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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド・・・・・評価額1700円
2019年09月03日 (火) | 編集 |
御伽噺の行き着く先は・・・・

クエンティン・タランティーノが、「イングロリアス・バスターズ」のブラット・ピットと、「ジャンゴ 繋がれざる者」で悪役を嬉々として演じていたレオナルド・デカプリオと再び組み、時代の波に翻弄されるハリウッドの光と陰を描く。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」、直訳すれば「昔々のハリウッドで」というタイトルは、セルジオ・レオーネ監督がアメリカ史への想いを描いた「ウェスタン(Once Upon a Time in the West)」と「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」に引っ掛けてあるのと同時に、大転換期を迎えていた当時のハリウッドへのタランティーノ流のオマージュであり、虚構を作る創作者としての信念が詰まった集大成。
161分という長尺を感じさせないさすがの仕上がりだが、映画全体のベースとなっている「シャロン・テート殺人事件」の顛末は、観客が当然知っているものという前提で作られていて、全く知識がないと訳が分からない話なので、自信がない人は予習が必須だ。
※核心部分に触れています。

1969年、ハリウッド。
50年代にテレビの西部劇で人気を博したリック・ダルトン(レオナルド・デカプリオ)は、映画俳優への転身が上手くいかず、今は新しいスターの主演作品へのゲスト出演で食いつないでいる。
そんなリックを公私で支えているのが、付き人兼スタントマンで、長年の親友でもあるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)。
生き馬の目を抜く芸能界で神経をすり減らし、酒に溺れてゆくリックと、どんな時にも飄々としている自然体のクリフ。
高級住宅地ビバリー・ヒルズにあるリックの家の隣には、新進気鋭の映画監督ロマン・ポランスキー(ラファル・ザビエルチャ)と女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)夫妻が引っ越してきたばかり。
ある日、リックを撮影現場に送っていったクリフは、ヒッチハイクをしていた若い女性に頼まれて、スパーン映画牧場へと向かう。
以前は映画の撮影が行われていた牧場では、チャールズ・マンソン(デイモン・ヘリマン)というカリスマ的リーダーの元、若者たちがコミューンを作って共同生活を送っていたのだが、クリフは彼らの間に漂う不穏な空気を感じ取っていた・・・・


実に面白かったけど、まさかそっち方向へ行くとは(笑
始まってしばらくは、作品がどこへ向かっているのか分からなかったが、最終的にタイトルを含めて全て納得できる。
背景となる1969年のハリウッドでは、隆盛を誇ったハリウッドのメジャースタジオの大作は輝きを失い、急速に台頭するアメリカンニューシネマに押され気味。
映画産業全体も斜陽化し、新たな娯楽の王者となったテレビからは、次から次へとスターが登場している。
本作の主人公、リック・ダルトンもその一人なのだが、出世作となった番組はとっくに終了していて、映画への転身もままならず、今ではテレビで若手を引き立てる悪役稼業。
イタリア映画界から誘われているものの、今ひとつ踏ん切りをつけられずにいる。
このリック自身が、激変する時代にあって、行先を見失って漂流するハリウッドそのものをカリカチュアしたようなキャラクターだ。

ハリウッドからアメリカ社会全体に視野を広げると、ベトナム戦争の激化に伴い、アンチテーゼとしてのヒッピーカルチャーがピークを極め、8月にはあの伝説のウッドストック・フェスティバルが開かれた。
そして、この年を境にして、ヒッピーカルチャーは急速に衰退してゆくのだが、その終わりの始まりとなったのが、本作のモチーフとなったマンソン・ファミリーの起こした「シャロン・テート殺人事件」をはじめとする一連の猟奇殺人事件なのである。

ざっくりとおさらいしておくと、事件が起こったのは1969年の8月8日深夜
ハリウッドの業界人に恨みを描くヒッピーくずれのカルト集団のリーダー、チャールズ・マンソンの命を受けたテックス・ワトソン、パトリシア・クレンウィンケル、スーザン・アトキンス、リンダ・カサビアンが、シエロ・ドライブ10050番地へと向かう。
この家には、ポランスキー夫妻の前にテリー・メルチャーという音楽プロデューサーが住んでいて、ミュージシャンでもあったマンソンをデビューさせる約束を反故にしていたのだ。
とりあえず、メルチャーの家に住んでいる奴を殺せというのだから、完全な勘違いの逆恨み。
しかし、マンソンを信仰し洗脳下にあった四人は、家の前で偶然鉢合わせしたスティーブン・ペアレントという若者を皮切りに、家にいたシャロンとその友人たちを惨殺。
ポランスキー本人は不在で無事だったが、5人の大人たちと妊娠していたシャロンの胎児が犠牲になった。
凄惨な事件の全貌が明るみに出ると、ヒッピーカルチャーは危険なカルト宗教と同一視されるようになり、社会の中で居場所を失っていったのである。
この映画では、ヒッチハイクしていたマンソン・ファミリーの少女をクリフが送る描写があるが、後にアメリカの多くの州では、ヒッチハイク自体が違法となった。

映画は、その大半を事件の前史たる1969年2月のエピソードに費やし、終盤の30分ちょっとで事件当日の出来事を描く。
全ての要素が、8月8日の夜に向かって収束してゆく構造だ。
2時間を超える長い“プロローグ”にはゆったりとした時間が流れ、タランティーノらしい台詞の応酬によるキャラクターの対抗もあまり見られない。
かわってリアリティたっぷりに再現された当時のハリウッドと、リックやクリフの細やかな日常描写によって、“あの頃へ”とタイムトラベル。
リックのキャラクターはスティーブ・マックイーンがモデルかと思ったけど、マックイーンは別に出てくるし、イタリアへ流れて行くキャリアなどはむしろイーストウッドか。
寂しがりやで涙もろく、プレッシャーから酒を飲みすぎてセリフを忘れ、自分に向かって切れたと思ったら、ジョディ・フォスターがモデルと思しき早熟な子役俳優に褒められて有頂天。
オレ様キャラなのにどこかドジで可愛いリックと、昔妻を殺したという噂があり、「グリーン・ホーネット」の現場でブルース・リーと決闘をしても負けない、ちょっと影があって頼りになる相棒のクリフ。
光と陰、俳優とスタントダブル、二人でひとりのキャラクターの差が、いいコントラストとなっている。

彼らと過ごしているうちに、観客はいつの間にか当時のハリウッドの住人となった気分で映画を体験しているのだが、この作品では歴史上のリアルとタランティーノの創作した虚構が対抗している。
フィクションのキャラクターであるリックやクリフはもちろん虚構の部分で、マンソン・ファミリーやポランスキー夫妻は実在の人物だ。
では史実と虚構がぶつかった時、何が起こるのか?というのがこの映画の核心部分。
最初のうちは、虚構は史実に負けている。
例えばリックが後輩スターの作品にゲスト出演した時、彼が「大脱走」でスティーブ・マックイーンが演じた役の有力候補だったというエピソードが語られる。
劇中ではリックが出演しているバージョンの「大脱走」が映し出されるが、当然実際の映画に彼は出演しておらず、これは彼の心の中の“IF”の妄想に過ぎない。

しかし、ある瞬間を境にして、映画は突如として虚構に傾き始めるのだ。
史実では、シエロ・ドライブ10050に到着したマンソン・ファミリーの四人は、入り口付近にいたペアレントを殺害する。
ところが映画では、四人の乗ったポンコツ車のアイドリング音のうるささにブチ切れたリックに怒鳴りつけられて、彼らは一旦追い返されてしまう。
虚構による史実への攻撃である。
ちなみに現実のシエロ・ドライブ10050の入り口付近には、隣家そのものが存在しない。
そしてリックに腹を立てた実在の四人が、シャロンよりも先にリックというフィクションの存在を殺すことを決意したことから、虚構が史実を塗り替えてゆく
思えばタランティーノは、全く同じことを「イングロリアス・バスターズ」で既にやっている。
あの映画では、ナチスドイツによる人類史上最悪の悪行を、映画の力で無かったことにしてしまったが、ここではリアリティ重視でバッドエンドが当たり前のニューシネマの時代を背景に、マンソン・ファミリーというアメリカとハリウッドの歴史に今も影を落とす大事件を、虚構によって覆してしまった訳だ。

映画というイマジネーションの芸術が作り出す御伽噺の中では、史実は虚構に絶対に勝てないし、勝ってはいけないのである。
実際の事件を主導したテックス・ワトソンが、被害者に言い放った「オレは悪魔だ。悪魔の仕事をするために来た」という有名な決め台詞があるが、本作では言われたクリフがLSDでラリっていて、彼が何と言ったのかよく覚えていないというのが可笑しい。
映画作家の頭の中の世界では、全米を震撼させた悪魔は、滑稽なピエロにしか過ぎないのだ。
現在の私たちは、若く才能に満ちていたシャロン・テートが、狂信者によって突然命を奪われたことを知っている。
だが、タランティーノの主観で捉えられ、想いを込めて再創造された虚構の街で、マーゴット・ロビーによって命を吹き込まれた彼女は、再びミューズとなりスクリーンの中で永遠の生を得た。
失われたものは決して帰ってこないが、映画という御伽噺ではどんなことだって可能。
タランティーノは創作者の誇りをかけて、虚構の力で現実の歴史に対抗し、本来語られるべきだった彼女の物語を作ったのだろう。
映画の力と限界を同時に感じさせる本作は、とても面白く、少しだけもの哀しい。

アル・パチーノやブルース・ダーン、カート・ラッセルにダコタ・ファニングといった主役級の大物が、要所でチラリと顔を見せ、161分の長尺を弛緩しないように締めてゆく。
セルフパロディを含めあちこちに小ネタが散りばめられているので、マニアほど楽しめるのは相変わらずだが、ふつーに観ても十分楽しい。

今回は劇中劇にも登場する西部劇でおなじみの酒、メスカルから「グサーノ・ロホ メスカル」をチョイス。
メキシコを中心にリュウゼツラン科の植物から作られる蒸留酒で、特定地域で生産されたものをテキーラと呼ぶ。
多くの銘柄でボトルに芋虫が入っているので有名だが、この芋虫はリュウゼツランに住んでいるもので、もちろん食用。
一説によると芋虫が入っていることで、味が良くなるといい、グラスに注ぐ時に芋虫が出てくると幸運が訪れるそうな。
オレンジのスライスにかじりつき、ショットグラスで少しずつ含み味わうのがスタンダード。

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コメント
この記事へのコメント
こんばんわ
シャロン・テートは史実通りの結末を迎えるものだと思っていたところでのあのラスト。
その爽快さと共に失われたミューズが映画の中だけとはいえ、命が救われたことが凄く嬉しく感じましたね。
そしてそこに流れるQTの映画に対する深い愛情。
やっぱり彼の作品は本当に好きですわ!
2019/09/03(火) 23:06:55 | URL | にゃむばなな #-[ 編集]
こんばんは
>にゃむばななさん
私もてっきりそろそろ事件が来ると思って身構えてたので、まさかこっちに行くとは思っても見ませんでした。
まあでも過去にも同じことやってたし、これこそが映画作家としてのタランティーノの矜持なんでしょうね。
しかし、事件のこと知らないで見た人は「何のこっちゃ?」でしょうねw
2019/09/04(水) 22:54:59 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんにちは☆
TBありがとうございます!
返礼TBいたします。
お気軽にお出でくださいませ☆
よろしくお願いします!(^^)/
2019/09/05(木) 23:01:01 | URL | yutake☆イヴ #-[ 編集]
タラちゃんのいたずら
ノラネコさん☆
すっかり騙されてしまいました。
タラちゃんの『してやったり』顔が思い浮かびます(笑)
2019/09/06(金) 23:01:23 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
泣き虫レオ
ブラピに慰められるレオが笑えました。
子役に褒められて泣くのにも、笑っちゃいました。
2019/09/09(月) 11:58:18 | URL | 風子 #z8283xuI[ 編集]
こんばんは
>yutake☆イヴさん
ありがとうございます。
よろしくお願いします。

>ノルウェーまだ~むさん
気持ちよく騙されました。
まさかこっち方向に行くとはw
まあ以前も同じことやってたし、騙された方の負けですねー

>風子さん
このキャラクターちょっと可愛いんですよね。
自信を失って一人でブチ切れてるところとか相当おかしい。
マンソンファミリーを追い返す時にはすっかり俺様キャラが戻ってましたけど。
2019/09/09(月) 21:39:38 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
> 映画というイマジネーションの芸術が作り出す御伽噺の中では、史実は虚構に絶対に勝てないし、勝ってはいけないのである。

但し、東映映画に限ってはこの限りではない。
2019/09/30(月) 23:43:14 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
ええやん
>ふじきさん
東映は日本一タランティーノぽいのに。
2019/10/06(日) 18:04:35 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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作品について http://cinema.pia.co.jp/title/175470/ ↑あらすじ・クレジットはこちらを参照してください。 ・監督・脚本: クエンティン・タランティーノ ・リック(俳優): レオナルド・ディカプリオ☆ ・クリフ(スタントマン): ブラッド・ピット☆    & ・アル・パチーノ   etc. ↑このメンバーで、どんな“ハリウッドの昔話“を見せてくれるのだろう...
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