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ヒンディー・ミディアム・・・・・評価額1650円
2019年09月05日 (木) | 編集 |
人生に本当に大切なものは。

13億を超える人口を抱えるインドでは、金も名誉も兼ね揃えた真の人生の成功者となるために、物心ついた頃から競争が始まる
これは、インドの熾烈な“お受験”をモチーフに、下町っ子のバトラ夫婦が愛娘を名門小学校に入れようと悪戦苦闘する顛末を描く、ハートウォーミングな社会派コメディだ。
日本でもそうだが、名門小学校の受験では、子供以上に親の資質が審査される。
バトラ夫婦は、自分たちの娘が上流階級の学校に相応しいと認められるために、必死の努力を重ねるが、その結果としてありのままの自分を少しずつ失ってゆく。
監督・脚本はサケット・チョーダリーが務め、主演は「スラムドッグ$ミリオネア」「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」などワールドワイドに活躍するイルファン・カーンと、パキスタンのトップ女優でこれがインド映画デビューとなるサバー・カマル。

デリーの下町で衣料品店を営んでいるラージ・バトラ(イルファン・カーン)は、親の代の小さな店を大きく発展させたやり手ビジネスマン。
彼と妻のミータ(サバー・カマル)は地元の公立学校の出身だが、まもなく就学年齢を迎える娘のピアの将来のために、進学に有利な私立の名門小学校へ入学させることを考えていた。
デリーにも数少ないそうした学校に入ろうとすると、子供の学力だけでなく、親の学歴や仕事、居住地まで審査の対象となる。
裕福ではあるものの、決して高学歴ではない二人は、せめてもの対策としてデリーでも屈指の高級住宅街に引っ越し、お受験アドバイザーも雇って、盤石の構えで受験に挑む。
しかし結果は連戦連敗で、二人は深く落胆。
そんな時、彼らはある学校が低所得層の子供たちのために、特別な入学枠を設けていることを知る。
バトラ家には本来なら受験資格は無いが、二人は藁にもすがる思いで禁断の果実に手を出してしまう・・・・


冒頭、主人公夫妻の若き日の馴れ初めが描かれると、いきなり時間が飛んで二人が子供を持つ中年の親になっている。
あまりに唐突なので、別の話が始まったのかと思った(笑
それはともかく、これは超階級・超競争社会と化した現代インドならではの寓話ではあるが、他の国でも馴染みのある“お受験”をモチーフにしたのがいい。
インド社会の学歴重視が凄いのは、大学を舞台とした「きっと、うまくいく」などにも描かれていたが、小学校入試でこれほど加熱するとは。
もともとインドにはヒンズー教のカースト制度という、頂点のバラモン(司祭)階級から四段階、さらにその下に位置するいわゆるアンタッチャブルズ(不可触民)までの、厳格な身分制度がある。
今ではデリーなどの大都市の住民はあまり気にしなくなってきているものの、田舎では依然として様々な差別があるという。

さらに、階級を複雑化させるのが、大英帝国の植民地だった歴史だ。
「英語が話せないなんて!」とは本作のキャッチコピーだが、現代のデリーではカースト制度に変わって英語力によって階級が決まる。
私立の名門小学校に子供を通わせる様な上流階級の人々は皆、母語がヒンズー語にも関わらず高度な英語教育を受けて日常から英語を使う。
学校の授業も英語で行われ、親は自分の子供を英語を話せない様な身分違いの子供とは遊ばせない。
そうすると公立学校には低所得層の子しか行かなくなるので、資金が回らず教育の質も低下するという悪循環。
目に見えない階級のステータスが上がるほどに、英語使用率が高くなり、逆に十分な英語教育を受けられない低所得層は、上流階級の会話の内容すら分からず、いつしか階級が何世代にも渡って固定化されるという構図。
小学校の格差には、インドの社会問題の縮図があるという訳だ。

この強固な階級の壁に挑むのが、下町出身のバトラ夫妻。
商売の才覚に長け、大規模な衣料品店を持つ夫妻は、BMWを乗り回し、大きな家に住んで、身の回りの世話をするメイドだっている。
収入だけで言えば、富裕層に当たるだろうが、それでも下町の公立学校出身で英語が苦手な彼らは上流階級とは見なされず、お受験するには代々名門小学校に子供を通わせている様な人々に比べればずっと不利。
この辺は、日本の学閥の感覚に近いのかも知れない。
小学校のお受験は、子供よりも親のステータスで決まる。
そうアドバイザーに言われたバトラ夫妻は、生まれ育った下町を出て、ほとんど英語が公用語化している高級住宅街に引っ越し、懸命に面接の練習をし、虫の好かない気取った上流階級の人々と交流するなど、涙ぐましい努力をするも、お受験はことごとく失敗。
ついに彼らは、貧民街に引っ越して低所得層の家族を偽装し、学力はあるが経済的に恵まれない子供たちの為の特別枠を狙うことにするのである。

もちろん、そんな凝った工作も金があるから出来ることで、本当にその制度を必要としている“誰か”の将来を奪うことに他ならない。
バトラ夫妻は「娘のため」となりふり構わず行動しているうちに、いつしか大切な価値観を捨ててしまうのだ。
例によって、エンターテイメントと社会問題の融合が非常に巧み。
ピザすら買えない貧しい生活の中でも、子供の将来を真剣に考えている貧民街の人々と交流しているうちに、バトラ夫妻も少しずつお受験の狂騒の裏にある、格差社会の本当の問題に気付いてゆく。
自分の選択が、親としては1パーセントの正しさがあったとしても、人として99パーセント間違いだったとしたら、その選択を果たして娘に誇れるのか?娘のためになるのか?
彼女に本当に与えたい教育って、一体なんだろう?
二転三転するドラマチックな家族の物語は、夫と妻それぞれの葛藤の後の決断により、伏線を生かした感動的なクライマックスを迎える。

ミュージカルはほぼ無しで上映時間も2時間ちょいと、マサラ成分は割と少なめだが、丁寧に描写される主人公夫妻にはどっぷり感情移入。
独特の歴史を背景とした、インドならではの社会情勢をモチーフにしながら、最後に浮かび上がるのは生き方の選択に関する普遍的なイシュー
国は違えど、子供の進路を考えている全ての親にとっては、とても示唆に富んだ優れた寓話だと思う。
インドのエンターテイメント映画の特徴である、山あり谷ありキャラクターにとことん葛藤させて、最後にはスクリーンの中の人も外の人も、すっきり納得させてくれる爽快感は充分。
クスクス笑って、ウルっと泣き、イラッと怒り、最後はホンワカと幸せな気分になれる秀作だ。

今回は、バトラ夫妻と飲みたいインドの代表的なビール「キングフィッシャー ストロング」をチョイス。
日本で売られているキングフィッシャーには、イギリス産とインド産がある。
こちらのストロングはインド産で、定番のプレミアムと比べるとアルコール度数が7.5°と高め。
すっきりしたテイストはスパイシーなインド料理にぴったりで、本国ではストロングが一番人気があるというのも納得。
南国のビールらしく、喉ごしのスムーズさとキレ重視なので、日本人の好みにも合う。

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インドの首都デリーの下町地区で、裸一貫から婦人服店を成功させた夫ラージと妻ミータ。 学歴がなく英語も不得意な2人は、教育こそが人生を変える手段だと信じていた。 幼い娘ピアを有名小学校へ入学させるため高級住宅街へ引っ越すが、結果は全滅。 しかし低所得者向けの優先枠があると聞き、今度は貧困地域へ引っ越すことに…。 コメディ。 
2019/09/06(金) 10:15:48 | 象のロケット