2019年11月07日 (木) | 編集 |
弾は6発、敵は無数。
いやー、こりゃあ面白いじゃん。
鈍足のトラックで、ドリフトしながら戦車の砲撃をかわすオープニングからテンションMAX。
オフィシャルにリメイクとはうたってない様だが、これ旧ソ連時代の戦車映画の名作「鬼戦車T-34」と基本設定が同じ。
ドイツ軍捕虜収容所の赤軍戦車兵が、訓練の標的にされるはずだった鹵獲されたT-34をぶんどって逃亡。
途中立ち寄ったドイツの村で、村人を脅してビールをもらうよく似た描写もある。
だが、ベースの設定以外は全くの別物だ。
ソ連の戦争映画というと、物量に物をいわせた大味なものという印象が強いが、第二次世界大戦中の実話からインスパイアされた「鬼戦車T-34」は、“標的”であるために非武装の戦車を、戦争の暴力に対する抵抗の象徴として描き、悲壮感を前面に出していた。
登場人物も、言葉がわからないフランス人が混じっていたり、戦車と花畑といった対位法的な映像表現も味わい深く、どこかアメリカン・ニューシネマを先取りしたような、独特のムードをもつロードムービーだった。
対して、こちらは厨二魂全開の戦争アクション。
奪って逃げるという行動は同じだが、最大の違いは徹甲弾4発、榴弾2発の計6発だけ実弾を隠し持っていること。
ドイツ軍の新米戦車兵の訓練の相手をするために、主人公のイヴシュキンら捕虜の赤軍戦車兵たちにあてがわれたT-34 85の車内に残っていた物という設定だが、戦車には当然砲弾が積まれている訳で、ドイツ軍が鹵獲した敵戦車の中身を確認もせず、捕虜に丸投げするってかなり無理がある。
ともあれ、これでただ逃げるだけじゃなくて、戦術を駆使すれば追っ手と戦えるようになり、バトルアクションのセットアップ完了。
前半のモスクワ攻防戦で、イヴシュキンにとって因縁のライバルとなるドイツ軍戦車兵(名前がイェーガー=狩人というのがいい)がいて、二人の熱血戦車野郎による、男と男のプライドをかけた戦いが物語の軸。
前半とクライマックス、劇中に二度ある両者の“決闘”はまるで西部劇のノリだ。
時折挟まれる戦場を見下ろす鳥瞰ショットが、戦車同士の位置関係を分かりやすくして効果的。
圧倒的に不利な条件下で、いかにして隠れ、いかにして敵を欺き、弱点である側面を突くのかという市街地の戦車戦は、いわば街をボードにした巨大なチェスのゲーム。
これがガルパンなら、被弾しても白旗が上がるだけだが、こっちは当たり所が悪いと死んじゃうので、非常にスリリングだ。
CGを駆使しし、飛び交う砲弾をスローモーションで描写するのも、拳銃弾とかなら見慣れたものだが、戦車砲弾はさすがに未見性がある。
アクションだけだと飽きるでしょう?とばかりに、箸休めに通訳の女性捕虜と主人公のロマンスまでプラスする、エンタメ盛り盛りのサービスっぷりが潔し。
製作が親プーチンのニキータ・ミハルコフだし、例えばデヴィッド・エアーの傑作「フューリー」の様な深いドラマ性や、オリジナルの「鬼戦車T-34」のが持っていた叙情的暗喩性などは全くなく、ストレートに国家に尽くした旧ソ連の兵士たちの勇敢さを讃えるシンプルな作品。
だが血湧き肉躍る熱血の戦車アクション映画として、相当によく出来てる。
監督・脚本のアレクセイ・シドロフは、見事な仕事をしていると言っていい。
しかし、観客のおっさん率異様に高し(笑
今回は文字通り、命がけで炎のキッスを交わす男たちの話なので、「キッス・オブ・ファイアー」をチョイス。
ウォッカ20ml、スロー・ジン20ml、ドライ・ベルモット20ml、レモン・ジュース2dashをシェイクして、粉砂糖でスノースタイルにしたグラスに注ぐ。
ルイ・アームストロングの「キッス・オブ・ファイアー」にインスパイアされた、バーテンダーの石岡賢司氏が考案した。
全く異なる個性を持つ素材それぞれが複雑に絡み合い、言葉で形容しがたい不思議な味わいを作り上げている。
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いやー、こりゃあ面白いじゃん。
鈍足のトラックで、ドリフトしながら戦車の砲撃をかわすオープニングからテンションMAX。
オフィシャルにリメイクとはうたってない様だが、これ旧ソ連時代の戦車映画の名作「鬼戦車T-34」と基本設定が同じ。
ドイツ軍捕虜収容所の赤軍戦車兵が、訓練の標的にされるはずだった鹵獲されたT-34をぶんどって逃亡。
途中立ち寄ったドイツの村で、村人を脅してビールをもらうよく似た描写もある。
だが、ベースの設定以外は全くの別物だ。
ソ連の戦争映画というと、物量に物をいわせた大味なものという印象が強いが、第二次世界大戦中の実話からインスパイアされた「鬼戦車T-34」は、“標的”であるために非武装の戦車を、戦争の暴力に対する抵抗の象徴として描き、悲壮感を前面に出していた。
登場人物も、言葉がわからないフランス人が混じっていたり、戦車と花畑といった対位法的な映像表現も味わい深く、どこかアメリカン・ニューシネマを先取りしたような、独特のムードをもつロードムービーだった。
対して、こちらは厨二魂全開の戦争アクション。
奪って逃げるという行動は同じだが、最大の違いは徹甲弾4発、榴弾2発の計6発だけ実弾を隠し持っていること。
ドイツ軍の新米戦車兵の訓練の相手をするために、主人公のイヴシュキンら捕虜の赤軍戦車兵たちにあてがわれたT-34 85の車内に残っていた物という設定だが、戦車には当然砲弾が積まれている訳で、ドイツ軍が鹵獲した敵戦車の中身を確認もせず、捕虜に丸投げするってかなり無理がある。
ともあれ、これでただ逃げるだけじゃなくて、戦術を駆使すれば追っ手と戦えるようになり、バトルアクションのセットアップ完了。
前半のモスクワ攻防戦で、イヴシュキンにとって因縁のライバルとなるドイツ軍戦車兵(名前がイェーガー=狩人というのがいい)がいて、二人の熱血戦車野郎による、男と男のプライドをかけた戦いが物語の軸。
前半とクライマックス、劇中に二度ある両者の“決闘”はまるで西部劇のノリだ。
時折挟まれる戦場を見下ろす鳥瞰ショットが、戦車同士の位置関係を分かりやすくして効果的。
圧倒的に不利な条件下で、いかにして隠れ、いかにして敵を欺き、弱点である側面を突くのかという市街地の戦車戦は、いわば街をボードにした巨大なチェスのゲーム。
これがガルパンなら、被弾しても白旗が上がるだけだが、こっちは当たり所が悪いと死んじゃうので、非常にスリリングだ。
CGを駆使しし、飛び交う砲弾をスローモーションで描写するのも、拳銃弾とかなら見慣れたものだが、戦車砲弾はさすがに未見性がある。
アクションだけだと飽きるでしょう?とばかりに、箸休めに通訳の女性捕虜と主人公のロマンスまでプラスする、エンタメ盛り盛りのサービスっぷりが潔し。
製作が親プーチンのニキータ・ミハルコフだし、例えばデヴィッド・エアーの傑作「フューリー」の様な深いドラマ性や、オリジナルの「鬼戦車T-34」のが持っていた叙情的暗喩性などは全くなく、ストレートに国家に尽くした旧ソ連の兵士たちの勇敢さを讃えるシンプルな作品。
だが血湧き肉躍る熱血の戦車アクション映画として、相当によく出来てる。
監督・脚本のアレクセイ・シドロフは、見事な仕事をしていると言っていい。
しかし、観客のおっさん率異様に高し(笑
今回は文字通り、命がけで炎のキッスを交わす男たちの話なので、「キッス・オブ・ファイアー」をチョイス。
ウォッカ20ml、スロー・ジン20ml、ドライ・ベルモット20ml、レモン・ジュース2dashをシェイクして、粉砂糖でスノースタイルにしたグラスに注ぐ。
ルイ・アームストロングの「キッス・オブ・ファイアー」にインスパイアされた、バーテンダーの石岡賢司氏が考案した。
全く異なる個性を持つ素材それぞれが複雑に絡み合い、言葉で形容しがたい不思議な味わいを作り上げている。

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