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エセルとアーネスト ふたりの物語・・・・・評価額1750円
2019年10月24日 (木) | 編集 |
すこしむかし、ロンドンの片隅に。

「さむがりやのサンタ」「スノーマン」などで知られる漫画作家のレイモンド・ブリックスが、今は亡き最愛の両親のために作った「記憶の器」としてのアニメーション映画。
ブリックス自身がエグゼクティブ・プロデューサーをつとめ、監督・脚本は「スノーマン」などブリックス作品のアニメーターとして活躍し、本作の公開後の2018年に惜しまれつつ亡くなったロジャー・メインウッド。
まだ馬車と自動車が混在していた時代の晩秋のロンドンで、牛乳配達人のアーネストが、上流階級の邸宅で住み込みのメイドをしていた5歳年上のエセルを誘ってから、二人が共に死を迎える1971年まで、40年以上にわたる結婚生活が、素晴らしいクオリティのアニメーションで描かれる。

1928年。
ロンドンでメイドとして働くエセル(ブレンダ・ブレッシン)は、屋敷の窓から外を見ている時、若い牛乳配達人と目が合う。
以来、なんとなく彼の存在を意識するようになり、名前も知らない配達人の姿を窓越しに探すようになる。
ところがある日、彼は突然屋敷を訪れるとエセルをデートに誘い、アーネスト(ジム・ブロードベンド)と名乗った。
意気投合した二人は恋人同士となり、やがて結婚。
数年後には息子のレイモンド(ルーク・トレッダウェイ)も生まれ、三人家族として幸せな生活を送っていた。
しかし、時代の空気はすこしずつきな臭さを増し、ついにナチス・ドイツとの戦争が始まる。
瞬く間にヨーロッパ大陸は制圧され、ロンドンにもドイツ軍の空襲が迫る中、夫婦はレイモンドを田舎に疎開させることを決意する・・・・


映画の冒頭、現在のレイモンド本人が現れ、こう言う。
「There was nothing extraordinary about my mum and dad, nothing dramatic. No divorce or anything, but they were my parents and I wanted to remember them by doing a picture book.(私の両親に関しては特別なことは何もなく、ドラマチックでもありません。離婚も何もありませんでしたが、彼らは私の両親であり、絵本にすることで彼らを覚えていたかったのです。」
なるほど、ここに描かれているのはとことん平凡で普通で、それなりに幸せな人生。
だけど、特別なことが何もないからこそ、彼らの暮らしの物語は誰が観ても感情移入できる普遍性があり、とても愛おしいのである。

ロンドンの街角で出会ったエセルとアーネスト、初めてのデートは映画。
イギリスでは1928年の11月に封切られた、ジョン・フォード監督、ヴィクター・マクラグレン主演の「血涙の志士」に連れ立って出かける。
1930年に結婚した二人は、ウィンブルドンに小さな家を買って新婚生活を始めるのだが、当時としては晩婚の二人はなかなか子宝には恵まれず、エセルが38歳の時に大変な難産の末にようやくレイモンドが生まれ、夫婦にとっては唯一の子供となった。

まだ第一次大戦の傷が残る時代に始まり、つかの間の平和の後の再びの戦争、そして数十年の間に価値観が激変する戦後へ。
階級社会イギリスにあって、アーネストは気のいいお調子者で労働党支持者、エセルは以前メイドとして金持ちの生活を見ていたからか、チャーチル好きの上流指向で、ちょっと見栄っ張り。
二人はどう見ても労働者階級なのだが、彼女は「うちは労働者階級じゃありませんから!」が口癖だったりする(笑
一見すると対照的な男女が、夫婦という形になると、不思議と心地よい幸せのハーモニーを奏で始めるのだ。
時代は移り変わっても、二人の間には常に穏やかな優しい時間が流れ、大きな変化を作り出すのは、戦争という巨大な暴力と、堅い仕事をしてほしいという母の反対を押し切って、芸術の道に進む親の心子知らずなレイモンドくらい。
レイモンドの妻ジーンが統合失調症を患っていて、若くして亡くなったという話は初めて知ったが、「病気のことがあるので子供は作れない」という息子の話を聞いて、涙を見せるエセルの母心が切ない。

戦時中のシーケンスはかなりの時間を費やして描かれ、ドイツ軍の空襲に政府の指示通りに対処しようとする描写は、レイモンド・ブリックス原作、ジミー・T・ムラカミ監督の名作アニメーション映画「風が吹くとき」の老夫婦を思わせる。
そして、爆弾の雨が降る中でも何とか「日常」を手放すまいと奮闘する二人の姿には、「この世界の片隅に」のすずさん家族が重なる。
生活描写がやたらと細やかでユーモラスなだけでなく、どちらの映画でも一家の「子供」が疎開することになり、本作ではレイモンド少年が無事に田舎に逃げ延びるが、「この世界の片隅に」では間に合わず、幼い命を落とすることになるのも、二つの家族が同じ世界のわずかに違った鏡像である印象を強めている。
もちろん、本作は戦前戦中に加えて戦後の話もボリュームが大きいし、映画の描こうとするものは異なるのだが、この二本はセットで鑑賞すると間違いなくより感慨深い。

新婚の時に購入してから、空襲で大きな被害を受けてもずっと住み続けたウィンブルドンの家には、時代ごとにガスコンロ、電話、テレビ、自動車などの新しいアイテムが現れ、世間では人類が月へ降り立ったり、エセルの知らない「同性愛」が合法化されたりする。
本質的には40年以上ほとんど変わらない個人史と、ダイナミックに変化し続ける社会史の、流れる時の速度の違いが面白い。
冒頭とエンディングにレイモンド本人が実写で登場する他は、彼独特の優しい絵柄のアニメーションで描かれるが、レイモンドが看取ったエセルとアーネストの「死」の描写のみ異質にリアルなタッチなのが印象的。
40年以上に及ぶ物語の中で、レイモンドが両親と暮らした時間は1/3くらいなので、夫婦の描写の大半はおそらく作者の記憶+聞かされた話+イマジネーションなのだろうが、両親の死だけは全くオブラートに包まない彼の主観的記憶ということだろう。
最後は夢の世界に生きたエセルが逝き、彼女を追うようにしてアーネストが亡くなった後、住む人のいなくなった実家の整理をするレイモンドの前に、彼が子供の頃に植えた洋梨の木が、大きな枝を広げているのが人生の時間を感じさせて心に染み入る。
どこまでも普通だけど、どこまでも美しい映画で、自身の母への想いを込めたというポール・マッカートニーの主題歌「In the Blink of an Eye」も味わい深い。

ところで、新居に引っ越した時にどこからともなく現れ、二人の人生に最後まで寄り添う、黒猫のスージーさんはいったい何歳なんだろう?
ここだけ、“すこし・ふしぎ”な物語。

今回は、レイモンド・ブリックスの代表作から「スノーマン」をチョイス。
同じ名前のカクテルは世界中に色々なレシピがあるのだが、これは日本酒を使った変わり種。
グラスに冷やした日本酒40ml、無糖のプレーンヨーグルト60mlの順に注ぎ、軽くステアして、最後にお好みでレモンを振りかけて完成。
乳酸菌同士のマリーアージュは意外と相性が良く、ちょっとマッコリを思わせるテイスト。
使う日本酒は好みにもよるが、辛口よりもちょい辛程度の純米吟醸の相性が良いと思う。

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コメント
この記事へのコメント
素敵な映画
ノラネコさん☆
なんともほっこりする素敵な映画でしたね~
まさにイギリス版「この世界の片隅に」だと思いました!!
2019/10/27(日) 00:39:58 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
これは素敵な映画でした。
一見普通の人生で、二人には映画みたいなことは起こらないのですが、周りの時代そのものがドラマなんですよね。
「この世界の片隅に」本当に「さらにいくつも」あるのだと思います。
2019/10/28(月) 21:00:41 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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1928年、イギリス・ロンドン。 貴婦人の屋敷でメイドとして働くエセルは、牛乳配達をしている青年アーネストと出会い結婚。 25年ローンで購入した小さな家に中古品の家財道具を集め、新婚生活が始まった。 高齢出産でようやく息子レイモンドが誕生し一家は幸せに包まれるが、やがて戦争が始まり、レイモンドは疎開することに…。 アニメーション。
2019/10/28(月) 02:15:31 | 象のロケット