」が収蔵されていることを知ったスペンサーは、親友のウォーレン・リプカ(エヴァン・ピーターズ)と共に本を強奪する計画を思いつく。
ウォーレンが、本をヨーロッパの盗品バイヤーへと売りさばくルートを見つけ出すと、二人はFBI職員を目指している秀才のエリック(ジャレッド・アブラハムソン)、すでに起業しある程度の資金を持つチャールズ(ブレイク・ジェナー)をスカウト。
四人のチームは、「レザボア・ドッグス」を参考に、それぞれを色のコードネームで呼び、作戦を練り上げる。
決行の日、メイクアップで老人に変装した彼らは、それぞれの役割ごとにポジションに付くのだが・・・


なるほど「事実に基づく物語」ではなく、「事実の物語」か。
バート・レイトンは、フランスの信用詐欺師、フレデリック・ブルンディを描いた2012年の「The Imposter」で注目を集めたドキュメンタリスト。
ブルンディは、行方不明になった少年たちの両親の前に現れては、自分が成長した息子だと主張する手口で、世界各国を転々としてきたとても奇妙な詐欺師だ。
長編2作目となる本作では、ドキュメンタリーとドラマの垣根を超えて、二つのジャンルの融合を試みることで、よりディープに登場人物の内面を掘り下げようとしている。
実際に事件を起こしたスペンサー、ウォーレン、エリック、チャールズの四人はもちろん、彼らの家族や強奪事件に巻き込まれた被害者までもが、スクリーンに現れては過去を振り返ってインタビューに答える。
彼らの現在の記憶によって、ドラマ部分が語られるのだ。

再現ドラマとインタビューの組み合わせそのものは、例えば実際の事件を扱ったTVのバラエティ番組などでも見られるが、この作品が新しいのはドキュメンタリーとドラマがシームレスに融合し、相互に影響しているところ。
例えば、インタビュー中の現在の彼らのアクションが、そのまま過去のドラマの登場人物のアクションに繋がり、現実の彼らとドラマの彼らが同じ画面の中に収まることも。
スペンサーとウォーレンで記憶が異なるところは、二通りのドラマが描かれたりする。
事実に基づいて脚色したフィクションではなく、ドラマ部分はあくまでも現在の彼らの記憶からダイレクトに生み出された事実。
そして多くの人物が関わった事件では、「羅生門」的に事実が一つとは限らないという訳だ。

平凡な大学生だった四人の若者は、なぜ暴力的な強奪事件を起こしたのか。
彼らが狙うのは、トランシルヴァニア大学の図書館にある開拓時代の博物画家、ジョン・ジェームズ・オーデュボンの画集「アメリカの鳥類」だ。
この巨大な本は、時価にして1200万ドルもの価値があり、図書館には他にも複数の希少本が収蔵されていて、彼らはそれらも同時に狙う。
中産階級出身の四人は、決してお金に困っている訳ではない。
大学まで進学しているのだから、将来の展望が開けない訳でもない。
ただ一つ、共通して彼らを強烈に突き動かすのは、「凡人には見られない非日常の世界に行きたい」「凡人とは違う特別な人間になりたい」という強烈な自己承認欲求の感情だ。

一応、軸となる主人公はバリー・コーガン演じるスペンサーだが、彼はエヴァン・ピーターズ演じる真のストーリーテラー、いやストーリーメイカーであるウォーレンに導かれ、危険なあちら側の世界に足を踏み入れる。
この二人はいわば「指輪物語」のフロドとガンダルフの様な関係で、オーデュボンの本という禁断の指輪を見つけたのはスペンサーで、実際に旅の仲間を組織して、事態を前に動かすのはウォーレンだ。
舞台となるレキシントンは、煌びやかな大都会ではないけれど、かと言って田舎というほどでもない、典型的な地方都市。
この街のごく普通の家庭に育ち、退屈な高校を卒業し、順当にそれなりのレベルの地元大学に入学。
大学生になってみたら、何かが変わるかと期待していたが、結局は今までの日常の延長線上。
退屈な日常をぶっ壊し、自分が特別なことを証明したいという若気の至りが、よりにもよって犯罪に向かっちゃうという喜悲劇。

実行に至る計画段階の、ワクワクする高揚感と根拠のない自信
盗んだ絵をブラックマーケットで売れば、相場よりはだいぶ安くなるが、それでも人生を変えるには十分の数百万ドル。
この辺りは宝くじを買って発表されるまでの間、もし当選したら何を買おう、何をしようと妄想を膨らませるのに似ている。
しかし「オーシャンズ11」や「レザボア・ドッグス」を観て“研究”し、何度も動線をシミュレーションして完璧な計画を立てたはずが、イザ実行してみたら「こんなハズじゃなかった!」の連続。
所詮素人の思い付きの犯行は、お粗末な顛末を迎える。
スタイリッシュなモンタージュのテクニックと、絶妙な音楽のチョイスによる前半の疾走感と、計画が失敗した後の、いつ捕まるか分からないという焦燥感と閉塞感のコントラストが見事だ。

「自分は特別な人間ではない、それでも生きていかなければならない」ということを悟るには、あまりにも高い授業料。
もっとも、スペンサーら四人が現在から過去を振り返る視点は、必ずしも深い贖罪には結びついてはいないのが面白い。
いやもちろん、7年間服役しそれなりに大人になった彼らも、それぞれに反省はしているし、特に誰も傷つけないはずが、司書の女性に暴力を振るってしまったことに対しては、後悔している様には見える。
しかし、映画の最後で事件から10年後の彼らの“今”が明かされると、その意外性にこちらは戸惑うばかり。
あれほどの事件ですら、結局彼らの人生を大きく変えることは無かったということか。
もしくは、あの事件を契機として、元々行くべき道がはっきりしたということなのかも知れない。
インタビューの終盤になって、スペンサーとチャールズから、当時のウォーレンのある行動について、全てが上手くいったとしても、計画の完遂は不可能だったのではないかという疑念が示される。
煙に巻かれるのは、私たち観客も同じ。
バート・レイトンも、それ以上は突っ込まない。
全てを知るただ一人の男、ウォーレンこそが、「羅生門」的なこの事件の本当のストーリーメイカーなのだ。

今回は刺激を求め過ぎたいかれた若者たちの物語なので、スコットランドのクラフトビール醸造所、ブリュードッグの「パンクIPA」をチョイス。
ユニークなビールをプロデュースしていることで知られるブリュードッグ。
「パンクIPA」は、同社の「ハードコアIPA」ほどではないが、強いホップ感とフルーティーで複雑なアロマを楽しめる。
スペンサーたちも、このぐらいの刺激で我慢しておけば良かったのに。

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アメリカ・ケンタッキー州。 退屈な大学生活を送っていたウォーレンとスペンサーは、大学図書館に時価1200万ドル(約12億円)以上もする貴重な本が保管されていることを知る。 それは野鳥画家オーデュポンの巨大な画集「アメリカの鳥類」。 2人は大学の友人を巻き込み、強盗計画を立て始めた…。 クライム・サスペンス。
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